「......」
とある路地裏でみすぼらしい格好をした一人の少年が踞り、空を見上げていた。
「......」(俺、捨てられたのか.....)
数時間前、彼は口減らしとしてこの路地裏に捨てられてしまったのである。
それからずっと、彼は空を見上げていた。
「君、何故空を見上げているんだい?」
暫く空を見上げていた時、ふと誰かに声を掛けられた。
声のした方に顔を向けると、一人の男がしゃがんでこちらを見ていた。
「......こうしてると、気が楽なんだよ....」
「見上げてるだけでかい?」
「あぁ、そうだよ...あんたには分からないだろうがな。」
「ふむ...」
少年が男にそう言うと、男は何故か考え込みだした。
「?」(なんだ?このオッサン...いや、それよりなんでこんなヤツが路地裏に...?)
「よし、決めた。」
「?」
「君、私と来なさい。」
「...ハァ?」
突然そんな事を言われて『このオッサン、もしかしてヤバいヤツではないか?』
と思ってしまう。
「なんで俺が...」
「いいから来なさい、付いてくるなら何か食べさせてあげよう。」
「誰がそんな事で付いていくか。大体俺は、腹なんて減って...グウゥゥゥ~....」
「......」
「......」
暫しの沈黙、
「それにしては大きな音だったけど?」
「ぐうううう...!!!」
醜態を晒してしまった少年の顔は真っ赤になり、
「だ~~~~分かったよ!付いていけばいいんだろ!付いていけば!!!」
半ばヤケクソで男に付いていくことにしたようだ。
「そういえば、まだ名乗っていなかったね...私は浅利
「...七海だ、名字は無い。」
「そうか、では七海。私から離れないようにね。」
「こ、子供扱いすんなよ!!!」
「でも子供でしょ?」
「うぐっ!!!」
こんなやり取りをしながらも七海は浅利の後に続いて付いていくのだった。
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「さぁ、着いたよ此所が私の家だ。」
辿り着いたのはある山の中。彼の目の前には一軒の家が建っていた。
「此所は?」
「私の家だ。」
浅利はそう言うと、中へと入っていった。
「...俺も入るか。」
彼の後に続いて七海も家の中へと入っていった。
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「...上手い...!」
「それは良かった。」
ガツガツと食事にありつく七海。彼を見て笑顔を見せる浅利。
暫く、こんな光景が続いていた。
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「....で、俺に何かして欲しい事があるんだろ?」
食事が終わり、七海が浅利に尋ねるように聞いた。
「おや?単刀直入にきくね、七海。」
「当たり前だ。見ず知らずの俺をこんなところまで連れてきてタダで帰されるなんて思っちゃいなかったさ。」
「ということは、分かってて私に付いてきてたのかい?」
「......生きる為だ、それぐらい覚悟してたさ。」
「......」(まだ幼いのに....相当、苦労したみたいだね...)
七海は齢10歳にして悟った様に語った。その様子から、浅利は彼の境遇に憐憫に近い感情を抱きつつあった。
「......付いてきなさい。」
再び浅利が七海を何処かへと案内しだした。
しかし、その時の浅利の様子は先程の柔和な雰囲気とは一変し。
まるで剣士の如く鋭い気配へと変化していた。
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「此所だ。」
後に付いてやってきた場所は森の中、其処は所狭しと罠が張り巡らされていた。
「これは...?」
「此処は"鬼殺隊"を育て上げる為の訓練場だ。」
「"鬼殺隊"?」
聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべる七海であったが、次に叢雲の口から出た言葉に彼は更に困惑してしまう。
「突然だけど、七海は"鬼"と呼ばれる存在がいる事は知ってるかい?」
「...そりゃ、"鬼"って言えば...人を襲うあの角の生えた"鬼"の事だろう...でもあれは、物語の中にしか存在しない....「いや...違う...。」...?」
「鬼は、この世界に確かに"存在"する存在だ。」
「.........は?」
浅利の力説に呆然とする七海だったが、彼が嘘を付くような人物ではないことは七海自身理解していた。
「教えてくれ。」
「...分かった。」
浅利からの話を要約するとこうだ。
鬼とは夜に行動し、人を襲い、殺し、喰らう"元"人である生物の総称。
鬼は夜しか行動出来ず、朝日を浴びてしまうと灰になってしまうこと。
その鬼を生み出しているのは"鬼舞辻無惨"と呼ばれる鬼だということ。
鬼を倒す手段は頚を斬るか朝日を浴びせるしか方法がないこと。
「"鬼殺隊"とは、その鬼を討伐し、人々を鬼から守る部隊の事を差すんだ。」
「はぁ....」
一通り聞いていたものの、疑問に思うことが幾つかある様子の七海。
「なんで鬼は減らないんだ?鬼殺隊が殺してるのなら少しは数が減っていてもおかしくはないはずだけど?」
「そうだね、七海の疑問は最もだ...此処で先程説明した"鬼舞辻無惨"が関係してくる。」
「"鬼舞辻無惨"...鬼を生み出した鬼...だったな。」
コクリ、と頷くと叢雲は説明を続けた。
「そもそもの話、"鬼"とは原初の鬼"鬼舞辻無惨"が自身の血を与えた者達が変化した存在のことであり、血を分け与えた"鬼舞辻無惨"は何時の時代からかは分からないが今も生き続けていると言われている。」
「.........は?」
(一体、何の冗談だ...?)
