六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
2人の意外な関係や、意外な趣味まで……!?
俺の名前は
というより、家のガレージで機械を作り、それを業者を介して届かせるというものだ。親もそのような道に進んでいる為、俺も将来の為に少し早くこのような事をやらせて貰ってるし、金も貰っている。金を貰っている以上、真剣に取り組んで作業しており、今はとあるバイクの部品を作っている。
唐突だが推しというものを、皆はあるだろうか。
推しというのは、簡単に言えば自分が熱中してる人に対して応援する活動の事を指す。
アイドル、スポーツ選手、はたまた創作上の人物にも当てはまり、推しの活動は人の数だけある。
ライブに行く、ファンクラブに通うetc.様々あるが、1番身近に感じられる推しは……今俺のスマホに聞き流し用に流れているコレだろう。
『ほう、橙色の供物か……感謝するぞ! 我が眷属よ! ではさっそくその供物の内容を賞味するとしようか』
今俺のスマホで流れているのは登録者が300万人の有名配信者、黒翼トバリという奴の配信だ。
デビューしてもう一年かそのへんだろうか、同接数は6万は超えており、リアルタイムのチャット欄は止まらずに配信の状況はトバリに対する質問、そして世間話みたいな物が溢れかえっている中、時々色の付いたコメントがある。
この色の付いたコメントこそ、推し活の最たる例であろう、スーパーチャット。俗に行くスパチャだ。
スーパーチャットというのは、配信サイトでコメントをする際、金銭を追加出来る特別なコメントであり、細かい事を省くとその追加した分の金銭がそのまま配信者の方に渡れるという機能だ。
また、追加した金銭の分だけコメントに色がつき、さっきのコメントではオレンジの背景だった為、2000〜4999円までの金額を投げ銭したことになる。これでコメントを読まれるようにか、純粋にお金を送りたい等など、ほとんどが応援を形にして出しているという事だ。
因みに、5000円以上でコメントの背景が赤くなり、それを赤スパと言い、リスナー側や配信者側からも驚かれる金銭の投げつけだ。
そんな物がこの配信者には多くあるのだからとんでもない。1日配信するだけで、数万稼いでいるという事なのだから、到底俺には真似出来ない。
この部品を製造して発注が完了しても……1万行くかどうかぐらいだろう。もう少し部品を多く頼んでくれればもっと貰えると思うが、まだ俺は学生だ。
例え親の紹介があっても、それほど重要な物を頼めるスキルも信用もまだ無い。これがあっちに対する俺の信頼という訳だ。まだまだだな……
「ふぅ……終わった」
配信の雑談を耳にしながら仕事を終え、部品を保管して汚れた手を洗う。今は夏の時期だからガレージの熱気も凄く、来ている服も汗まみれだ。少しシャワーでも浴びるか。
ガレージと玄関を繋ぐドアを開け、煤まみれになった服を洗濯機に入れ、浴槽に入ってシャワーを浴びる。
昼間の陽射しが相まってか、シャワーのお湯がいつもより心地良い。
ベタついた汗が洗い流され、十分体を洗った所で浴槽を出る。バスタオルで濡れた頭と身体を拭き、私服へと着替える。
とりあえず今日のやる事は終わったから暇だ。時間もまだ昼を少し過ぎたばかり……腹が減ったから適当な物を食べようとしたその時、俺の携帯電話が鳴った。
画面を見ると、電話をかけてきたのは
「もしもし? どうしたんだ?」
『あ、もしもし空? お願い助げで〜!! 確か機械に強いんだよね?』
「まぁそれなりには」
いきなり子供みたいに泣きじゃくりながら電話をかけられて驚きつつも、いつも通りと受け流して会話を進めた。
機械が強いと言われたから、恐らくは機械のトラブルとかそんなものだろう。
『じゃあ私の家に来て〜!! 大至急!!』
「は? おい、俺はお前の家知らな……」
「住所送るから! 待ってるからね! 絶ッ対に来てね!?」
そうして雀は一方的に電話を切り、すぐさまメッセージに自分の住所を送ってきた。
