六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
時系列的には、本編の中の空白の出来事と言った感じです。(例えば、夏休みの前の話や、ピックアップデュエルが始まる前等)ですので、本編が覚えてない!とかがあっても楽しめますので安心してください!
さて、ここでもう一つ。この小説の裏話的なのを書いていこうと思います。
主に実はこのキャラこんな事が……!とか、何の変哲もないお話です。これも本編とは関係ないので、こちらも是非お楽しみください!
入れ替わった花と戦士
決闘者たるもの、いつもデッキ作りには悩む物だ。このカードてこのカードを組み合わされば面白いコンボが思いつき、しかしそれではこのカードが使えない事態が起こるのは日常茶飯事だ。
このカードを入れるか入れないかで数分ぐらい悩むし、ある決闘者はなんとカード1枚入れるかで日を跨ぐという者だっている。……まぁ、それは物語の人物だが、もし存在したらきっとそうするのだろうと笑う。
その人程では無いが、俺も1枚のカードを入れるのに大いに悩んでいた。手札事故や、特定の状況下では使えないが、使える時のリターンが大きい等、様々な事が頭の中でごちゃついた。
自分の部屋のテーブルにカードとデッキを広げ、あれこれ悩んでいたが、それよりも悩んでいる事があった。
それはと言うと……
「良いですか? 私は花衣様のエースなのです。なので次のデュエルには私が出るべきです」
「何を言ってるんですか? 花衣さんに勝利をもたらすのは私です。貴方達如きの力で勝てる訳無いですよ」
「貴方はそんな私に負けたのですよ?」
「それは花衣さんの力があってこそですよね?」
「ならここで白黒ハッキリ付けますか?」
「望む所ですよ。どっちが花衣さんに相応しいか今ここで決着をつけましょう!」
この仲の悪さだ。どっちも自分の意思は曲げないし、俺の事になるといつもこうなる。
止めようとしても時は既に遅く、2人は小競り合いを始めた。服を引っ張っては両手を掴みあって押し合いを始めた。とりあえずここが俺の部屋という事を忘れないで欲しい。
(もう少し仲良くして欲しいんだけどなぁ……互いの事を知れたら少しは仲良くなれるのかな)
例えば……互いが入れ替わるとか。相手の心が読めたりすれば、尊重し合う事が出来るのだろうか。ま、そんな事はあまり無いと思うんだけどな。
そんな事を考えたその時、一枚のカードを机のから落とし、拾おうとするとそのカードである『心変わり』が白く光出した。
「う……うわぁぁぁぁぁ!!」
カードの異変に2人も気づくと動きが止まり、光はこの部屋を覆うほどにまで大きくなり、俺たちを包み込んだ。
そして数秒後、光が収まった。そっと目を開き、体を見るとどこにも異常は無い。どこか痛いとか、体がだるいとかは無かった。
「花衣様!? 大丈夫ですか!」
「怪我は無いですか!?」
ティアドロップとレイも俺に異変が無いか近づき、俺は大丈夫だと告げると、ホッと安心した。
「2人も大丈夫か?」
俺はティアドロップとレイに目を向け、2人の異変を尋ねた。
「私の方は大丈夫ですよ。……ん?」
「私の方も……んん?」
2人は何故か目を見合わせると、2人は互いの体をじっくりと見つめ、自分の手で顔や手に触れ、2人は有り得ないものを見ているかのような目を浮かばせ、冷や汗が大量に出していた。
「どうしたんだ2人とも? どこか痛むのか?」
そんな時、レイが最初に声をかけた。
「か、花衣『様』! 大変です!」
「……ん? なんか喋り方が違うような」
俺の事を様付けで呼ぶのはティアドロップだけだ。だが、俺は確かにレイの声を聞き、レイと話をしたつもりだが……今度はティアドロップの方が声をかけた。
