ナツメグ探訪記   作:Almin

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前回までのあらすじ

①番組企画でネフホロ2をやる夏目ちゃん
②無事ストーリークリアし、ルストと対戦することになった
③次回までになんとか対策しないと!




万全を期して休養に走る

「対人ランク最近1位……1位保持期間1位……累計勝率1位……過去作ランク1位……『過去作での使用機衣人(ネフィリム)、緋翼連理を知らない人はいない』……とんでもないわね」

 

テレビ局とブラックドール社からWiki等の使用が許可された(どうも初見プレイはストーリーモードだけの話だったらしい)のでルストさんについて調べているが、本当にこの人アマチュア?という情報ばかり出てくる。

 

過去作は操作難度のせいで過疎化状態だったらしいが、それでも、いやだからこそ、それを乗り越えたプレイヤーの中で無敗を続けたことは偉業だろう。

 

 

「フィドラークラブ構築……なにこれ隠密と奇襲の塊じゃないの」

 

ただ、その隠密奇襲が緋翼連理(中距離機体)にはめっぽう刺さるらしい。とは言え……

 

「これをそのまま、ってのは番組としては無しよね……」

 

プライベートならいざ知らず、ゲームを紹介する番組でやることではないだろう。

 

「とは言え、顔隠し(ノーフェイス)は相性を見て機体を作れって言ってたし……」

 

あちらもプロではないが、昨日の感じ(惨敗)過去(GH:C)の経験から、なんとなくそれが正しいことは分かる。

 

「うーん……………………」

 

チーン

 

あ、フレンチフライ。

 

このメーカーのはサワークリームを出さなきゃ……

 

 

◇◇◇

 

どうにも考えが煮詰まらないので息抜きにシャンフロをさわることにした。

 

言っておきたいのは、これは行き詰まって逃げたのではなく、あくまで気分転換だということ。

 

そもそもネフホロ2の演算システムは通称シャンフロシステムと言われる通り、GH:Cやもちろんシャンフロとほとんど同じ。つまりシャンフロをやることで、ネフホロとGH:C両方の肩慣らしが出来るのよ。

 

「まさに一石二鳥、ってね」

 

()()()()()()の宿から起き上がり、インベントリを確認する。

 

「……やっぱり無いとダメね。チェストリア」

 

 

収納鍵(しゅうのうけん)チェストリア。

インベントリの所持制限を実質取り払うという、アイテムを大量に保持する必要がある錬金術師にとって、必須級のアイテム。

 

格納鍵(かくのうけん)インベントリアという完全上位互換アイテムもあるらしいけれど、入手難易度と用途を考えれば、チェストリアで事足りるはずなのよね。

 

 

『おかえりなさいペッパー・カルダモン』

 

「第四階層まで行くわ」

 

ベヒーモスに乗り込んでブーケ・パズル(入門証)を提示し、先日到達したばかりの階層まで移動(ワープ)する。

 

「……筍狩り、だったわね」

 

『よく憶えていましたねペッパー・カルダモン。ですが折角ですから復習しましょう。この階層の突破条件はフィールドに存在する「カンムリタケノコ」を私の元へ持ってくることです』

 

ライブラリの攻略情報のおかげで第一、第二階層はソロでもクリアできた。一方で第三階層と第四階層は「モンスター討伐」という目的も相まって、パーティープレイが要求される。

 

ギルドに所属していない私は必然的に野良パーティーを募集することになるのだけれど……

 

「パーティー募集の方ですね?」

 

ここには常駐プレイヤー(ライブラリ)がいるので人員には事欠かない。

 

「ええ。ジョブは錬金術師でサブ剣士よ」

 

「これから爆泳魚(スウィマイン)の生態調査をしに行きますので良ければご一緒しますか?」

 

問いとともに送られてきた申請に「はい」を返し、4人パーティーが完成した。

 

元々予定していたパーティーに割り込んだ形。ライブラリなので他メンバー同士は連携はできると見込んで良いでしょう。

 

…………

 

……

 

「……」

 

私は何をしているのだろう。

 

「見たところ6体はいそうですね」

 

「……8体じゃないか?ほら、あっち」

 

「ああ、本当だ」

 

騎士と聖職者を横目に、下を見下ろせば忍者。

 

今私たちは樹の枝に立っている。

 

歩行音と振動を抑制する「隠者の行進(ハイド・アンド・シーク)」と、歩行動作を円滑化する『忍唐足袋』によって、忍装備の(正確には)忍聖は爆泳魚(スウィマイン)に関知されることなく林を探査できる。

 

そして、接敵しても【平和主義宣言(ニュートラライズ)】によって数秒間だけ戦闘開始判定が発生しない。

 

「うん、そこ、足元」

 

