ナツメグ探訪記   作:Almin

13 / 17
すごい久々な気がする






屑鉄の街

屑鉄の案山子

「メグ!そっち1体行った!」

 

「了解!」

 

迫り来るソレに放った弾丸が空を切る。

――あぁ、もうなんで当たらないのよ!

 

「残弾は?」

 

「もう分かんない!とにかく節約するわ!」

 

グローブを装着した手に屑鉄を掴み、同じく屑鉄で構成されたエネミー(機械兵)を殴り付ける。

 

流石に素手ではろくなダメージにならないどころか、自傷判定になってしまうが、こうして間接的に殴るのは有効だ。

 

 

◇◇◇

 

1時間ほど前。

 

「……番組収録?」

 

ケイと私は顔を見合わせていた。

 

「えっと……聞いてないのだけど?」

 

「いやいや、メグ、僕もそうだってば」

 

スクラップ・ガンマンの大会前に、練習をしよう、という話だった筈なのだけれど……

 

ゲスト枠とは言え参加する以上、未プレイはまずいということは分かるから快諾はした。こちらとしても初心者丸出しの動きは格好悪いし、別ジャンルとは言えゲームのプロとしてよくない。

 

複合ARという関係上、できる場所は限られているので、オープンなレジャーランド内の施設での練習になるのも仕方ない。

 

「フルダイブVRに否定的なお年寄りや自然主義者には、実際に体を動かすARゲームの方がウケがいいらしくてね。お昼の情報番組(そういうやつ)の収録とたまたま被ってたみたいだね」

 

と弁明するのはスクラップ・ガンマンの開発元、スワローネストの社長、津羽目風矢。

 

「今ディレクターと話してきたよ。うちのゲームも撮るけど、あくまでレジャーランドの宣伝だから、一般利用者として、30秒画面に映るかどうかくらいだって」

 

「……マネージャーに確認してみます。まあ、その程度なら多分大丈夫かな」

 

ケイと2人で練習に来ること自体は通っている話なので、あとはギャラ関連で揉めるかどうか、なのだけれど……

 

 

◇◇◇

 

結果としては問題はなかった。

ケイのことも私のことも、番組内では一切言及しないという約束のもと、練習プレイが始まる。

 

代わり――もなにも、そもそも元から予定など無かったのだけれど――に制作会社代表として津羽目社長へのインタビューを挟む運びになったようだ。

 

「一番奥のルームが貸しきりにしてあるから、二人は気にせず練習しててよ。」

 

スクラップガンマンの文字を掲げた建物の1番奥――ARゲームというのは現実の空間を使って遊ぶものだ。その上でフィールドを駆け回ることを想定したこのゲームは、さらに広い空間を必要とする。

 

「こうやって見ると贅沢なゲームだよね。ARってさ」

 

「どう考えても一般家庭には置けないわよね」

 

それこそ大きな部屋1つ……戸建なら建物の階1つをゲーム専用にするくらいの覚悟がないと、スクラップガンマンは遊べないだろう。

 

「ゲームセンターにも多分無理だろうね。設定でプレイエリアの広さとか変えれるんだろうけど……広い方が楽しめるタイプでしょ?これ」

 

AR空間を視るためのゴーグルとプロテクター、それとこのゲーム専用らしいグローブと拳銃のようなアイテムを装着する。

 

ゴーグルを現実視からARモードにに切り替えれば、装備の見た目がゲームのそれに上書きされる。

 

「ARゴーグルって結構軽いのね。メガネくらい?」

 

「あまりメガネは着けないから分からないけど……これを着けて走り回るわけだからね。軽くないと困るでしょ」

 

「確かに。ゴーグルタイプのVRはもっと重いなと思ったけど、あっちは寝た状態でやるものね」

 

ゲームモードを選択

――デュオプレイ

 

プレイヤー種別を選択

――大人2名

 

難易度を選択

――

 

「難易度はどうするの?」

 

「んー。僕は一回だけやったことあるけど、メグははじめてだよね。ノーマルで行こうか」

 

「イージーって言ったらぶっ飛ばすところだったわ」

 

――ノーマル

 

チュートリアルステージを開始しますか?

――はい

 

 

◇◇◇

 

「……明日筋肉痛かも」

 

「ほどほどにね」

 

「でも動きは大体分かったわ。ステージに行きましょう」

 

「そうだね。あとは実戦練習ってことで」

 

チュートリアルを終了しますか?