「か、花衣『さん』! 私達……私とティアドロップが……」
「「入れ替わってます!!」」
「え? ……えぇぇぇぇぇ!?」
頭の中でぼんやりと浮かんでいた考えが、今まさに現実になってしまった。
あれから数分後、ようやく事態を呑み込んだ俺達は落ち着きを取り戻しつつあり、状況を共有する為に六花と閃刀姫達を集め、こうなった状況を知らせた。
やはり皆信じられないような顔をしているが、俺だって信じられない。だが事実だ。
試しに2人には得意な事をやって貰えると、やはりそれぞれのできる事が全くの逆になっており、皆はこの状況を受け入れるしか無かった。
「にわかには信じがたいですね……ティアドロップとレイの体……と言うより、精神でしょうか? 入れ替わるだなんて」
「うぅ……こんなの有り得ませんよ」
「まぁまぁ元気だしてよティアドロップ!」
「私はレイです!」
「私はこちらですよ」
「あれ? もう紛らわしいよ〜!」
ストレナエがティアドロップの姿をしたレイに声をかけてしまい、ストレナエはティアドロップ……じゃなかった、レイに謝った。
「アザレア、どう思う?」
「マスターが話した事が事実なら、その『心変わり』のカードが気になる。マスター、カードを見せて貰える?」
「あ、あぁ」
俺はアザレアに心変わりのカードを見せた。
「ん……別に何か細工をした訳じゃ無さそうだね。マスター、このカードはどこで買ったの?」
「俺が初めてレイとロゼに会った所だ。行きつけで、何か無いかなと探したら、オリパを引いて当たったやつだ」
「じゃあ……店そのものは関係無さそうかな」
まぁそもそもあそこは普通の店だしな。原因が分からない今、今やるべきなのはティアドロップとレイの入れ替わりをどう戻すかだ。
一応、心変わりの効果はエンドフェイズ時までなので、俺がターンエンドと言ったり、もう一度心変わりを使おうとしてもダメだった。
「だ、ダメだ。元に戻らねぇ……」
「旦那様、もしかするとそのエンドフェイズ時とは、明日の事を指しているのでは?」
「有り得そうだな……それ」
「そ、そんな〜!」
ティアドロップ……いや、レイがその場でショックを受けてへたりこんでしまった。中身がティアドロップでは見れない光景だが、当の本人がそれを良しとしなかった。
「私の体で情けないことをしないで下さい」
「何ですか情けない事って! 大体貴方の体重いんですよ! ちゃんとダイエットしてるんですか!?」
「なっ……!」
「大体この胸と服は何ですか? 胸の上部分とかさらけ出して、こんなの痴女ですよ! 痴女!」
レイがティアドロップの大きな胸を上下に揺らし、その弾みでティアドロップのドレスがはだけそうになっていた。
あと少し胸を揺らしたら服がはだけて見せられない所が見えてしまう所で、レイの姿になったティアドロップがそれを止めた。
「だから私の姿でそんな言葉使いや行動はやめてください。それに、服装と言えば貴方も人の事言えてません。ほら、見て下さいこのスカートの丈の短さ、それに少し雑な肌と髪の手入れ、女性として少し恥ずかしい限りですよ」
「んな〜!? 短い方が動きやすいからそうしてるだけですよ! ね? 皆!」
「正直、私もレイのスカートは短すぎると思ってる」
「ボクも同感だ」
「しかも戦闘中ちょくちょく見えてたし……ちょっと長くして欲しいかも」
「ガーン……」
レイは仲間達に言われて大きくショックを受け、四つん這いとなった。
「だからそのような……はぁ、もう良いです。しかし、明日までこの体となると困ってしまいますね」