ジェスチャーを受けた忍聖が足元にエフェクトのかかった大太刀を突き刺し……

 

ドン

 

ドカカカカカカカ……ン

 

…………

 

「ごめん。ダメだった」

 

「アイテムは?」

 

「見えた範囲は」

 

忍者の拾ってきたアイテムは先ほどまでと同じ「爆泳魚の堀地鰭」と「爆泳魚の礫鱗」。

 

ライブラリの見立てでは爆発特性に関わるレアドロップがある筈……なのだが、入手報告が全くない……らしい。

 

「やはり、爆発させずに倒さないとダメなんでしょうね」

 

「ただ、即死火力を当てるんじゃダメなんだよな」

 

「攻撃から体力0までの()()に自爆行動されるみたいだな」

 

「……自爆そのものを止めるのは?……」

 

「……拘束魔法はどうだろう?」

 

「……あれは厳密には行動を封じる訳じゃないから……」

 

「……例えば麻痺系毒やスタン系の魔法とか……」

 

「次はそれで……」

 

回収したアイテムを手渡された(錬金術師)は、議論を小耳に挟みつつアイテムの製作に取り掛かる。

 

「作れるアイテムは変わらず……爆弾と耐爆ポーションね……」

 

レアドロップが無くても爆発系アイテムが作れるのは、爆泳魚(スウィマイン)の体全体が機雷みたいなものだから、らしい。

 

「爆発範囲も耐性もほぼ変わらず……ね」

 

使用アイテム数を増やしても性能が大きくは変わらない……と言うことは、ライブラリの見立て通りレアアイテムがないと上位版アイテムは作れないのだろう。

 

…………あれ?

 

「……ちょっといいかしら?」

 

「はい。どうしました?カルダモンさん」

 

「「(タケノコ)狩り」はいつ頃になるかしら?」

 

あっ。という擬音が聞こえそうな表情が3つ。

これは完全に忘れられてたわね……。

 

「そうでしたね。すみません。議論検証に集中し過ぎるのは私たちの悪いクセですね。こちらはまだかかりますから、先に狩りに行きましょう」

 

 

「カンムリタケノコはドミネイト・グリズリーという熊のようなモンスターの頭に生えているタケノコになります」

 

「Wikiで見たわ」

 

「なら基本行動については問題なさそうですね」

 

「まだ検証段階ですが、ドミ……長いので竹熊としましょう。竹熊の移動ルートはおおよそ推測できています」

 

そういうのは『検証中』項目としてWikiに載せてもいいと思うのだけど、そこはポリシーなのかしらね。

 

「……っと、いましたよ」

 

 

◇◇◇

 

「詰めますよ!」

 

掛け声に合わせて前衛が一斉に溜めモーションに入る。

 

ドミネイト・グリズリーの外殼は既にひび割れ、パンダのような造形ももう見られない。

 

それでも、ドミネイト・グリズリーは咆哮を上げ、腕を挙げる。

 

「「ブルズアイ・スロー」!」

 

「【エンチャント:ヴァー・ミリオン】!」

 

刃隠心得(はがくしこころえ)影縫(かげぬい)】!からの「スパイラルエッジ」!」

 

「「覇山鳴動」!」

 

よしっ!怯んだ!

 

「【エンチャ……っ!!」

「カルダモンさん!爆泳魚来てます!」

 

リキャスト!間に合うわけない!

 

「伊達に投げ続けてないのよ……!」

 

「ありがとうございます!……【エンチャント:フレイザード】!」

 

 

さっきの連係でドミネイト・グリズリーはあと一押し、なら私は爆泳魚に徹するのみ!

 

とはいっても

 

「これ以上来られると投擲じゃ間に合わない」

 

私の腕は2本しかないのよ!

 

「どうする?使う?というか使える?」

 

2体、3体爆破。残る敵影は……たくさん。

 

「セスナさん、()()()()()を防ぐ魔法は使えますか?」

 

回答は詠唱によって返される。

それを確認して、私は踊る。

 

いくわよ。エグゾーディナリースキル、「霧幻萌踊(ジャッカロープ)」!

 

地雷源でタップダンスなんて正気じゃないと普段なら思うけれど、ここはシャンフロ。ケイオスシティじゃない。

 

「『生態系を再現した』からには()()もその中の()も再現されてる筈、そうよね?!」

 

踏みしめる足が大地を揺らし、呼び起こされた()()は幻覚を生む。

 

幻覚を得た熊は虚空へと腕を振り回す。

 

幻覚を得た魚は……一斉に起爆した。

 

「え、これ攻撃判定なの?!」

 

酔って動かなくなる予定だったんだけど?!

