苦手な方はご注意ください。
王国争乱イベント、
そして、
つまりニーネスヒル通過ルートを避ける人が一定数出るのは当然で、その中に
つまり、これは私の不手際とも言えるのだけれど
……だとしても。
「あー、思いっきり走りてぇー!」
「やめとけ、やめとけ」
「多分途中で転ぶよ?」
「分かってる。言ってみたかっただけだって」
「ペッパーさんは薬剤師なんですよね?回復任せても良いですか?」
「構わないけど、回復アイテムには限りがあるし、即死は治せないから、無茶はしないで欲しいわ」
「だってよ、
まぁ、私の確認不足でもあるので追及は出来ないのだけれど。
取り敢えず、
なおこの三人、シャンフロを始めてから偶然視聴仲間にあったとのことで、別にリアルで知り合いとかではないらしい。
「ペッパーさん、レベルも高いですもんね。もしもの時はお願いしますね」
「分かったわ。サブに剣士を置いてるから、いくらかフォローもできると思うわ」
「俺たちはほぼ最短ルートだもんなー」
「ただでさえ平日は学校や仕事で進められないからな。なるべく急がないと、改崎さんに置いていかれる」
「日程はまだ分からないけど、なるべく良い装備を準備しておきたいもんね」
ここ、雲上流編の雲海地は、シクセンベルトからテンバードへ抜ける道であり、
その大きな特徴と言えばやはり、
地面が見えないほどの濃い霧は、私たちの腰元までを覆っており、迂闊に走ろうものなら、何に躓くか分かったものではない。
つまりここは、
「とは言え、ここまで霧が濃いとは思わなかったわね」
ウィキを軽く流した程度だったけれど、こんなことならこの前カッツオに聞いておけば良かったかしらね。
「しかたないだろー。栄古斉衰の死火口湖は
カッツオが向かうって言っていた場所ね。確か……
「レイドモンスターが出るって噂なんだよ。それにこの先の気宇蒼大の天聖地は
確かに、レベル上げやユニーク狙いでなければ、目に見える危険は避けた方が効率は良いでしょうね。
「じゃあフォスフォシエ経由は?って提案したら、ケイカが嫌だって言うし?」
「だって、そっちだとアンデッドと戦うことになるじゃない……」
たしかに、
「ケイカさんってホラーが苦手みたいだけれど、改崎さんがホラーゲームやってる時はどうしてるの?」
「……部屋を明るくして画面から離れて観てる」
VRギアで見てるんじゃないの?と聞くと、
「それ、明るくして離れたら画面ほとんど見えないんじゃね?」
「改崎さんの声を楽しむからいいのっ!」
ケイカと桜蘭の言い争いが始まる。とは言え(街中で見てきた限り)、すぐに落ち着く筈なので、ここは少し待って……
「ぎゃっ?!」
ケイカではない。もっと低い声だ。そもそもケイカと桜蘭は言い争いの最中で、つまりこの叫び声は……
「!!どうしたST-ライト!」
「今!なんか!足に触っ……あっ、ひっかかれた!」
ST-ライトが足元に向けて片手斧を振り回すが、目えないモンスターに当たるかどうかは運次第だろう。
むしろ……
「まってろ!すぐに行く!」
と意気込み、剣を抜いて駆け寄る桜蘭。いや、すぐにもなにも、数歩の距離でしょうが。現在進行形でパーティー行動してるんだから。
「どこにいるの?!全然見えないじゃない!」
ケイカも足元にクナイを振り始め、軽いパニックを起こしている。
カッツオの対応力の高さを再認識しつつ、剣を抜いて、じっと霧の
ここはパニックを静めるより、モンスターを抑えてしまった方が早い。
ケイカ達の起こす霧の波紋は少し邪魔だけれど、引っ掻いたのが
「あれね!」
真っ直ぐパーティーに突進する霧の流れ!
スキル、スライドムーブでモンスターの直進ルートへ割り込み、同時に剣を地面に突き刺す!
