六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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今回の幕間は〜焔君と霊香ちゃんの物語!特に霊香ちゃん最近出てきてないから出したかった……

因みに今回、焔君の妹が出てきますが、実は存在自体は仄めかしていました。ようやく登場出来ます。

今回、ピックアップデュエルで登場した霊香ちゃんの従姉妹である。霊亡さんも登場しています。覚えていますか?覚えてなかったらピックアップデュエルを見直しだ!




灯火の雪

 

 夏。それは祭りの季節とも言える物。

 

 暑い中でも人々は屋台の催しを楽しみ、食べ、風物詩を味わう。

 

 これが楽しいんだ。むせかえる暑さなんか忘れて知らない奴同士が楽しめる。これが祭りだ。今日もその祭りの為に、俺は家の神社の手伝いをする。

 

 おっと言い忘れてた。俺の名前は炎山 焔(えんざん ほむら)

 

 今ここにいる不知火神社っていう家系の長男だ。自分でいうのもなんだが、結構でかい神社で、参拝には人が集まり、夏になると神社のバカ広い敷地を使って夏祭りをやる。

 

 今日もその祭りの季節が巡り、たくさんの人が祭りの準備に勤しんでいた。

 

 俺もその中の1人であり、親父にあれやこれやと頼まれる。これで金が貰えなかったらバックれてるところだ。

 

 祭りの準備が一通り終わった中、日課の筋トレを園内の隅でやっている。

 

 石畳の上で腕立てをし、夏はクソ暑いから上を脱いで半裸になり、こうして汗をかいて鍛えるのが好きなんだよなぁ。しかも外だから開放的という。

 

「165……166……!!」

 

 もう少しで200回行きそうな所で、とある女が俺の所にやってきた。

 

 俺と同じ赤い髪をし、みかんのようなオレンジ色の髪色も混じったポニーテールの奴。俺の妹炎山 燐(えんざんりん)だ。

 

「ねぇ兄貴。もう暇でしょ? だったらちょっと付き合ってよ」

 

 相変わらず高圧的な妹だ。ツンツンしてて可愛くない。まるで誰かさんみたいだ。

 

 妹は今は中学生であり、年頃みたいな感じだ。そんな妹はいつもは俺に対して素っ気ないが、今日何故か俺を誘ってきた。

 

 だが俺はさっき祭りの準備でクソ重たい荷物を運んだからしんどい。何処かに行こうとする気は無かった。

 

「無理、パスだ。俺もうしんどくてよ〜」

 

「もし付き合わなかったから兄貴の部屋にある。え……エッ……エッチな本をお父さんにバラすから!」

 

 燐が顔を真っ赤にしてとんでもない事を言い出して気やがった。

 

「バッ……!! お前何で知ってんだ!?」

 

「そ、そんな事どうでも良いでしょ!? それよりも付き合うの!? 付き合わないの!? どっち!?」

 

「だぁぁ! 分かった! んで、どうすんだよ」

 

 流石にエロ本が持ってるのバレたら親父に殺されるかもしれない。仕方ない、ここは妹の言うことを聞くしかねぇ。

 

「んで? 俺にどうしたいんだよ」

 

 燐はここまで来て口をごもり、煮えきれない態度を取った。指をいじったり目を背けたりしてようやく用事を話した。

 

「わ、私に……デュエル、教えて」

 

 意外な誘いに意外な言葉を聞き、俺は空いた口が塞がらなかった

 

 

 

 数時間後、行きつけのカードショップに燐を連れていき、燐はカードショップのショーケースに並べられているカードと、カードショップ特有の雰囲気見ていた。

 

 ここは少し広い方だが、ショッピングモールとは比べ物にならない程の狭さに、少し多めの奴ら。皆この遊戯王のカードを買ったり、対戦したりする為だけに集まっており、初めて見る景色に燐は少し萎縮していた。

 

「うぅ……結構人多い……ショッピングモールとかじゃダメなの?」 

 

「こっちの方が安いし品揃え良いしな」

 

「しかも臭い人いるんだけど……最悪」

 

「それはもうあれだ。風物詩? みたいなもんだ」

 

 いつも高圧的な燐が弱々しくなっていた。こんな姿を見れるのは新鮮であり、思わずニヤついてしまい、それを見た燐は俺の脇腹に肘打ちした。

 

「いってぇ! ……というかさ、何でいきなり遊戯王を知りたいんだよ」

 