――はい

 

 

――ミッション1――

 

「いきなり市街地戦か」

 

「障害物が多くてやりにくいわね」

 

………………

 

…………

 

……

 

――ミッション6――

 

「ここまでやって分かったことがある」

 

「なに?」

 

「このゲーム、障害物が多い方が楽かも」

 

「……そうかも。こう、リアルのスタミナを使うから……」

 

岩場の陰、現実にはブロックの上にARが重ねられているそこに、背中をあずけ、一息つく。

 

「隠れる場所が無いと思ったより辛いね」

 

というケイも、私の息もだいぶ粗くなっている。

 

「私、これ終わったら……ケイ!後ろ!」

 

スクラッド!もう来たのね!

 

障害物、というか平坦なステージだと、とにかくスクラッドの速度と密度が高い。

 

ここで私たちも移動が大変になる……のはフルダイブVRの話。

ここは現実空間で映像と実際の地形は合致しない。

 

大きな障害物や段差はこのレジャーランド側の設備である程度再現されるのだけれど、もっと細かい、例えば砂利道なんかは、現実には存在していないわけで。

 

「走り回るゲーム性なのに悪路の方が戦いやすい、ってのは感覚が変になりそうね」

 

スクラッドは路面の設定を忠実に受けるため、相対的にプレイヤーの機動力が上がる。

 

「考えてるとこ悪いけど、そっちにも来てるよ!メグ!」

 

……ととっ。

 

振り向き様に1発、脚を止めたところでヘッドショット。

 

「相当良くなったんじゃない?命中率!」

 

「流石に5面もやればね!」

 

「次来るよ!」

 

………………

 

…………

 

……

 

GAME OVER

 

「このゲーム、弾の節約というか、相当シビアじゃない?」

 

「最後は完全にリンチ(弾切れ)だったもんなぁ」

 

キリもいいので一度部屋を離れて、自販機横のベンチで休むことに。精神力以上に体力の限界を感じる。

 

「6面って妙に弾数少ないわよね……」

 

「体感だと2割ヘッドショットし損ねたらもうアウトなのかな……あの先どこまで続くのかだけど」

 

おそらくフルダイブでも厳しい部類の難易度なのではないか、そんな空気が漂い始める。

 

津羽目社長はどうやら撮影を追いかけて各レジャー施設の説明をしているらしい……スタッフでも無いのに分かるの?

 

ともあれ、一般客も見当たらず今はケイと二人。

荒くなった息を整え、深呼吸をする。

 

「30分休んだら再開しましょう」

 

「そうだね。……到達してれば続きからできるみたいだ。6面からでいい?」

 

ええ、そうしましょう。

 

脳もだけれど体がカロリーを欲している。

自販機で割高なジュースを買いつつ、ケイにもなにかいるか、と声をかける。

 

「エナドリはある?できればバックドラフト」

 

「――エナジーカイザーならあるわよ」

 

「じゃあそれで。僕もライブラジャンキーはどうかと思ってた」

 

 

「そういえば」

 

ふと思い出した。

 

「どうしてケイのところにこの話が来たの?」

 

「あー……まあ話してもいいか。この前シャンフロの()()()をやってさ」

 

オフ会……羨まし――いやいや、オフどころかオンも一緒に働いているのよ私は。シャンフロのオフ会ってことは、

 

「天音永遠さんとカボチャさんも一緒に?」

 

「そうだね。一泊二日でレジャーランドに行ってさ」

 

()()()()――それは羨ましい。

 

「その時にたまたまスクラップガンマンがあってね、そこであの社長に会ったんだよ」

 

「よくスワローズネストの社長って分かったわね」

 

一時の間

 

何かまずい質問だったろうか、とお互いに飲み物に手を付ける。

 

「それがサンラク……顔隠し(ノーフェイス)と知り合いだったらしくて向こうから声をかけて来たんだよ」

 

「あいつの人脈はどうなってるんだか――まあそこから芋づる式に僕らもバレてね」

 

笑いながら苦虫を噛み潰す器用な表情に、こちらも失笑してしまう。

……普通は逆だと思うのだけれど。プロゲーマーとモデルより先に身バレする一般(?)人ってなに?

