真紅の不死鳥が天を駆ける。
右へ左へ、などという二次元のレベルではない。
上下左右前後、XYZ軸、動きの一切予測できない高速三次元挙動。
研究し、見慣れた筈の挙動が、瞬く間に変わっていく。
眼前の比翼連理に、私ができることはもう、1つしかない。
この機体を信じる。
そして不死鳥を倒す!
◆◆◆
正直に言えば、高速の三次元挙動というだけなら、私にも心当たりが大いにある。
ただそれはあくまで数多の直線の組み合わせだった。かつ、足場を要するために、その組み合わせには上限があった(あるはずだ)。
これには上限がない。
加えて、私はその有限の組み合わせにも勝てたためしがない。
いや、
しかし、その
ただ、比翼連理の三次元挙動がおおよそ無限のパターンを持つというのであれば、対する私の
現に
そしてそれは、
ゲーム性は私に味方している。つまり今、私がまずやることは
「……
そのためには熱々のフライドポテトとコーラよね!
(冷たいポテトも美味しいわよ?)
◆◆◆
恵:ということで、
慧:あー、まぁ速さに慣れたいっていうのは分かるけど……シルヴィアは?よくGH:Cで対戦してるよね?
恵:とっくにやってもらったわよ。ただ、こう、速さの
恵:それこそネフホロ版ミーティアスみたいな動きなの。贅沢な文句なのはわかってるわ。
慧:つまり、仮想ルストにはならないから顔隠しはどうか、ってことね。
慧:たしかにあいつならそれなりに再現出来るかも。
慧:でもそれなら直接アポ取ればよくない?シャンフロの
恵:目撃情報が錯綜しすぎてて捕まらないのよ。察して。
慧:あぁ、フレ登録してないのか……。
慧:分かった。連絡しとく。
恵:ありがとう。助かるわ。
◆◆◆
サンラク:そこの魚類じゃ相手にならないと聞いて
カッツオ:それもしかして喧嘩売ってる?
サンラク:ロボゲー苦手なのは事実だろ。
サンラク:京極には負けるね。
カッツオ:
カルダモン:……本題に入って良いかしら?
サンラク:要するに
カッツオ:サンラクならできるでしょ?ほら、なんだっけ。炭酸入りの造花みたいな名前の……
サンラク:
カルダモン:シャンフロとか
サンラク:まあできなくはないが……
カッツオ:なにかあるの?
サンラク:ユニークが控えてるんでな
カッツオ:甘いねサンラク。僕はもうレイドに生きると決めたんだ。
サンラク:で、本音は?
カッツオ:後でペンシルゴンにチクる。
カルダモン:……ねえ、
サンラク:まあ四六時中ってわけでもないしな……
◆◆◆
『さぁ始まりました!夏目ちゃんはいったいどんな機体でルストさんに挑むのでしょうか!』
『本日はメグちゃんの所属する爆薬分隊から、魚臣慧さんにお越しいただきました!』
『どうも、魚臣です。こうして出演させていただくのは、
『……ソウデスネ』
『あっ、出しちゃいけない話題だったかな?えーとモルド
『……あ、ええと、初心者は完全に脱してます。カ……魚臣さんはネフホロをやられたことは?』
『1の頃に数回ほどやりました。ただ、ロボゲーは肌に合わなくて……今の
『……あれは初心者はかなり苦戦します。ただ、ネフホロ2は操作性がかなり良くなってるので、カ……魚臣さんもできるようになると思います』
『あ、カンペ助かります。今回はネフホロ2でも特に広いステージをメグが選んだ、と』
『緋翼連理は近距離機体なので、接近に時間のかかる大型マップを選ぶのはベターです。ただ、その割にはメグさんのネフィリムに遠距離武器が見当たらないのは不思議です』
『あっ、そうですよね!遠距離なら一方的に攻撃できますもんね!』
『メグがそこら辺気付いてない筈はないけど……』
『そうこうしているうちにルストさんが視界に入ってきました!』
『え?!早くない?今広域マップって言ったとこだよ?』
『緋翼連理はかなり機動力の高いカスタムなので……普通のネフィリムなら倍以上かかります』
『お、メグもルストを視認しました!中距離砲で迎撃してますが、これは当たらない』
『ルストさんは本当に被弾しないですよね。なんて言う間にぐんぐん距離を詰めていきます!』
◇◇◇
分かってはいたけど、当たらないわね。
今日は真剣勝負のため、スタジオの声はこちらに入らないようになっている。
けど、今頃当たらない、って言われてるんでしょうね。
「でもこれは想定内……!」
過去の対戦動画とストーリーモード、前回の試闘、そして実績。こうなるのは目に見えてた。
だからこそ、
いくわよP-CORN!
