六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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迫り来る闇

 

アザレア。それは何枚もの花びらが重なっている美しい花の名前であり、花言葉は色によって違うが、共通しているものがある。その花言葉の意味は、『愛の喜び』。

 

カメリア。またの名を椿という花の名前であり、冬でも美しい花を咲かせる事から、憧れの象徴、または決して枯れない永遠の愛の象徴ともされている。

そんなカメリアの花言葉は『愛慕』。深く慕い、愛するという言葉だ。

 

そんな花の名前を持って生まれた閃刀姫アザレアと、閃刀姫カメリアが今、俺の前に現れた。

 

「久しぶりだね、カイム」

 

大剣を持った閃刀姫、カメリアがそう言ったが、反応に困る。名前がパッと頭に思い浮かんでつい呼んでしまったから、向こうはカメリアの事を覚えてると思っているが、俺はカメリア自身の事については何も覚えておらず気まずさで黙りこみ、ついつい顔を背けた。

 

「……そっか、今は花衣だったね。レイから話は聞いてるよ」

 

「うぅ……ん?カメリア?」

 

「レイ、久しぶり」

 

目を覚ましたレイはカメリアと目が合った。

 

「……カメリアっ!どうしてこっちに?怪我はもう大丈夫なの?」

 

「アーカス達のおかげでもう大丈夫。ここからは、私も一緒に戦うから」

 

俺には分からないが……どうやら、知り合いみたいだ。と言っても、閃刀姫同士だから知り合いに違いないが。感動の再開で微笑ましい限りであった。しばらくするとロゼの方も無事に目を覚まし、そのままアザレアと目を合わせた。

 

「っ……アザレア?いよいよ私もどうにかしたのかしら」

 

「だったらそのまま寝てても良い。マスターの隣はボクだけで十分だ」

 

「貴方も冗談を言うようになったわね……だけど、礼は言っておくから」

 

「ふん……」

 

こっちはこっちで仲が少し悪そうだ。一体過去に何があったんだよ……

 

「おや、閃刀姫が4人ですか。これは少し手が焼けそうですね」

 

「貴方が花衣に害を加える標的ね?あの目障りな鳥も貴方の道具?」

 

「いえいえ、むしろあれは僕達の敵ですよ。貴方達2人が攻撃をしてくれたおかげで助かりましたよ」

 

2人が切りつけたイグニッションは、羽をもがれて力を失ったのか、そのまま光となって消えてしまった。

 

力尽きたというより……体制を整える為に消えたと言ってもいいだろう。また襲って来るとは考えたくない。

 

「どういう事だ?まぁいい、ボクのマスターを傷つける奴は、どんな物であれボクの敵である事に変わりない」

 

アザレアが先行してジェネリアに襲いかかり、閃刀を振り下ろそうとした直後、アザレアと右側から何か黒い靄の様な物がいきなり表れた。

 

何も無い所から突然表れた靄にアザレアは反応こそはし、すかさず無理矢理体をバク転させて後退した。

 

「おや、流石閃刀姫と言った所ですか。随分な身のこなしですね」

 

「伏兵か、随分と小賢しい手を使うな」

 

「僕は見ての通り子供なんです。戦闘は苦手ですから、こうして誰かの助けは必要なんですよ。それに、この伏兵は花衣さんとは面識がある人でもあるんですよ?」

 

「何だって……?」

 

俺と面識があるヤツって……どういう事だ?カイリやカイムの時に出会った奴なのかと頭に思い浮かべながら、黒い靄から出てくる人影を目撃すると、それはジェネリアの言う通り、俺自身が合った事があるやつだった。

 

「お、お前は……!」

 

黒いコートには金色のラインが入っており、指や耳には黄金の指輪やアクセサリーを付けてあるあの風貌と、忘れられないあの顔……あれは間違いなく、見下だった。

 

「久しぶりだな、桜雪花衣!」

 

「見下……!」

 

見たくも無かったアイツの顔を見ると体が強ばり、全身がアイツを拒絶しているようでもあった。隣にいるレイとロゼは俺以上に奴に対して嫌悪と警戒を強めており、殺気すらも出していた。

 

「……レイ?あの人、何者なの?」

 

カメリアが殺気が少し滲み出ているレイに恐る恐る質問すると、レイはカメリアに応えた。

 

「あの人は花衣さんのデッキを盗んだ挙句、命さえも奪いかけた最低な男です。ですが、まさかあのウェルシーの仲間だとは思いませんでしたけど」

 