「ボアアァァァ!」
剣に
次の瞬間には、霧の流れが180度反転し……あ、これは逃げられたわね。
「え?なに?なに?」
依然パニック状態のケイカがこちらに駆け寄る。
寄って来ない2人を確認すると、桜蘭はスタミナ切れ、パニックから落ち着いたのはST-ライトだけだと分かった。
「名前は忘れたけど、多分イノシシ型のモンスターね。逃げられちゃったわ」
モンスターが居なくなったことを告げたことで、ケイカの表情が若干だか和らぐ。
「ああ、パニックになってすまなかった。どういうモンスターなんだ?」
「確か、霧の中を突進移動するモンスターだった筈よ。移動時は霧が押されて表面が
「なるほど……」
「多分だけど、すれ違いざまに牙を引っ掛けられたのね。傷は大丈夫?」
「あぁ、ほとんど掠り傷だ」
「詳しいですね、ペッパーさん」
ケイカも落ち着いて来たらしい。
桜蘭は……まだ息切れしてるわね。STM足りてないんじゃないかしら?
「ありがとう。と言っても、ウィキ情報だけどね」
「私たちも確認しようとしたんですけど、最近特に重くて……」
「ああ、なるほど……」
最近
「ペッパーって結構いい回線使ってるんすね」
「あー、まぁ、見たのも結構前だしね。お蔭で細かい情報までは思い出せないのだけれど」
噂によると
「俺達もそうすれば良かったんですけど、どうしても、直前にならないと調べる気にならなくて…」
「仕方ないって。あそこ重すぎなんだよ」
「画像表示切っても物凄く重いもんね」
「え?画像って消せるのか?」
「「「……は?」」」
「えっ?」
◇◇◇
その後、何度もモンスターに会いつつも、なんとか倒したり逃げたりしながら、私たちはエリアの8割ほどを進んでいた。
改めて実感したが、
レベリングの時はポーションも潤沢にあり、カッツォ自身のプレイヤースキルもあってダメージ自体も少なかったが、今回はそうもいかない。
視界と足場が比較的良好な神代の鐵遺跡では、足の速さと手数を生かした
「あっ」
「ケイカー!!」
こんな感じに転ける。
「二人は攻撃続行!私がフォローするわ!」
「了解!」
「イエッサー!」
スライドムーブ、ジャストパリィを連続起動、ケイカを対象に飛んで来た
「大丈夫?!」
「ありがとうございます!ペッパーさん!」
ケイカが立ち上がったのを確認して、私は全員をサポートできる位置まで後退する。
「やっぱり厄介ねこの霧……!」
さっきのも、別にわざわざスキルを二つも消費してパリィする必要は無かった。アイテムを消費はするが、氷弾の着弾に合わせてブルズアイ・スローで
むしろこの距離ならブルズアイ・スローも要らないくらいだ。
そう、
霧で隠れるのはモンスターだけではない。隠れてしまったパーティーメンバーへの投擲は確率が大きく下がるし、ブルズアイ・スローも使えない。
「バォオオォォオオオオ」
ST-ライトの投げた斧が後ろ足に刺さり、クラウダイブ・エレファントが悲鳴を上げる。
「喰らえっ!」
ST-ライトの方へ方向転換するエレファントの脇腹に、今度は桜蘭が切りつける。
「よし、斧回収!」
「ほら象さん!こっちにもいるわよ!」
すかさず桜蘭に向かったヘイトを、後方に回ったケイカがクナイによる連続切りで奪取する。
実を言うと
クラウダイブ・エレファント、レアエネミー故に、軽くWikiを流した私でも名前を憶えているそれは、最高速度はともかく、初速がかなり遅い。
つまり、このパーティーの主戦略たる
なので私の仕事は、さっきみたいな
「ST-ライト!右後方から来るわよ!」
「了解!」
「ボアァアアァァア!!」
ST-ライトが斧を右後方へ振り回すと、今度は
「あっ!また逃げた!」
「放っておいて、まずは象を倒すわよ!」
このイノシシの進路を予測してメンバーに伝えることだ。