「カードに戻る……のはちょっと怖いな。かと言ってこのまま居れば母さんにバレるし……うーん」
悩みに悩み、悩んだ結果。ある1つの結果を出した。
「……よし、ティアドロップ。今日はレイの家に行って1日泊まりに行け」
「そんな!」
「仕方ないだろ? それとも、その状態で母さんに挨拶したいか?」
「うぅ……それは」
「だったら決まりだ。レイ、ティアドロップと仲良くしろよ?」
「花衣さんの言う事なら従います。ですが……」
「分かった。じゃあ俺も泊まりに行くから」
「ほ、本当ですか!? お泊まりですか!? お泊まりデートですかー!?」
レイは俺に飛びつき、頬を胸に擦り寄せてきた。だが忘れてはならない。今レイの精神はティアドロップの体にあるのだ。つまり傍から見ればティアドロップが喜んで俺の体に抱きついている光景になっており、色々と当たっているんだが……レイは気にしてない様子だった。
「だから私の体でそのようなはしたない行為は止めてください!!」
こうして、俺は母さんに一言連絡を入れ、隣のレイの家に泊まりに行った。
レイの家には一度来た以来であり、アザレアとカメリアが来たからか前来た時とは少し小物が増えていた。
それ以外では特に変わってはいなかった。
「じゃあ、私達3人はティアドロップの寝間着や、今日の買い出しに行ってるから」
「レイ、ボクのマスターに変なことしてみろ。昔のように手加減はしないからな」
「ふん、あの時の私と思ったら大間違いですよ!」
「アザレア、花衣もいるんだから早く行こ」
カメリアがアザレアを引き連れ、ロゼ達3人は買い出しへと出かけていった。
「さぁさぁ花衣さん! 今日はうーんとイチャイチャしましょうね!」
ティアドロップの声でまさかそういう言葉が出てくるとは思わなかった。
「私の体だと言うことをお忘れなく」
「分かってますよ。しかし動きにくい服ですね。着替えてもいいですか?」
「それなら私もこの短い丈のスカートをどうにかして欲しいです。この際です。服を交換しましょう」
「するのは良いが、俺の見えない所でしろよ」
ティアドロップとレイは互いの服を交換……と言うより、元の服装に戻したと言っていいだろう。
互いに元の服に戻った筈だが、どちらの服装も体に合わず、少し違和感があった。
まずティアドロップ(レイ)の方だが、サイズがあっておらず、体のラインがくっきりと見えてしまっている。特に胸元の主張がかなり激しく、この瞬間にも弾け飛んでしまいそうな程の迫力だ。しかも背丈に対してスカートも短いから見えそうで見えないラインが本当にギリギリであり、目のやり場に困る……
「ち、ちょっとキツイですね……ボタン少し緩めましょうか」
そうしてティアドロップ(レイ)が1番上のボタンを外すと、ぷるんと胸が揺れると同時に2番目のボタンも外れ、外れたボタンが俺の額に直撃した。
「あいだぁ!」
「か、花衣さん!? だ、大丈夫ですか!?」
「や、やめろレイ……! 今その状態で近づいたら色々とまずい……!」
何故なら2つのボタンが取れたせいで今ティアドロップ(レイ)の胸元を煽っている下着と谷間が顕になっている。レイもそれに気づいてか思わず自分の胸を隠し、少し笑って謝った。
「はぁ……」
大してレイ(ティアドロップ)の方はサイズがあっておらず、少しぶかぶかしている。
特に上の方は腕で抑えないとズレてしまい、こっちもこっちで危なかった。
「ず……ズレますね。これは……これ程細いとは……!」
「それって嫌味ですか!?自分の方が胸が大きいからって!」
「そこまでは言ってません!」
体が入れ替わってもいがみ合う2人だが、流石にこの状況ではやり合う事は無かった。
「やはりいつもの服装が1番ですね。面倒ですが元の衣装に戻っ……」
