六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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カガリ準制限!カガリ準制限!

このまま激強閃刀姫新規来て閃刀姫のブームを続行しましょうよぉ!
閃刀姫カメリアちゃんのカラーイラストとカードまだですかね?(´・ω・`)マダー?


死んだ目と声

 

『こっち! 急いで! 』

 

 宙に浮いて急ぐ形相をしている手のひらサイズぐらいの大きさの少女の案内を元に、俺は通り過ぎていく人混みを避けて走り続ける。

 

 手のひらのサイズの少女とは? 宙に浮いているのは何故だとか、周りは見えてないのかという疑問が生まれると思うが、あの少女は端的に言えば俺にしか見えてない存在、言わばデュエルモンスターズの精霊だ。

 

 ティアドロップが言うには、彼女は【トドレミコード・キューティア】というモンスターのそばにいる精霊らしい。そんな彼女が、今助けを求めているのだ。

 

 正確には、彼女達の傍にいるであろう持ち主、アリアとソナタの助けを求めていた。

 

『ここ! ここだよ! 』

 

 走り続けて数分、アリアとソナタがいるであろう部屋に辿り着き、ドアに触れようとした瞬間、レイに止められた。

 

『待ってください花衣さん。相手が何か分からない以上、ここは私とロゼちゃんが先陣をきります 』

 

『花衣は離れてて 』

 

「……いや、アリアさんとソナタさんがどうなっているか分からない。俺がまず部屋に入って様子を見る。俺が危険だと判断して合図を送ったら無力化を頼む 」

 

『でもそれじゃ! 』

 

「大丈夫だ。もし本当に危ないと感じたらお前らに助けを求める……ちょっと情けないと思うけどな 」

 

『……分かった。絶対よ 』

 

 一応レイとロゼだけじゃなく、六花全員を呼び出しておき、不安感に駆られながらもドアに触れ、静かに扉を開ける。

 

 開かれたドアの先には更衣室となっており、巨大な鏡に化粧道具とその匂い、ステージで使うであろう衣装が乱れていた。

 

 そして極めつけは……警備員の服を来たメガネをかけている男子と、下着姿で襲われているアリアさんとソナタさんがいた。

 

「ふひひ、こ、こんな所で会うなんて……やっぱり僕達は運命の糸で結ばれているんだ! 」

 

「んー! んん!! 」

 

「うひ、そんな風に嬉しそうで何よりだよ。僕は売れる前の君達を応援し、してるから……言わなくても分かるよ 」

 

 最初は様子を見ようと思ったがこの状況だったらそんな事言ってる暇は無い。俺は勢いよく扉を開けて注意を引くと、目論見通り男は俺の方向に顔を向けた。

 

「だ、誰だ!? 」

 

「花衣君!? 」

 

「アリアさん! ソナタさん! その人は……!? 」

 

 警備員の服をしているから警備員の人……? いや、それにしては様子がおかしい。息は荒く、アリアさんとソナタさんを壁際まで追い込んでおり、右手に持っているのはスタンガンだ。

 

 スタンガンの電圧を見せつけられているせいでアリアさんとソナタさんは恐怖で体を震わせ、叫び声をあげさせないように布で口を塞いでいた。

 

 それに、男自身も変だ。警備員の服が合ってないのか、服がヨレヨレだ。袖をまくっているし、ズボンも不格好に捲っている。いくら何でも世界的に有名なアイドルの警備員がしていい服装では無い。

 

「お前……警備員の人じゃないな。誰だ 」

 

 半ば確信的にそう言うと、男は震えた大声で答えた。

 

「ぼ、僕はアリアちゃんとソナタちゃんの運命の男だ! 」

 

「は……はぁ? 」

 

 的外れというか……訳わかんない事を言われて呆然としてしまい、思考が一瞬放棄してしまった。思考を取り戻すかのように頭を振り、男に対しての警戒心を強めた。

 

『この人! この人がアリアとソナタを襲ったんだよ! 』

 

「襲った……? 」

 

「な、何をごちゃごちゃ言ってるんだ!! 」

 

 しかもアイツ、精霊の事見えて無いのか? という事は……一般人か。まぁ一般人と言ってもストーカーなのだが。

 

 一応扉の向こうにいるレイを呼び出す合図を送り、レイも俺のアイコンタクトの意味を汲み取ったのか、霊体化のままどうどうと部屋に入った。

 

