ナツメグ探訪記   作:Almin

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たまたま前編がクリスマス前に書きあがっただけで、後編はできてません(宣言)(確認)




クリスマス特番-前編

 

 

「皆さん今日もこんばんは!TVユーガッタから愛を込めて、笹原エイトのチャンネル8! なんと今日はクリスマス2時間スペシャルでお送りして行きますっ!!」

 

MCの声がスタジオに響き渡り、視聴者応募の乱数を潜り抜けた観客席が沸き立つ。

 

「スペシャルと言うことで本日はスペシャルなゲストをお呼びしております!どうぞ!」

 

撮影セットの一角にあったゲートが白煙に包まれ、前時代的なお決まりの演出の中から男女が現れる。

 

爆薬分隊(ニトロスクワッド)の魚臣慧さん、夏目恵ちゃんです!」

 

「どうも、魚臣です」

「夏目恵です」

 

「いやぁ、なんだか久しぶりって感じがしませんね!準レギュラーのような気がしてます!」

 

そりゃそうだろう。魚臣慧が出たGH:C-WΔ(伝説の回)は結構最近な上、夏目恵に至ってはこの前のネフホロ2企画から日も経っていないのだ――などとはプロゲーマーも流石に口には出さない。

 

「今日は何をするんですか?」

 

「いい質問ですね!でもその前にもうお一方お呼びしましょう!」

 

スモークの音に会場がふりむけば、先ほどのゲートから二人目の――今度は男性が現れる。

 

どよめき。

 

白煙の中から()()()()()()()()()が現れたのだから無理もない。

 

その姿は本来、レクイエム・フォー・アーミーズのゲームキャラクターを示すもの。

 

「魚臣さん?!これはいったい?!今回は私、何も聞いてないんですけど??」

 

だが、今年の夏以降、ことこの番組(チャンネル8)では意味が変わってしまう。

 

「あー、すみません。聞いていなくて正解です。コイツは顔隠し(ノーフェイス)じゃないので」

 

疑問符が浮かぶエイトを取り残して、慧がカボチャ頭にわざとらしく視線を向ける。

 

「ほら、だからやめたほうがいいって言ったじゃないですか」

 

「……どうもー。流威吹です」

 

「えっ、あっ、戦車中隊の流さん?!」

 

カボチャ頭を外したそこにあった顔はレースゲーのプロゲーマーだった。

 

「ちょっと羽目外しすぎましたね。ハハハ」

 

「ってことは顔隠しさんは……」

 

「来てないです。俺も簡単にはアイツを呼び出せないので」

 

「びっくりしましたよぉ〜」

 

そんな笹原エイトの方を叩く影が一つ。

 

「いやほんと、やめとけば良かったのにね」

 

「っ!!」

 

驚きの困惑で言葉に詰まるエイトの代わりに、観客席から飛び交う言葉をマイクが拾う(穏便な表現)。

 

「だ、台本は守ってくださいよ名前隠し(ノーネーム)さん……」

 

「こっちはモノホンです」

 

「言葉が古くない?カッ…こつかないよ慧くん」

 

「笹原さん、進めちゃってください」

 

「あ、はい!」

 

早々に台本から外れて右往左往してしまった自分を正しつつ、先輩のご機嫌を伺いながらエイトは深呼吸する。

 

「ということで、笹原エイトのチャンネル8、ゲストは爆薬分隊から魚臣さん、夏目さん、戦車中隊より流さん、そしてご存知の方はご存知、魚臣さんのご友人「傭兵です」「謎の美人傭兵でーす!」……の名前隠しさんの4名でお送りしまーす!!!」

 

「そして、この5人で本日行うのは……」

 

古より伝わるドラムロールを背に、エイトは目一杯次の台詞を溜める。

 

「じゃんじゃじゃーん!!明日発売される新作ゲーム、『マギステラ=パーティ』です!」

 

スタジオスクリーンにゲームタイトルがでかでかと映し出され、スタッフが慌ただしくテーブルを用意していく。

 

「拍手ありがとう!皆さん何となく察していると思いますが、なんとこちらアナログゲームとなっております!」

 

「なんでアナログゲームなの?」

 

「折角のクリスマス、ケーキとお菓子でも食べながら遊びたい、ってことだよ。メグちゃん」

 

「名前隠しさんの言う通り、今回はゲームのお供として各種お菓子とスイーツを取り揃えております!」

 

「あ、良かったねメグ。ポテトあるよ」

 

「それは良かった……って別に私はポテトしか食べないってわけじゃ……」

 

「メグちゃん食べないの?」

 

「……食べます」

 

「慧くんお酒は?」

 

「あるわけ無いだろ!」

 

「あー……エイト…さん?なんか俺蚊帳の外っぽくない?」

 

「……流石GH:Cで同じチームだっただけに勝手知ったる、って感じですね!」

 

5人掛けの円卓に全員が座ると、それぞれの横にお菓子とスイーツの乗った小テーブルが運ばれてくる。

 

円卓の上には、大きなシート(ゲーム本体)と幾つかのサプライ(付属品)が置かれており、これが今回のゲームタイトル――『マギステラ=パーティ』と思われた。

 