「わ、私のスカートがぁぁぁ!!」
「……太くはありません。太くは無いはずです」
そして数時間後、ロゼ達の買い出しによってティアドロップサイズ用のパジャマが届き、直ぐに
「どう? ティアドロップのサイズに合った服を買ったつもりだけど」
「うーん、自分の身体じゃ無いし、ましてやこういう服を着るのは慣れてないから分からない。けどありがとう!」
「ねぇ、そろそろ晩御飯の準備とかしない?」
「それもそうね。じゃあ、今日の当番は私だから直ぐに支度するわ」
「あ、だったら私が手伝うよ! 6人分作るの大変でしょ?」
「……レイが居るともっと大変かも」
「ちょ!?それどういう意味〜?ちょっとは上達したんだから!」
「では私が手伝いますよ。泊まらせて貰っている立場なのです。これぐらいは出来ますよ。例えば、料理下手な子をマシにさせる程度にはですけど」
「ぐぬぬ……何か自分自身に言われてるみたいで腹が立つ〜!」
「だけどティアドロップの料理の腕は確かよ。じゃあ、お願いするわ」
こうしてロゼ、レイ、ティアドロップの3人で料理が始まり、何もしない俺達はテレビでも見ることにした。
「レイ、包丁を動かすのでは無く、固定して野菜を回して切るのです」
「こ、こうですか?」
「そう。筋が良いですね」
「ティアドロップ。こっち頼める?」
ティアドロップがレイに料理のコツを教えながら、ロゼにもアドバイスをしながら調理を進めている。母さんが居ない間、料理のほとんどを担った経験があるのは伊達じゃない。
「ふふ、花衣の隣は久しぶり。もっとくっつこ?」
「ボクのマスターにあまりベタベタするな」
「……2人のじゃ、ダメ?」
「ダメだ。マスターはボクの全てだ。誰にも譲れない」
アザレアが俺の腕をしっかりと掴み、少し痛い程に離さない。対してカメリアはそれほど俺の腕を掴んではおらず、まるで絡め取るような感覚に近い。俺としてはこっちの方が怖いかもしれない。
「ねぇ花衣。私とアザレア、どっちの方が大事?」
「え? 急に言われても、俺はお前達の事あんまり知らないからなぁ……それに、閃刀姫ってレイとロゼの2人だけだと思ってたから」
「それは違う。閃刀姫は何人もいる。……まぁ、ほとんど列強の者だけど」
「列強って確か……レイが戦っていた勢力だよな?」
「うん。そして私とアザレア、そしてロゼは、その列強の閃刀姫だったの。つまり、敵同士」
「だけど、マスターが変えてくれた。私達に生きる意味を教えてくれた。……欺き続けた私達に手を差し伸べてくれた」
カメリアとアザレアが俺に手を差し伸べ、握ってくれた。
「ありがとう。私達に『愛』の意味を教えてくれて」
「ありがとう。私達に『生きる』意味を教えてくれて」
「「愛してる」」
「……こう、なんか挟まれて告白されると恥ずかしいな」
「これ以上恥ずかしい事をしたのに?」
「は?」
「だって、私の初めては……」
するとカメリアは自身のお腹を愛おしく摩り、頬を赤く染めながら俺に微笑んだ。
それを見た俺は、全身血の気が引く冷たさと、冷や汗をかいた。
「ちょっと待て。待て。待て待て……それってつまり?」
「私と貴方の間には赤ちゃ」
「ちょっとそこ! 嘘言わないで!」
「野菜を切ってる時に目を逸らさないで下さい! 私の指が傷つくじゃありませんか!!」
キッチンの方からティアドロップとレイが怒鳴った。
「バレちゃった」
カメリアは小さく舌を出し、どこか安心した俺がいた。別に責任とか負わなくても良かったとか思った訳じゃない。
ただ、そういう事をしたのにカイムは皆の前から居なくなったという最低な行動をしたかと思うと、例え前世であれ自分が嫌になりそうだ。そういう事をしてなくて本当に良かった……