 その間、男とアリアさんとソナタさんの目線をじっと見たが、3人ともレイに反応する事は無かった。

 

『花衣さん、あの人達……精霊が見えてないようですね 』

 

「あぁ、だったらレイだけで十分だ。……だけど、危害は加えるなよ。一応ホーネットビットを一つくれ 」

 

『了解です 』

 

 男に見えないように背中越しでホーネットビットを一つ受け取った。これだけでも十分行けるはずだ。

 

「さっきからお前は何をしてるんだっ!! 僕とミスメロの邪魔をする奴は許さないッ! 」

 

 男は激情して近くにあった化粧道具等を投げつけ、俺の視界を奪おうとした。

 

 投げつけられた物を避けると、男は走って俺の前に近づき、最大電圧のスタンガンを押し付けようとしていた。だが、男の動きがまるでスローモーションのように遅く見え、右手を突き出して押し付けようとしていたスタンガンを俺は軽く左に足を動かすだけで避けられた。

 

 避けられないと思っていたのか、男は前のめりになって情けなく倒れ、男はたまらずスタンガンを手放し、俺はそのままアリアさんとソナタさんの所に駆け寄り、2人の前に立った。

 

(こいつ……ほとんど運動してないのか? )

 

 体幹の弱さに動きの遅さ、そして服のよれ具合からの筋肉の少なさが目立っており、俺だけでも押さえつけられそうだ。

 

「こ、こいつ……! 」

 

 手放したスタンガンを拾おうとした男はスタンガンに手を伸ばしたが、さっきあったスタンガンはそこには無かった。

 

「す、スタンガンが無いっ?? どこだ!? 」

 

 必死にスタンガンを探す男だが、スタンガンならもう近くにいるレイが回収していた。俺が攻撃を避け、男が倒れてスタンガンを手放した直後にレイがスタンガンを回収し、その場で破壊したからだ。

 

 これで武器が無くなったと思ったが、男は立ち上がると今度はポケットからナイフを取り出してきた。

 

「スタンガンの次はナイフか。アイドルを前にして出す物じゃ無いぞ 」

 

「黙れ! お前……ミスメロの何なんだ! 」

 

「何って……言われても 」

 

 知り合いとかでも無ければそれ以上でも無い。言うなれば、ミスメロの事を知るただの一般人だ。

 

 だがそれを言ってもこの男には聞く耳を持たず、一方的な会話だけが続いた。

 

「お前まさか……アリアちゃんとソナタちゃんの恋人かか!? 」

 

「は? 何でそうなる! 」

 

「黙れ! 」

 

 男はナイフを振りましながら楽屋の中を暴れ回り、俺はナイフの距離に入らないように距離をとる。ナイフに掠った壁は傷つけられ、衣装は斬られた。

 

 素人が振っただけでもあの切れ味……本気でやられたら俺の腕がどうなるか分かったもんじゃ無い。

 

 命の危機を感じた俺は男から目を離さずに集中すると、男の背後に何か小さな影が浮かび上がって来るようにも見えた。

 

(何だ……あれ? )

 

 男の影は不気味に蠢くだけで何もせず、逆に恐怖を煽れてしまう。だけどあの影……どこかで見た事あるような……

 

「ゆ、許せない……僕はあの二人が有名になる前にずっと応援していたんだ……それがお前みたいなぽっと出の奴が一緒にいていい訳が無いんだァ!! 」

 

 男の影はますます大きくなっており、男は影に取り憑かれるように纏い、男は叫び声を上げてナイフを両手に持って全速力で俺に向かって走っていく。

 

 この場で交わしたら後ろにいるアリアさんとソナタさんに危険が生じてしまうかもしれない。

 

 それにこの男自身も何かおかしい。影の蠢きも色も闇深くなっていった。

 

『花衣さんっ! 』

 

 レイも俺を守る為ならこの男をどうなろうと構わない様な体勢だ。そうなる前にレイから貰ったホーネットビットを起動し、そのままビットを男の顎に向けて突撃させる。

 

 目にも止まらない速さでホーネットビットは男の顎に直撃し、機械のアッパーをくらった男は体を仰け反らせ、あまりの威力で足を地面から浮かせ、そのまま受け身もせずに地面に倒れた。

 

(やばっ! やりすぎたか……? )

 

 倒れた男をそっと覗くと、男は白目を向いて倒れており、眼鏡もボロボロに壊れていた。脈に触れると脈の鼓動はしており、何とか生きているようだった。

 

(それにしても、さっきの影は一体…… )

 

 男の背中を見る為に体を起き上がらせると、男の背中からカードが飛び出すように出てきた。

 

(これは……デュエルモンスターズのカードか? )

 

 _触れちゃダメ!