「つまり、鬼舞辻無惨は今も生きていて、今も鬼を生み出し続けていると、そういうことになるのか?」
「その解釈で間違いない。彼は今も身を潜めて僕ら人類を脅かそうとしている。」
「それで?なんであんたが鬼についてそんなに詳しいんだ?」
「実は私、昔は鬼殺隊に所属しててね...その中でも最強と言われた柱という役職を努めてたんだよ。」
と、笑いながら雨凱は語った。
「元"鬼殺隊"の...."柱"!?」
信じられなかった。この男が鬼殺隊の中でも最強と呼ばれる"柱"という役職だったという事実が。
「...話を戻そう。七海、私は君を"鬼殺隊"に入隊させるために鍛えたいと思っている。」
「.........」
七海は考える。今も鬼達は人々を襲い続けていること。鬼舞辻無惨という鬼が今も生きていること。
それらを考え、七海は決断した。
「...分かった。俺、鬼殺隊に入隊するよ...そして何時の日か、鬼舞辻無惨を斬ってみせる。」
「...決まりだね。」
互いに熱く握手を交わし、再び浅利の説明が入る。
「それじゃあ先ずは隊士の基本、"呼吸"について説明しよう。」
「"呼吸"?」
「"呼吸"とは、それぞれ炎・水・風・雷・土など複数属性があり、中にはそれぞれの属性から派生した呼吸法も存在する。この呼吸法とは...そうだね、簡単に言えば鬼を滅する為に必要な技術だ。」
「鬼を滅する為の...技術...」
「私が教えるのは、"雨"の呼吸」
「"雨"の、呼吸...派生の呼吸か」
「そうだ。これは"水"の呼吸から派生した呼吸法....攻守に優れ、非常にバランスの取れた呼吸法だ。」
「面白い....!」
かくして、鬼殺隊への道を歩み始めた七海。彼はこれから修行に参加し、技術を身につける...のだが、
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それから数日後、
「998...999.....1000!!」
今、素振り千回を終え、七海が一息付こうとした所、
「はい、あと3セット追加。」
「えっ」
「はい、早く振る。」
「1...2...3...」
雨凱の行う修行が厳しく、この素振りだけで何度も手のマメが潰れ、手が血だらけになるのだった。
(もしかして鬼って....この人の事なんじゃないのか?)
そう思ったが口には出さず、黙々と修行に励んだ。
ある時は崖から滝壺に落とされ、
「アアアアアアアアアア!!!!!」
またある時は小刀が四方から囲むように飛んできたり、
「うわわわわっ!!!?」
またある時は雨凱に満面の笑みで腹パンされたり
「フンッ!」
「ガッ!」
と、それはもう地獄の日々と言っても過言ではない程の過酷さであった。
それから数ヶ月後
「では、最後の修行だ。」
そう言って連れてこられたのは一つの大きな岩のある森の中であった。
「この岩を斬るんだ...それが最後の修行だ。」
「この岩を...」
見るからに巨大で注連縄が巻き付いている岩がそこにあった。
「では、私は戻っている...斬れたら私の所に戻って来なさい。」
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「岩を...斬る...。」
先程の雨凱の言葉を反芻してどうすべきかと考えを巡らせる七海。
(恐らく、今までの修行内容を考えれば先ず普通に斬るのではダメだ。)
かといって、このままここで立ち尽くしている訳にもいかない。
「どうしたものか...」
「お前が次の弟子か」
「!」
振り向くも誰も居ない。
「...気のせいか?」
「いいや、気のせいじゃないぞ。」
「!」
今度は七海の眼前に声の主が現れる。
其処には、一人の少年が此方を見ていた。
「いつの間に...!」
「さて、此処まで来たんだ....後は、分かってるよね?」
少年は刀を抜き、構える。
七海も刀を抜いて構える。
(この行為にどういった意味があるのかしらないが....兎に角、アイツを倒す!!!)
こうして、七海が鬼殺隊に入隊するため、最後の修行が始まった。