「ん?それは少し違いますね。彼は元々、普通の人でしたよ」

 

「何っ!?」

 

「彼は自分の意思で僕たちの仲間になったのですよ」

 

「……どういうことだ?」

 

「端的に言えば、僕達は皆、元々は普通の人間かモンスターだったのですよ。僕も元々は普通の……いや、まぁ訳ありの人間だったのですよ」

 

次から次へと想像した事も無い事実が話され、何も言えずに困惑していた。  

 

つまり、ポルーションも元々はああいう存在では無かったという事か?普通の人間か、あるいはモンスターだったか……少なくとも、元々ウェルシーの仲間では無い様だ。

 

「まぁ、ウェルシーさんだけは違うようですが。この際どうでもいいです。さて、花衣さん。僕達は元々は普通の存在。この意味が分かりますか?」

 

「……?何が言いたいんだ」

 

「僕達は、その気になれば他人をこの見下さんのようにさせることも可能なのです。ここまで言えば分かりますよね?」

 

不敵な笑みを零すことも無く、ただ無表情を貫いたジェネリアは見下が出てきた靄と同じ黒い靄を出現させた。

 

「まさかっ……!お前焔達の所に!」

 

「ウェルシーさんがどうしても誘って欲しい人がいるとの事でしてね。これで失礼しますよ。それじゃ、後は頼みますよ」

 

「待てっ!」

 

「おっと、させないぞ」

 

ジェネリアを追いかけようとすると、見下が道を塞ぐように前に立ちはだかった。

 

「どけ!」

 

「いいや、それに僕は君を倒して今度こそ花音さんの目を覚ます使命があるのさ」

 

「今はそんなことどうでもいいんだよっ!いいから退けっ!」

 

俺の中のどす黒い何かが溢れそうだ。ここで見下をどうにかしてでも構わないと俺の心が叫んでいた。体から黒いオーラが滲み出し、目に映る見下が憎い。

 

こいつは俺のデッキを奪った。

 

俺のティアドロップも奪った。

 

俺の命さえも奪いかけた。

 

そして今は俺の邪魔をして友さえも奪おうとしている。

 

「……生かしておく訳にはいかない」

 

憎悪が溢れる。体の内側に流れる血が沸騰し、震えるこの手で切り刻みたいと叫んでいるようだ。

 

手を出そうとしたその時、胸の奥から声が聞こえた。

 

_ダメ!貴方が闇にのまれては行けない。落ち着いて周りを見て。

 

「またこの声っ……!うるさいぞっ!」

 

胸の痛みが全身を襲い、思うように動けない。まるで見えない糸にでも絡まれているかのようだった。動こうと思えば激痛が体に走り、それでも尚見下に対しての怒りが力となり、動きにくい体を無理やり動かす。

 

_ソウだ、やレ。オノれのヤミを、ジブんノチからを思い出セ。

 

さっきとは違う声が胸の奥から聞こえ出すと、溢れ出る闇が更に広がり、動きにくかった体が嘘のように軽い。これなら殺れると確信し、俺の中の何かが、爆発した。

 

「お前をこの場で消滅してやる見下ァァァァァァァ!!!!」

 

「……ほう、まさかこのタイミングでそれが出ますか」

 

獣の様に、喉が壊れるほどの叫びを上げ、俺の手足に闇が纏い、その闇は俺の体の一回りも二回りにもなった。

 

手足に纏った闇は鋭い爪となり、体に纏った闇は強靭な鎧のように強固となり、更には大空に飛び立つ程の翼と敵を穿つ槍のような尻尾さえも手に入れた。

 

二本足で立ち、雄々しい翼を翻したその姿は正しく、黒龍そのものだった。

 

「グォォォォォォォ!!!」

 

「花衣……さん?」

 

微かに聞こえたレイの声が、もう聞こえなくなった。最早人の声では無い咆哮を上げた。

 

「ねぇ、レイ。あれって本当にカイムなの……?」

 

「あれがボクの知っているマスターとは思えない。どうなっているんだ、ロゼ」

 

「私にも分からない。でも、あれは確かにドラゴン。どうなっているの?」

 

最早理性という物は無かった。今頭の中にあるのは目の前にいる敵を倒すことのみだ。

 

「な、何なんだ……お前は……まるでそれは、今の僕が宿っているちかr」

 

かぎ爪となった手足で見下を切り裂こうと振り下ろしたが、見下は人間離れした軽やかな動きでジャンプし、俺の初撃をかわした。

 

だが、見下の表情は焦っていた。

 