 

「えっ……? 」

 

 頭の中に女性の声が響くと同時にカードに触れようとすると、まるでカードに否定されるように電流が走り、痛みでカードには触れられずいた。

 

 するとカードはまるで燃やされた様に散り散りとなってしまい、カードはこの場から消えてしまった。

 

「今の声って……そうだ、2人は! 」

 

 アリアさんとソナタさんは……どうやら無事のようだ。

 

「ふぅ、どうやら全員無事なようですね。……おい、サラッとトドメを刺そうとするな 」

 

 男に向けて閃刀を突き刺そうとしているレイをとめ、レイは理解出来ないと訴える様な目を向けた。

 

『な、何でですか!? 花衣さんに危害を加えるゴミクズ危険因子はこの世からひとつ残らず取り除きます! 』

 

「俺は何とも無いから大丈夫だ 」

 

 レイは少し不満気に閃刀を収め、俺はアリアさんとソナタさんの口を塞いでいた布を取り払った。

 

「大丈夫ですか2人t 」

 

「うわぁぁぁん! 怖かったよぉぉ! 」

 

 男が倒れたのと口元を塞いでいた布が取り払わられて安心感が溢れ出すかのようにアリアさんが嬉し涙なのか、それとも恐怖での涙かは定かでは無い涙を流しながら俺に飛びつき、そのままアリアさんは前のめりになって俺を押し倒した。

 

「あ、アリアさん!? 」

 

「助けてくれて本当にありがとう〜! いきなり部屋の前を警備してくれた人が中に入って、そこからステージ衣装を脱がされて……本当に……怖かった 」

 

 さっきの様な陽気を帯びた声色ではなく震えた声で俺にすがりついた。

 

「私からもありがとう。声も塞がれて、誰の助けも呼べない状況だったのに、よく助けてくれたね。まるで私達の心の叫びが聞こえたのよう……」

 

「え……えと、それは…… 」

 

 俺はアリアさんのそばに居る小さな精霊に目を向けた。もしこの精霊が俺の事を見つけてくれなければ、2人を助ける事も出来なかっただろう。

 

 小さな精霊はお辞儀をすると姿を消すと、その先でレイがとんでもない顔をしていた。

 

『花衣さん……確かに状況が状況だったので仕方がありませんが。そのような状態を続いていたらどうにかなってしまいそうです 』

 

「へ? 」

 

 拳を握りしめながら怒りを抑えたレイがアリアさんに指を指した。

 

 もう一度アリアさんとソナタさんに目を向けると、俺を抱いているアリアさんも、ソナタさんも男にステージ衣装を脱がされたと言ったから、着ているのは勿論……下着だった。

 

 アリアさんは薄桃色の明るい下着に赤色のリボンが特徴な下着で、ソナタさんは黒のレースが際立つ下着を着ていた。

 

 男と戦った時には気にも止めてなかったけど、こうして見ると衣装の際どささながら体つきも良い。この光景を見た俺はいつか見た紫色の下着を着たヘレボラスの姿を思い出してして……いやいやいや、何考えるんだ俺は……! 

 

 そして俺はそんな下着姿のアリアさんに抱きつかれ、目と鼻の先には抱きつく力で潰れて下着からはみ出しそうな胸が迫り来る迫力だった。

 

「ちょ! アリアさん! 離れて下さいっ! 」

 

「そうね、アリア。早くしないと花衣君が恥ずかしさで蒸発しちゃうかも 」

 

「へ? ……あ。キャァァァァ!! ご、ごめんね花衣君! 」

 

 流石アイドル、叫び声の声量も大きくて思わず鼓膜が破れそうだ。アリアさんは俺から急いで離れて下着姿の自分の姿を隠すように腕を使って胸を隠しているが、その行動はあまりにも遅すぎる。

 

「そ、そんなに見ないで……? 」

 

「あ、す……すみません 」

 

 そして、その叫び声が大きいせいか楽屋の外にも叫び声が聞こえ、近くにいた警備員がドアを開けて楽屋へと来た。

 