◆◆◆
『これは恐らく、なんですけど』
『はい?』
『メグは「当たらない前提で」広域マップを選択したんじゃないかな』
『えっと?』
『……
『
『可能性はありますけど……それらしい装備があの機体には見当たらないです。ほかには……あれ?』
『モルドさんなにか?』
『エイトちゃん、気付かない?ほら、メグの回りに』
◇◇◇
……これは気付かれたわね。
急接近してきたルストさんが、接近軌道を直線から旋回に変えた瞬間、そう感じた。
牽制とまぐれ当たり、そして
「……珍しい装備」
その当のルストさんから通話が通る。
「
◆◆◆
『初めて聞く装備ですね。よく見えませんけど……?』
『
『ルストはこれを察知して接近をやめたわけだね』
『
『メグちゃんの作戦としては、爆弾で距離を取らせつつ中距離から攻撃ですか?』
◆◆◆
「
メグがそう言ったとき、モルドが一瞬目線を逸らしたのを僕は見逃さなかった……が、指摘することでもない。
エイトちゃんが気付いてないならこのままで良いだろう。
その方が多分、番組としては
◇◇◇
正確には使っている人がいないわけではないが、レーダーで感知可能ゆえにほとんど初心者しか引っ掛からない地雷、というのが、Wikiでのこの武器の評価だった。
その点、
どちらの索敵にも引っ掛かる
ルストといえども、迂闊にこの機雷ゾーンには突入できな……
「!!」
突っ込んで来た!なんであの数の地雷を避けれるのよ?!
「
そう来るならこっちにも考えがあるわ、ルストの移動先を予測して任意起爆を……
「……遅い」
幾らなんでも軌道が複雑すぎる!
あんなのどうやって予測しろって言うのよ!
爆風をことごとく躱した緋翼連理が私の眼前に現れる。
やっぱり遠距離なんて性に合わないってことね!
◆◆◆
『ここでメグちゃん、両拳を構えた!』
『僕と同じく、専門は格ゲーですからね、あれが結局は一番馴染むんでしょう』
『ですがメグちゃん、押されています!』
『……設置型武器を
ルストの機体が速度偏重なのもあって、後手後手になっているのは、素人目でも分かることだろう。
『あーっと!体勢を崩した!ルストさん見逃さず追撃!』
三度の轟音と同時に、スタジオが白く染まる。
『……』
『…え?』
『……あ、大丈夫ですよ~。スタジオで火事はありません!』
『いや、流石に分かるよエイトちゃん』
『そ、そうです?……あ、見えてきました!』
ARによって投影されていたスモークが晴れていく。
そこに映るのは、
『あーっと!ルストさん右手がない!メグちゃんはダメージはあるようですが両手完備!』
◇◇◇
損傷は……まだ許容内ね。左腕部は次やったら流石に危ないか。
でもそれだけの価値はあったわ。緋翼連理を片腕にできたのはかなり大きい。
再び接近を仕掛ける緋翼連理にカウンターを合わせにい……きたいけどまだ。今ではない。
引き付けて、引き付けて、……ここにカウンター!
「……っ!」
お互いの攻撃が空振る。
「……
幾つか設置済みを爆破しないと、右は使えない。設置可能上限だ。
「お互い片手ならなんとかなるって算段かしら?」
そうはさせるか!
任意起爆!遠方3基!
リロードまで3秒、
「……よそ見厳禁」
爆音と爆煙に、視線が逸れた一瞬。
その一瞬で、ルストは確実に私の懐に潜れる。だから
再びの破裂音と爆煙
「敢えての先行自爆ってわけよ!!」
爆発の衝撃で、実際のダメージ以上に私の
「……逃がさない」
「いいえ逃げるわ!」
私の設置した機雷は元々、相互に干渉しないよう配置していた。でも、ここまでの戦闘と、何より
位置ズレを起こした機雷は誘爆する!
