六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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……なんでしょうね〜なんかR-18をギリギリ責めてるような描写が出てきてしまったぞぉ……?

果たしてこれは大丈夫なのか私は不安になってきた。 前もって言います。

花衣君、六花達に虐められます。はい。



魅了された代償の囁き

 もし目の前に有名人がいたらみんなはどうするのだろうか。

 

 声を掛ける、サインをお願いする、こっそりと写真を取る……のはなんか盗撮だからやめておいたほうがいいとして、大半はその場で固まってしまうだろう。

 

 考えても見てくれ、テレビの中の有名人が自分の目の前にいて、挙句の果てには会話をする。自分とは住んでいる世界のスケールの違いで思わず口が開かないに決まっている。

 

「あ、あれ〜?もしもーし、聞こえてる? 」

 

 そんなテレビの中だけの存在だと思われた人物が今目の前にいる。

 

 桃色の髪は毛先がふわっとしており、目が星のように輝いている所謂ゆるふわ系みたいな外観をしており、かなり美人な部類入るだろう。

 

 それもその筈、彼女は巷で噂どころか世界が知っているトップアイドル、【ミスティック・メロディー】の【アリア】なのだから。

 

 そもそも【ミスティック・メロディー】とはアリアとソナタの2人組のアイドルユニットの事であり、抜群の歌唱力と演奏はもちろん、作詞作曲も彼女達2人がやっている事から、その能力の高さが評価され、更にはバラエティ等の番組にも幅広く活躍している人気アイドルだ。

 

 そんなアイドルの1人が、他の人に姿を隠し、俺達と一緒にラーメンを食べていたんだぞ?そんな現実離れした事実が受け止めきれず、俺達3人の頭は考えを一旦放棄していた。

 

「……えーと、失礼ですけど本物ですか? 」

 

「むっ、失礼だな〜。ちゃんと本物だよ。ほら、もっと近づいて! 」

 

 ムスッとした顔でアリアは俺の顔を掴み、嫌でも顔を見せようとした。

 

 だが、それを許さない物が俺の周り……というよりカードがいる。デッキケースから2つの光が飛び出し、アリアの背後に霊体化したティアドロップのレイが現れた。

 

『この人……私の花衣様に! 』

 

『始末します?始末しまょうか?始末しますよね? 』

 

『貴方と同意見は癪ですが……今回ばかりは協力しましょう 』

 

 まずい、2人共完全やる気の目をしている。

 

「おい!お前らやめ…… 」

 

「へ?何で急に顔を近づけ……きゃあ!」

 

 2人を止めようと腕を伸ばしたが、ティアドロップとレイは霊体化中、つまりこっちからの干渉を受けないし与える事も無い。伸ばし手は2人の体をすり抜け、行き場のない力は前にいるアリアさんをも倒す勢いだった。

 

 勢いは止まらずそのまま地面へと向き、落下の衝撃に耐えるように俺は目をつぶった。

 

 閉じた目を開く前に、何か右手が違和感がある。違和感というより……何か手の平や指の隙間にもっちりとした弾力があり、地面とは全然違う感触だ。

 

 とにかく目を開けて状況を確認すると……最初に目に映ったのは少しばかり赤面しつつも、大人の余裕の表情を浮かべたアリアさん……と、その胸を掴んでいる俺だった。

 

「わーお……だいたーん♡ 」

 

 劣情を煽る様な笑顔とセリフは、ティアドロップとレイの怒りを爆発させる起爆剤となり、俺の背後にいるティアドロップとレイが張り付いた笑顔を見せた。

 

『何をしてるのですか?早くその手を退けないと 』

 

『切り落としますよ? 』

 

「うぉぉ!頼むからそれはやめてくれ! 」

 

 アリアさんから急いで離れ、そこからティアドロップとレイから一旦距離を離すように焔達の側まで逃げた俺を見たアリアさんは、あまりの反応に若干困惑していた。

 

「あらら?そんなに恥ずかしがる事無いのに。わざとじゃ無いんでしょ? 」

 

「そうだぞ花衣。トップアイドルの胸を揉むのはもうこれっきりだからな 」

 

「やったじゃないか花衣。夏休みの思い出が増えるじゃないか 」

 

「どんな夏休みの思い出だよ……!」

 

「ところで、さっき言ってた『それはやめてくれ』ってど言うこと?私何かした覚え無いんだけど 」

 