「ぐっ……!何なんだお前は……!やはりお前は正真正銘の化け物だったなぁ!」

 

「だ……ま……レ!!」

 

空中で身動きが取れない見下に今度は先端が槍のように鋭利になっている尻尾を突き刺したが、見下は闇の靄をバリアのように全面に貼り、刺突とバリアは激突し、火花を散らせた。

 

だが、あまりにも弱すぎる。見下のバリアは数秒だけしか耐えきれず、脇腹に槍が貫き、そのまま尻尾を鞭のようにしならせて奴を地面に叩きつけた。

 

地面は衝撃で抉れ、普通の人間なら四肢は勿論、骨の髄までタダでは済まない筈だが、見下の体は健在であり、何とか動ける状態になっていた。

 

「ガハッ……!貴様ぁぁ……!」

 

見下は立ち上がろうとしていたがもう遅い、奴の周りに無数の黒い棘を形成させ、奴の逃げ道は無い。

 

「キエろ」

 

鉤爪となった手を握り、黒い棘が見下に全て襲いかかる。最早叫び声さえ上げれず、これで見下を殺ったかと思ったが、手応えが無い。

 

棘の攻撃が終わり、残骸となったステージの煙が消えると、穴だらけになった地面には誰も居なかった。どこに行ったのか見渡すと、1箇所黒い小さなドーム状の物が現れ、そこに倒れた見下とジェネリアがいた。

 

「ふぅ、危ない所でしたね。まぁ、これで目的はほぼ達成したと言ってもいいでしょう」

 

「どういう……事……だっ。ガっ……!」

 

おかしい、急に力が入らない。まるで何かに押さえつけられている様な感じだ。体が苦しい、息が出来ない。龍の体となった姿は徐々に消え去り、体の大きさも手足と元に戻り、元の人間の状態に戻った。

 

「ですがまだ貴方の中には不純物がある。いや、『居る』と言った方が正しいでしょう。そして、それが今の姿に直結しているとなると……やはりあの竜族もあなたに関連しているのでしょうか」

 

「何を言ってるんだお前……!」

 

「花衣さん!しっかりして下さい……!」

 

体が言う事を聞いてくれず、立ち上がる事さえ困難になっていた。

レイに肩を預けて支えてくれなければまともに立てず、頭痛も酷くてろくに話す事さえもできなかった。

 

「いずれ分かる事ですよ。それじゃあ、私は貴方とお友達の所に行きましょうかね」

 

「待てっ……!」

 

焔達の所に行こうとするジェネリアは一瞬で消え去ってしまい、追いかけようにも体が言う事を聞いてくれない。

 

焔達の傍にはティアドロップ達がいる。……が、もしもの事があっては遅い。急いで行きたい所だがそれも不可能だ。

 

だったら方法は一つしかない。あいつらを信じる事だ。

 

今までずっとやってきた事だ。どんな時でも、俺は皆を信じてここまでやって来た。だから今も、皆を信じて目の前の事を乗り越えるだけだ。

 

最後の力を振り絞るように立ち上がり、見下と同じようによろめきながら立ち上がり、額流れた血を拭うと更に怒り出した。

 

「このっ……!僕の顔に傷をつけたな!!やはり貴様は許さない!」

 

「それはこっちのセリフ……だっ!訳の分からない奴らの仲間になって、今こうして多くの人が危険になっているのを何も感じないのか!」

 

「はっ、有象無象の輩がどうなろうと関係ない。この世界にいるべきなのは、僕のように選ばれた人種のみさ」

 

「なんて奴なの、こいつ本当に人間なの……?」

 

流石のカメリアも見下の倫理的な考えに嫌悪を感じ、アザレアも同じ様な態度を取っていた。

 

「確かにこれはマスターの障害だね。さっさと排除しよう」

 

「おっと、暴力はいけないな。アレを見ろ」

 

見下がステージの外に指を指し、顔を向けずに目線だけでステージの外を見ると、まだ避難しきって無い親子がいた。見下はその親子に向けて指を指し、指先に黒色のエネルギーを宿した光球を作り出した。

 

「お前……まさかっ!」

 

「これから言う事に従わなければこれを撃つ。どうだ、これで手も足も出ないだろう」

 

「っ……!」

 

「おいおい、僕は寛大に許してやると言ってるんだ。それに、お前とはデュエルをしろとのお願いをされてるんだ。ここは1つ、平和的にやろうじゃないか」

 

「デュエルだって……?」

 

「どうやらこの世界においてはデュエルというのはかなり重要な役割を持っているらしくてね」

 

「……?」

 

確かに世界がデュエル中心に変わってはいるが、重要な役割と言うのが気になる。一体に『何に』対しての重要なんだ……?