「当たれば上等!ダメでも煙幕ってね!」
「……煙幕は」
黒煙の雲から飛び出た影が迷うことなくこちらを見据えて旋回する。
「
当然見えないうちに機雷は増やしてあるわ!
起爆、起爆、起ば……全然当たんない!!!
この人ホントどういう軌道してるの?!右腕を損壊してバランスなんて最悪の……
違う!
そうだ!
《……まあ言ってしまうと、》
《あのルストを1番簡単(?)に倒す方法は、初見殺しだ》
《そして、次点は……》
瞬く間に超接近した緋翼連理の、左腕の一撃に、同じく左腕でカウンターを合わせる。
速度が足りない
私の拳が胴に届く前に、私の左腕が溶断される。
いや、これでいい。
起爆タイミングは
◆◆◆
『またしても大きな爆発!ルストさんとメグちゃん、完全に白煙に呑まれました!』
『放送としてはどうかと思うけど、勝ちに拘ってるのは良いことかな』
『爆発の直前、メグちゃんの左腕が壊されましたね、どう見ますか?』
『……
『この場合、設置済みの機雷はどうなるの?』
『消失せず、残ったままになります。起爆指令は恐らくヘッドにもオプション搭載してるでしょうから、起爆もできるでしょうけど……』
『まあルストなら既存の起爆の位置は把握仕切ってるだろうね』
『はい。なのでほとんど使えな……あ、スモークが晴れます』
◇◇◇
やった、やった!
燻ったソレの晴れた先、見える緋翼連理には
あの機体の不規則かつ柔軟性の高い移動力は、半分はあの背中のブースターによるものと言っていいはず。
「……ブースター損壊確認」
その呟きと共に、緋翼連理が加速する。
来る!!
先ほどと同じ、左腕のブレードによる攻撃、に右腕を被せる!!
起爆!!
距離を取った緋翼連理には、確かにダメージが見える。被せるように打った中距離用エネルギー弾は……当たらない。
ならこちらは待ちの姿勢を取らざるを得ない。
エネルギーを節約しつつ……いや、緋翼連理は移動にエネルギーを割いた高燃費機体、節約せずとも相手の方が先にエネルギー切れになる!
再び迫り来る緋翼連理に、僅かに軸をずらし……合わせて来たところにパンチ!
ブレードでのカウンターはさせない!起爆!!
パンチの軌道上、拳が通りすぎ、肘と重なる位置での起爆により、ダメージと引き換えに拳は加速する!
ゴガン!という音と共に、緋翼連理が弾き飛ばされる。
「よし!」
これ連発はできないわね。カウンター重点……!
◆◆◆
『これで
画面の向こう、Na2megの乗る機衣人の拳が、緋翼連理の胴を打ち抜いた。
「おいおい……マジかよ……」
練習に付き合った身として言うのはなんだが、正直9:1でルスト有利だと思っていた。
現に序盤は速度に翻弄されていたし、カウンターで緋翼連理の片腕を取ったあの場面も、最適手では無かったと思う。
「そういや特訓でもやけに直線の軌道には強かったな」
ブースターをもいだ後から、カウンターの精度が格段に上がっていった。
ネフホロ1からの再現機体とはいえ、ルストを倒したことは純粋に称賛すべきだろう。それも
もしや緋翼連理の天敵は鈍足……!
まあそれはないな。
取り敢えず祝砲は送っておくか。
◇◇◇
……サンラクからだ。
メグが勝利した直後に差し込まれた短いCMの間にメッセージが来ていることに気付いた。
因みにCMは対戦後に高揚したルストが長々と話すと尺がおかしくなるためその対策らしい。
受信はつい先程、まあアイツも練習手伝って貰ってたし、放送を観ているんだろう。
まあ内容はおめでとうとかそんなところだろうし、ちゃちゃっと読んで……
…………
「ケイさん、どうしました?」
「ん、いや?CMそろそろ終わる感じ?」
「はい。あと10秒程で……だいぶ顔をしかめてましたけど……」
「ああ、大丈夫、もう始まるね」
そこまで言うならロボも乗りこなしてやるよ。後でメグにコツとか聞こう。
よし、切り替え完了。
…………
「メグちゃんおめでとうございます!ルストさんは対戦して如何でしたか?」
「はい。機体の構成としては……」
この後ルストの長文コメント(CM中語りとの内容被り無し)により尺は押しに押した。
後日、CM中語りを含めたルストコメント集が番組公式からアップロードされた。