「いや……その、ええとですね…… 」

 

 まずい、やはりアリアさんにティアドロップとレイの姿が見えておらず、思わず2人に対して大声を出したせいでアリアさんに誤解を生んでしまった。

 

 言い訳が思い浮かばずに口を閉ざすと、アリアさんは気にも止めない様子だった。

 

「まぁいいや。それよりも早くお礼がしたいから皆も来てよ! 」

 

「お礼ってもなあ〜やったの空だろ?俺らは別に何もしてねぇもんな? 」

 

「そうだけど〜実はもう少しやって欲しい事があるの。その前礼というかなんというか〜 」

 

「はぁ? 」

 

 焔の疑問の声も当然だ。これ以上トップアイドルにしてやれる事なんて思いつかないし、やれる事があるとは思えない。

 

「ま、とにかく来て来て! 」

 

 アリアさんが扉の前にいる警備員に話をつけ、その後携帯で誰かに繋いで話していた。

 

「あ、もしもしマネージャー?良い感じの人見つけたよ〜。うん、うんうん。はーい 」

 

 どうやら携帯で話していたのはマネージャーのようだ。話を通したおかげか警備員さんも俺達に一礼し、中に入るようにと手を上げながら1歩右に進み、扉への道を開けてくれた。

 

「こっちこっち、入って! 」

 

 ここで立ち去る理由も無いし、折角だから俺達は建物の中に入っていく。

 

 流石トップアイドルが使う物と言うべきか、隅から隅まで清掃が行き届き、防犯カメラの死角も無い。警備員も大量に投入され、犯罪者1人も通さないだろう。

 

 アリアさんが控え室らしき扉を開けると、広々とした空間に多くの壁鏡に、机の上には大量の化粧道具や手紙が大量に積まれていた。

 

「たっだいま〜! 」

 

「おかえりアリア。あ、空君じゃん。久しぶり〜 」

 

 控え室にはもう1人のミスティック・メロディーのメンバー、ソナタがいた。灰色の長髪に水色の瞳は、どこかミステリアスな雰囲気を醸しながらも、どこか惹き込まれる容姿は、一言で言えば謎が多い天使の様な印象を受けた。

 

「……久しぶりです 」

 

「うおお!目の前にあのミスメロの2人がいるじゃねぇか!良い夏休みだなおい! 」

 

 まぁ確かに、会うだけにとどまらずこうして控え室まで案内されているんだ。興奮するのも無理は無いし、俺も内心嬉しいと言えば嬉しい。

 

「そうだ!写真撮っても良いすか!? 」

 

「もっちろん!ソナタもいいよね? 」

 

「うん。良いよ。私達の間に挟まれて撮っちゃう? 」

 

「うーんそれも良いけど……どうせなら花衣と空も一緒に撮りたいしな。お前らも来いよ 」

 

 トップアイドル2人に挟まれてのシャッターチャンスを焔は笑顔で捨て、俺達に声をかけてくれた。

 

(……こういう所があるから憎めないんだよな )

 

 自分勝手で、ある意味欲に忠実で、他人を振り回す。だけど、こうして誰かと一緒にいる事を心から喜んで良い意味で巻き込む。

 

 そんな焔に出会ったからこそ、ここにいるのかも知れないし、ティアドロップ達にももしかしたら出会わなかったかも知れない。

 

「どうしたんだよお前ら?早く来いよ 」

 

「……空、どうする? 」

 

「断ってもあいつが諦める訳無いだろ。行くぞ 」

 

 空も観念したようにしたが、嫌悪感が全くない笑顔で焔の元へと歩き、俺もそれについて歩いた。

 

「よっしゃ、……あ、でも誰が撮るんだ? 」

 

「あ、だったら私自撮り棒あるよ。私が撮るね 」

 

「いいえ、ここは私が撮りましょう 」

 

 控え室の扉からスーツを来た銀髪の女性が名乗りでた。肌の色も少し黒く、清潔感のある姿はまさに大人の女性と言ったところだ。

 

「あ、マネージャー!じゃあお願いするね 」

 

「おぉ、黒ギャル女性マネージャー!?おお……なんかすげぇ属性だな 」

 

「黒ギャルって……私はただのマネージャーですよ 」

 

「そんな事言って〜マネージャーも昔はギャルギャルしてたんでしょ?でなきゃメイクのやり方も映えのコツも流行りも取り入れないでしょ? 」

 

