もう年度も終わるんですがご視聴の番組はクリスマス特番です。
――1巡目のリザルト――
[流 威吹]スライム討伐(2)/サポートコイン:15枚/MP:5/手札:2枚
[名前隠し]薬草あつめ(1)/サポートコイン:なし/MP:7/手札:1枚
[夏目 恵]荷馬車の護衛(4)/サポートコイン:31枚/MP:5/手札:2枚
[魚臣 慧]ドラゴン退治:(30)/サポートコイン:なし/MP:4/手札:2枚
[笹原エイト]薬草あつめ(2)/サポートコイン:なし/MP:7/手札:4枚
――場に出ている依頼――
バジリスク退治 8/$12
セイレーン退治 8/$10
◆◆◆
「では2巡目の順番は――1番手に魚臣さん、2番手が私、笹原エイト、3番手流さん、4番手夏目ちゃん、最後に
笹原エイトがMC(兼プレイヤー)らしく、宣言する。
「2巡目が始まったので、皆さんMPを10点回復してください。手札はまだ補充できませんよ〜」
さっきの依頼で一番得をしたのは俺ではなくメグだ。俺は合計威力9の魔法を使ったけど、メグは4点しか使ってない。威力とMPのバランスは魔法ごとに違うとはいえ、半分以下の威力で同じ報酬が貰えているわけだ。
これは妨害する場合も同じことが言える。
ペンシルゴンが妨害した時点での予定報酬は俺の30点と流さんの30点。
つまりメグがサポートしなければ、ペンシルゴンは合計60点を合計威力4の魔法で爆散させていた。
サポートが重なれば重なるほど妨害もまた効果的になる。
「魚臣さん?」
「ああ、俺の番だよね。ちょっと悩んでて……あ。」
「?」
「依頼カード、2枚しか出てないから1枚めくっていい?」
「あっ!ほんとですね!引いてください!」
依頼カードの山から1枚取り、場に置く。
リアクションの順番は
バジリスクやセイレーンの依頼を狙ったら恐らくペンシルゴンに最後に妨害されて終わりそうだ。
「……じゃあ、今出たスライム討伐で」
「それ、報酬2点しかないじゃないの。なに考えてるの?慧くん」
お前が言うか。
ペンシルゴンは今は無視だ。まともに聞いたら釣られかねない。
「……リアクションは?」
全員がリアクションを放棄したことで、2点を獲得ふる。
依頼カードを回収し、新しい依頼をめくったところで、流さんが口を開く。
「多分名前隠しに妨害されるのを警戒したんだろうけど」
それに納得したように、ペンシルゴンが大げさに相槌を打つ。
「ああ、そういうこと?慧くん詰めが甘いね」
なんの話だ?
「私、手札1枚なんだけど?」
「あっ」
あっ
「えっ、と……?」
「笹原さんにも分かるように説明すると、まず、魚臣くんは名前隠しを警戒してた」
「ふむふむ」
「今回の順番だと、名前隠しに最後のリアクション権があったから、妨害を選んだら依頼を達成できないわけだ」
「そうなるんですね」
「でも、私の手札は1枚しかないんだよ。エイトちゃん、手札を補充できるのは?」
「自分の手番の終わり……あれ?」
「そ。私はここで妨害すると、自分の手番で何もできなくなっちゃうから、絶対妨害できないの。だから慧くんは杞憂でチャンスを逃した、ってわけ」
俺は天井へと向けた顔を両手で覆った。
ミスを懇切丁寧に解説されるのってメンタルに来るんだよ!!