「叫び声が聞こえましたが何かあ……ったのですか? 」

 

 警備員から見た光景はきっとこうだ。

 

 散らかった楽屋に倒れた警備員の服を着た男、そして下着姿のアリアさんとソナタさんに……それを見つめる俺。

 

 異様な光景に複数の警備員は唖然としておりつつも、意識を取り戻し、恐らくこの状況で最も不審者である俺に警備員さん達は目を向けさせた。

 

「ふ、不審者の確保ぉぉ!! 」

 

「ご、誤解だぁぁぁぁぁ! 」

 

 複数の警備員さん達に体を抑えつけられ、無実の証明をしようにも信じて貰えなかったので、アリアさんとソナタさんに何とか弁明してもらい、この場は何とか治められた。

 

 そして、数時間が経った頃……

 

 何とか誤解を解いてくれた俺は打ち合わせに使う楽屋に何とか到着し、疲れで体をテーブルに持たれかけた。

 

「ふぅ……散々な目にあった…… 」

 

「なーに言ってんだお前。アリアとソナタの下着姿を見たんだろ〜!? 誰にも見せてないトップシークレットの姿をお前は脳内フォルダに記憶したんだろぉ? 」

 

『花衣様? それは本当ですか? もしそれが本当なら今すぐピックアップ・デュエルで勝ち取った権利を使って私の体を余すことなく味あわせて貴方の頭の中を私だけにしますよ? 』

 

「してない! してないから!! 」

 

 焔とティアドロップに対して激しく否定した。そんな焔は俺を笑い、ティアドロップは光を失った目でじっと見てきた。

 

(うぐっ……視線が痛い )

 

 事故だったから許して欲しいと言えば、ティアドロップや皆は許してくれると思うが……

 

『……そういえば、花衣様はヘレボラスの下着姿も見ましたよね? どうでしたか? 』

 

「な、何で今その事を……? 」

 

『ティアドロップさん、その……その話題はやめてください。私もその……事故だったので 』

 

『……まぁ、今回ばかりは仕方ない事ですが。もし頭の中にまだあの女性達のことを残していたら……覚悟して下さいね? 』

 

 今の状態では喋る事が出来ない俺はティアドロップの言う事に頷く事しか出来ず、ティアドロップは笑顔で姿を消し、ヘレボラスも一礼して姿を消した。

 

「ん? 花衣、汗が凄いぞ。大丈夫か? 」

 

「あ、あぁ! 大丈夫大丈夫! それよりも……アリアさんとソナタさん、大丈夫でしたか? 」

 

「それについては大丈夫です。ですが……このままデュエルライブをやるかどうかは分かりません 」

 

 マネージャーさんが少し難しい顔をしながら俺達の元に辿り着き、事の末尾を聞いた。

 

「どうやらアリアとソナタを襲ったのは、メジャーデビューする前のファンだったようです。私も顔を覚えていましたが、彼はあんな事をするなんて…… 」

 

 マネージャーさんの話を聞いた感じ、襲った男はミスメロが売れる前にファンとして活動していた1人であり、アリアさんとソナタさんも顔は覚えていたようだ。

 

 腰も低くて礼儀が良く、握手会等のルールもキチンと守っていた様だったらしい。ここまで聞くと信じられないな……俺が見たのと全くの別人レベルだ。

 

「まぁ、古参ファンが他人に危害を及ぼしたり、脅迫まがいな事をするのはある事です。今回の件はかなり特殊ですが…… 」

 

「そうだな。警備員1人を気絶させて警備員に成り代わる程の奴だ。それを花衣、お前は未然に防いたんだ。……何でわかったんだ? 」

 

「あ……えーとそれは…… 」

 

 精霊が教えてくれた。

 

 なんて言えるわけ無い。だけど上手い言い訳も思いつかない。こういうパターンは何回かあったはずなのに何で上手い言い訳が浮かび上がって来ないんだ俺……

 

「……まぁ、事件は防いだからな。過程はどうあれ、解決したようでなによりだ 」

 

 空はこれ以上何も言わずにいてくれて俺はホッと安堵の息を漏らした。

 

「にしてもよぉ、どうすんだよ。3対3のデュエルは? やんのか? やれねぇのか? 」

 

「勿論やるよ。皆が私達の事待ってるから 」

 

「うん、皆を最高の気分にする為にね 」

 