「私は貴方達2人の為に学び続けているだけです。さ、携帯を私に下さい 」

 

 焔は携帯をマネージャーに渡し、マネージャーさんは焔の携帯を貰うと何やらカメラの設定を変更しているようだった。

 

「うし!じゃあセンター俺な! 」

 

「じゃあ私とアリアは端っこにいましょうか 」

 

 焔は俺と空の肩を抱き、満面の笑みで撮る準備を初め、アリアさんは両手でハートマークをつけ、ソナタさんは親指と人差し指で作る指ハートを両手を使って2つ作り、アイドルの何相応しい笑顔をカメラに向けた。

 

「では、撮りますよ。……はい、チーズ 」

 

 携帯からカシャっていうシャッター音が鳴り、どんな風に撮れたのか見てみる。

 

 まず真ん中には俺と空の肩を抱いて白い歯を見せて笑っている焔、その隣には下手な笑顔の俺に、小さな笑みの空、端っこには流石アイドルと言わんばかりの綺麗な笑顔とアリアさんとソナタさんが写真に綺麗に写っていた。

 

「おぉ、良いじゃないのか?んじゃあこれ送るわ 」

 

 焔が携帯を弄ると俺の携帯からメッセージが届き、さっき撮った写真が送られてきた。

 

「おぉ、よく撮れてるな!にしし、結構良いお礼になっちまったな 」

 

「いいねいいね〜もう1枚、今度はもっと近くで…… 」

 

「ダメよアリア。そろそろ時間なんだから準備しなさい 」

 

「時間?何かやるんですか? 」

 

「当然、ライブに決まっていますよ。それと、貴方方に少しやってもらいたい事があります 」

 

 マネージャーさんはキリッとしながらメガネを上げた。

 

 

 

 

 

『皆〜!この暑い中ちゃんと食べてる〜!?熱中症に負けないぐらい、私達も熱く盛り上がって行くよー!! 』

 

「「ウォォォォォォォォ!! 」」

 

 夏の熱さに負けないぐらいに観客の熱狂を高まり、見るだけで熱くなりそうな光景だ。まぁ、美味いもの食べながら世界的アイドルユニットのライブを見れるのだから当然の反応と言えるだろう。

 

 そんな光景をステージの裏側から見守り、現場の雰囲気も負けないぐらい熱くなっている。まぁ、違う意味でだが……

 

「おい!証明器具の準備急げ!その次は音響や演出もだ! 」

 

「次のセッティングOKです! 」

 

「ほへぇ……この暑い中よく動けるな…… 」

 

「皆さんはあの子達を輝かせる為のプロなのです。必死に動くのは当然ですよ 」

 

「だが、何でわざわざサプライズゲストって呼び方をしてるんだ?名前を出せばもっと人が集められる筈だが 」

 

 空の言うことは最もだ。ミスティック・メロディーのライブチケットは発売されると数分足らずで完売し、そのチケットが仮に転売されて高価格で売りつけられても行きたい人は絶えない。

 

 こういうタイプの利益の取り分は分からないが、そんなアイドルユニットの名前を出せば、少なくとも利益を得ることは可能な筈だ。その事をマネージャーさんが気づかない訳では無いと思うが……

 

「空さん……と言いましたね?確かにあの子達の名前を出せば確かに今よりも利益は出るでしょう。しかし、それではこの祭りの意味が薄れるのです 」

 

「意味……? 」

 

「世界中の食べ物、美食が集まるこの【オールイート・カーニバル】に【ミスティック・メロディー】のスペシャルイベントがある。と知らされれば、どうなると思います? 」

 

「恐らくだが……そのライブ目当ての人が多くなりそうだな 」

 

「その通り、それではこの祭りの意味が無くなり、ここにいる料理人達にも迷惑です。それを見越して、スペシャルゲストという体で参加したのです 」

 

 なるほど……そんな理由があったのか。まぁ確かに、料理目当てじゃない人がここに集まれば間違いなくここの意味を失ってしまう。

 

「それに、それはあの子達も許せないでしょう。ここにいる人全てを楽しませる。それがあの子達の願いなのですから 」

 

「楽しませる?だったら……」

 

「心から。という意味です。本来の目的を阻害されて、あの子達のライブを見て喜べますか? 」

 

「それは難しいだろ。言うなれば食べる所邪魔されたって事だろ?俺なら許さないわ 」

 