 どちらかというと燐はこんな事には興味は無く、むしろ嫌悪するタイプだ。ゲームとかも携帯ぐらいのしかやらず、俺とは真逆なタイプだ。

 

 そんな燐がデュエルをする理由となれば……多分、ひとつしかない。

 

「と、友達がやってるから私もやろうかなって……それに、兄貴が【ロマンス・タッグデュエル】でテレビに出てたでしょ? それでデュエルを教えてってクラスメイトが言うから……」

 

「はぁ? そんなもん分かんないって言えば良いじゃねぇか」

 

「だって頼られたから断る訳にはいなないし……」

 

 相変わらず見栄っ張りというかなんと言うか、燐はこういう奴だ。まぁそのプライドの高さ故、俺に頼み込むのは相当珍しい。ここは一つ、兄として力を貸してやりますか。

 

 まず燐にはどんな感じのデッキが良いか聞いた。

 

 個人的に初心者にデッキに勧める手順は2つ。どんな動き方のデッキがいいか、どんなイラストが良いかの2つだ。

 

 まぁ単純に環境デッキを握れば良いとは思うが、今の環境デッキはちょっとばかし特殊だ。なんせキトカロスが禁止になったとは言え、ティアラメンツってテーマは未だに強力だ。なんなら俺のアンデッドに組み込めるなら組み込めるのが強すぎる。

 

 誰だティアラメンツとかいうとんでもない奴考えたやつ。

 

 まぁそれはさておき、燐には動き方かイラスト。どっちの方が良いか聞き、燐は少し悩んで答えてくれた。

 

「……和風な感じが良い」

 

「和風?」

 

 これまた難しいチョイスをしてきたなぁ。確かに和風テイストのテーマはある。だが……その多くは動きにクセがあるのが大きい。

 

 例えば俺の不知火は、除外する事にも視野を入れなければ動けねぇし、妖仙獣という奴も手札に戻る効果の都合上、初心者にはおすすめは出来ない。

 

 どうしたもんかと悩んでいると、この店の店長さんが俺を見かけたのか声をかけてくれた。

 

「あら? 焔君じゃない。いらっしゃい」

 

「お〜店長さん!」

 

 黒髪のメガネにリブ生地の服を突き抜ける程のでかいもの2つぶら下げてる美女、店長さんだ。因みに名前は知らない。デュエルに勝てば教えてあげると言うが、この店長、相当デュエルが強い。

 

 展開ルートのアドリブ、手札誘発のケア、ブラフのかけ方等のプレイングがとんでもなく強く、聞く限りだと一度も負けた事も無く、誰も名前を知らないという。俺も何回か勝負してるが、全部ぼろ負けしている。さすがはカードショップの店長と言うべきか。

 

 まぁそんな事どうでも良い。店長さんが来てくれたのなら好都合で、俺は隣にいる燐を紹介し、経緯を話した。

 

「へぇ〜焔君の妹ね。よろしくね、燐ちゃん」

 

「は、はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

「あら、礼儀正しいわね。ホントに焔君の妹?」

 

「何か凄ぇ失礼な事言った?」

 

「ふふ、嘘嘘。ええと、初心者で和風チックな物を所望ね? だったら……あれが良いかしら」

 

 すると店長さんはレジ裏にあるカゴを取り出し、カゴの中にある多くのデッキの中から一つ取り出し、燐に渡した。

 

「はい。私特製の【御巫(みかんこ)】デッキよ」

 

「み、みかん……? 果物のですか?」

 

「ぶふっ……」

 

 た、確かに御巫(みかんこ)は巫女と果物の蜜柑と掛け合わせたもんだが、まさか最初にそれが思い浮かべるとは思わず、笑ってしまった。

 

 馬鹿にしたかと思われた燐は無言で俺の脛に蹴りを入れ、声にならない叫びをあげた。

 

「ええと、そのカードってどんな物何ですか?」

 

「【御巫(みかんこ)】は簡単に言えば戦闘に特化したモンスターよ。戦闘では破壊されなくて、そのダメージも0だし。装備魔法も付ければダメージも相手に反射できるテーマで……」

 

「????」

 

 ルールも分からない燐にとっては聞きならない外国語の様な物であり、店長さんはハッとした顔を浮かべ、燐に謝った。

 

「あぁごめんなさい。つまり、戦闘では無敵のテーマよ。そうだ。折角だから、ルール説明も相まって私とやりましょ? 貴方達は夏休みだけど、今日は平日で人はちょっと少ないし、レジとか他の子に任せるから」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「兄の焔君はどうするの?」

 

