ナツメグ探訪記   作:Almin

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なろうオンリーの原稿とかしてたらいつのまにか1年経ってた


屑鉄の人形

 

『さあ始まりましたスクラップ・ガンマン公式大会!解説席は株式会社スワローズネスト社長、津羽目風矢さんとお送りします!』

 

『どうもー。このゲームを作った会社のトップです。今日は業務をほっぽり出してきました』

 

『大丈夫なんですか?』

 

『それでは、これから大会の予選ですが、その前にエキシビションマッチを行います』

 

『勝手に進めないでください社長!』

 

MCと社長の会話に会場内から笑いが返される。

 

『では改めまして、エキシビションをしていただくのはこちらのお二人!』

 

合図を受けて、会場の一角に設けられた門のようなオブジェクトが白煙に包まれる。

 

その白煙をかき分け、姿を表したのは

 

爆薬分隊(ニトロスクワッド)の魚臣慧選手と夏目恵選手です!!』

 

歓声に答えるように二人が手を振り会場を見渡す。

 

『普段はVRのプロプレイヤーとしてご活躍の両名ですが、なにか意気込みはありますか?』

 

『そうですね。今回のために何度か練習で遊ばせてもらったのですが、遊ぶ度に筋肉痛になりました』

 

どっ、と会場が沸く。

 

『こら、笑わない。……普段も運動はしていますが、ARとなると瞬発力が必要ですから、中々使わない筋肉を動かしたように思います。

今回はエキシビションですが、分野違いとは言えプロゲーマーとしての意地を見せたいですね』

 

『夏目選手はどうですか?』

 

『……実際に体を動かすゲームで、しかも協力プレイを要求される、とあうのは中々に新鮮な体験でした。ただ、プロとして、大会参加者にも負けないようなスコアを目指すつもりです。』

 

 

ふと目を向けた舞台の袖、参加者の待機列に奇妙な面構えのヤツがいることに慧は気付いた。

 

…………

 

……

 

ナニカがいる――――

 

『ケイ選手?』

 

『あ、はい。そうですね。練習中一番苦労したのはやはり弾数の管理でした。エキシビションでも気を付けていきたいなと』

 

ちらと舞台袖に目をやるが、姿がない。

『それと体力管理ですね。VRとは違ってゲージは見えませんから』

 

――――

 

インタビューも終わり、これからエキシビションという頃合い。

 

改めて舞台の袖に目をやれば、やはりそこにはフルフェイスのARヘルメットを着けた推定カップル。

 

これからARをやるんだから別に不思議ではない?いや、周りの他の参加者は主催が用意した統一のARゴーグルだし、そもそも手に持っていて装着すらしていない。

 

何より

 

目が合った瞬間、男の方が顔を背けた。

 

 

◆◆◆

 

 

「という事でどうかな」

 

「断る」

 

ヤシロバードからご丁寧にハヤブサメールで案内された集会所――まあいつもの海蛇の林檎の個室だが――で即断即決、俺は参加しない。

 

「なんでさ!彼女さんと参加してよ!」

 

「レ……あの人は彼女じゃないし……そもそも、屑癌の大会って?孤島の同窓会でもすんのか?」

 

「なるほど身バレしたくないと」

 

「お前やサバイバアルはもう仕方ないにしろ、な」

 

というかあのロリコンに身バレするのも若干引け目がある。青聖杯(性転換)した俺に息を荒げるんだぞ?

 

「フルフェイスのARヘッドセットでも被れば?」

 

あー。なるほど。

 

そう言えばあったなARVR対応ヘッドセット、もとい色違いジャックヘルメ(カフェインの導き)

 

「いや、アレ被る方がまずいわ」

 

顔隠しバレはもっと洒落にならん。

 

「いや、こっちで用意しようか?って提案なんだけど、手持ちあるの?」

 

「無い。手持ちにAR対応フルフェイスヘルメットなんて無い。断じて持ってない」

 

まあだか、用意して貰えるなら……って待て待て。なんで参加する流れになってるんだ。

 

よし、ここは1つ。

 

「どちらにしろ参加はペアなんだろ?レ……相方に聞いてからじゃないと決めれないわ」

 

「ま、それもそうだね」

 

「じゃ、一旦落ちるわ」

 

――――――

 

――――

 

――

 

よし、乗り切ったぞ。

 

これで後は適当に誤魔化して不参加に持っていける。

 

ARチェアから起き上がり、給水に合わせて携帯端末に手を伸ばす。

 

