ナツメグ探訪記   作:Almin

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準備段階ではこういうやりとりをしていたのかな。




赤く赫く蝶にむけて

 

私が目覚めたのは、ベヒーモスの休憩所。

 

「期限は、っと、まだ余裕あるわね」

 

アーサー・ペンシルゴンからの依頼――()()()()の納品――のために、爆泳魚(スウィマイン)を狩りに来たわけだ。

 

 

「あれ、カルダモンさん?」

 

「あぁ、セスナさん。今日も爆泳魚の調査?」

 

「メンバーが今日は来れないので、図書館で文献漁りの予定です。カルダモンさんは?」

 

「材料集めにソロで爆泳魚を狩るつもり」

 

「そうでしたか。ドミネイト・グリズリーにはお気をつけて」

 

 

◇◇◇

 

「ペンシルゴンさん」

 

「いらっしゃい。()()()()、どうだった?」

 

「なんとか用意できたけど、こんなに何に使うのよ」

 

「んー、ナイショ」

 

「まあこっちも懐が潤うからいいけど」

 

「そういうさっぱりしたところ、好きだよ」

 

譲渡……ではなく、プレイヤー間での売買処理が行われる。

 

「強いて言うなら『相手に使わせないため』かな?」

 

まあ確かに、これだけ高値を出されたら、大抵の生産職はアーサー・ペンシルゴンもといサードレマ、旧国王側に持ってくるだろう。

 

「でも、それなら……まあいいわ」

 

「あと、カルダモンちゃんには特別に教えてあげるけど、」

 

なにかしら

 

「カッツオくんは初日から焠がる大赤翅(レイドボス)に挑むってさ」

 

「そ、そうなのね」

 

なんで私とカッツオの間柄を知ってるのよ

 

喉元まで出かけた言葉を呑み込んで、部屋を後にする。

 

 

◆◆◆

 

――やっほー。例のブツ、確保したよー

 

夏目ちゃんが部屋を出たのを確認して、一報を送る。

()のログイン時間からして、返事は暫く後だろう。

 

「これで()()()の準備は良いかな」

 

()()()の準備はどうなってるか……

 

 

――やあやあ同士諸君。首尾よく進んでいるかな?

 

――侵食率50%であります!

 

――G班が()()()50%ね。もうちょびっとだけ急げる?

 

――既に応援を手配しております!

 

――b。さっすが~

 

――P班ははまもなく完遂予定。

 

――よろしい。

 

――ただ、L班によると効果は予定より下がるとのこと。

 

――L班説明して。

 

――【報告】潜伏兵(リスナー)からの連絡によると

 

…………

 

……

 

 

「おおよそ問題はなさそうかな?」

 

あとは()()()がどうなるかなのだけど……

 

「ま、なんとかなるっしょ」

 

 

◇◇◇

 

レイドボス、か。

 

ケイに直接訊いてもいいけど、折角なら独自に集めたいわね。

 

 

ログアウトしてWikiを開く。

 

この環境ですらロードに時間がかかる。一般のプレイヤーはまともに見えてるのかしら?

 

 

「……ふぁったふぁった(あったあった)

 

ポテトと今日はこの後もう少しやりたいので珈琲を片手に、ようやく焠がる大赤翅(レイドボス)のページを見つけた。

 

「……あんまり情報無いわね」

 

出現位置、確認されている攻撃パターン、……普段は待機状態なのね。

 

「……」

 

ポテトが無くなった。

 

 

◇◇◇

 

「セスナさん」

 

「……あ、カルダモンさん!どうされたんです?」

 

体重を気にせず、食べる感覚だけ味わえるのはフルダイブVRの旨味よね。まあ、ここ(シャンフロ)に限らずゲーム内のポテトは絶妙に物足りなくて、ログアウト後にも食べてしまうことが大半なのだけれど。

 

「ちょっと訊きたいことがあってね」

 

「なんでしょうか」

 

焠がる大赤翅(にらがるだいせきし)には詳しい?」

 

「ライブラリに対して『詳しいか』ですか」

 

ちょっと待っていてください、と。

席を外して数分。戻ってきたのはセスナさんと、別のプレイヤー……おそらくライブラリの人ね。

 

「ちょっと待ってよ。セートさん」

 

セートと呼ばれたその人には先客が居たらしく、顔を向ければ3人分のプレイヤーネー、ム……が……

 

「あれ?ペッパーじゃん、どうしたの?」

 

「オイカッツオこそ」

 

うーん。こっそり情報を集めるつもりだったのだけど……まあ言わなければレイドモンスターを追ってる事はバレないわよね?