 

とにかく、このデュエルは受けざる負えない。

 

……だが、やはり逃げ遅れた人達が気になってしまう。万が一に見下が不意に攻撃をしようとするのを考えると、デュエルに集中出来ない。

 

「花衣、私が一般人を守る。その間に、このゲス野郎を何とかして」

 

「……!ありがとう、カメリア」

 

するとカメリアが自ら率先して一般人の援護を受け入れ、すかさず一般人の避難誘導までしてくれた。これなら集中して戦える。バックから閃刀姫のデッキを取り出し、これでデュエルの準備は整った。

 

今は六花達が焔達を守っている為、六花カードは使えない。その為今回使うのは閃刀姫だ。それに、結構強力なカードも入ってはいる。カードパワーだけなら、六花よりも高いだろう。

 

「マスター、ボクも使って欲しい。必ず役に立って見せる」

 

するとアザレアが自身のカードである【閃刀姫ーアザレア】というカードを俺に渡してくれた。

 

アザレアはリンク2の閃刀姫モンスターであり、これならラグナロクにも使えそうだ。既存のエクストラデッキから1枚カードを抜き、新しくアザレアを入れ、改めてデッキの完成だ。

 

「花衣さん、これを使って下さい」

 

レイから黒い閃刀の様なカラーリングをしたデュエルディスクを手渡された。

 

「これって、俺とレイが最初に戦った時に使ってたヤツか?」

 

「はい。これがあれば、ポルーションの時の様なデュエルにも対抗出来る筈です。……では、頑張りましょう。花衣さん!」

 

カメリア除く閃刀姫3人は実体化を解き、カードへと存在を移した。

 

「ありがとうレイ、アザレア。……さぁ、これでデュエルの準備は出来たぞ」

 

「だったら始めようか。楽しい楽しいデュエルをね」

 

見下が右手から黒色のオーラが纏ったデッキをどこからともなく現れさせ、デッキを空中に浮かせていた。

 

あのデッキにはポルーションの時と同じ様な物を感じる。恐らく、ポルーションの時のような専用デッキなのだろう。油断は出来ないし、負けるつもりも無い。

 

(無事でいてくれ、ティアドロップ……皆っ!)

 

燃え盛る瓦礫と化したステージの上で、俺と見下のデュエルは今始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 某室にて

 

「……なぁ、今花衣ってどうなってるんだろうな」

 

「あぁ、無事だと良いんだが……」

 

ステージから奥にある一番広い部屋にまで逃げた焔と空、そしてトバリは何とか無事であり、アリアとソナタは目が覚めないままでいた。目が覚めない2人には、霊体化しているクーリアとホーリーエンジェルが傍についており、2人の身を案じていた。

 

花衣の命令で焔達の護衛に当たっていた六花達も、花衣の安否を誰よりも案じていた。

 

「というか、何でステージ裏からここまでスタッフの1人も居ないんだよ」

 

「……ダメだ、連絡がつかない。というよりネットが使えない。どうなっているんだ……」

 

空が何回も携帯を再起動を試みたりしているが、携帯の電波は圏外を指しており、ネットの閲覧どころか携帯の電話さえ出来ない状態になっていた。

 

「ねぇねぇ、私達も今すぐ戻ろうよ。レイ達も確かに強いけど、あの大きな鳥さん相手に2人は危険だよ!」

 

「ストレナエの言う通りだと思います。ティアドロップ、どうされますか?」

 

ストレナエの意見にカンザシが賛成を示し、カンザシ以外も全ての六花達も首を縦に振っていた。

 

「そうですね、では私とヘレボラス、そしてエリカで行きましょう。あまり多く花衣様の所に行っては焔さん達が危険ですから」

 

焔達を守る力と、花衣の所に戻る戦力のバランスを考慮しての編成を提示すると、異論は無かった。……が、あまりにも唐突な事が起こり続けたせいで、焔は混乱を隠せず、思わずティアドロップを止めた。

 

「お、おいちょっと待ってくれよ!」

 

「……?どうされましたか?」

 

「お前ら、何者何だよ。いきなり花衣の事様付けとかしてるし、というかお前ら花衣の傍にいきなり出てきたよな!?」

 

「それよりもお前達はどうして俺たちの名前を知っている。……どこまで俺達の事を知っているんだ」

 