 楽屋の扉からアリアさんとソナタさんがステージ衣装とは違う衣装を身にまとい、ここに来てくれた。

 

 どちらもライブの時にやったドレスが目立つ衣装では無く、今度はコートを羽織っている様なクール寄りの衣装だった。

 

 アリアさんは赤をベースに、ソナタさんを青をベースをしており、露出も少なく、ストリート系の雰囲気で2人のイメージとは少し違う筈なのに2人は見事目新しい服装を着こなしてイメージを損なわない様にしていた。

 

「アリア、ソナタ! 本当に良いのかしら? 」

 

「当然! 皆が待ってるから! たとえたまたま来ている人がほとんどでも、私達のライブを待っている人がいるなら、全力でなんでもやるよ 」

 

「そういうこと。何かあればそこの3人にガード頼むし 」

 

 さりげなくソナタさんがとんでもない事言ってるような気がしたが、2人の心情は問題ないようだ。マネージャーも2人の心意気に納得し、ライブデュエルはこのまま続行という形を取ってくれた。

 

「分かったわ。プロデューサーにもそう伝えます。これで後はあの人が来れば良いのですが 」

 

「そういえば1人は有名な配信者が来るって言いましたね。一体誰が…… 」

 

 そんな話をすると、いきなり扉が勢いよ開けられた。噂をすると何とやらとはこの事か。

 

 扉の奥は黒いドレスに赤色の装飾を添えられ、ドレスのスカート部分の内側には黒い羽根がびっしりとつけられており、その内には鉄格子の様な物もあった。

 

 更に黒いケープにも紅い色で羽模様にある物を巻き付け、左目に眼帯を付けていた。俗に言う厨二病というやつ全開だった。

 

 そして驚くべきなのは……その顔と言動が、俺達が知る人物とよく似ている……というか、その本人だったという事だ。

 

「フハハハハ!! 待たせたな! 少し天からの恵みの黄金の果実を糧にした美食(物凄く美味しいアップルパイ)この灼熱の業火を凍てつく程のエデン(物凄く美味しいアイスクリーム)が合わさった下界の料理を堪能してな! 少し遅れてしま……って 」

 

 相変わらず訳の分からない事と素とは全く別ベクトルのテンションを見た俺と焔、そして一番空が衝撃を受け、もはや無口で遅れてきた人物を細目で見た。

 

 いや……うん、何だろうな。このテンションに会うの久しぶりで反応しづらい。

 

「紹介します。彼女は【‪‪✝︎‪✝︎黒翼 トバリ‪✝︎‪✝︎】という方で登録者は300万人越えという人気配信者であり…… 」

 

「し……失礼しましたぁぁぁぁぁぁ!! 」

 

 トバリと呼ばれた彼女は楽屋から一目散に逃げてしまい、俺達は呆然としてしまい、木魚が3回叩けるような間を置いてようやく意識を元に戻させた。

 

「ちょ……トバリさん!? 」

 

「えーと……あれって、雀だよな? 」

 

「間違いなくな 」

 

 やはりあのテンションと顔は俺達が知る【河原雀】本人に違いないだろう。顔見知りだからこそ、俺たちの顔を見てはそのまま一目散に逃げたに違いないだろう。

 

「……追いかけるか? 」

 

「捕まらないと話が進まないだろうからな。マネージャーさん、俺達がアイツを捕まえます。花衣、焔、行くぞ 」

 

「うっしゃ! 鳥狩りだな! 」

 

 空の後を追いかけるように雀を捕まえる為外に出たが、案外呆気なく雀は捕まえられた。

 

 どうやら運動はしていないらしく、単純な足の速さと衣装の重さによって雀の足も遅くなっており、簡単に捕まえ、そのまま打ち合わせ部屋へと連行した。

 

「くっ……このまま我を断罪する気か。だがしかし、いくらこの身を裁こうとも我の魂は朽ちず、やがて漆黒と共に蘇るのだ!」

 

「訳わかんない事を言うな 」

 

「そういうキャラ付けなの! 空気読んでよ!! もう! 」

 

「あ、やっぱり雀だ 」

 

 空のツッコミに思わず素の態度に戻ってしまった雀はギクリと肩を震わせ、そっと俺達に目を配らせた。

 