「そう、そしてその感情がある限り誰しもが心に引っかかっりを残し、心から楽しむ事は不可能です。それはあの子達の願いを無下にするのと同じ事です。彼女達を世話する身としては、彼女達の願いを叶えせる手伝いをしなければなりませんからね 」

 

「心から観客達を楽しませること……か 」

 

「アイドルの中でも最も重要な事であり、忘れてはならないものです。そして彼女達は、心からそれを楽しんでやっている。……それが、彼女達の魅力の本質なのです 」

 

 言われてみれば、彼女達2人は本気の笑顔を崩している事は無かった。あんなに動きながら歌っているのにも関わらず笑顔をキープする事は本当に難しく、かなりの体力がある事を示している。

 

 暑さで汗を流しても、その汗は飛び出ると太陽に反射してひとつの照明器具のように彼女達の笑顔ををまた一段と輝かせ、それに負けないと彼女達は歌い、踊った。

 

 動きの一つ一つが美しくも激しく、曲の旋律、歌声全てに惹き込まれてしまい、まるで別の世界に来たかの様な感覚になってしまう。

 

「すっげー……テレビで見るよりもやっぱり迫力が違うぜ…… 」

 

「あぁ、ここまで来るのに一体どれ程の努力を積み重ねて来たんだろうな 」

 

 焔と空も2人の世界に惹き込まれ、ステージ裏でずっと2人の姿を目を離さずにいた。

 

『……綺麗ですね、あの二人 』

 

 羨ましそうにティアドロップが静かに俺の隣に現れ、霊体化で俺に触れる事は出来ないが、触れているようにそっと俺の方に頭を寄せていた。

 

「……危害とか加えるなよ? 」

 

『さすがにしませんよ。……ですが、私の中のこの濁った感情が暴れだして我慢が出来ません 』

 

 するとティアドロップは口元を俺の右耳に近づけ、ゆっくりと吐息を吹きかけた。あまりの不意打ちの感覚が耳から全身に電気が走り、思わず俺はティアドロップから離れ、その弾みでステージ裏にある器材を落としてしまった。

 

 幸いそれ程大きい物では無かったから周囲には影響が無かったが、いきなりの大きな音に焔達は驚いて俺を見た。

 

「花衣さん!怪我はありませんか? 」

 

「おいおい大丈夫か? 」

 

「いきなり体をビクつかせていたな……何かあったのか? 」

 

「い、いや……なんでもない 」

 

「疲れているのでしたら、向こうにある椅子に座ってくださいね 」

 

「じゃあ……お言葉に甘えて 」

 

 奥にある椅子に座ると、ティアドロップが光悦した笑みを浮かべてまた俺の耳に息を小さく吹きかけた。

 

「〜〜!! 」

 

『騒いだらまた不審に思われますよ?……ふふ、他の女性の声で魅了されてる花衣様には……少しばかりお仕置ですね 』

 

 ティアドロップが右耳に息をまた吹きかけ、吹きかけた耳はまた全身を駆け巡るかのような感覚が襲いかかり、思わず体をよじらせてしまう。

 

『ふふふ、本当に耳が弱いんですね。可愛いです、花衣様。私の……私だけの、愛しい人 』

 

 ゆっくりと囁かれているだけなのに、一字一句が頭の中を弄られ、溶けてしまいそうだった。止めろと言おうと瞬間、左耳にまた息を吹きかけられた。

 

『花ー衣さん、私の事も……忘れちゃ嫌ですよ 』

 

 左側にはレイが笑顔を向け、そのままティアドロップの同じように俺の左耳に囁きかけた。

 

『好きです。大好きです。誰にも負けないぐらいに、貴方に近づく人をどうにかしてしまいたいぐらいに……愛してます 』

 

『いいえ、私の方が花衣様の事を深く愛しています。貴方の体も心も全てを知っているのは……私だけですよ 』

 

 左右の耳からティアドロップとレイの声が同時に入ってくる。違う声、違う言葉、違う息遣いが頭の中から体を駆け巡り、本当におかしくなってしまいそうだ。

 

「ティアドロップ……レイ……ちょっとやめ」

 

『嫌ですわ旦那様、他の女性の名前を呼ばないで下さい 』

 

『レイ……?私はロゼよ。間違わないで 』

 

「なっ……えっ、えぇ? 」

 

