しばらくぶり
屑鉄の街、人形、銃士はワンセットで屑鉄の案山子として書いてました
まさかこんなにかかるとは思わなかった
――先程まで居た空間に鉛玉が撃ち込まれる。
目の前に居た機械の
◇◇◇
『
隠密特化のビスクドールは見つかれば弱く、フィジカル特化のバーサーカーはシンプルに強くタフだが上手く立ち回れば封殺も可能。
どちらも明確に強さと弱さがあるボスだが、スナイパーは違う。
『スクラップ・スナイパーを倒すのに必要なのは純粋な銃の腕です。隠れて裏を取ることもできなくはありませんが、索敵に不得手でも無いため注意が必要です』
明確な弱点がない……というか、どう事を運んでも撃ち合いになりやすい思考ルーチンが組まれている、と言うのが練習と分析から見えてきたコイツのラスボス像。
◇◇◇
スクラップ・スナイパーの攻略法はそうとしか言いようが無い。
なにせモデルが
他の2体と比べても厄介度合いが段違いだ。これが社長特権ってか?
「レイさんはどう思う?スナイパー」
「ええと……そうですね、時間がかかるな、と」
ちなみに
◆◆◆
1時間前
「いました、ら……
「ナイス
言わなくても分かる、ひと目見れば分かる巨躯とはいえ、見つけたら名前言いたくなるのが人間というもの。もちろん共有の意図もある。
そしてこちらは必要な
「じゃあ0氏、作戦通りに」
「はいっ!」
◇◇◇
とにかくタフい上に被弾覚悟で距離を詰めてくるのが厄介、だが攻略方もシンプル、というかスクラップ『ガンマン』として王道に立ち回れば有利を取れるので最弱まである。――実装当初は常時スーパーアーマーがあり、被弾前提で前進し続けてきたというのだからたまったもんじゃない。ステゴロ上等って辺り、やはり
と言うのが、待ち時間無し何時でも遊べる
ただまあ、このゲームは
「レイさんがヘッショ連発してくれて助かったよ」
「ひゃい!陽ぢゅっ……陽務くんがヘイトを持ってくれたからこそです!」
スコアは堂々のS+。
俺の足が
筋肉痛になるほど運動不足では無いと信じているぞ、これまでの俺。そして明日の俺よ、今日中の回復はもう諦めたんだ。寝て起きたら治っていてくれ。
しかし流石は玲さんと言うべきか。
また何かテンションが変なまま謙遜しているが、ヘッドショットをフルコンボはお世辞抜きに凄い。
確かに俺がヘイトを受け持ったシーンではあったものの、シャンフロみたいな機動力はリアルでは望むべくもなく、動線誘導だってあそこまで上手くはできない。
俺だってVR上でならできる自信はあるが、流石にリアルで鯖癌クラスのリコイルコントロールは難しい。
動き回るバーサーカーへのヘッショはほぼ玲さんの力量に依るものだ。俺の貢献はヘイトを稼いで射撃のチャンスを作ったという意味で1〜2割程度が妥当か。
本題に戻ろう。
スクラップ・ガンマンのリザルトスコアは残弾数と被ダメージ、そしてクリア時間などによって決定される。
当然命中率が低くてはお話にならない。
だから弾丸効率と速さが高スコアには求められる。
俺達は玲さんのヘッドショット連発のお陰でかなり残弾も時間も残せた、と考えるとやはり――ARとは言えゲームはゲーム。流石玲さん、いや、こっちの方がしっくりくるな。流石玲氏、ARですら廃人クオリティとは。
とまあ俺達はバーサーカー相手に上手くいったわけだが、スナイパーとの半強制的な打ち合いは当然弾を消費するし、隠れながらの銃撃戦は時間もかかる。
リセマラしたほうが早い。なんて言われるんだろうな。
「スコアアタックの大敵なんだよなあアイツ」
◇◇◇
ハンドサイン。
私はここで待機。
ケイが瓦礫の死角の中を進むのを横目に見届け、私は私の役割に集中する。
ガンマンからの射撃を物陰でやり過ごしつつ、適度に反撃。少しでも削れるなら越したことは無いけれど……
「また瓦礫に隠れたわね」
とにかく撃ち合いに特化した思考ルーチンは、障害物を最大限利用する選択をしたらしい。
しばしの静寂。
おそらくガンマンはリロード中だろう。
既に出現からそこそこの時間が経っている。スコアを考えるとこれ以上の硬直状態は避けたい、が、ガンマン相手に下手に隙を晒せば即ヘッドショットが飛んでくると思ったほうがいい。
残弾を考慮すれば、瓦礫の陰にいる相手にあまり撃っても仕方無いところだけど、
私はあえて瓦礫に弾丸を打ち込む。
応酬に返された銃撃は同じくこちらの遮蔽物に阻まれる。
よし、釣れた!