「だけど、花衣の事を愛しているのは本当だから」
「それはもう十分に伝わってるよ」
「お熱い所悪いけど、ご飯の時間。2人とも、皿を並べて」
「ん、わかった」
「俺も手伝うよ」
ロゼから料理が盛られた皿を貰い、テーブルに置く。今日の晩飯はロゼとティアドロップ、そしてレイが作ってくれたカレーだった。
しかもただのカレーでは無く、無水カレーというものらしい。多くは市販のカレールーを使う為に大量の水を使う事になるが、ロゼが作ったものは、野菜の水分のみで作ったカレーらしく、他のカレーよりも野菜の旨味が凝縮され、めちゃくちゃ美味いらしい。やばい、匂いだけで腹が減ってきた。
「じゃあ、頂きましょう。いただきます」
「「「いただきます」」」
早速1口カレーを食べると、口に入れた瞬間スパイスとトマトの風味が爆発し、後から玉ねぎや人参本来の甘みが溶け合い、今までのカレーの常識が壊れた。
「んん! 美味い!」
スパイス特有の辛味も無く、食欲に直接刺激されて次の一口が止まらない。米も丁度いい硬さで炊きあがり、文句なしの出来だ。
ティアドロップとロゼ、そしてレイがいてこその出来だと思うと感慨深い。
「ぐっ……確かに美味い。だけどボクもこのくらい作れるようになるからな」
「負けるつもりは無い」
「おいおい、飯の時ぐらい喧嘩するなよ?」
静かに火花を散らせるロゼとアザレアをなだめ、少しの懐かしさを心の奥底で感じながら夜は進んでいった。
時は進み、浴槽の湯気が立ち上る中。2人の女性が浴室に入っていた。1人は浴槽に体を浸かり、1人は金色の髪を丁寧に指を通し、美しい髪をより磨きをかけていた。
「あの……何で私が貴方と一緒に入浴しているんですか?」
「貴方の体になって分かりましたが、肌と髪の手入れが少し雑です。私の体でそれをやられたらたまったものではありません」
「良いじゃ無いですか1日ぐらい……」
「その怠慢が後々響くのです。この際、貴方に手入れの仕方を教えます。花衣様の隣に居たいのなら、美しさに磨きをかけなさい」
「……細いですね。こんな腕でずっと戦っていたのですか?」
「そうですよ。ずっとずっと、戦ってきたんです。皆と、花衣さんと一緒に」
「どんな人だったのですか? カイムさんだった頃の花衣様は」
「戦士には見えなかった人です。私よりも弱くて、泣き虫で、誰よりも優しい人でした」
それを見た
「そういう貴方の方こそ、カイリの頃の花衣さんはどうだったのですか?」
「カイリ様ですか? そうですね……カイム様の時と変わって居ませんでしたよ。ですが、少しぼうっとしてて、抜けてる所があって、とても心優しい人でした。私にとっては、太陽の様な……いえ、そのものの方です」
「何それ、変わってないじゃ無いですか」
「だから愛しているのでしょう?」
「確かに」
2人は同時に笑い、
本来の自分の体が磨かれていくのを見た
しかも、ティアドロップと違い、レイは料理が少し下手だ。自分には出来ない事を持っている相手は、こうして見えない努力をしているのだと実感させられ、彼女はティアドロップに対しての愛情の認識を改めた。
それはティアドロップも同じ事であった。レイの体になったティアドロップは、僅かに残っているレイの古傷を見て、自分には無い力を羨んだ。
きっと、戦っていた頃はもっと傷ついていたのだろう。それももっと幼く、10年ちょっとしか生きてない年頃でだ。ティアドロップは、レイに対しての花衣の忠誠心の認識を改めた。
「……あの、今度また料理を教えてください」