焔にも似た図々しさを感じつつも、仕方なく俺は最低限の荷物を準備して送られた住所に足を運んだ。
幸い雀の家はそれほど遠くなく、バスで行ける所だった。後はバス停から歩いて辿り着く住宅街の方に行けば雀の家に辿り着く。
「……ここか?」
多くの家の1つの標識に『河原』という文字が見つかり、試しにインターホンを押した。そして数秒後、家の扉が開かれ、雀が飛び出してきた。
「あ! 良かった〜来てくれたんだ!」
何やらかなり大変な事になっていたのか、髪も少し乱れ、服もTシャツだった。
「あんな風に言われたら流石にな」
「とにかく入って入って!」
「あ、あぁ……」
雀に腕を掴まれて家に入ると、一階には電気が付いていなかった。どうやら一階には誰もおらず、玄関の靴も1つしか無かった。
今は親が居ないのか……? そこが気にはなったが、今はそんな事気にする場合では無かった。雀に2階に案内され、奥の部屋に連れてこられると、そこは数々の棚や防音機能が兼ね備えた壁と、モニターが3つ揃っていたデスクトップのパソコンがあり、棚には同じキャラのフィギュアやらグッズとかかなりの数が置いてあった。
「……すごいな」
「えへへ〜まぁ、一応配信者だからね。感謝するが良いぞ! 我の聖域に足を踏み入れたのは、我と創造主だけだ!」
「創造主……親、という訳だな」
そう。何を隠そう、目の前にいる雀は……俺が朝に見た配信者、黒翼トバリなのだ。
今は配信が終わってメイクやら衣装やらはしてないが、この部屋とトバリの時に実際に会っているから事実だ。さて、そんな雀だが一体どうした事やら。
「それで、何の用だ」
「ええとね……何でかパソコンが壊れちゃって……お願い! 直して!」
すると雀は自分が使っているデスクトップパソコンに指を指した。目を向けたパソコンは見た感じ相当高性能であり、10万以上はくだらないだろう。そんなパソコンを壊すとは何とも信じられないが、困っているなら助けてあげるのが常だ。
「ドライバーはあるか?」
「無い!」
じゃあどうやってパソコン治すんだ。と心の中でツッコンだ。
「一応、工具を持ってきて正解だったな」
こんな時に備えて持ってきておいた工具箱を持ってきて正解だった。今回ばかりは自分の準備の良さを褒めたたえながら、パソコンのカバーを外していく。
パソコンのカバーを外した瞬間、まず目に付いたのは内部に少しこびりついている埃と、少しの焦げ臭さだった。
まさかとは思い、パソコンの基盤とも言えるマザーボードを確認すると、やはり少し焦げ付いていた。
「お前、パソコンの掃除してないだろ」
「ギクッ! な、何で分かったの……?」
「パソコンの中身が埃まみれだ。それに、マザーボードのボタン電池に発火しかけた形跡が……って、言っても分からないか」
雀はコクリと頷き、分かりやすいように説明した。
「要するに、中に埃が溜まり、電源を入れる際の電気の熱が埃にかかって発火したんだ。最悪火事になるが、今回はマザーボードの破損で済んだようだな」
「ま、マザーボードって……何?」
「簡単に言えばパソコンの基盤だ。これが無いとパソコンは動かない。それとCPUも少し危ないな……これは買い替えだな」
「パ、パソコンを……?」
「この程度なら、マザーボードとCPUを買い替えれば良い。データの方は、メモリが無事だから大丈夫だ。よくここまで無事に済んだと褒めてやりたい」
「か、買い替え……」
すると雀の顔が少しバツが悪そうだ。と言うより、パーツもどれを選べば良いのか分からないのだろう。仕方ないと思い、俺はある提案をした。
「……一緒に行ってやるから」
「ほんと!? じゃあ、今すぐ行こうよ! 今日暇だよね?」
「え? ま、まぁ……」
「じゃあ1階のリビングで待っててね! ほらほら、着替えるから!」
部屋に招かれたのに今度は部屋から追い出されてしまった。ともかくリビングに行き、雀が着替えるのを待った。
「雀と2人か……ん?」
待て。よくよく考えてみたらこれはとんでもない事なのでは?