「やらかしたぁ……」
つい嗚咽が漏れる。
「また素材が増えるね」
勘弁してくれ……泣きっ面見て蜂の巣持ってくるんじゃないよ。
◇◇◇
私の手番が回ってきた。
慧の手番では
手番まで1枚しか使えない妨害を流さんは温存。
私は流さんの手番に使った。
「うーん……どうしようかしら」
「メグちゃんお悩みだねぇ」
手番が終わった流さんは手札を4枚まで補充している。
「さっき流さんを妨害したから報復が怖いってとこだろうね」
「恨むほどじゃないでしょ〜?結局エイトちゃんがサポートして達成できたんだから」
「それを抜きにしても慧くんと夏目さんには妨害したいですけどね」
「出る杭は打たれる、ってやつだねぇ」
「まあそういうことだけど、手札は1枚で選べないし、狙うだけ狙うことにするわ」
「報酬12点の解呪依頼……けど、3点足りないね」
他の依頼ならギリギリ達成は可能だけど、多分流さんが妨害することになる。
「だから、サポートしたかったらしてもいいわ」
「私は手札1枚だからパスね。慧くんはサポートするよね?」
「勝手に決めるんじゃないよ名前隠し……パス」
断られた名前隠しは標的を切り替える。
「エイトちゃんはサポート出すよね〜?」
「えっ……?」
「ほら、さっき間違えて出しかけたアレ、アレでいいんだよ」
「……これです、よね」
笹原さんが出したカードは威力1のバブル――これでは足りない。
「エイトちゃんMP1点減らしといてね」
「……ああ、そういう」
頭に疑問符を浮かべるエイトを横目に、慧が呟いた。
「で流くん、リアクションは?」
「……」
名前隠しさんの問いに流さんは少し考えるような素振りを見せたあと、宣言する。
「……威力2のファイアでサポートする」
「うん、これでメグちゃんと流くんが12点、エイトちゃんが6点だね」
「6点貰えたのは嬉しいんですけど……これどういう状態なんです?魚臣さん」
「流さんは今ので僕にかなり近づいたんだよ」
「えっと……カードの点数とコインを足して……ホントですね!さっき依頼が取れなかったのにあと5点です!」
「名前隠しはこう提案してたわけ。何もせず3位にいるか、メグを単独トップにしてトップ争いに加わるか、ってね」
「なるほど……でも1位の夏目さんとの差が縮まらなくて良いんですか?」
「そこはこれからってことさ」
サポートコインを積み上げながら流さんが宣誓を上げる。
ここからは私に大きな点は取らせないぞ、と。
「それじゃあ私の番だねぇ。待ちくたびれたよ」
この回でリアクションを一切取らなかった――取らなかった女がやや大袈裟に自分のターンを始める。
「今ある
と手札を場にカメラに映るように表に出す。
「これ1枚だと夜間警備しかクリアできないけど、他の冒険者のサポートがあるなら話は別だよねぇ?」
カメラの先のまだ見ぬ視聴者が確認したのを見届けたかのように、名前隠しは今公開した魔法を手札に戻す。そして代わりに自分の手をカメラの画角に納め……私を指差す。
「この依頼で最後にリアクションできるのはメグちゃんだ。そしてメグちゃんはMPの代わりにもできるサポートコインをたくさん持ってて、手札も補充したばかり」
慧くんの時の私と違ってね。と一言を添えて
「だから私が選択するのは……ハイワイバーン討伐だよ。残り7点よろしくねメグちゃん」
確かにこの状況、私がサポートすれば名前隠し――天音さんは大量ポイントを獲得できるけど、私は更に独走を進めることになる。
「……俺はファイアで2点サポートする」
慧が魔法カードを場に出す。
「笹原さんも何か出せる?」
「え?!……じゃ、じゃあ4点のサンダーボルトで」
3枚目の魔法が場に出される。
「流さん」
「分かってる。……俺は3点のファイアーボールを出そう」
「私が出した分も含めて威力12で達成だね。メグちゃん、妨害する?」
「……しないわ」
「じゃあまず、私はカードを貰って、エイトちゃんにコイン18点、流くんに9点、慧くんは5点だね」
「これで2巡目は終了か」
「そうだね」