「ちょ、ちょっとバカに足蹴られたんで……そこのソファーに横にならせて貰いますわ」

 

「誰かバカよ! バカ兄貴はさっさとあっちいって」

 

「ちくしょう……」

 

 でもまぁ、俺よりも店長さんの方が分かりやすいし、同じ女同士の方があいつもやりやすいだろう。時間になるまで適当なショーケースで良いカードが無いか探していると、横から来た奴にぶつかってしまった。

 

「あぁ、わりぃ」

 

「いえ、私もごめんなさ……ん? 焔?」

 

 名前を呼ばれて顔を向けると、そこには雪のような白髪と、髪が少しぼさついてる黒髪の姉ちゃんがいた。

 黒髪の方には面識が無いが、白髪の方には面識があった。

 

「あ、霊香だ」

 

「まさか、こんな所で会うとは思わなかったわ」

 

「そりゃあ俺もそうさ。そっちの姉ちゃんは?」

 

「あ! え、ええと、どうも〜霊香ちゃんの従姉妹の魂志乃霊亡と申します〜。あ、これ名刺です」

 

 キョドった口調でいきなり名刺を渡されたんだが。

 

 名刺を見ると霊媒師と書かれており、めちゃくちゃ胡散臭い感じが否めなかった。

 

 そんな顔を見て言いたい事が分かっているのか、霊香は受け入れと言わんばかりに肩をすくめて首を振った。

 

 それにしても……従姉妹なのにすげぇ違う。雰囲気や髪色、そしてレモン2つとスイカ……いや、メロン2つ。まるっきり違った。

 

「……変態」

 

「な、何だよ」

 

「下衆な目線は女にはバレる物よ。早くあっちいって、下劣者」

 

「ふへ? れ、霊香ちゃん。どうしたの?」

 

 どうやら例外の女がいたらしい。呆れたと言うようにこめかみに指を添え、霊香は用事を済ませようとした。

 

「……いえ、何でもありません。それよりもデュエルを教えてあげる用事でしたね。私よりもここの店長さんが適任かと思いますが」

 

「ん? あぁ悪ぃ。店長さん今俺の妹にデュエル教えてるわ」

 

 親指を店長さんと燐の方向に向けると2人は簡易的なデュエル真っ最中だった。

 

 一つ一つのフェイズを店長さんはしっかりと丁寧に教え、燐の飲み込みの速さも相まってか順調そうだった。

 

 すると霊香は燐の後ろ姿と俺の顔を交互に見ると、目を疑う様な顔を俺に向けた。

 

「……ねぇ、貴方と違って知的そうだけど、本当に貴方の妹なの?」

 

「あぁ!? どう見たって兄妹だろ?」

 

 似ている髪色や顔つきをこれでもかと顔をぐいっと霊香に近づけると、霊香はすかさず俺の頬をハエを叩くようにしてぶった。

 

「ぶ、ぶったな……!? 親父にしかぶたれたこと無いのによぉ!」

 

「何言ってるの貴方は……急に顔を近づかれたら誰だってこうするでしょ」

 

「いやノーモーションで殴るのは違うと思うぞ」

 

 しかもめっちゃ痛くて頬がヒリヒリしやがる。痛みを引かせるように頬に手を添え、霊香はようやく用事を済ませる事にする。

 

「とにかく、店長さんがあれじゃ悪いわね。霊亡さん、申し訳ないですが、私が教えますね」

 

「う、うん。わわ、私は霊香ちゃんで良かったな〜って思ってるから。ふふひ」

 

「それじゃあね、焔」

 

 霊香と霊亡は奥のデュエルスペースに行き、早速霊香は霊亡にデュエルを教えていた。見た感じ霊亡が使っているデッキは【霊使い】であり、同じ霊という名前で選んだのか、別の理由があるのか考えながらも、俺は近場の空いているテーブルに座り、時間潰しに携帯をいじった。

 

 ……にしてもまさか燐がデュエルねぇ。今日まで興味は無かったのに、いきなり遊戯王始めるとは、流石は流行と言うべきだろうか。

 

 というか、カードゲームがまさかこんなにも流行るとは思っていなかった。今ではソリッドビジョンとかいう物が出てき、自分のモンスターが目の前で戦ってくれる物まで進化した。

 

 まぁ、そのソリッドビジョンはまだ普及されておらず、ロマンス・タッグデュエルの様な特別な大会じゃ無ければ使用出来ないらしい。

 