相手は超有名配信者、そして俺は機械に強いただの一般人だ。言わばアイドルと2人で出かける見たいな物だ。もしもバレたらどうするんだ。炎上か、良くて引退か……ともかく、タダでは済まなそうだ。
だがしかしこのまま帰る訳にも行かない。ここは雀に言って自分で買いに行かせる……いや、俺が行った方が確実だろう。雀には家で待って貰える様に頼むとするか……
そう考えている内に、雀が1階に戻り、着ていた衣装を見せつけた。
雀が着ていた服は意外にもイメージと真逆の衣装だった。
上は腰まで届く長めの白いカーディガンを羽織り、その下には白いシャツ。スカートは少し明るい黒のロングスカート。アクセサリーには翼の形をしたネックレスに、猫耳のような小さな突起がある白い帽子を被っていた。
「どう? 似合う?」
「似合う……というか、意外な着こなしだなと思った」
「えへへ。まぁ、一応お忍びという事で。私も自重するよ」
「だったら、俺と一緒に買い物するのはどうなんだ? お前が自分の事をどう思ってるのか知らないが、お前はアイドルと同程度の存在だ。俺と一緒になったら、それこそ誤解されて、炎上するぞ」
300万人の人がトバリのことを応援していれば、その中には必ずガチ恋勢というものが存在する。そいつらにこんな事がバレてみろ。火種は広がり、炎上は必須だろう。そうなればこいつ自身に辛い事が降りかかり、俺にまで火の粉が出るかもしれない。
そんな面倒な事は避けたい次第だが、なお本人は……
「んー? 別に良いじゃん。私、アイドルでもなんでも無いんだし」
「だが……」
「それに私、今配信用のメイクしてないから大丈夫だって! ほら、トバリの顔と違うでしょ?」
確かに雰囲気と顔からではトバリとは思えない。……だが、俺自身は雀と面識があるせいか、トバリの雰囲気が拭いきれていなかった。勘のいい奴なら、これでトバリだと分かる気がするが……
「……私と行くの、嫌?」
「ぐっ……」
雀が手を握って涙目ぐんだ上目遣いで俺の事を見ていた。そんな目を見せられては断る事も断り切れず、俺はついに意見を曲げた。
「はぁ……分かった。分かったから」
「やった〜!! 流石私の眷属!」
「誰が眷属だ」
「え? いつも私の配信見てくれてるでしょ?」
「俺がいつお前の配信を見ていると言った」
「だってあの時、私がいつも配信で言っている言葉言ったでしょ? 『我は己の力で道を切り開かん。誰の指図も受けず、我は我が道をゆく!』って、一語一句しっかりとね?」
いきなりトバリモードとなった雀からは、トバリの決めゼリフを言い放った。
そう、あの時……ジェネリアという謎の少年から闇のオーラを纏ったカードを触れようとした雀を止めようとした時、俺はその言葉を言った。
この決めゼリフは配信で必ず1度言うセリフであり、あまり見てない人はこの言葉に気づかないことが多いが……いつも見ている人だったら別だ。つまり、俺は自分でトバリの配信を見ていると言っているような物だ。
その事をまだ覚えていた事に賞賛しながらも降参し、俺は配信を見ているという事を認めた。
「まぁ配信は見てるが、たまに見る程度だ」
「それなのにスマホの配信画面は私のファンアートなんだね」
「あまり減らず口を叩くとついて行かないぞ」
「わぁぁん!! 何でよぉぉ!! 分かった!もう言わないがら"付き合ってぐだじゃいい〜」
これが300万人を登録させた配信者の泣き顔と懇願か。まぁ、いつもの事だがらあまり珍しくも何とも無いんだがな。
さて、色々あったが雀のパソコンのパーツ探しに出た訳だが。マザーボード等はそれなりの店舗出なければ買えない。そこで俺達が向かった先は、いくつもの家電量販店等が立ち並ぶ場所、通称『オタマーケット』だ。
家電量販店意外にも、メイドカフェ、ゲームセンター、本屋、フィギュアショップ、カードショップ等、オタク達の楽園とも言える場所がわんさかある。ここならパソコンのパーツも、掃除用具も安く手に入れる筈だ。
「わぁぁ〜! やっぱりここは良いね! お、新しいフィギュアある!」