焔と空の疑惑は膨らみ続けていた。無理もない、いきなり友人の隣から人が現れ、魔法見たいな事が目の前に起こり続けたのだから。

 

今までの日常が全て破壊されたかのようなショックで焔も空も不安や混乱で頭が一杯になり、とにかく目の前のティアドロップ達が何者のなのか、それだけでも知ろうとしていた。

 

そうでなければ、不安に押し潰されそうだったから。

 

「貴方達が知る必要はありません」

 

「ふざけんなよ!俺は何も知らないままくたばるのは嫌だぜ!」

 

「知って貴方方がどうすると?」

 

「そんなの、花衣を助けに……」

 

「では貴方は命を落とす覚悟があるのですか?」

 

ティアドロップは氷の傘を取り出し、刃の様に焔の首筋の皮一枚がギリギリ触れるか触れないかの寸止めをした。

 

氷の傘は至る所が刃の様になっており、焔はそれを直に感じていた。

 

冷気から伝わるティアドロップの殺気に、焔は恐怖した。この女は本気で自分を殺ろうとしていると、冷たい氷の様に鋭く、花衣の為ならどんな事でもする覚悟を決めた目に焔は怯え、全身が震えていた。

 

空もその1人だった。首元に何もつけられていないのに、まるで自分もあの氷の傘に命を掴まれているような悪寒と恐怖で体が震え、思わず縋るようにトバリの手を握っていた。

 

「ちょっと、ティアドロップ何してるの!?その人は花衣君の友達……」

 

「待ってくださいスノードロップ。ここはティアドロップに任せましょう」

 

これを見たスノードロップはティアドロップの暴走を止めようとしたが、カンザシがそれを止めさせた。どうやらカンザシは、ティアドロップの意図を理解したようだが、スノードロップや他の者はそれを理解すること無く、ただこの場を傍観する事しか出来なかった。

 

「今花衣様が戦っている者達は、貴方方の命を躊躇いなく落とせる者たちばかりです。貴方にはありますか?花衣様の為……いえ、他人の為に自分の命を落とす覚悟が」

 

ティアドロップは真剣な眼差しを焔に向き、焔は何も言えなかった。むしろ何も言わずに腰を抜かし、そのまま情けなく尻もちをついてティアドロップに圧倒されていた。

 

「その程度で怯えるようなら何も言うつもりはありません。早々に花衣様と縁を切り、二度と花衣様と出会わないでください。そうすれば貴方はもうこんな目には……」

 

「残念ながらそうしても無駄ですよ。何故なら、もうその人達はもう巻き込まれているのですから」

 

「……そこ!」

 

ティアドロップは突如聞こえたジェネリアの声の位置に氷の弾丸を撃つと、位置は会っていたが全てジェネリアのバリアに防がれた。

 

「ほう、まさか当てるとは思いませんでしたよ。仮にもあの人の力を得たモンスターという事でしょうか?」

 

「……?それはともかく、どうして貴方がここにいるのですか」

 

「少しばかりその方に用がありましてね」

 

トバリが目を向けた先には……この騒動で怯えているトバリを指していた。

 

「わ、……私?」

 

「ええ。貴方です。単刀直入に言います。トバリさん、僕達の仲間になりませんか?」

 

「お前……!何を言って……」

 

空がジェネリアに突っかかろうとしたが、ジェネリアが衝撃波を空に向け、空は部屋にある椅子にぶつかりながら吹っ飛ばされてしまった。

 

「ガハッ……」

 

「空!!」

 

「目を背けないで下さい」

 

ジェネリアはゆっくりと手を差し伸べると、手の上に闇が浮かび、そこから闇のオーラを纏ったデッキをトバリに見せた。

 

「これを手に取れば貴方は望んだこと、望む物が手に入ります。さぁ、貴方の心の闇に従ってこのカードを手に取ってください」

 

「私の……望んだ事……?」

 

「そうですよ。貴方が望んだ物ならなんでも、何なら今すぐにでも叶えられますよ」

 

「望んだ物が叶えられる……?」

 

「耳を傾けないで下さいっ!」

 

カンザシが氷の短刀をジェネリアに向けて投げつけるが、ジェネリアのバリアは強固で他の皆が攻撃してもビクともしなかった。

 

「無駄ですよ。さて、どうします?僕も早くここから立ち去りたいのですが」

 

「望んだ事……なりたい私に……」

 

その言葉が雀にとってどれほど魅力的だったのだろうか、雀はゆっくりとジェネリアが持っているカードに手を差し伸べた……

 

 

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