 そう考えれば、ソリッドビジョンを使ってのデュエルをした俺って相当運が良いのでは? またいつかやってみてぇな……新しいカードも手に入り、このカードがどんな姿になるのか見てみたい。

 

 デッキから俺の新たなカードであり、俺だけのカードである【不知火の太刀】と【不知火ー炎舞の儀】を取り出した。

 

 ある日突然俺宛に届けられたレゾンへの手紙が添えられたカードであり、厳正なる審査の結果選ばれたのかうんぬんかんぬん書いていたが、俺も花衣と同じレゾンカードが手に入れられて興奮している。

 

 今でもこうして見つめると思わず頬がにやけてしまう。しかもレアカードが2枚となると、花衣や空に見せたらきっと驚くだろうなとワクワクする。

 

 早く見せてやりたい気持ちを抑えながら、俺は次会う時まで内緒にしている。そうした方が驚くからだ。俺はカードをデッキに戻し、燐の様子を見た。

 

「ええと……戦闘ダメージは相手が受けるから、攻撃したら勝ちですよね?」

 

「そうそう。これで私のライフが0になって、貴方の勝ち。そのデッキはあげるから、もっと色々試して見て」

 

「い、良いんですか!?」

 

「ええ。決闘者デビューの記念って事で」

 

「あ、ありがとうございます。大事にしますね」

 

 どうやら、無事にデッキも手に入れたらしい。3BOXまでの金なら出そうと思ったが、思いもよらない収穫で燐は珍しく感情を表に出していた。

 

 嬉しさが抑えられないと言っているように、燐は早速デュエルをしようとしたが、ここの周りは経験者ばかりなのと燐とは一回り年の離れた奴らばかりだ。

 

 場馴れしていない燐には、まだハードルが高そうだが、丁度良く霊香の方も用事が終わらせたようだ。

 

「だいたいこのぐらいですね。基本ルールは予め分かっていたので、早く終わって良かったです」

 

「え、えへへ。実はちょっとしたお祭りに出てたから。じゃあ、早くこのデッキを使ってみたいけど……私と同じような人、いるかな?」

 

 俺は説明を終えた霊香の肩を叩いた。

 

「何?」

 

「そちらさんの相手に丁度いいのがいるぜ」

 

 俺は燐に指を向け、霊香は良いの? と目配りをし、俺は頷いた。

 

 了承を得た霊香は燐の元に向かい、声をかけた。

 

「ちょっと良い?」

 

「ん? はい。何ですか……ってあれ? 貴方確か兄とテレビに出てた……」

 

「あら、見ていたのね。そ、あの人と一緒に出てた白井霊香よ。貴方、焔の妹らしいわね」

 

 霊香が自己紹介すると、何故か燐の顔が少し赤くなり、燐は少し挙動不審になりつつも、自己紹介をし返した。

 

「は、はい! わ、私は燐と言います! お、お会いできて嬉しいです!」

 

「……そう?」

 

「いえいえ、兄がお世話になっています」

 

「……ねぇ焔。本当に貴方の妹なの?」

 

「おめぇそろそろ失礼だぞおいごら」

 

「冗談よ。話を逸らしてごめんなさいね。ちょっとデュエルをして欲しい人が居て、貴方と同じ初心者だから丁度良いと思って」

 

 霊香は霊亡のいるテーブルに目を配り、霊亡は小さく手を振った。

 

「良いですね。私も丁度相手を探してましたし、こちらこそよろしくお願いします」

 

「ありがとう。ほら、霊亡さんも挨拶してください」

 

「え、えへへ……よ、よろしくね? 燐ちゃん」

 

「あら、始めるの? じゃあ、私はレジに戻っておくわね」

 

 店長さんと霊亡が場所を入れ替わり、燐のデビューデュエルが始まった。

 

 燐の御巫と霊亡の霊使い。どっちが勝つのやら。

 

 個人的にはやっぱ妹には勝って欲しい気持ちはあるが、ここでは一切の口出しはしねぇつもりだ。口出ししたらあいつは怒るだろうし。

 

 デュエルの開始を見守った後、急に尿意が出てきて思わずそのままトイレへと駆け込んだ。小さい方でも漏らしたら笑えねぇから急いで済ませた。

 

 カードショップのトイレにしてはくっそ綺麗なトイレでしかもめちゃくちゃいい匂いがした。店長さんが手入れをしているおかげだろう、まぁそんな事はどうでも良いとして、気持ちよくトイレを済ませ、燐のデュエルを見ようとすると、あいつらのテーブルに1人の男が割り込んでいた。