「おい、目的を忘れてるんじゃ無いだろうな」
「え〜でも折角オタマーケットに来たんだし、ちょっと探索しようよ〜掘り出し物、あるかもよ?」
「……たく、仕方ないな」
パーツ探しは一旦置いておいての、雀との探索が始まった。まず雀が行ったのは大手のアニメショップであり、そこには雀と同じ配信者のフィギュアやオリジナルソングのCDまで売られていた。どれも普通の店では買えないものばかりであり、流石はオタクの聖地といったところだ。
「あ、見て見て空! 私のフィギュアあるよ。お〜結構精巧に作られてるね〜」
「あまり自分の名前を出すな。バレたらどうするんだ」
「えへへ。あ、こっちは最近人気になった子のCDだ。この子歌が上手で良いんだよね〜」
「お前はこういうの出さないのか?」
「うーん、私は個人配信主だし、そういうのはあんまりしないかな。歌ってみた配信とかはやるけど、本当にその程度だよ」
「確かに。歌、上手いもんな」
「空はどうなの? 意外と音痴とか?」
「歌は苦手だ」
たわいの無い雑談を交えながら店の中の物を物色しては、雀が買い。その荷物を俺が持っている。両腕を使ってギリギリな数であり、結構重い。
「……いやいやおかしいだろ。何で俺が荷物持ってるんだ」
「ふっ、貴様は我の眷属なのだ。眷属なら我の労力を抑えるのが世の常だ」
「理不尽すぎだろ」
「ふっ、だが我は機嫌がいい。どれ、眷属の持っている荷物一つを持ってやろう」
「はいはい。ありがたき幸せでございます」
と言っても、一つだけじゃ何も変わらない訳だが。しかも雀は1番軽い物を持っていってしまった。
「さて、そろそろパーツを買いに行くぞ。こんな事すれば日が暮れる」
「はーい」
ようやく本来の目的を果たすために家電量販店に足を運び、早速パーツを比較する。雀に予算等を聞き、出かける前に取っていたマザーボードの企画や他のパーツの部品の規格を見比べ、最適なパーツを選ぶ。
「ねぇ、高いパーツを買うだけじゃダメなの? 私、予算結構あるよ?」
「高い=良いものとは限らない。部品の規格が合わなければ使えないし、そもそも自分の用途に合わせた物が1番良い。ゲーム用、動画編集用等だ。お前の場合は……これだな」
トバリの配信はゲーム配信が主であり、ゲームや配信に向いたCPUとマザーボードを見せた。と言っても、雀にとっては分からない物だが。
「うーん、よく分からないけど。空が選んだ物なら大丈夫そうだね」
「そうか。じゃあ後は……PCの掃除用具だな」
パーツを買っても、またあんな事にならない様に対策しなければならない。その1番の方法が定期的な清掃だ。
レジに通すのを後にし、清掃道具を買いに行った。
「ええと……どこだ?」
流石電気街の家電量販店と言うべきか、清掃道具を探すだけでも一苦労だ。それに荷物が多くて歩きずらい中、不意に俺は誰かとぶつかってしまった。
幸い荷物は無事であり、俺は荷物を一旦置いてぶつかった女性を心配した。
「すみません。大丈夫ですか?」
「い、いえ! 私の方こそ……ぼうっとしてしまって……」
ぶつかった女性は春物のセーターとスカートとシンプルな物を着ており、慌てて謝り返して顔を見せた。
すると、その女性は面識がある意外な人だった。
「あ、貴方……空さん。ですよね?」
「……? あぁ、確か【ロマンス・タッグデュエル】で見下のタッグだった」
「はい
「あ! 思い出した! 花衣のデッキを盗んだゴミクソ野郎のタッグじゃん!」
「間違ってはいないが言い過ぎだ。だが花衣の話では事情があって組んだと聞いたが……」
確か……見下の父親が経営している会社の下請けの中小企業の社長の娘であり、つい最近までは経営が困難になったらしい。そこに見下は目を向け、この人とタッグを組んだと聞いたが……
「ええ。まぁ過ぎた事なので大丈夫です。それよりも、まさか空さんに会えるなんて光栄です!」
「ん? ねぇ空、この人と会ったことあるの?」
「いや……ロマンス・タッグデュエルでは1目ぐらいしか見てないと思うが……」