何を思ったのか、ふとレイはそう言った。恐らく、ティアドロップの事を認めたのだろうか、それとも技術を盗んでティアドロップを追い越そうとしているのか分からないが、それが花衣の為という事は間違い無かった。
意外な顔を浮かべたティアドロップは微笑み、コクリと首を頷けた。
「……ふふ、ええ。構いませんよ。この際です。お風呂上がりもスキンケアも身をもって教えて差し上げます」
「ふぇ?」
すると
まだティアドロップの体に慣れきっていないレイは自分の笑顔に少しの恐怖心を抱いた。
「ひっ……! わ、私は花衣さんの剣だけで充分です!」
「花衣様の隣に立ちたいなら、その剣も美しくあるべきですよね?」
「い、いやぁぁぁぁぁ!!!」
浴室の中、ティアドロップはレイの体をくまなく手入れし、レイは叫びと共に髪は潤い、肌も白く輝く絹の様に生まれ変わったのであった……
その後、レイの姿を見たロゼ、アザレア、カメリアは、ティアドロップにスキンケアのやり方や道具を教わったとかなんとか。
そして、夜になったその日。
風呂を終えた俺達はレイの自室に集まり、今ここにいるのは風呂上がりのティアドロップとレイ、そして俺の3人だけとなった。
「ふぅ、凄い目に会いました……」
「ですがおかげで綺麗になりました」
「あぁ。綺麗になった」
「ん……//そ、それ程でも〜ありますよ!」
「あの……今貴方の体に入っているのは私なのですが」
ティアドロップの姿だが、レイは嬉しさを抑えるように体をくねらせた。だが忘れてはならない。今レイの体にはティアドロップの精神があるのを。
「……で? 何で俺がレイの部屋にいるんだ?」
「それは勿論一緒に寝る為ですよ。初めてじゃ無いから、別に良いですよね?」
「俺は一階のソファーでも良いんだが」
「だーめです。ソファーで寝るのは私の体になっているあの人で充分ですよ……って、言いたいわけですが、自分の体だからそういう訳には行きませんよね」
「そういう事です。さぁ、夜も遅いですし、早く寝ましょう」
そうしてレイ(ティアドロップ)は早速ベットに横になり、俺を受けいるように腕を伸ばしているが、今の体はレイだ。
普段のレイだったら感じられない包容感に戸惑いつつも、後ろからその本人に背中を押され、俺はベッドに飛び込まされ、ティアドロップとレイの挟み撃ちにされてしまう。
2人の腕、2人の足に絡み、2人の吐息や鼓動が背中や胸からドクンドクンと伝わっていく。俺の方はこんなに激しく動いているのにも関わらず、2人の鼓動は一定の感覚で動いていた。
逃げられない暗闇の中、感じられるのはその鼓動と2人の体温のみ……だと思いきや、耳から2人の吐息も直に頭に届いていく。
「ドキドキしてますね、花衣さん」
「花衣様。もっとこっちにくっついて下さい」
暗闇の中で、2人の声が左右に聞こえる。普通では絶対に使わない言葉使い、息遣いが俺の心を乱れさせる。
これじゃあ寝られたものじゃ無い。
心を落ち着かせる事をさせないように、また2人の囁きが耳から頭へと通り、俺の心を溶かせられる。
「ふ、2人とも……そろそろ」
「ふふ、そうですね。心臓も飛び出してしまいそうにドキドキしてますね」
「じゃあもう寝ましょうか。離れないように……ギューってします!」
2人は俺の腕を抱き、寝返りがうてない程に強く抱き締めた。だけど苦しい事は無かった。
2人の吐息は心地よい寝息へと徐々に変わり、2人に睡魔が襲ってきたようだ。まぁ無理もない。今日1日体が入れ替わって大変だったのだから。
「あの、花衣様。もしも……もしもこのまま元に戻ら無くても、私の事、お傍に置いてくれますか?」
「私も……ずっと傍にいてくれますか?」
ティアドロップとレイが最後にそう言い、俺の手を弱々しく握った。まるで不安が顕になっているようだ。俺はそんな2人の手を握り直し、暗闇の中で声を向けた。