 

 パーカーを着ていてメガネをかけ、言っちゃ悪いが何かチーズ牛丼頼んでそうな感じだ。そんな男が燐に対して何か言っていた。

 

「え? そのカード使ってるの? 今後のためにも止めた方がいいですぞ?」

 

「な、何ですかいきなり。貴方、誰ですか?」

 

「あ、あの〜今私たちがやっているので……」

 

 どうやらめんどくさい奴に絡まれてるようだ。どこの界隈も、頼んでも無いのにアドバイスをしたがる連中がいるからタチが悪い。

 

「でゅふ、拙者はご覧の通りかなりの実力者でしてな。よ、良ければアドバイスをと」

 

「いりません。帰ってください!」

 

 燐はいつも通りツンツンな態度をしたが、それが逆に種火となってしまってる。アドバイスをしようとしている男は引きさがらず2人に言い寄り、流石に止めに入るしかない。

 

 と、思った矢先、霊香の青い目は冷たい目となって男を睨んだ。

 

 睨まれた男はまるで氷漬けにされたかのように動かなくも喋らなくもなり、見ているこっちにも寒気がした。

 

「貴方、いい加減にした方が良いわよ」

 

「ひぃ! な、なんですぞ!?」

 

「頼んでも無い指示は要らないから、さっさと消えてって言ってるの。分からないのかしら? 分かっているのなら、これからする事、分かるわよね?」

 

 言葉すらも棘のように鋭く、男にかなりのダメージが入っていた様子だ。男は霊香の圧にビビりつつも、女だからと舐めてる態度を取っていた。

 

「わ、悪い所を指摘して何がおかしいのですかな? これは親切という物ですぞよ!?」

 

「貴方、親切っていう単語の意味を調べた方が良いわよ」

 

「な、なんですと!?」

 

 やっば、周りの目もあっちに向けられ、男も逆上して霊香の右腕を掴んできた。

 

 そろそろ止めに入らないとヤバい感じだ。早歩きで霊香の前にいる男に行き、男の肩を掴むと、男はこちらに振り返った。

 

「な、何奴ですか? 拙者はこの女性と話を……」

 

「そこまでにしろ。じっちゃんに言われなかったのか? 女はもっと大事に扱えってな」

 

「な、何を言って……」

 

 少しばかり肩を掴んでいる手に力を入れ、男の鍛えてないガリガリの骨に痛みを加える。

 

 男は少し鈍い声を上げて霊香の腕を掴んでいた手を離して床に膝をつき、掴んでいた左肩を右手で添えていて痛みにもがいていた。

 

「い、痛い……」

 

「お、おいおい。大袈裟すぎたろ」

 

 事実俺はそんなに力を入れてない。せいぜい重たいものを持ち上げる時の力加減だ。しかもそれは一瞬だけ。

 

 となれば、こいつの痛がりは嘘か体つきからして相当運動してない事になる。もうちょい鍛えろよ男なんだからさ……とは思う。

 

「こ、これは立派な暴力ですぞ!? け、警察に訴えますからな!?」

 

「は? 暴力って程じゃねぇだろ。俺はあんたの肩を掴んだだけだ。それに暴力って言うけどさ、あんた俺の連れと妹にも暴力を振るったんだぜ?」

 

「せ、拙者は何も……」

 

「初心者にあれやこれやで一方的に言ってなーにがアドバイスだ。ふざけんじゃねぇっ!」

 

 声に刀を持たせるか如くの迫力を付け、ウジウジネチネチと目の前の男を黙らせた。

 

「良いか? あんたがやってたのも暴力何だよ。一方的に言いより、ましてや女に手を上げるのは男が1番やっちゃいけねぇ事なんだよっ!! 分かったら帰りやがれこの馬鹿野郎!」

 

「ひ、ひぃぃ!!」

 

 男はそのまま半泣きで帰り、この場の騒動は何とか収めた……のか? 最後に大声出してしまって周りの人もこっちに向いているし、とにかく笑って一言謝りを入れた。

 

 くっそ〜休みだってのになんでこうなるかな〜。

 

「……もう、肝心な時に居ないんだから」

 

「いやいや、俺が居なくてもお前が何とかしたじゃねーか」

 

「面倒なのよ。それに、逆上されたりもしたら流石に敵わないわよ。さっきみいたにね」

 

「ま、でも助かったわ。あんがとな。それと……悪いな」

 

 多分女だけだったから目をつけられたと思うと申し訳なさが込み上げてしまう。

 