「あ、あの。間違ってなければ、空さんって二足駆動機械コンテストで最優秀賞を取った人ですよね?」
「え? な、なんて? 2足……?」
「あぁ……アレか」
奈実が言っているコンテストは簡単に言えばロボットコンテスト見たいな物だ。今現在、二足歩行のロボットを自由に動かせる技術はあれど、実現可能な領域までは無い。
バランス感覚というものが無い機械が走れば転倒するし、走った時の重心が関節部分に負担がかかって長時間の運用が出来ない物もある。
それは、そんな二足歩行のロボットを学生レベルだとどうなるのかというものを来そうコンテストだった訳だが。俺はその時見事最優秀賞を取った経験がある。まぁ、去年の話だし、今となっては関係の無い話だ。
「そ、そんなにすごい事……なの?」
「凄いだなんて物じゃありません! 空さんが作った二足歩行の機械は安定した走り出しと長時間の運用を可能にしておりとても学生では作れない技術アイディアが練り込まれていたんですメタ運動パラメータが良いのか関節駆動が特殊なのかあと……」
「え? なになに? 呪文?」
「……あっ、す、すみません。私、機械の事になると夢中になって……あはは、女の子なのに変……ですよね」
指をいじりながら奈実は自分を卑下する様に言っていた。
「いや、変じゃない。素晴らしい事だ」
「え?」
「女性なのにとか、男性なのには関係ない。自分がやりたいものになる事に誰にも止める権利は無い。俺はそう思っている」
「なりたいもの……ですか?」
「あぁ。それに、そのコンテストの名前を聞いて思い出した。そっちもアレに出ていたんだろ? そっちのロボも凄かった。平衡感覚を失わせず真っ直ぐに走らせていたし、股関節部分の駆動技術は俺よりも上だった」
俺はあの時の光景を思い出し、奈実を褒めたたえた。
「あ、ありがとうございます! あ、貴方にそう言って貰えるなんて感激です! そ、そうだ! もしよろしければ連絡先を交換しませんか? あ、あの次は駆動理論のお話とかも是非……」
すると奈実は俺の後ろにいる雀を見て携帯を取り出すのを止めた。
「あ……やっぱり良いです。彼女さんの前でこういうのは流石にダメですよね……」
「彼女?」
俺は後ろにいる雀と目を合わせ、苦笑いしながら否定した。
「いやいや、こいつはただの知り合い程度だ。こいつが彼女だったら苦労しかしない」
「むっ! その言い方は無いんじゃないの〜!?」
雀がポカポカと俺の身体を叩こうとする所を、頭を抑えて拳が届かない所まで押さえつけ、片手で携帯を取り出した。
「とにかく、俺は別に構わないぞ。そっちの技術とかも興味はあるしな」
「え……ええと……それじゃあ、お言葉に甘えて……本当に良いんですか?」
「構わないさ」
とにかく、奈実と連絡先を交換し、奈実は自分の目当てのパーツを探しに俺と別れた。
「さて、俺達もそろそろ目的の物を探そう。……お、あったあった。このスプレーだ」
清掃は基本的に埃とかを退かせれば大丈夫な筈であり、このスプレーだったらカバーを外し、中にある部品に向かって吹きかければ問題ない。
目当ての物を買ったし、雀が金を払い、レジに商品を通して購入した。後は雀の家に帰ってパーツを組めば問題は無い筈だ。目的も達成した為、雀の家に戻り、早速パーツの組み合わせを始めた……がその間の雀の様子が少しおかしかった。
なんというか、しょげている感じだ。声をかけようにもなんでも無いの一点張りだった。
にも関わらずに俺の作業をじっと見ていたりと、何かと分からない事ばかりだった。
「……どうしたんだ雀。俺がなにか悪い事したのか?」
「別に。我は貴様ら下界の者とは違って悩みなんて持たないもん」
「いつもとトバリの時と入り交じってるぞ。……悪いことをしたなら本当にすまないと思ってる」
「つーんだ」
だが雀の機嫌は直らなかった。これでは作業にも集中出来ず、下手すればPCパーツを壊しかねない。
一旦作業を止め、どうすれば機嫌が直るか考えた。あいつが喜びそうな物でも与えれば良いのか? それとも謝り倒せばいいのか?