 

「僕はレイドモンスターのことで相談に、ね」

 

タイミングが完全に被ってしまった、と。

取り敢えず、アーサー・ペンシルゴンの情報が、正しかったことは分かったわね。

 

「オイカッツオさん、ですか。奇遇ですね。カルダモンさんもなんですよ。なんでも焠がる(にらがる)……」

 

あ、セスナさんそれは秘密――

 

「……ペンシルゴンから聞いたの?」

 

「その通りよ」

 

「そうか。まあペンシルゴンは後で絞めるとして、ペッパーも協力ってことでいいの?」

 

「もちろん。じゃなきゃ来ないわよ」

 

バレたなら予定変更。がっつり一緒に対策会議でもしましょうよ。

 

「あの、そろそろよろしいですか?」

 

あ、すみませんセートさん。どうぞどうぞ。

 

「では先ほどまでオイカッツオさんにお伝えしていた情報の要約からですが……」

 

 

◇◇◇

 

「あー、疲れたーー!!」

 

セートさん丁寧だし分かりやすいけど話がなっがい!!

 

でもこれでケイと会う約束が1つ増えたわね!

 

取り敢えず貰った情報まとめて……まだポテトあったかしら。

 

「ディップソースが欲しい気分ね」

 

ケチャップ、バーベキュー、本場風にカムバック……

 

ハニーマスタードにしよう。

 

 

とはいえ、だ。

 

どうやらケイは焠がる大赤翅(にらがるだいせきし)の能力の対策にはもう目星を付けているようだし、できることが少ないのよね。

 

特に錬金術士はそこまで火力のあるジョブでもない。選択肢を増やしてサポートの幅を広げる方がいいかもしれないわね。

 

「そうなると調達元かぁ」

 

あ、ポテト切らしてたんだった。

 

 

冷蔵庫にも冷凍庫にもポテトがない。

 

「仕方ない、外食ついでに買いに行くか……」

 

 

◆◆◆

 

「あれ、メグがいる」

 

セートなるプレイヤーから説明を受けたのがつい先ほど。

情報の整理も兼ねてジョギングに、とログアウトしたのだけど、まさかまた会うとは。

 

「いらっしゃいませー」

 

声を掛けようと思ったんだけど……いや、僕も入れば良いのか。小腹も丁度空いているし。

 

 

「やあメグ」

 

「えっ、ケイ?!なんでここに?」

 

「ジョギングしてたら小腹が空いてね。メグは?」

 

「私も小腹が空いたのよ」

 

何にするかな……うん。コーラとハンバーガー下さい。

 

「メグは?」

 

「コーラとポテトのXXL……なによ?2人でつまめばいいでしょ?」

 

「はいはい」

 

「あとコーラとWチーズバーガーセット1つネ」

 

「はいはい。えー、すみませんコーラ3つとハンバーガー、ポテトXXLにWチーズバーガーセット下さい」

 

それぞれの注文品を()()でテーブルへ運んで座る。

 

「いや待って。なんでいるのさシルヴィア?」

 

「ココ、私のテイバン、オキマリの店ネ!」

 

日本に休暇に来て1番馴染みの店がハンバーガーチェーン、というのは、文化的にも健康的にも気になるところだけど……

 

「人のこと言えないか」

 

「?」

 

結局日本料理とか中華料理屋に帰結するんだよね。長期の海外遠征。

 

「そう言えばシルヴィア、例の件は検討して貰えた?(What do you think about 'THAT' ?)

 

「OK」

 

「そっか。ありがとう」

 

快諾って感じでは無さそうだけど、取り敢えず我らが魔王の機嫌は損ねなくて済みそうだ。

 

別に機嫌を取りたいわけではないが、最近サンラクのせいでヤバそうなんだよなぁ。君子危うきに近寄らず、だよ。

 

僕らは君子じゃないから危うきに近寄るし道理ごと蹴っ飛ばすこともあるけど、それはそれ、これはこれ。今回はサンラクにはデコイになって貰うと決めているんだ。

 

「まあそういうわけで、シルヴィアは期間中別行動だから、レイドはよろしく頼むよメグ」

 

「任せて」

 

頼もしい限りで。レイドモンスターはどうも基本的に人海戦術ありきな気がするし、出来る人間は多いに越したことはないだろう。

 

「それともう1つ、A()R()()()()のオファーが来てるんだけど、メグも来る?」

 

「えっ?」

 

「2人1組でプレイできるゲームでね。できれば()()()デュオプレイにしたいんだって」

 

煽られるがままそれで約束してしまったので、誰かしら誘わなければいけない、というのは黙っておこう。

 

「ケーイー。それワタシもやる!」

 

「いや、シルヴィアはダメでしょ」

 

「Why?!」

 

「今テレビ出たら、またマネージャーに怒られるだろ。それに……」

 

「それに?」

 

「ARは現実の体格でやるわけだからね。身長差がありすぎて多分できない」

 

「そういうのって、ゲーム側で対応してないの?」

 

メグの言うとおり、あるにはあるんだけど……

 

親子(キッズ)扱い(モード)はシルヴィアも嫌でしょ」

 

「むー」

 

「ああ、それはキツいわね」

 

納得いただけたようで。

 

「で、メグはどう?日程この辺りなんだけど」

 

「そこなら余裕で空いてるわ」

 

「オッケー。じゃあ連絡しとく」

 

「ところで、なんてゲームなの?」

 

「言ってなかったっけ?『スクラップガンマン』だよ」

 

 






結局ポテトは全部自分で食べた。
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