「全員席に着いたところでゲームの説明をします!」

 

エイトの宣言とともに、スタジオの巨大モニタに映像が映し出される。

 

「『マギステラ=パーティ』は対戦型魔法バトルゲームです。推奨プレイ人数は3〜6人、最大8人まで遊ぶことができます」

 

エイトが円卓に置かれていたカードの山を、流と魚臣に取ってシャッフルするよう促す。

 

「今流さんが持っているのは魔法(マジック)カード、こちらが各プレイヤーの手札になります。マギステラ=パーティでは、各プレイヤーは手札の魔法カードを駆使して依頼(タスク)の達成を目指します。魚臣さんがシャッフルしているのが依頼カードですね」

 

円卓にはまだもう一つカードがある。

 

「そして、今私が取ったのが優先権(イニシアチブ)カードです。こちらもシャッフルして、と」

 

「5枚、ってことは1枚ずつ引くのかな?」

 

「そのとおりです。皆さん引いて表向きで置いてください」

 

カードには1〜5の番号が振られている。

 

「ふむふむ」

 

「次に各プレイヤーに4枚ずつ魔法カードを配ります」

 

「ああ、なら俺が配るよ」

 

「依頼カードはここに置けばよさそうかな」

 

「なっるっほっど〜。()()()()()()ね」

 

「では準備ができたので、ここからはゲームをやりながら説明します!優先権1番の人!」

 

「はい。1番、流です」

 

「依頼カードを3枚めくって表向きに並べてください」

 

薬草あつめ 3/$1

スライム討伐 5/$2

ドラゴン退治 12/$30

 

「手番のプレイヤーは、依頼を1つ選んで手札の魔法(マジック)を1つ以上唱えます。魔法の威力が依頼の目標値(ノルマ)を超えれば依頼成功!依頼カードを手に入れます!」

 

エイトの説明には()()がある。

 

「魔法カードの上に書かれた数字は?」

 

流が進行役たるエイトに尋ねる。

――ゲーマーとして意味は察せても、視聴者に伝わるかは別。

 

「あっ、それは消費MPですね!各プレイヤーは開始時にMPを10点持ちます!これを使って魔法を使うわけですね!」

 

コール&レスポンスでの進行補助、ある意味タレントでもあるプロゲーマーとしての必須技能。

 

「へー。依頼を解決して依頼カードを集めるわけね」

 

そこに慧も乗る。

 

「はい。依頼カードには目標値とは別に報酬が設定されており、最後に報酬の合計が一番多いプレイヤーが勝利になります!」

 

「それなら……俺はスライム討伐を貰おう。消費MP3、威力5のファイアーボールを唱える」

 

……

 

げし。

 

とコンマ数秒の沈黙をエイトに向けた蹴りが破る。

 

蹴ったのは名前隠しでカメラには映っていない死角なあたりは流石というべきか。

 

「っ、あ、はい!流さんが出したカードに対して、皆さんはリアクションができます!」

 

「リアクション?」

 

「依頼を手伝うか、妨害するか、です」

 

「妨害は分かるけど、手伝う利点は?」

 

「依頼を手伝い、その依頼が成功した場合、報酬の1部をサポートコインとしてゲットできます!サポートコインはMPの代わりにできる他、未使用の分は最後に報酬に加算されます!」

 

「へ〜。ま、私は今回はスルーかな。MP勿体ないし」

 

「僕も」

 

「私も」

 

「私もリアクション無し……と言うことで流さんは依頼達成です!カードを取って、新しい依頼をめくってください。あ、魔法も消費した数引いてください!」

 

薬草あつめ 3/$1

荷馬車の護衛 4/$4

ドラゴン退治 12/$30

 

「これで流さんの手番(ターン)は終了で、優先権2番の……名前隠しさんの番になります」

 

「一巡したらおしまい、って感じ?」

 

「いえ、全員の手番が終わったら、優先権カードを配り直して3〜5巡遊びます」

 

「で、合計点数の多い人が勝ち、と」

 

「MPはどうなるの?」

 

「えーと……MPは一巡するごとに10点回復するそうです!」

 

「なるほどねぇ。じゃあ私は……薬草あつめかな。MPを1消費して威力2のライトを唱えるよ」

 

「あれ?名前隠しさん、それでは足りなくないですか?」

 

「そうだねぇ……リアクションある?」

 

エイトの問いかけに名前隠しは全員へ問い返す。

 

「じゃあ私は、同じライトでサポートするわ。これで合計威力4ね」

 

次の優先権を持つメグがサポートを宣言したことで、他の面々はリアクションを放棄する。

 

「メグはサポートコイン1枚獲得だね」

 

と慧がメグにコインを一つ配り、話し始める。

 

「名前隠しが残してたノルマは1、MP1でスコア1点貰えるならサポートし得、ってところかな?」

 

「ええ。名前隠しさんも報酬を得るけど、それも1点だけだし、妨害でMPだけ消費するのに比べたら良さそうだったから」

 

「なるほど……ちなみに、コインはサポートした威力の高い順に、報酬と同額、半分、1/4で、最低でも1コインは貰えるらしいです」

 