警戒すべきは
「対戦車砲は撃たせない……!」
練習では何度アレに殺されたことか。
スナイパーは基本的に対人の武装しか使わないし、フルオートも使わないが、プレイヤーが瓦礫に隠れ続けると行動ルーチンが変化する。
瓦礫ごと吹き飛ばせる対物銃器を使い始めるのだ。
だからここは隠れることに徹してはいけない、時々姿を晒してでも撃ち合いを演じる!
イメージはカウンター狙い、大丈夫。
「遠距離同士なら事故は少ない、ってね」
お互いに遮蔽物に隠れながら戦っているのだ。射線は簡単に予測できる。ビスクドールみたいに頻繁に移動するわけでもなく、バーサーカーみたいに被弾覚悟で突っ込んでくることもしない。
一人で倒すには時間が掛かるのは確かだけれど、同じくらいプレイヤー側の時間稼ぎの難易度も低い。
「っと、あぶない」
お互いにもぐら叩き――一度だけ骨董品の鑑定番組で見たことはある――をしているような状況、頭を出しすぎればヘッドショットを狙われるし、狙える。
「とはいえ、そろそろスコアが不味いわよ、ケイ……!」
◇◇◇
メグがヘイトを受け持ってくれている。
慎重に急ごう。
それがコイツの攻略法、なんだけど……
「それはタイマンの場合なんじゃないかな」
スクラップ・ガンマンがチーム対チームの、対人FPSなら、簡単にこの考えに行き着いた筈だ。
ただただこのゲームが対NPCのゲームシステムで、かつその大半が物量戦や弾幕を仕掛けてくるから、思考の隅に追いやられていただけなんだろう。
(俺の答えはこうだ、サンラク……!)
『ここでスナイパーの
盛大にMCに行動をバラされるが関係ない。NPCに会場の音声は聞こえてないからな……!
「喰らえスナイパーっ!!」
障害物に隠れていたスナイパーにすかさず2発――ちっ、1発は背中か。
「メグ!」
こちらに振り向き、照準を合わせようとするスナイパーに、今度は
『
スナイパーの背部が開く。――それは排熱の為ではない。開いた内側にスナイパーはショットガンを収納し、代わりに腿の装甲が開放された。
「来いよ……!」
全身に銃器を仕込んでるくせに、使う得物は常に1種類。フルバーストなんてされたらダメージは避けられないんだろうが、それはコイツの流儀に反する。
『スナイパーの武器が変わりました!』
『二丁拳銃モードです。射程は多少落ちますが、同時に二方向以上をカバーできる武装です。
ロングバレルもそうですが、今後拡張パーツとして実装できないか検討中です』
『そういうのって、話しちゃっていいんですか?』
『良くないです。今のは忘れてください』
攻撃密度ではなく、対象を増やすための二丁拳銃、このイベントにゲスト参加することに決まって、サンラクが出ると知って、やり込んだ。
「だから知っているんだよ!畳みかけるよメグ!」
「OK!」
『ケイ選手、ここで障害物から出て走り出します!』
『夏目プロも走り出しましたね。挟み撃ちを維持したまま、スナイパーの狙いから外れる算段のように見えます』
獲物が二つになったところで、スナイパーの目は一対しかない。
スナイパーの一対の目では、挟み合うように立ち回る俺たちを同時には捉えられない。
スクラップスナイパーは人間の尺度で撃ち合ってくる。だから
「イメージは対人FPS!」
移動を不規則に、偏差射撃を防ぐ。
死角から追撃!