だが、それでもいい考えには至らなかった。……いや、一つだけ可能性はあった。しかし本人にこれを言うのは少し気が引けるが……俺にはこれぐらいしか思いつかなった。
「……なぁ、お前の配信に赤スパを投げている『フクロウ』って知ってるか?」
「うん。いつも配信に来てくれて、結構なスパチャしてくれたり、ファンアート描いてる人。今日は来てなかったけどね」
「あれは俺だ」
「……ふぇ?」
驚く雀に証拠の携帯を取り出し、その中のアカウントを見せた。名前はフクロウであり、スパチャの履歴も見せた。そこまでは高頻度という訳では無いが、赤スパを投げた履歴は確かにあった。
「……それで?」
「別に何かをさせたい訳じゃない。知って欲しいだけだ」
更に俺は携帯の画像フォルダにあるイラストの線画を見せた。そこには、トバリのまだ公開されてないファンアートが何個かあり、それを見た雀は目を見開き、俺の携帯を取り上げた。
「これ……まだ描いてる途中のファンアート?」
「あぁ。スマホではこれだけだが、俺のPCにはまだ何個かある。……なんて言うか、お前の事は特別に思ってる」
「ふぇ……!?」
すると雀は顔を爆発させたように赤くさせ、俺の携帯を落とした。
俺はその携帯を取り出し、雀と目を合わせた。
「……初めて配信を見た時、変な奴だなと思った。ただ、それ以上に面白い奴だと思った。だからスーパーチャットはしているし、こうして絵も描いてる。……工学上、設計図も書いてはいるが、それがこんな風に使うとは思わなかったけどな」
こいつの配信を見るまで、俺は絵なんて設計図しか描いて無かった。それがどうだ、1人の為に絵も描いている。大量にだ。昔の俺だったら絶対にしなかった所だ。
人生というのは、どうなるか分からないな。
「だから……そんなお前を怒らせた事を本当に申し訳無いと思ってるし、自分自身を許せない。許してくれとは言わない。だからその……機嫌、直してくれないか?」
我ながら下手くそな機嫌取りだとは思う。これで機嫌が直らなければ、今後の配信をどんな気持ちで見れば良いのやら。
少しの時間が経ち、沈みゆく心が更に沈みそうな気分でいるその時、雀は立ち上がって右手で左目を覆い、ポーズを構えた。
「……ふっ、ふはは! よかろう! 我が眷属の頼みだ。聞いてやろう。しかし、その為には貴様には我に血の契りを交わして貰うぞ?」
「……条件付きでって事か?」
「無論その通りだ! 良いか! 貴様には眠られた記憶がある! その記憶を辿り、そこにある契りを果たせ! それが許しを得る条件だ」
「……すまん、こればかりは意味がわからん。どういう事だ?」
「つ、つまりだな! その……ええと……」
徐々に素の態度に戻り、指を弄ってもごついている雀は、吹っ切れて叫んだ。
「あ、合言葉を言って!」
「合言葉……?」
「え? ……覚えてないの?」
「……心当たりすら無い」
「え、ええと……そ、そっか! もしかしたら眼鏡かけてないから分からないんだ! 私実はコンタクトレンズつけてて、それが無いとすっごく目が悪いの! ちょっと眼鏡借りるね!」
あたふたした雀がいきなり俺の眼鏡を取り上げ、俺の視界がぼやけた。俺も結構目が悪いから眼鏡をしているんだが……という暇も無く、雀が眼鏡をかけた。
「どう!?」
どうと言われても、全く見えないし距離感も掴みにくい。目を細めても何も変わらず、じっと見つめても何も見えなかった。
「すまないが、俺は視力が悪いんだ。だから、返してくれないと見えないんだが……」