そもそも、クラウダイブ・エレファントは本来温厚なモンスターらしい。
距離を置いて移動すれば、まず襲われることもないとウィキにもあったし、
そこで出てくるのが、あのイノシシ型モンスターだ(流石に別個体なのだろうけれど)。
あれがクラウダイブ・エレファントに激突し、あろうことかこちらへ方向転換して突っ込んできたのだ。
あとの経緯は言うまでもなく、アクティブ化したエレファントとイノシシのMvMに巻き込まれてしまって今に至る、というわけだ。
「桜蘭!スタミナ大丈夫?!」
「そろそろきつい!交代頼む!」
「「「了解!」」」
攻撃のメインをST-ライトにスイッチしつつ、私は桜蘭に近い位置へ移動し、サポート体制を整える。
「みんな!体力大丈夫?!」
「すみません!お願いします!」
今度こそブルズアイ・スロー起動。
「ポーションの残数は……まだなんとかなるね」
「うっしゃあスタミナ回復ぅ!こいつ倒してボスまで特攻じゃー!」
象よりもイノシシに苦戦した。
「……だっる」
「何してるのよ桜蘭、結局最後スタミナ切れじゃないの」
「仕方ねーだろ、ケイカ……騎士は装備重量もあって、走るとスタミナ消費が激しいんだよ……」
「それ込みでスタミナ管理しろって話だろー」
「まぁまぁ。取り敢えずスタミナ回復させたら、先に進みましょう?」
「そうすね」
「そう言えばペッパーさん、体の使い方上手いですよね。他のゲームとかやられてるんですか?」
「ん゛っ」
格ゲーを少々、なんて言ってしまうと、好きな格ゲープレイヤーは?という流れになるのは目に見えている。
とは言え、嘘をつくのもちょっと……
あ、そうだ。
「いえ、(VRMMO系の)ゲームはこれが初めてよ。普段から(格ゲーのために)体を動かしているから、それで動かしやすいのかもしれないわね」
「へー、そうなんですね!私もなにか初めて見ようかなぁ」
……
「スタミナ全快したぜ!」
「やっぱり霧が邪魔ですね。全力で走ると躓いて転けそうになる」
「でも走るけどな!」
「もろに受けるとダメージが洒落にならないからな。回避と撹乱に必須というか」
「この先がエリアボスで合ってますよね?」
「たぶんそうね」
「ボスはどんなモンスターなんですか?」
「ここのエリアボスは…」
◇◇◇
その後、辛くもエリアボスを倒した私たちは、無事テンバード入りを果たしたあと、パーティーを解散した。
「今回はありがとうね」
「ペッパーさんはどうするんですか?」
「取り敢えず、道具屋でアイテムの補充と、この周辺の素材を採集するつもりよ」
「随分とポーションを使わせてしまいましたね」
「いいのよ。元から使うのは想定内だから」
「そうですか。また機会があればよろしくお願いします」
「ええ。またね」
彼らはこのまま、フィフティシアを目指すようだ。
……次に会うときは敵同士かしらね。
彼らには言っていないが、私は
派閥争いの中で出会えば、戦わざるを得ないだろう。もちろん、負けるつもりは微塵もないけれど。
……AGI偏重ビルド増えそうだし、改崎速手対策も兼ねて、一応対応を練っておくかなぁ……
そんなことを考えながら、私は道具屋の扉を叩い……
チリンチリン……
「あの
ん?
「そうだなー。でも、シャンフロって味覚制限あるはずだよな?他の料理は薄味だったのに……」
「あー。言われてみれば、あのポテトだけちゃんとピリピリしてたね。なんでなんだろう?」
「不思議だよなー」
二人組を見送って、道具屋の隣を見ると、そこはレストランになっていた。
「……そう言えば満腹度が減ってるわね」
チリンチリン……パタン
中毒になった。
たぶんこのパーティは
流石にエリアボスは創造できないのでユザパです。
配信者の真似をしてAGI振りするカイ速視聴者は多いんじゃないかな、と。
なお彼らは
あと、