 

「いえ、爆泳魚の自爆は攻撃を受けた際の反射行動ではなく、どちらかといえば種子を遠くへ飛ばそうとする植物のような、子孫を多く残そうとするための行動のようでして……」

 

「個人的には今使ってたスキルの方が」

 

「はいはい。説明も質問も後回し!次が来る前にドミネイト・グリズリーを倒すよ!」

 

あぁもう、よく分からないけど今は動くしかないわね!

 

やってて良かった舞踏鎧武伝(ダンシングアーマー)

 

ラウンド中常に()()()()()ことを強要されるゲームデザインのせいでコアゲームに落ち着いていたし、私も正直苦手なゲームだったけれど、霧幻萌踊(ジャッカロープ)との相性が抜群に良い!

 

タップ、タップ、タップ、()()()()()が崩れない程度にリズムを崩してタップ!

 

直剣用意、ヨシ!射程距離、範囲内突入!

 

喰らいなさい渾身の回転上段斬り!

 

ドシッ

 

バファッ

 

「カルダモンさん?!」

 

「サブ剣士って言ったでしょ!」

 

とはいえバフ無しじゃ火力が

 

「なら纏めて掛けますよ!【エンチャント:ハイストレングス】!」

 

新しい爆泳魚(スウィマイン)が来る前に終わらせる!

 

「「兜割り」!」

 

「「覇山鳴動」!」

 

「【獣爪乱華】!」

 

 

 

◇◇◇

 

『はい。確かにカンムリタケノコですね』

 

「ありがとう。お蔭で次に進めるわ」

 

「いえいえ。こちらこそ霧幻萌踊(ジャッカロープ)の情報ありがとうございました」

 

『進む子と留まる子、我が子も様々ですね……彼女は快く思わないでしょうが、私は歓迎しましょう』

 

 

Wikiによると次の階層は……

 

…………

 

……

 

『素晴らしい働きです、我が子よ。第六階層へと転送しましょう』

 

「お願いするわ」

 

初見殺しの黒死の天霊(対策がわかっていればどうということはない)は、実のところ錬金術師とはかなり相性が良い。アイテム管理と投擲スキルにこれ程特化したスキルは他にはないでしょうね。

 

「アイテム補給は……次の階層には要らないわね」

 

なんたって(第六階層)こそ、私の目的地。

狙うはただ1つ。

 

…………

 

……

 

「え?売ってない???」

 

「私たちも散々探したんですけどね、どうもリヴァイアサン(あっち)にしか置いてないみたいで」

 

 

◇◇◇◇◇

 

「……どうしたものか」

 

あ、マスター、ポテト追加で。

 

「無限インベントリはリヴァイアサンにしかない、と」

 

リヴァイアサンは新大陸にある。

 

新大陸へはリアルに数日かかる船旅が必要。

 

そこからリヴァイアサンを攻略して、スコアを稼いで、チェストリアを探して、

 

王国の戦争イベントはもうすぐそこだから……

 

「間に合わないわよね……うーん」

 

売ってもらうか、諦めて追加インベントリ(劣化版)アクセサリで我慢するしか無いか。

 

ズゴゴッ

 

考えながら飲んでいたら、コーラもどき(微かに甘い液体)が無くなってしまった。

 

マスター!これおかわりね!

 

 

 

「あれ?お姉さんどうしたの?蛇の林檎(こんなところ)で」

 

やけに顔の整った男性――VRでは珍しくもない――はそのまま隣の席に座る。

 

え?なに?この人?

 

「あぁ、()()()で会うのは初めてだっけ?」

 

そう言い指差した先に書かれていたのは、あるプレイヤーネームだった。

 

 

 

『アーサー・ペンシルゴン』

 

名前を見たのを確認し、男は笑みを浮かべた。

 

「1つ、耳寄りな話があるんだよねー」

 




舞踏鎧武伝(ダンシングアーマー)
踊らないとゲージが溜まらない、踊らないと技が出ない、踊りを止めると硬直が発生する、とことん踊ることに焦点を当てた格闘ゲーム。
キャラクターはそれぞれが異なる舞踏モチーフの鎧を纏っており、日本舞踊の場合はまんま鎧武者。
見た目に反した摺り足と緩慢な動きと、そこから一転して強打を放つカウンタースタイルが主流。
キャラクターごとに舞踏の種類が決まっている以外は一切制約がなく、リズム感や踊りの美しさが勝敗に一切関係しないため、音ゲーやダンスゲーが苦手な人でも気軽に楽しめるゲーム、と評される。
もっとも、踊るゲームとしては対戦部分が余計で、格闘ゲームとしてはダンス部分が難点、と需要に微妙に嚙み合っていないためか、それぞれのゲーム内では『珍品』もしくは『意欲作』に分類されている。
※作品単体の評価は比較的高い準良作。
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