 いつの間にかカンザシが右に、ロゼが左に入れ替わっており、俺の頭は混乱してしまう。

 

 確かにティアドロップとレイがいたはずなのに、今はカンザシとロゼ……どんな早業をしたんだという疑問は2人の弱い息によって吹き飛ばされた。

 

『さて、他の女性と間違う旦那様にはお仕置が必要ですね 』

 

『覚悟して 』

 

 突然2人が俺の視界を遮り初め、目の前が暗くなって何も見えなくなった。霊体化して流石に触れることは出来ないが、俺は精霊が『見えている』から俺の目の前に手をかざせば簡単に視界を塞ぐ事は可能だった。

 

 視界を奪われた事により感覚が嫌で鋭敏になり、カンザシのロゼの声がはっきりと、深く聞こえてしまう。

 

『本当に旦那様は耳が弱いんですね。もし舐めたら……どうなってしまうのでしょうか? 』

 

『情けない……でもそれで良い。貴方は弱い人間、私が守るから、どこまでも情けなく堕ちても良いの 』

 

「っ……今日はどうしたんだよ…… 」

 

 視界が塞がっても、押さえつけられている訳では無い。動けばこの束縛から抜けられる筈……だが、俺の体は動く事すらできなかった。手足に何か縛られている感覚がある……多分、カンザシかロゼのどちらか、あるいは両方が俺の手足を縛っており、身動きが取れなくさせているのだろう。

 

『ふぅ……ふふ、体ビクつかせて……本当に何もかも虐めたい……!うふふふ 』

 

『貴方の弱い所全部見せて。そして情けなく鳴いても私は貴方から離れないから 』

 

 罵りながらも俺に対して肯定的な言葉がまた更に心と頭をぐちゃぐちゃにさせる。やっぱりいつもより様子が変だ。

 

 すると突然視界が元に戻り、奥にはまだアリアさんとソナタさんのライブが続いていた。

 

「カンザシ……!ロゼ……お前ら一体…… 」

 

『えー花衣君私の事カンザシに見えるの〜?よく見てよ 』

 

『あの……私です。ヘレボラスです。ちゃんと見て……下さい 』

 

「なっ!?え……あっ 」

 

 今度は右にスノードロップ、左にヘレボラスだ。もう……何がなんだか分からず、半ば思考が放棄されていた。

 

『酷いな〜花衣君。これはお仕置確定だね。ヘレちゃんはそっちの耳お願いね〜 』

 

 スノードロップの声のトーンが低くなっている。まずい、これは本気だ。逃げないとどうなるか分からないのにまだ俺の手足は縛られており、どう足掻いても逃げられなかった。

 

『花衣君、好きだよ。大好き。だから……他の女、ましてや私達意外の人に魅了されたら絶対に許さないから 』

 

『お願いです。もっと私を見てください……捨てないで下さい。その為なら私……本当に何でもしますから 』

 

 スノードロップの高圧的な囁きと、ヘレボラスの懇願するような囁きの相反する性質の囁きが両方同時に入り、今までの囁きもあってもう頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 

『好き好き好き好き好き好き好き好き好き。だーい好きだよ 』

 

『捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで下さい。そのためなら貴方に全てを尽くします 』

 

 連呼する言葉が俺の頭を撫でているような感じだ。視界が歪み、体が震える。

 

「ふ……2人共……もう止めろって…… 」

 

『止める?私達は何もしてないヨ? 』

 

『変なこと言いますね。花衣さん 』

 

「っあ…… 」

 

 今度は右にボタン、左にエリカだ。ここまで来ると次はストレナエ達か……?でもあの3人とひとひらがこんな事するとは考えにくい。いや……でも……やばい、頭が回らない。

 

『嫌ですわ花衣さん。そんなに目をとろーんとさせて……私の事意識してくれなきゃ嫌ですよ 』

 

 エリカが左耳の筋に息を優しく吹きかけると、ぼやけていた視界が元に戻り、嫌でもエリカの吐息に意識を向けられた。

 

『花衣〜こっちもするネ。……ふぅ〜 』

 

 対するボタンは息をそのまま耳の奥まで届かせる程の吐息だ。誰よりも強く、それでいて確実に耳の奥から頭へと届かせるような強引な吐息が頭の中へと入り、左右の責めの違いで体がビクついてしまう。

 