「す、雀とはなんの事だ? 我の名前はトバリ。この世を漆黒に染め上げる為に生まれた黒き翼の天使であり、お前らとはあった事は……はい、あります。私は河原雀です…… 」

 

(諦めたぁぁぁ!! )

 

 思わず心の中でツッコンでしまったわ! メンタル結構弱いな! もう少し粘れよ! って思ってしまったが、流石にこんな目に合えば白状したくなるよな。

 

 実際、雀はもう楽にしてくれと言わんばかりに顔と耳を真っ赤にさせ、両手でその顔を隠していた。

 

「にしてもすげぇな。トバリって配信者は俺でも知ってる名前だけど、こいつが雀とは思わなかったわ 」

 

「衣装や化粧を少ししてるからだろうな

 」

 

「うぅ、この事は内密に〜! 」

 

「心配するな。個人情報を横流しすることはしない。……因みに聞くが、花音と霊香はこの事を知ってるのか? 」

 

「し、知らない。霊香は多分大丈夫だけど、花音とか配信コメで絶対に私ってバラしそうだし 」

 

「「「あぁ…… 」」」

 

 確かに花音はわざとじゃ無くても思わず本名とか身内しか分からない事しか言ってきたり、高額スパチャとかバンバンしてきそうだもんなぁ……。そんな光景が一同で容易に浮かべることが出来るのは中々だと思う。

 

 そんなこんなで無事打ち合わせ部屋に連れ帰り、ようやっとライブデュエルについて話し合うことが出来た。

 

「これで全員ですね。アリアが貴方達を連れて来なければスタッフとデュエルする流れだったのですが、それだと見栄えが少しと思いましたが、これで問題は無くなりましたね 」

 

「そういえば3対3って言いましたけど、チームは俺達とそっち側で良いんですか? 」

 

「はい。花衣君、焔君、空君のチームとアリア、ソナタ、トバリさんのチームでの3対3でのデュエルであり、デュエルディスクを使用してのデュエルとなります 」

 

 するとマネージャーさんは奥のカゴからデュエルディスクを6つ持ってきてくれた。ピックアップデュエルの様にDバイザーは無く、どちらかと言えばロマンス・タッグ・デュエルに使っていたタイプと同じだった。

 

「お、久しぶりだなこれ 」

 

「少し触った感じ改良がされてるな。更に実用的になった……という訳か 」

 

「ところで俺らってどうすんだ? なんか良い感じに負ければいいのか? 」

 

「いえ、全力で戦って下さい。その際、勝っても負けてもどちらでも良いです 」

 

 これはまた意外な答えが帰ってきて驚いた。

 

 見栄えを意識するからこっちが負ける方が良いのに、わざわざ全力で勝負しろと言っている辺り、何かあるのだろうか? 

 

「下手に接待して観客達に悟られるより、自然体で戦った方が好感が持ちやすいですからね。それに、アリアもソナタも中々の腕ですよ? 」

 

「そうなのか? 空 」

 

「思い出したくない 」

 

 そんなに嫌だったのかロマンス・タッグデュエルの時のデュエルは……まぁとにかく、アリアさんとソナタさんも自信満々だし、雀……じゃない、トバリの実力も中々だ。

 

「そんじゃ、遠慮なく行かせて貰うぜ。手加減無しな! 」

 

「望む所! 」

 

 焔とアリアさんはなかなかやる気満々だ。これは俺も気を引き締め無いと負けてしまうかもな……

 

「ところで、3対3って言ってましたけど。それって団体戦みたいに大将に勝てばチームの勝率て感じですか? 」

 

「いえ、同時に戦ってもらいます。正真正銘、3対3でやってもらいます 」

 

「同時に……? 」

 

 俺を始め焔と空も困惑しており、マネージャーさんは近くにあったホワイトボードに図式を書きながら説明した。

 

「貴方達には、ロマンス・タッグデュエルのルールを基に3対3のデュエルをして貰います。その際、こちら側から特殊ルールを設けます 」

 

「特殊ルール? 」

 

「はい。メインモンスターゾーンと魔法・罠ゾーンは3つのみで戦って貰います。図に書くと……こんな感じですね 」

 

 そう言ってマネージャーさんが書いた図を見ると、なかなか異色なデュエルフィールドだった。

 

 

 プレイヤー1 プレイヤー2 プレイヤー3

 LP:4000   LP:4000   LP:4000

 手札:4枚   手札:4枚  手札:4枚

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 プレイヤー4 プレイヤー5 プレイヤー6

 LP:4000   LP:4000   LP:4000

 手札:4枚   手札:4枚  手札:4枚

 