 

「で、その流れでオファーが来た、と」

 

「まあそんなところ」

 

「天音さんや顔隠しは参加するの?」

 

「いやー、無いかな。ペンシル……ん。名前隠し(ノーネーム)はこういう言いくるめれないゲームは得意じゃないし、万が一ケガしたら大問題だろ」

 

「顔隠しはなんかできそうだったけど、本人は顔を出したくないって言ってたし、マスク着けたままこのゲームするのは無理があるし」

 

まず間違いなくフルフェイス(あのカボチャ)は酸欠になるわね。

JGEでもキャラもののメガネ(昼食のおまけ)で顔を隠していたし、そういう生き物なんでしょうね。

 

「勿体ないわよね。爆薬分隊(ウチ)に限らず、引っ張りだこでしょうに」

 

「あいつはあいつで色々あるってことだよ」

 

そう言いしながらもぼそりと「……テレビまで出ておいて今更な気もするけど」と聞こえるあたり、ケイも思うところは大きいのかもしれない。

 

「ま、スターレインに入らないなら全然オッケーだけどね」

 

「あー……シルヴィアタイプが2人は勘弁願いたいわね」

 

「それもあるけど……ちょっと見たいと思わない?」

 

「なにが?」

 

リアルミーティアス(シルヴィア)リアルカースドプリズン(ノーフェイス)の再戦」

 

あー……見たい、気はする。

 

「まあ問題はあるんだけどね」

 

深く頷いてケイがおもむろに立ち上がるのを見て、僅かながらに残っていたジュースを飲み干す。

 

「もう30分?」

 

「まだ疲れてるなら待つけど?」

 

「まさか。続きをやりましょう」

 

 

6面、挑戦2回目。

 

…………

 

 

7面。

 

…………

 

 

GAME OVER

 

 

「また弾切れで終わり……これなんかおかしくない?」

 

「今度は明らかに弾が足りてないよね」

 

 

「やあやあ、苦戦してるみたいだね」

 

足音に目を向ければ、津羽目社長がガラス扉を開けている。

 

「津羽目さん、インタビュー終わったんですね」

 

「なんとかね。いつものことだけど注文の多い料理店だ」

 

それはそれとして、と言葉を続ける。

 

「7面で詰まったか。これはヒントが要るかな?」

 

「7面はまだ1回失敗しただけです」

 

「初ゲームオーバーは6面、ってとこかな」

 

「……なんで」

 

「FPSに慣れた人はここら辺で詰まるのさ。魚臣くんはFPS得意な方だろう?RWH6(ルインズ・ウォー・ハウンズ)もやってたし」

 

そちらもそうだけれど、それより今……いや、この人ならあのスポンサーから直接聞いた可能性もあるか。

 

 

F()P()S()()()()()()ね……」

 

「中々に引っ掛かる言い方だろう?」

 

「……ゲーム仕様から見直すか」

 

 

それなら私も……と棚に置かれていた待ち時間用のルールブックを取る。

 

――――

 

このゲームの根幹は、タイトルにガンマンとあるようはシューティングだ。

 

(スクラッド)を倒したあと「スカベンジャーグローブ」を利用して剥ぎ取り、再利用する「リビルドシステム」がウリで、銃を強化したり、剥ぎ取った素材を弾として発。発射することができる。

 

つまり実際の使用可能な弾丸数は、初期所有+取得可能な弾数+剥ぎ取った素材数になるわけなのよね。

 

これだけ聞くと、倒した敵から剥ぎ取って弾にして敵を倒したら剥ぎ取って……と無限に撃てるように思えるけれど、実際はそんな簡単ではない。

 

なぜなら、剥ぎ取りにはグローブが届く()()()()まで近づかなければならず、一方でこのゲームは遠距離が主体のFPSだからだ。

 

敵が多数いる中、倒れた敵に近寄って剥ぎ取るのは危険だし、かといって一掃してから、と考えていると剥ぎ取りのタイミングを逃す。

 

 

「……これだ!」

 

何か見つけたらしい。えっと、ケイが見てるページは……

 

「うわっ、メグ、そこにいたの?」

 

ちょっと覗き込んでただけじゃないの。シルヴィの方がいつも近いでしょ。

 

「やりながら説明するよ。あと社長」

 

「ん?なんだい?」

 

――これのどこがガンマンなんですか

 

そう言われた津羽目社長は、満面の笑みを浮かべていた。

 






と思ったら半年以上経ってた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。