 弱いながらもじわじわと耳全体を刺激し、やがては頭の中へと届く愛撫の様な責めが左からさせられ、右はそれとは違って優しさとかじわじわ来るとかそんなのは無い強引な吐息で頭の中を激しくかき乱していく。

 

 そんな責めの幅がとんでもない広さで体が熱くなり、息も荒くなっていく。

 

 今は人が居ないけど、もし傍から見ればいきなり体をビクつかせて息を荒くしている変な奴だと見られるのだろう。

 

 俺しかされない、俺しか分からない感覚が止まらず襲いかかり、追撃をするかのようにまた俺の視界が何かに塞がれた。

 

 誰かの手?それともカンザシのツタ?それともホーネットビットの機能の一つだろうか。だが、今の俺にそんな事を考える暇も、興味も無かった。

 

 

『気持ちいいですよね 』

 

『虐められて体がビクつかせて可愛いですよ』

 

『あんな偶像なんかよりもこっちの方が良いでしょ? 』

『これは貴方だけの特権ですよ』

 

『これで貴方は私を捨てませんよね? 』

 

『もっと弱いところ見せて 』

 

 今は誰が喋ってる?どこから囁いているの分からない。今俺の隣にいるのは?今俺の後ろにいるのは?今俺の前にいるのは誰だ?

 

 分からないだらけの感覚の筈なのに、恐怖心は全く湧き上がらず、何故か安心感が込み上げてくる。

 

 相手が誰だか分かっているおかげなのか……?それとも何か別の要因があるのか知らないが、止まらない囁きは一旦止め、微かに聞こえるライブの最後のサビが開始された時、今度は全員で囁きだした。

 

 

  私達から離れないで。どこにも行かないで。

 

 

  もう二度と……私の心を壊さないで

 

 

 願いを込める様な囁きが終わった瞬間、ライブの音楽をなりやみ、観客達はここからでも届く大歓声を上げ、その大歓声で俺の意識は覚醒した。

 

『皆ー!ありがとう!! 』

 

 ライブが終わり、意識を覚醒させた俺は椅子から飛び上がるように立ち上がり、直ぐに周りを見渡した。俺の周りには誰にもおらず、ティアドロップ達の姿さえ見えない。

 

 鞄からデッキケースを取り出してティアドロップ達のカードを見ると、カードの枚数は減っていない。どうやらカードに戻っているようだ。

 

 じゃあ、あれは夢……な訳が無い。間違いなくあれは現実だ。

 

 アリアさんとソナタさんのライブに惹き込まれたせいなのか、嫉妬心や独占欲が爆発した皆はあんな風な行動を取ったと考えるべきだろうか。

 

 ……完全に皆の気持ちを舐めていた。ストレナエとプリムとシクランとひとひらは幼さ故かしてこなかったが、俺への気持ちは負けていない筈だ。もしもストレナエ達も参戦したら……耐えきれなかったかもしれない。

 

 その場でしゃがみこみ、体の内側に燻る熱を冷やすようにじっとする。

 

「……い、おい!……花衣!! 」

 

 俺の呼ぶ声がすぐ側で煩く響くと、本気で心配していた焔と空がしゃがみ込んだ俺の目線を合わせるようにしゃがみこんでいた。

 

「大丈夫か!?顔とか赤いぞ? 」

 

「熱中症か?だったら水分補給を…… 」

 

「い……いや!なんでも無いっ!気にするな! 」

 

 顔が赤いのも、体が熱い理由を知られたら……本気で自分が情けなくなってしまう。あまりの反応に焔と空は戸惑いつつも、それ以上は何も言って来なかった。

 

『ライブは終わったけど……』

 

『次はなんと……緊急参戦する決闘者と3対3のデュエルをするから、楽しみにしていて!し か も……デュエルディスクを使ってのデュエルだから皆も楽しめるよ! 』

 

「3対3!? 」

 

「一体どんなデュエルをするんだろ……」

 

「しかもデュエルディスクを使ってか!モンスターが出てくるの楽しみ! 」

 

 ライブが終わったのにも関わらず観客の熱気は下がるどころか上がっており、火傷しそうな雰囲気だ。アリアとソナタは笑顔のままステージから離れ、このステージ裏に汗だくの笑顔のまま帰ってきた。

 

「あ〜楽しかった!でも、この後デュエルもあるからまだまだ楽しめるね! 」

 