「へ……? そ、そうなんだ……」
声だけでも雀が落ち込んでいる姿は分かり、雀は俺に眼鏡を返してくれた。……よし、ちゃんと見えている。
「なぁ。さっきから何だ? 合言葉とか、昔のこととか……」
「……ううん。良いの。大丈夫。ごめんね、変な事言って。だから、条件変えるね」
「条件?」
「これからも、配信見てくれると嬉しいな。無理にスパチャとか、ファンアートとか描かなくても大丈夫。見てくれるだけで、一言コメントしてくれるだけで……嬉しいから」
雀は高笑いでも、カッコ良さに全振りした笑顔でも無く、雀本心の笑顔を見せた。多分、誰にも見せてない、俺にしか知らない笑顔だった。
気が触れたかもしれないが、一瞬、ほんの一瞬だけ雀が天使のようにも思えてしまった。その笑顔を見た俺は、許されたような気持ちになり、雀と目を合わせた。
「……あぁ。だが、俺は無理をした覚えもない。これからも、したいようにはする」
「ふふ、ありがとう。私の眷属さん」
「その前にパソコンを直さないとな」
「うん! よろしくね」
俄然やる気が溢れた俺は、作業の手を再開した。その姿をじっと雀は見ており、やってみるかと声をかけ、雀も協力して見事PCの修理は完了した。
買い物もやったから時間も遅く、PCを直した俺は早速家に帰った。
人が少ないバスに揺られている中、ふとトバリの言葉を思い出した。
_合言葉を言って!
「合言葉……か」
そういえば昔、俺は誰かとそんな事を言っていた様な気がする。
10年前ぐらいだろうか、俺は昔変な少女と会ったことがある。その子は確か、天使を見たと学校中に言い回っていたが、勿論誰も信じる訳が無く、彼女は孤立していった。彼女とは別のクラスで同じクラスになったことが無いため、あまりよく知らなかった。
そしてある日、その子が虐めている所を見た俺は、思わず虐めていた奴を殴り、喧嘩した。結果は散々だったが、その虐められていた彼女だけは守った。
そこからだ。少しづつこの事がきっかけで仲良くなり始めたが、彼女は転校してしまった。短い間で、彼女の顔はもう覚えてない。……が、彼女との約束は覚えている。
もしまた会う事があれば、合言葉を言う。そうすれば……
「……まさかな」
俺はある考えに辿り着いたが、直ぐにそれは否定した。何故なら、その時の彼女とは性格も顔も全然違うからだ。
彼女はとても暗く、眼鏡もしていた。それに苗字だって違う。きっと違うのだろう。だがもし、あの時の女の子が雀だとしたら……
「考えすぎか」
身体全体の力を椅子に持たれかけ、無線のイヤホンを両耳につけ、俺はトバリの歌枠配信を聞いた。
この時何故か、また昔の事を思い出した。下手ながらも、一緒に歌ったあの頃を。
_また、会えるよね?
俺の頭の中で、彼女はそう言って夜の闇へと消えていった。
今回の裏話:各キャラの趣味について
今回、空くんの意外な趣味とかが明らかとなった今。ついでに他の人達の趣味にいつてもお話しようと思っています。まぁ所謂設定紹介というやつです。
大体こんな感じです
花衣:無し
焔:筋トレ、剣道
空:機会工作、推し活(ファンアート制作)
彼方:勉学
花音:ハーブの調合や、植物を育てる事
霊香:可愛いもの集め(ぬいぐるみ等)
雀:マンガ、アニメ、ゲーム
カレン:美しい物を集めたり、見ること
ま さ か の 主人公の花衣君の趣味が無し。
皆さんは何か趣味とかありますか?因みに私は動画編集とかその辺りです。
オリカをまとめた章が欲しい?
-
欲しい!
-
別に( *¯ ³¯*)