「……名前隠し、お前単独最下位じゃないか?」
私が47点、ケイと流さんと笹原さんが30点台に対して、天音さんはまだ20点に届くかどうか、というライン。
「このゲームってサポートするのも大事なんですね」
「1巡目の引きが良くなかったのもあるかな」
「そういえば名前隠しさんはライト3枚持ちでしたっけ」
「記憶力いいねぇ、流くん」
「それほどでも。考えてみると威力の低い魔法は、ノルマまで届かないといけないサポートより、ラインギリギリに当てるだけの方がコスパはよさそうだ」
「そう思ったんだけど上手くいかないねぇ――ま、切り替えて3巡目にいこう!」
「コール!アンド!レスポンス!ほら一緒に、行くよー!」
「「「「おー!」」」
◇◇◇
3巡目の手番は笹原さん、
トップは私とはいえ、安心はできない。
ケイと流さんは意外と近くにいるし、なにより名前隠しのさっきのよく分からないテンションは、きっと何かある。
GGCで会う前の天音永遠だったなら、警戒はしなかった。
今日この場に
でも今の天音永遠は名前隠しとして――悪辣なヴィランを演じた人物として振るまえる。
まあ、ただパーティゲームが苦手って可能性もあるけど……。
「私は……コカトリス討伐にアクアサークルとファイアボールを使います!」
考えているうちに、笹原さんが依頼の選択と魔法を宣言するが、2点足りていない。
「ならリアクションするよ。ファイアを唱えて目標達成だ」
名前隠しがサポートする。
サポートは目標に不足しているときだけだから、今は妨害しかできない。
「……パス」
「パスかな」
ケイと流さんは妨害を放棄した。
下手に妨害して目標値下回れば、再びサポートが可能になる。
笹原さんに追い抜かれるより、私に引き離されるのを嫌った。そういうことでしょうね。
笹原さんが私を抜いてもその差は僅差。それならまだ、一気に追い抜ける可能性が彼らにはあるから。
私だってら、笹原さんは抜き返せばいい。
でも
「……ここは妨害するわ」
笹原さんではなく、名前隠しがポイントを得ることに。
「私の番だね」
笹原さんが失敗したので、コカトリス討伐は場に残っている。もちろん、名前隠しはこれよ取りに行ける。
依頼の更新が無いから今あるのは、「コカトリス討伐」、「夜間警備」「暴風のハルピュイア」の3つ。
このうち、暴風のハルピュイアはこのゲームにおける魔王軍の幹部。
目標値17/報酬40……ドラゴンと同じでサポート前提の依頼
「それじゃあ四天王討伐しちゃおっか」
名前隠しが残っている手札3枚全てを切る。
「……おいおいマジかよ」
ほとんどライトしか使っていなかったが故に、潤沢に余っているMPが消費されていく。
まずい。これ単独で名前隠しは私を追い越せる……つまり順位がひっくり返る。
「リアクションはどうする?慧くん」
多分、ケイと流さんはパスをする。
妨害すれば最悪、私がサポートに回って突き放されてしまう。さっきの笹原さんのときと同じ。
「リアクションは……無し」
「……俺も無し」
どちらがリスクが低いかを考えたら、私も妨害しないだろう。
「……パスね」
これ以上手番前にMPと手札を使うと、今度は私自身の手番が厳しくなる。
ここは、さっき手札を補充した笹原さんに妨害を――
「……パスです」
「「「えっ?」」」
「じゃあ依頼成功だね」
私たちを横目にそそくさと、名前隠しが依頼カードを回収していく。40点を獲得し、単独トップ……なのだけれど。
「えっ?えっ?」
「妨害しなかった理由、私はなんとな〜く察してるんだけど、彼らに教えてあげたら?」
困惑する私たちの反応に困惑する笹原さんへ、名前隠しが口角をつり上げる。
「え……っと、その、MPが足りなくて、ですね」
笹原の現在MPは2。
さっきのターンでギリギリを攻めるために手札とMPを使いすぎた、という意味なのだろうけど……
「……笹原……エイトさん?」
「サポートコイン使えばよかったのに」
「えっ…………あっ?!」
うーん、驚きのリアクションは流石
「忘れてたのか……」