 アリアさんは俺達に向かってウィンクというファンサービスを与え、特別なファンサービスに少し照れすらも感じる。

 

「ふぅ、それよりもやっぱり動きすぎて熱い…… 」

 

「そういうと思って、はいこれ 」

 

「わぁ〜マネージャーありがとう!さっすがー 」

 

 準備良くマネージャーさんがドリンクを渡し、2人は暑さを逃がすように冷たいドリンクを飲み干した。

 

「ん〜!生き返る〜 」

 

「じゃあ、次のデュエルの為の会議をやりましょう。花衣さん、焔さん、空さん。私と一緒に会議部屋に来てください。貴方達は着替えてから来てください 」

 

「はーい、じゃあ皆、後でね 」

 

「着替え……見ちゃダメだよ? 」

 

 ソナタさんが揶揄う様に言い放ちながらアリアさんと一緒に着替えに行ってしまった。

 

「うおぉ〜まじで着替え見てぇ 」

 

「見たら見物料払ってもらいますよ。占めて100万円 」

 

「速攻で見る気失せたわ 」

 

「ふふ、冗談ですよ。ですが、女の子の着替えをそうやすやすと見るものではありませんよ 」

 

 意外にも堅物そうなマネージャーさんが冗談を言った光景にポカンとしていると、マネージャーさんがまた声をかけた。

 

「な、なんでしょうか。私だって冗談は言いますよ 」

 

「あぁすみません。所で、3対3って言ってましたけど。あと1人はマネージャーさんがやるんですか? 」

 

「いえ、あと1人は既に手配しています。先に会議部屋にいると思いますよ 」

 

「へぇ、どんな人なんですか? 」

 

「とあるネット配信者です。登録者は……300万人を越えてるとか 」

 

「さ、300……!? 」

 

 それって、ほぼ誰でも知っているような人物だぞ。俺も結構動画サイトで動画をよく見るから、一度は見た事ある人物というのは確かだろう。

 

 一体誰だろうか。ミスティック・メロディーと肩を並べられそうな配信者という事になると結構絞られると思うが……

 

「着きましたよ。ここです 」

 

 俺たちの控え室まで案内したマネージャーさんがドアノブに手を触れた瞬間……どこからともなく声が聞こえた。

 

『お願い!誰か2人を助けて……! 』

 

「えっ…… 」

 

 ティアドロップ達の声じゃない。別の人の声……後ろに振り向くと壁際の方にひとひらと同じ大きさの何かが浮いていた。あれは……精霊?誰のだ?

 

 精霊側も俺の視線に気づいたのか、俺の目の前まで飛んで助けを求めた。小さな精霊はひとひらと同じぐらいの大きさであり、桃色のスカートと大きい袖に、三つ編みの下げた髪が特徴的だった。

 

『お願い!アリアとソナタを助けて! 』

 

「何だって……? 」

 

 ということは……この精霊はアリアさんかソナタさんのそばにいる精霊という事になる。まさかどちらは……あるいはどちらも精霊が見える存在。俺と同じ存在という事になる。

 

 精霊は俺の戸惑いなんか気にせず、助けてくれるという望みを抱くようにアリアさんとソナタさんの所まで移動してしまった。

 

『花衣様、あの精霊……【ドドレミコード・クーリア】の傍にいる者です 』

 

「ということは……アリアさんのか 」

 

『どうされますか? 』

 

「決まってる。行くぞ。……ごめん、ちょっと用事思い出した! 」

 

「は?おい花衣!? 」

 

 いきなり走り出した俺に困惑する焔達を置いていき、俺はアリアさんとソナタさんの所に走っていく。




人物紹介

・アリア 使用デッキドレミコード
トップアイドル【ミスティック・メロディー】の一人であり、作曲担当。音楽知識が豊富であり、今まで出した全ての曲が彼女が担当しており、幅広いジャンルの作曲も可能。

またかなりの大食感であり、本人曰くいくら食べても太らない体質により、ソナタから少し恨まれているとか。

・ソナタ 使用デッキ トリックスター
トップアイドル【ミスティック・メロディー】の1人であり、作詞担当。アリアと違って音楽知識は最低限しか持たないが、それを凌駕する歌声とダンスで人々を魅了していき、抜群のプロモーションはグラビア界でもその名を轟かせているとか。

また、届いたファンレターやSNSのファンリプを逐一返信しているマメな性格をしており、ファンサービスにも定評があるとか。

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