そして最後は
『背後からメグ選手が急接近!そして……!』
『ゼロ距離射撃でフィニッシュ。素晴らしい』
◇◇◇
リザルトもゲーム終了処理も待たずに、息も荒いままMCに呼ばれる。
セーフティがあるとはいえ、ゲーム終了前の取り外しは推奨されないフルダイブと違い、ゲームシステムの状態に関わらずヘッドセットを外して離脱できるのは、数少ないARゲームの利点だろう。
『爆薬分隊の皆さん、お疲れ様でした!』
『はぁ、はぁ……本当に疲れました』
『プレイした感想などを是非!』
『最後、スコアタイムが気になって焦ってしまいましたが、作戦が上手く嵌って良かったです』
『挟みうちですね!』
『はい。スクガンは2対多がメインですし、スクラッドには360度見えていたり、範囲武装持ちもいるので忘れがちですが、……』
ケイがひとしきり話している間に静かに深呼吸する。
私ほどではないとはいえ、ケイも息が上がっているはずなのだけれど
『……ケイ選手ありがとうございました!メグ選手も一言よろしいですか?』
乳酸はたまっているが、ケイのお陰で息は整っている。
さて、どれを話そうか……
『えぇ。……あ、スコアが出てるわね』
『え?あっ、ホントですね!』
「S+か……今順位出せます?」
ケイがスコアを見て呟く。
「このスコアだと僅差で3位かな」
「社長、スコア暗記してるんですか」
「これくらいはね」
「ってことはサ……μ-skyには勝ったか」
「そっちこそ順位はばっちりじゃないか。プロゲーマーさん」
「仕事柄、ね」
『あっ、今確認が終わりまして、現時点で爆薬分隊は3位だそうです!改めて如何ですかメグ選手!』
作戦の話はケイがしていたし、感想中心でいいかしらね。
『楽しかったわ。あとは作戦が上手くいってホッとしたわね』
『挟み撃ちでしたね!』
『えぇ。ケイが合わせてくれて助かった』
『というと?』
『この作戦は常に背後から攻撃することが肝だから、足は遅い私に合わせてたのよ』
『えーと……走る速さが合ってないと、まずい、と!』
『スナイパーの視界に同時に入ると、2丁拳銃で二人とも狙われてしまう。
二人ともスナイパーに狙われると、作戦が成り立たないどころか、ともすれば負ける危険さえあった。
だからこそ、スナイパーを挟んで常にどちらかが背後に居るように立ち回っていた。
『2人の
まあ、まとめるとそうなのかしらね。
◇◇◇
「爆薬分隊っていうか、格ゲーって基本個人競技なんですよね。ペア前提の格ゲーもありますけど、マイナーですし」
「へえ、かなりいい連携ができているように見えていたけど、相当練習したのかい?」
「それはしましたけど……GGCかな切っ掛けは」
「ああ、例の」
「アレでチームとして協力する、という意識が強くなって、今回嵌った感じはしますね」
「なら君と夏目さんだからこその連携ってわけだ……今日のラスト、またインタビューお願いしたいんだけどいいかな?良いネタになりそうだ」
「んー。インタビューは構わないすけど、今の話は無しで」
「理由を聞いても?」
「俺は格ゲーメインでやりたいんで」
「爆薬分隊は格ゲー専門チームでは?」
「色々あるんすよ……今後もイベントのゲストまでなら検討するんで、是非誘ってください」
「残念。釘を差されてしまったね」
……君たちなら大会優勝も視野に入りそうなのに
最後の呟きを、慧は聞かなかったことにした。
GGCのRWH6の件はトラウマになっていて欲しい。
でもゲームとして遊びたくないわけではない、という心持ちでもあってほしい。