 燐も最初のデュエルで嫌な思いをさせてしまったのもある。燐の方に目を向けると、知らない奴にいきなり絡まれたせいか参った顔をしている。

 

「はぁ、最悪……」

 

「ま、まぁ気にしないで行きましょうよ〜燐ちゃん」

 

「分かってますよ霊亡さん。だけどちょっと……」

 

 これ以上デュエルする気は起きないと言わんばかりに燐は手札を机に起き、カードを片付けようとした。

 

 が、それを俺は止めた。

 

「まぁとりあえず最後までやってみたらどうだ?」

 

「焔? 貴方一体……」

 

「中途半端に嫌になるより、最後までやって嫌になれ。最後まで見てやるから、やってみろ」

 

 霊香がなんと言おうと中途半端にここで止めたら絶対に引っ掛かりが残る。そうならないようにあえて俺は続行を提案し、燐の反応を伺った。

 

 燐は少し考えながらも手札のカードを再び手に戻した。

 

「最後まで……やる」

 

「そうこなくっちゃな」

 

 デュエルは無事に再開され、燐のターンが始まった。盤面を見る限り、店長さん特製のデッキはデュエル初心者の燐が充分に回せる程の手軽さ中心に作られていた。

 

 最低限動けるように構築されているのか、初めて触るデッキなのに、御巫の装備魔法もちゃんと使えており、いい勝負をしている。

 

 燐の飲み込みもそうだが、店長さんの手腕も同時に驚いた。そういえば、花衣も店長さんに教えられたんだっな……やっぱすげぇや、どっちも。

 

「随分と嬉しそうな顔してるわね」

 

「そんな顔してたか?」

 

「さしずめ、妹さんが楽しくやってるのが嬉しいのかしら?」

 

「ま、そういうこったな」

 

「よーし! ここで攻撃すれば……」

 

「こ、ここで罠発動です〜!」

 

 魔法や罠、モンスターの攻防が相次ぎ、次のドローで逆転になるかもしれない予想だにしない展開でどっちも楽しそうだ。これがあるからデュエルは楽しいもんだ。

 

 燐には例えこの一回でデュエルを終わっても良いから、この楽しさをわかって欲しい。あの時途中で辞めていたら、絶対に味わえなかったものだ。

 

 なんか、デュエルを始めたての俺に似ている。あの時何使ってたっけ。

 

「……ん? そういえば、俺がデュエルを始めたてきっかけって何だ?」

 

 なんか引っ掛かりが残る。何かに影響されて始めた様な気もするが、それが何かは思い出せない。

 

 思い出そうとしても頭の中に霧が出てくるように何も見出させず、思わず頭を掻きむしる。

 

「どうしたのかしら?」

 

 それを見兼ねた霊香が、声をかけてくれた。

 

「あぁ。俺、なんでデュエルを始めたのかなって思ってさ」

 

「誰かに誘われたりしたんじゃないの?」

 

「うーん、なんか違うんだよなぁ」

 

 自分からデュエルを始めた様な気がするが、それ以上の事は思い出せずにいた。まぁ、思い出せないぐらいどうでもいい事なんだろう。

 

「まぁいいや。それよりもさ、霊香は何でデュエルを始めたんだ? こう言っちゃ何だが、あんましデュエルをするタイプには見えねぇからさ」

 

 俗に行くクールビューティな霊香からは、デュエルをやっているというイメージは無い。初対面の時にこの店でやった大会で会った時には、付き人か? って思ったぐらいだ。

 

 そんな霊香がデュエルを始めたきっかけが気になり、断る覚悟で話してみると、霊香は意外にも話してくれた。

 

「そうね……強いて言えば、このカードに惹かれたぐらいかしら」

 

 そう言って霊香は、魔妖の雪女3種のカードを見せてくれた。

 

「それ、【雪女】だよな?」

 

「そうよ。何故か、このカードに惹かれたの。……除霊家だからかしら」

 

「そういえばさ、除霊家って何だ? 霊媒師……では無いのか?」

 

「あぁ。そういえば話して無かったわね。霊媒師はあっち、霊亡の方よ。そもそも霊媒師がどんな物かは知ってる?」

 

 聞いた事がある程度と俺は言った。

 

「霊媒師の主な役割は2つ……いえ、1つだけよ。それは死んだ者の魂を霊媒……まぁつまり、取り込んでその魂の意思を伝える事よ。例えば、貴方のご先祖さまの魂を霊亡を依代にして取り込み、その声を、想いを伝える事が出来るって事よ」