お、玲さんから連絡が来てる。なになに、ユニーク関連で相談がしたい?『ならこの後ラビッツで合流しよう。』っと。あそこなら誰にも聞かれないしな。イムロンは工房に入り浸ってるから他の部屋を使えばいいし、秋津茜は二つ返事でお口チャックできるから除外だ。

 

「……まあ一応話だけはしておくか。何かの伝手で相談すらしてないとバレたら面倒だしな」

 

『……ってことなんだけど、嫌だよね?』と、これでいいな。送信。

 

――――秒で参加が決定した。

 

 

◇◇◇

 

あれサンラクだろ。

 

司会のお姉さんちょっと、ほらその参加者名簿見せて。

 

えーと……いたいた。

 

登録名はμ-skyと0か。……0ってサイガ-0(ゼロ)?まてまて。これ本当にサンラクか?こんな凝った名前付けるタイプじゃないだろ。

 

 

『ああ、待って待って』

 

津羽目社長が、僕より先に準備をしていたメグを引き留める。

 

「……?」

 

「どうかしました?」

 

社長が司会からマイクを奪い取る。

 

『素晴らしい意気込みを聞かせてもらったからね、どうだろう?エキシビションと言わず、このまま本戦に参加してみないかい?』

 

「津羽目社長?!」

 

『地区予選非通過を公式記録にはできない、が……なあ!みんな!()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そもそもVRとARは別ジャンルだとか、()()()()なんてあったのか、とか、疑問は幾つかあるけど

 

「これはやるしかないよな……!!」

 

 

◇◇◇

 

『そ、それでは、大会を開始します!スケジュールはエキシビション分前倒しで行います。爆薬分隊のお二人の出場は……どうなるんです?これ?……はい、裏で調整?……だそうです!何時出るかは好ご期待!』

 

『それでは1組目どうぞ!』

 

1人はφの野人でもう1人は……これ本名か?

 

出てきたのは、やたらガタイの良い、生傷の目立つ男が二人……これ大丈夫なやつ?

 

あまりに物々しい雰囲気に、会場がざわつく。

 

が、それ以上はなかった。

 

ステージが始まってすぐ、会場が困惑と衝撃から静まり返る。

 

殴る。蹴る。殴る。蹴る。肘打ち。

 

『えっっと?』

 

実況席が困惑している。

 

「いや、弾の節約にはなるけれど……あそこまでやる?」

 

仕方ないだろう。いや、野人どもの行動が、ではなく、会場や司会の困惑が、だ。ここまで銃の使用回数0。どころか、スクラッドのドロップすらろくに使用していない肉弾戦。

 

「アマチュアの格闘家とかなのか?」

 

半分はARゴーグルで隠れているけど、流石にプロならこの人かな?位の当たりは付けれるだろうから違うのだろう。

 

 

少し経って状況(異常)を飲み込めた観客席から、声援が沸き出す。

 

想像していた『ガンアクション』とは似ても似つかない動きだが、それでもゲームは進んでいる。このゲームはただ銃を撃つゲームではないと、

 

「チュートリアル……と言うには過激か」

 

銃を撃ちながら近接格闘も視野に入れるゲームに、彼らは近接格闘メインで挑んでいる。

 

『まさかの拳で殴り進んで来たφグループですが……ここで漸く銃を抜きました。ですがここまでもスクラッドのドロップはほとんど無視してきています。初期装備状態です』

 

彼ら、ではなく彼、という言い草に改めてみれば、2人とも肉弾戦をしているが、片方だけやけに動きが良いというか、()()()()()()()()()()ようにも思える。

 

『……どうやら数が増えてきたので牽制用に撃っている様です。彼だからできる、の類いですねこれは。真似しないで下さい』

 

『拳の方が早えからなあ!』

 

()()()()()が実況の言葉に返すように怒鳴った。

 

「――ああ、VRと違って多少聞こえるのか」

 

ARゴーグルの音声出力からはゲーム音が立体音響として鳴っている筈だけど……マイクを経た声であれば貫通してしまうということか。

 

「フルダイブだとまず無い感覚よね」

 

「まあMMOなら観客がいることもあるから、そっちに近いのかな」

 

『さて、改めてステージの説明をしましょう。今大会のステージはステージ15-7、3部構成のマップになっています』

 

津羽目社長が解説を再開する。ステージ15か。

 

「確か、序盤は耐久戦、この後は移動しながらになって、終点でボス、よね」

 

メグとおおよそ同じ説明がスピーカーから流れる。

 

『このステージの肝はラストのボス戦です。ここまでに如何に武器の強化と残弾の調整ができるか、が第1,2マップの焦点になります』

 