「誰も使ってなかったから仕方ない……か」
カッツォくん正解。
「プロじゃない私やエイトちゃんが忘れちゃうのは仕方ない、ってね?」
「いやお前は覚えててやっただろ……」
「というか
「流さん……これがプロになったら会社ごと潰れます」
「心外だなぁ。ほら、キミの手番だよ
◇◇◇
3巡目は特筆すべきこともなく終わり、最終巡になって差は縮まっても上位の順位は変わらず――
「――さあさあ、誰か
「そしたら妨害するだろ」
「それはもちろんそうでしょ」
このやり取りを見るのは何度目か。
私や
「……俺はこっちを狙わせてもらおうかな」
「えっ?それじゃあ逆転できなくないですか???」
「名前隠しも公言したけど、魔王なんて狙ったら妨害が来るのは分かってるからね」
そもそも4位に陣取る流さんはサポート前提の魔王は狙えないのよね。私かケイがサポートに回ったら同じだけコインが私たちに流れるから、どうやっても1位にはなれない。
「ああ、確かに……」
「つまり、流さんはここからサポート狙いする、って言ってるんだ。名前隠しとメグはまだ流さんよりポイント高いからサポートしても変わらないけど……俺か笹原さんのサポートなら、あの位置からなら名前隠しを狙えるわけ」
「なるほど……じゃあパスします」
「これは私もパスでいいかな」
「同じくパスで」
「マジかお前ら……妨害」
「流石にダメか」
「そりゃまあ。」
「あ……ホントですね。私からリアクションの宣言でした」
「エイトちゃんの番だよ」
「うーん……わかりました!」
少し悩んでから、笹原さんは魔王討伐を選択。
これに名前隠し、私、ケイはサポートをパス。
「……パス。流石にその点は出せない」
ダメですかぁ、と笹原さんは出していた魔法カードを墓地へと捨てる。
「欲張りすぎたね。流石に不足15点は誰も賄えないってさ……さ。私の番だね」
むむむっ、と
名前隠しは依頼カードを見つめながら仮面に隠されていない顎に手を当てる。
「見えてる?」
「そりゃもうバッチリ。……よし、これに決めた」
「――私はパス」
「それは通せないかな」
「ま、流石にそうだよね」
「ソレを取ったら魔王でしかないからね」
「『魔王でしか
「みんなパスなら私の番ね」
さて、どれを選ぼうか……
今私と名前隠しの差は5点。
これをひっくり返さないと勝てないのは間違いない。
でも、私の番のサポートの順番はケイ、流さん、笹原さん、名前隠し。
……ふと、名前隠しの手元に目が行った。
「私はスケルトン撃退を受けるわよ」
目標値5点/報酬$6の低難度依頼。
「魔法は――ファイアボール、ドリルライナー、それにライト」
「えーっと?ファイアボールが5点で……」
「合計13点、随分と豪勢にいったね、メグ」
笹原さんの指折り計算を待たずに、ケイは答えを提示してパスと応える。
「まあ、俺らが止める必要はない、か」
どうせ名前隠しさんが止めるだろ、と流さんもパスを選択。
「うーん……8点オーバー?ですよね。私もパスで!」
「エイトちゃんもパスかぁ。仕方ない、ここはお姉さんが妨害するしかないね。サンダーボルトとファイアボールで合計9点だね」
カードを出し――名前隠しの手が止まる。
「あ。――いっけなーい。MPが切れちゃってるね。なら私はサポートコインから妨がいを……」
今度は口が止まる。
く
「ケイくん、サンダーボルトとウィンドカッターって消費何点だっけ」
「――4点と2点で合計」
「「6点」」
「やってくれたね夏目ちゃん……!」
「夏目さんと名前隠しさんの点数差は5。つまひ妨害しなければ6点獲得して逆転されるけど、妨害してもサポートコイン分6点を失って逆転される」
「どっちにしろダメだった、ってことですか??」
「……強いて言えば
「そうはならなかったけどな」
「そういうあんたは3位でしょうが」
「お忘れ?次は俺の番だよ?お前じゃないけど、最後はでかい花火を上げるとしよう」
………………
…………
……
「妨害するわ」
後で放送を見たら、ケイのラストターンはダイジェストになっていた。