 

「ううん……なーんか、嘘っぽいなぁ」

 

「……そう思っても良いわよ。その方が、良いかも知れないから」

 

 霊香は何故か暗い顔をしていた。その顔は何故か、これ以上踏み込むなと言っているような顔であり、これ以上踏みこむ事は出来なかった。

 

「……除霊家の話だったわね。除霊家の仕事は単純。悪霊が住み着いている所や、人に乗り移っている悪霊を退散させる事よ。私達の家系は、そういうのを生業としているから、除霊家って呼ばれているのよ」

 

「へぇ〜! じゃあ、お前はお化けとか幽霊とか見えるって訳か?」

 

「ええ。貴方の中にある霊も見えるわよ」

 

「え?」

 

「貴方の中には不思議な霊がいるわ。ゆらゆらと赤色に灯る蝋燭の様な……ね」

 

「え? 俺もしかして呪われてるとか!? 冗談じゃねぇ! 俺まだ死にたくねぇ!」

 

「落ち着きなさいバカ! 霊って言っても、守護霊とかそんなものだと思うから!」

 

「守護霊だぁ?」

 

「他の人は勿論、貴方にも害は無い霊よ。悪霊は禍々しいオーラが感じるし、すぐにでも除霊するわよ。一応、除霊の術は会得してるから」

 

 すると霊香はマジモンの御札やら数珠やらを持っており、霊香の話の信憑性が増してきた。

 

「それにしても、貴方と花衣は不思議な霊が憑いてるわね。確か花衣の方は……数十個の霊が憑いてたわね」

 

「それ大丈夫なのか……?」

 

「全部守護霊……? 的な感じだから問題ないわよ。霊亡の方も、花衣に憑いてる霊に興味があってデュエルを始めたぐらいだし」

 

「ほぇぇ……モテモテだなぁ。花衣」

 

「いつか女難に苛まれそうね」

 

「はは。そうかもな。後ろから刺されたりして」

 

 そんな馬鹿話をしている最中、燐のデュエルは終わりを迎えていた。

 

「来た!! 【剣の御巫ハレ】を召喚して、【脆刃の剣】を【剣の御巫ハレ】装備してバトル! 【諸刃の剣】はお互いにダメージを受けますが、【ハレ】の効果でダメージは相手に肩代わりします!」

 

「わぁぁぁ〜負けましたーっ!!」

 

 どうやら勝負あったようだ。デビュー戦で見事勝利を収めた燐は思わず立ち上がる程喜び、中学生らしい良い喜び方だ。

 

「勝ったぁ〜あぁ。あの時のドローで【ハレ】が来てくれなければ負けてた〜!」

 

 息をする事を忘れていたのか、燐は大きく息を吸っては吐き、肩の荷を下ろしていた。分かる分かる。デュエル終盤になると息するのも忘れるよなぁ。俺もそうなるし、やっぱこういう所は兄妹故か似ていた。  

 

「どうだった? デュエルは。これで終わりにするか?」

 

「……折角デッキもくれて、デュエルも勝てて……楽しかったし。まだ、やる」

 

 燐は照れ隠しをするように顔を背け、デッキを強く握りしめた。そんな燐の頭をわしゃわしゃと撫で、燐はそんな俺の手を振りほどいた。

 

「な、何するのよ!」

 

 撫でられすぎて怒った犬のような顔をして小さく唸っており、それでも必死にデッキを握っている事から相当勝ったのが嬉しかったのだろう。それほど熱中したのか、はたまたデュエルが緊迫していたのか、まぁ両方だろうと思うが。

 

「よし! 今日は記念日だ。お前の好きな食い物でも食べに行くか」

 

「じゃあ寿司。私が寿司が好きなの、知ってるでしょ?」

 

「寿司か〜……回転でいいか?」

 

「まぁ、許してあげる。そうだ。折角だから霊香さんと霊亡さんも一緒にどうですか?」

 

「あら。じゃあ、お言葉に甘えようかしら」

 

「うへへ。わ、私もお供します〜。あ、お金が足りなければ、わ、私が払いますよ〜。お、お金は、あり、ありますから〜」

 

 すると霊亡は長財布を取り出し、バッと財布を広げると多くの万札とカードがあった。霊媒師って儲かるんだなぁ……

 

 まぁ、俺も家の手伝いで金貯まったし、足りないなんてことは……無いよな? 