恐らく残弾については問題ないだろう。

問題なのは、ここがランダムボスってことだ。直前の14面までに出てきた中のどれかが出てくる。

 

『……なるのですが、やはりこの二人、肉弾戦を選択しましたね』

 

弾の節約としては正しい。とは思う。

 

「銃が初期のまま無強化、って、この後のボス戦どうするの……?」

 

当然だが、僕もメグも銃をメイン武器に練習してきた。各ステージのボスも当然撃ち合いで制した。

 

――

 

どうやって、という問いに彼らが答える。

 

ラストエリア。

 

出てきたのは、小型のスクラッド――個体名称「スクラップ・ビスクドール」

 

ビスクドールは速度特化、かつ頻繁に物陰に隠れて「見失わさせる」スクラッドだ。近接メインではあるが飛び道具も使ってくる。

 

一般的なプレイなら、高精度な偏差射撃と反射神経を求められるボスなのだが……

 

「うおらぁ!!」

 

接近しての殴り合い。

 

『やっぱり素手で殴ってますね』

 

呆れているような、一方で物悲しさを感じさせる微かな笑い声がスピーカーから響く。

 

『社長、これは攻略法としてはどうなんですか?』

 

『皆さんは真似しないでください。僕にもアレは無理かなぁ』

 

打つ方が性に合ってますし、という言葉はマイクには乗らなかったが、MCの微かな笑い声が会場内に響く。

 

『とはいえ、()()に付いていけるなら、ナシではありません。ビスクドールは小柄ゆえに火力は高い方ではありません。移動と隠密性が厄介なスクラッドですから、常に見失わない距離を維持する、というのは1つの手です』

 

よほど近接格闘に秀でていないと無理、という感じがする。

 

 

◆◆◆

 

「フィジカルごり押しかよ……」

 

「どうしました?」

 

口に出てたか。

 

なんてことはない。ちょっと『昔』を思い出した、ってだけだ。

 

隠密特化が一番嫌いな動きだ。ああなっては小細工も何も関係ない。

 

PvP()ならアイツの動きを読んで裏をかいて……と苦労はするだろうが再び見失わせることはできるだろう。だが、あそこにいるのはあくまでボスエネミーだ。

 

「アレじゃビスクドールの強みの7割は無いようなもんだな、ってね」

 

「ああ……死角からの急襲が怖いボスですもんね」

 

シャンフロシステムだったらもしかすると『学習』したかもしれないが、これはあくまでスクラップガンマンだ。

 

 

『もはや様相はプレイヤーとビスクドールとのダメージレース、といった状態です!』

 

高速のビスクドール相手に手数で押すのは困難……だが、やっぱり射程の問題か。ビスクドールは小柄なのもあるが、基本は近接で刺してくるボスだ(飛び道具が無いとは言っていない)。そこをピンポイントでカウンター、または

 

「ああやってプロレスして関節決めたら確かに動けないよな……」

 

俺はサバイバアルに冷ややかな目を向けた。

相手が人間だったら一発アウトで刑務所行きな絵面になっているぞ。

 

「よくあの小柄な体に関節決めれますね……」

 

ワンチャン玲さんもできるんじゃ……と思ったことは心の底に沈めておく。

 

「グローブ以外のフィードバックは無いのになんで極められるんだろね?まあ慣れなのか?普段からああいうプレイしてるやつだし」

 

「……えっ?」

 

「ああ、いやゲームの話。サバイバアルだよあのでかいほう」

 

とちょいちょい、と指差す。

 

「シャンフロじゃ武器使ってるけど……格闘も余裕でこなせるからな。前極められたし」

 

油断してたとは言え、あれは想定外だった。

 

「経験者、ということでしょうか……」

 

まあおそらく?

 

リアルを詮索しても良いことはないので、この話はここで終わり。

 

そんなことよりも、だ。

 

「あ、終わりそう、ですね」

 

「評価Sランク……」

 

屑癌の評価のベースは弾丸の使用数と命中率、そして残機数だ(実際はもっと複雑だが)。

アレだけ肉弾戦ができるなら、いくら命中率が低くても残弾と残機でお釣りが来るってか?

 

納得いかねえ……

 

 

舞台裏に漏れ出てくる、MCとヤシロバードの会話も要点はそこのようだ。

 

「真似するもんじゃないが、参考にはなる、かもな」

 

特に玲さんの。

 

次のプレイヤーが呼び出される。

 

 

……俺たちの出番はまだ先みたいだが。

 

「0さん、気合い入れていこうか」

 

「ひゃっ、はい!!」

 

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