「大丈夫だ。姿が変わっても俺はお前らの隣にいる。お前らが、そうしてるようにな」
そう。この2人……いや、皆はあんな姿の俺になったとしても、ずっと居てくれている。お返しとは言わないが、俺もそうしたい。
俺の言葉を聞いて安心したのか、2人は目を閉じ、眠ってしまった。俺も目を閉じ、眠りについた。
___
____
_____
鳥の囀りが聞こえ、陽の光が眩しく感じ、目を開ける。もう朝になり、起きようとするとまだ2人は目を閉じて寝ていた。2人に腕を掴まれているから体を起こすことができず、こうなったら起きようにも起きられない。
この際二度寝でもしようかなと思っていた時、丁度2人は目を開けて目覚めた。
「ん、花衣様? おはようございます…………」
ティアドロップが、俺の事を花衣『様』と呼んだ。
「ふぁぁ……花衣さん、おはようございます」
レイが俺の事を花衣『さん』と呼んだ。
2人は自分の声に気づき、体を起き上がらせて互いを見合わせ、顔に手を触れ続けると2人は驚き、俺に目を合わせた。
「か、花衣様! 私たち!」
「元に戻りましたー!」
嬉しさ余って2人は俺に飛びつき、俺の胸に顔を埋めた。
「良かったぁぁ!! 良かったですー!!」
「えぇ。本当に……良かった」
嬉しさと安心した想いが込み上げ、2人は涙を溢れ出していた。俺はそんな2人の頭に手を添え、ゆっくりと撫でた。
「良かったな。2人とも」
2人の気が済むまで俺は頭を撫で続け、2人の大きな声を聞いたのか、部屋の外からロゼ達であろう足音が近づき、レイの部屋の扉が開かれた。
「ちょっと、朝から声が大きい。もう少し声を……」
「ロゼちゃ──ん! 私、元に戻ったよー!」
「はぐぅ!!?」
レイはロゼと目が合うと真っ先に頭からロゼの腹に突撃をかけ、ロゼはレイの頭突きに真正面から受け、聞いた事無いような顔と声とあげた。
頭突きを食らったロゼは白目を向いて仰向けに倒てしまい、レイは朝から慌ててロゼを目覚めさせようとロゼの体を揺すった。
「ろ、ロゼちゃぁぁぁん! しっかりして!!」
「相変わらず騒がしい方ですね」
「でも良かったじゃないか。元に戻って」
これで一見落着……と、言いたいが。結局どうしてティアドロップとレイが入れ替わった理由は分からずじまいになってしまった。
偶然の事故か、それとも誰かが意図的にやったのか。その真実は、その本人以外知る由もなかった……
「ふふーん、あの子を監視してるんだから、このぐらい面白い事を起こしても良いよね〜」
花衣がいる家の屋根には、青い髪の少女が満足そうな笑みを浮かべていた……
カイリとカイムの名前ついて。
もう気づいているかも知れませんが、この2人の名前には、必ず「カイ」という文字が含まれるようになっており、この小説の主人公「花衣」と繋がりがあると言うことを示唆している他に、名前にも意味があります。
まず、カイムは「皆無」から取りました。何も無い、全く無いという意味は、0の意味を持つ「レイ」や「ロゼ」と関連付けたいと思い、つけました。
対してカイリは「イカリソウ」という花からもじった言葉ですが、実はこの花……3〜5月にかけて咲く花で、六花達のモチーフの花とは少しずれています。ですが、「カイ」という文字列のある花が思いつかない事や、花言葉に関してもキャラとあっているので、この名前にしました。
という事はつまり、新たな存在の「リカイ」という文字にも意味が……?
因みに、「理解」という意味では無いです。
その辺はまだ、内緒です……( ̄b ̄)シーッ!
オリカをまとめた章が欲しい?
-
欲しい!
-
別に( *¯ ³¯*)