 

「最初はこのような感じですね 」

 

「この形式って……」

 

 記憶が確かなら名前はスピードデュエル。あんまり流行らなかった印象のルールだけど、VRAINSでは通常のルールであるマスタールールに加え、この方法も主流となっていた。あの時はスキルとかいうものがあったけど……この場合はどうなるのか? いや、それよりも……

 

「なんだこれ!? 盤面少なすぎだろ!」

 

「しかもライフと手札が少なくなっているな」

 

「これトリックスター強すぎだろ……」

 

 確かに8000のライフさえも削り取るトリックスターに置いてこのルールは追い風の様な物だ。

 

 その他にも1巡目は攻撃できない、ドローできない。等様々なルールを言われたが、基本的な事はロマンス・タッグデュエルとほぼ変わらなかった。

 

「以上がライブデュエルのルールとなります。質問は……無さそうですね。では、ライブデュエルは1時間後から始まりますので、その間は自由に過ごして下さい」

 

「うっしゃ! じゃあ俺はまた食べ歩きしてくるわ。お前たちも来いよ」

 

「どうせ無理やり連れていくだろ。まぁいいだろう」

 

「あ、私も行きたーい。ソナタとトバリちゃんも行こ〜」

 

「それは良いけど、ちゃんと変装はする事よ」

 

「ふふ、下界の料理を堪能するのもまた一興……」

 

「俺も行こ……ん?」

 

 皆について行こうとしたが、俺は端目で部屋の隅にいるある一つの存在に気づいてしまい、どうしてもそれが気がかりになった。

 

 その存在とはアリアさんとソナタさんを助けるために俺を見つけた精霊、ドドレミコード・キューティアだった。

 

 キューティアは俺と目が合うと慌てながらこったに来てと言うようなハンドサインを送り、そのまま楽屋の外へとすり抜けて行った。

 

「ごめん焔、先行っててくれ」

 

「は? またかよ!?」

 

 キューティアを追いかけて焔達とは反対方向の道に行き、キューティアが人気の少ない通路であり、そこで待っていたのはキューティアだけではなかった。

 

 白金の長髪にポニーテールの様な髪型をなびかせ、青いドレスに青い瞳を持った人……いや、モンスター、間違いない【トリックスター・ホーリー・エンジェル】だった。

 

「……何の用だ?」

 

『ああごめんなさい。決して脅しとかそういうのではありません、ただ、アリアとソナタを助けてくれた事にこうして感謝したいだけなのです』

 

『そ、そうです! あの、助けてくれてありがとうございます!』

 

『ありがとう!』

 

 キューティアと同じ様な姿をした妖精も礼儀良く頭を下げて俺にお礼を言った。

 

「いや、良いさ。それよりも2人はアリアさんとソナタさんの精霊……って事で良いんだよな。何でわざわざ俺に助けを求めたんだ? トリックスターなら十分対抗出来そうな気が……」

 

『……出来なかったのです。アリア達を襲った男からは禍々しい何かに包まれ、私達の攻撃を遮ったのです』

 

「なんだって……?」

 

 確かにあの男からは何か異様な雰囲気が感じ、実際に見て取れたが、攻撃が弾かれる様な事はなかった。

 

「どういう事だ……?」

 

「それは貴方が本当の貴方自身に近づいてるからですよ」

 

 小さな子供の声が聞こえ、後ろに振り向くと背の低い黒コートの人物が俺の前に現れた。

 

 あの服装……間違いない。ポルーションやウェルシーと同じ衣装だった。

 

「その黒コート……ポルーションとウェルシーの仲間だな」

 

「ウェルシー……? あの人と会うなんて災難ですね。僕達の中で一番強いのに、よく生きてこれましたね」

 

 すると黒コートの男はフードをぬぐい去ると、そこには少年の姿が目に映った。髪も肌も全体的に色素が薄く、いわゆるアルビノと言われるものであり、紫色の瞳は死んだような目でじっと俺を見ていた。

 

「自己紹介が遅れました。僕は【ジェネティア】。今は貴方の敵です」

 

 敵と宣言した少年は死んだ目のままそう言った。その目も、声もまるで生きるのを諦めたかのような悲しく、渇いた声だった。

 

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