「じゃあ私は新しい依頼を出して、使った分魔法引いて……これメグちゃんも魔法引く?」

 

「確認しますね……いえ、夏目さんは自分の手番が終わったら纏めて引く感じです」

 

バジリスク退治 8/$12

荷馬車の護衛 4/$4

ドラゴン退治 12/$30

 

「じゃあ私の番ね」

 

夏目恵は手持ちでクリア可能な護衛を選択して4ポイントを獲得する。

 

「で、名前隠しさんの時に使った分と合わせて2枚引く、と」

 

「依頼カードも補充してくださいね」

 

「わかってるわ……あ。」

 

「げ。」

 

「おやおやこれはこれは……」

 

バジリスク退治 8/$12

セイレーン退治 8/$10

ドラゴン退治 12/$30

 

「次は誰だったかなぁ〜?」

 

名前隠しがちらちらちらちらと魚臣に目線を送る。

 

「うっさいペ…名前隠し」

 

「高難易度が揃ったわね」

 

「じゃあ……」

 

魚臣慧は2枚の魔法を場に出す。

 

「依頼はドラゴン退治。魔法はアクアサークルとドリルライナーを使う」

 

「魔法の合計は9……3点不足か」

 

「――エイトさん、サポートはする?」

 

うーん……、とエイトは唸り、瞬きの後にサポートを辞退した。

 

「流さんは?」

 

「……サポートしよう。4で12はでかい」

 

「じゃあ私は妨害しよう」

 

「名前隠し、お前……」

 

「ライト2枚で4点マイナスね」

 

「ライト3枚引いてたのか」

 

「いや2枚。温存のつもりで1枚残したらまたライト引いてね。流石に手札を回したいじゃない?」

 

「……サポートしたのミスだったか?」

 

「いやいや、流さん。まだメグのリアクション残ってるから。頼むよメグ」

 

サポートによって、手番の慧と3点分サポートした流は$30ずつ貰える筈だったが、名前隠しの妨害で4点足らず現在8点という状況。

 

「4点のボルトでサポートするわ」

 

「サンキュー、メグ」

 

「えっと、この場合の点数は……」

 

「手番の慧くんが30点、一番サポートしたメグちゃんも30点、次点サポートの流くんが半分の15点で――何もしてないエイトちゃんと私が0点ってとこだね」

 

「お前は妨害しただろ名前隠し。さらっと無罪にするな」

 

「おっと覚えてたか。これは残念」

 

「じゃあ次は私の番ですね!」

 

バジリスク退治 8/$12

セイレーン退治 8/$10

薬草あつめ 4 /$2

 

「えーと……薬草あつめで!」

 

全員がリアクションを放棄する。

 

「これで一巡が終わりなので、一度優先権カードを回収します!」

 

 

◇◇◇

 

やらかした。

 

流さんが優先権カードが配り直すのをみながら、状況を整理する。

 

収録上、視聴者向けにゲーム説明を兼ねて初プレイ風に進めてはいたが、ゲームがろくにできなくては番組にならないので、俺達は各々が楽屋でこのゲームを予習している。

 

このゲーム(マギステラ=パーティ)はプレイヤーが魔法使いとして武勲を立てて報酬を競うゲーム……には違いないが一番の肝はリアクションだ。

 

なにせ、サポートするだけで手番のプレイヤーと同じスコアが手に入る。

威力が目標値(ノルマ)に届いていないときにしかサポートできない、というルール上、サポートが発生するのはほとんどが高難度、高報酬の依頼になる。

 

視聴者への説明も兼ねた1戦目は緩めにやろう、みたいな暗黙の了解があったはずなんだ。だから流さんもメグも低難度低報酬を選んでいたし、ペンシルゴンもいい感じにサポートの説明を兼ねたカードの出し方をした……と思っていた。

 

俺の場合は偶々、運悪く高難度高報酬しか場になかったから、高難度はサポートでクリアを狙います。

でもサポートが無ければ無駄に終わります、というチュートリアルのつもりで出した。

 

そこを流さんがサポートした。まあここまではあり得ない話ではない。

 

1つ目の誤算はペンシルゴンが明確に妨害したこと。手札交換が目的だとしても、態々2枚使って4点の妨害を投げるはチュートリアルにしては勝ちを見過ぎだ。

 

2つ目の誤算は、メグがサポートを重ねてクリアさせてしまったこと。

 

結果、30+30+15で実質45点が動いた。

 

流石にチュートリアルとしてはやりすぎた気がする……まあ編集に頑張ってもらうか……。

 

とにかく、ここまで点数が開いてしまうと緩くやりながら競る、というプランはご破算だ。ゲームとして見ていて面白くないだろう。

 

おそらく、上位層(俺とメグ)VS下位層(ペンシルゴンとエイト)の中で流さんが機を伺う構図になる。

 

ここからは本気(ガチ)でやれ、ってことだ。

 

 

 





豆知識:
名前隠しをチャンネル8に出すと、エイトちゃんの胃が死ぬ。
でも放送中は表に出さないように頑張っているプロ。

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