 

「あら? お帰りかしら?」

 

「はい。店長さん。デッキからなにまでありがとうございました」

 

「良いのよ。こっちとしてはお客さんが増えて嬉しいから。それと、今日はなんだか大変だったらしいから。2人にはお詫びと言っては何だけど……ちょっと来てくれる?」

 

 店長さんは燐と霊亡を呼び出し、レジの方に向かわせると、店長さんがあるスリーブを渡した。スリーブの柄は、御巫と霊使いのものだった。

 

「このスリーブをあげるわ。こんなお詫びでごめんなさいね」

 

「い、いえいえ! 大切に使わせてもらいます! それと、また来ます!」

 

「わ、私もまた来ます〜。デュエルすれば、きっとまたあの子に〜ふへへ……」

 

 何やら考えているが、とにかく決まりだ。霊香達と一緒に近場の回転寿司へと向かい、燐のお祝いへと足を運んだ。

 

「ねぇ、兄貴」

 

「ん?」

 

「あのさ、今日はありがとう。知らない人に指摘さて、ちょっと萎えて止めようとしたのを止めてくれたり、守ったりしてくれて」

 

「兄貴だからな。妹を守るのは当然だ」

 

 わしゃわしゃと燐の赤い髪をわしゃわしゃとしたが、燐は抵抗せずに受け入れいていた。意外な反応に思わず手を止め、燐はムスッとした顔を浮かべた。

 

「……やめてよ、髪が乱れるじゃん」

 

「何だよ、さっきまでじっとしてた癖によ」

 

「バーカ……」

 

 何故か燐は早歩きで俺と距離を置き、あまり急ぐなと言っても燐は聞き入れずに行ってしまった。それを見た霊香は呆れるように肩を竦め、霊亡は何故かにんまりと笑っていた。

 

「うふふ〜可愛い妹ですね〜」

 

「えぇ。焔とは大違い」

 

「は、はぁ!? どこか可愛いんたよ。訳分かんね」

 

「知らなくても良いのよ。さ、行きましょう。あ、そうそう……」

 

 すると霊香は、いきなり俺の耳元に顔を近づけた。

 

「助けてくれて、ありがとう」

 

 氷の様な冷たさと、人肌の温もりが籠った吐息混じりの囁きが俺の耳に入り、脳がフリーズした。

 

「1度しか言わないから、もうダメよ」

 

 最後に霊香は、夕日を背に不敵の笑みを浮かべた。まるでいたずらに成功した妖怪が、俺を小馬鹿にしているような、そんな無邪気な笑みに俺は見えた。

 

 そして、夕日の輝きを受けた霊香の白い髪は雪の様に輝きを放っていた。  




今回の裏話は〜?

ズバリ!誰がデュエルが強いか、そのスタイルについてです。

結論から言うと彼方さんが一番デュエルが強いです。

まぁピックアップデュエル時点で分かっていたと思いますが一応。

また、各々プレイスタイルというのを決めており、例えば花衣の場合、モンスターとの絆で立ち向かうことをコンセプトとして、ビートダウン的な立ち回りを意識しています。(じゃあ何故神碑なんか使った)

彼方さんの場合は、1ターン事に勝利への布石を仕込み、相手の行動の先を行くようなスタイルを意識しています。

焔くんの場合はとにかく墓地肥やしと攻撃力アップの脳筋タイプ。……だけでは無く、実は灰流うららを1番使っており、どちらかと言えば自分の土俵を相手に押し付け、一気にその土俵で真っ向から勝負をかける様にしています。

空くんは設計図通りの様なスタイルではありますが、盤面完成の為にはライフを消し飛ばすのを躊躇わないタイプなので、実は焔君よりも直線的なタイプかも……?

花音ちゃんはとにかくライフを回復してアロマの効果を使うタイプ!デュエル描写が少ないのでまたやらせてみたい。

霊香ちゃんは焔君とタイプは似ていますが、妨害寄りにはしています。こちらも少しばかり描写が少ないので挑戦してみたいですね。

雀ちゃんはとにかく連続シンクロで最初から全力!突風の様に一瞬一瞬を凄まじくさせてます。現に、ほぼ全てのデュエルに置いて雀ちゃんは数々の番目を成立させています。

カレンさんはレインボードラゴンによる盤面を更地にさせるパワータイプを意識しており、全除去全ブッパと、大味なデュエルと考えてます。性格的にラビリンスが似合いそうだとの意見もありますが、ありかもしれない……



皆さんはどんなスタイルがお好みですか?ちなみに私はどちらかと言えば花衣君寄りで、妹はカレンさんタイプです。

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