ナツメグ探訪記   作:Almin

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彼女は知らない。

語り継ぐまでもなく其処に生きる偉業を。

彼女は知らない。

古参プレイヤーの殆どが敢えて避けるその色の意味を。

その深紅の意味を。

彼女は知らない。



サウスtoウェストonフライドポテト

 

さっきMRで映っていた機衣人(ネフィリム)、近接装備中心のように見えたわね。

 

不安なのは()()()()()()()()()()()()()ことか。ストーリークエストで使っていた緑の機衣人よりも更に少ないように見えた。……ギガントのように隠し武器があると見た方がいいわね。

 

そうなるとこっちの武器構成は……

 

◆◆◆

 

鉛筆騎士王:ルストちゃんって背後が見えるウェザエモンだっけ?

 

サンラク:後ろの目はモルドがサポートする場合、だな

 

鉛筆騎士王:ぶっちゃけ勝率は?

 

サンラク:0:10

 

カッツオ:根拠は?

 

サンラク:銀色覆面少女とのダイアグラム

 

カッツオ:そりゃ0:10だけどさ

 

サンラク:だろ?

 

サンラク:まあネフホロは機体を自分で構築する分、相性差はかなりデカいから、構築次第ではあるが

 

サンラク:ルストの比翼連理はアレだ、流星の速さを得た妖精真拳

 

鉛筆騎士王:あー、ティンクルピクシーだっけ?

 

 

◇◇◇

 

眼前のスクリーン一面に敗北の2文字が浮かぶ。

 

ルストさんとの1戦目は一瞬だった。

 

当たらない。

見失った。

接近を許した。

 

敗因をざっくり纏めるとこんなところね。

ルストさんの赤い機衣人……比翼連理は確かに近接特化だった。その読みは外れていない。ただ、対策で入れた遠距離装備が尽く躱されてしまった。

 

次の対戦までのインターバルは10分……生放送だから仕方ないけれど、あまり考える時間もない。とりあえず一度遠距離は捨てて中・近中心でやってみよう。

 

 

◇◇◇

 

「皆さんこんばんは!さっきぶりのエイトちゃんでーすっ!」

 

「……爆薬分隊(ニトロスクワッド)の夏目恵です」

 

「『ネットでエイト』始まりますよ~!ということで早速本題ですが、先程は大変でしたね夏目ちゃん!」

 

「いや、あそこまで強いとは思わなかったわ」

 

「あ、視聴者コメント来ましたよ!『9割準備画面は草』まぁ、はい。『夏目ちゃんがんばれ』がんばれ~!『強すぎる……バグかな?』いや、バグじゃ無いですよ~。『久々に比翼連理見た』……これはネフホロ1からのプレイヤーの方ですかね?」

 

「正直なところ、ルストさんが強すぎて方向性が見えないのよね……」

 

コメントを見るにやはりルストさんは相当強い……が無敗という訳でも無いらしく、あの比翼連理も敗けたことがあるらしい。

……視界の端に映る『罵って欲しい』は見なかったことにした。

 

「前回まではストーリークエストを進めて貰いましたが夏目ちゃん!」

 

「えぇ。今回からは対人戦の練習をしていくわ」

 

「それでは、これから夏目ちゃんには準備に入って貰います!運が良ければみんなも対戦できるかも?!」

 

 

◇◇◇

 

ネフホロ2にログインし、対戦ロビーに降り立つ。

幾つかの視線がこちらに向けられていることを認識しつつ、そのどれもが()()に留まることを確認する。

 

「まぁ、これは仕方ないわね……」

 

プライベートならともかく()()中に人目を避けるのは不可能だ。

 

「番組の趣旨としても対戦相手が欲しいのだけれど……」

 

対戦募集はえっと……

 

「これでアイコンが出るのね」

 

……

 

「あ、対戦よろしいっすか?」

 

「あ、えっと『ヘリング・ロー』さん、ね。これネット配信の放送なのだけれど問題ないかしら?」

 

「え?撮影?これテレビ映ってんの?ウェーイwwwあ、えぇ、えぇ、かまいませんっすよ。うん全然放送しちゃって。はい」

 

なんか微妙に言動が怪しいのだか大丈夫かしら……変な被り物してるし

 

「あ、これっすか?これは『WMH』っつー旧型の通信機のレプリカっす。視界は普通っすよ」

 

「そうなのね」

 

「フィールドはどうするっすか?」

 

………………

 

…………

 

……

 

「ヘイヘイヘイヘイ!動きが鈍いっすよー!」

 

なにあの機体!

突然()()したと思ったら八本足でビルをかけ上ってくるのだけど?!

ホント何なのアレ?!?!

 

「くっ、右に左にちょこまかと……」

 

ヘリング・ローの――対戦開始時に出てきた機体名称をそのまま引用するなら――『オピリオネス』は通常の機衣人(ネフィリム)の持つ二脚二腕とは別に擬似的な脚を4脚持ち合わせている。飛行能力は皆無に等しいけど、地上での機動力が異常に高い。

 

「それでもプロっすかー???」

「この……待ちなさい!」

 

くっ、ここからだと狙いが定まらない……

あと少しというところになるとビルの裏に回り込まれる。

 

「あくまでかくれんぼするって言うなら……こうよ!!」

 

「なんだっけ爆発落ち(ニトロスーサイド)だっけ?」

 

なんでいないのよ!さっきまでこの建物の裏にいたはずよ!!

 

爆薬分隊(ニトロスクワッド)よ!!」

 

「正義の味方がビル壊していいんですかぁ~??」

 

「あんたが逃げるのが悪いんでしょうが!!」

 

この建物でもないのね!!

 

「おっと失敬、ヴィラン(ユグドライア)でしたねwwwwww」

 

それはGH:Cの話でしょうが!

 

「そもそもユグドライアは持ちキャラじゃないのよ!!!」

 

こうなったらここ一帯更地にしてあげるわ!

 

「というか、あなた、私のこと知ってて声かけたのね?!」

 

「そりゃそうっすよ?あれもしかしてご存じない?」

 

ご存知ないわよ!

 

 

 

 

「……いない」

 

「……」

 

応答はない……見渡す限り瓦礫の山にしたのだけど、流石に埋まったのかしら?だとしたらもう少し降りないと視認は難しいわね。

 

周囲を警戒しつつ、高度を下げ……

 

ザリリッ

 

「え?」

 

()()()()()()()()()()

 

「なっ、どうし……」

 

続けざまに頭部が破壊され視界がブラックアウトする。

どういうこと?姿が見えないのは光学迷彩で説明がつく。でも、ここは()()()()なのよ?なんで攻撃されたって言うの……?

 

 

◇◇◇

 

「対戦ありがとう……もう一戦お願いしても?」

 

「構わないけど……」

 

ヘリング・ローが手をちょいちょいとこまねいて……なに?あぁ、一端CMに入れって?仕方ないわね……

 

「では、これから……そう、機体の調整をしたら再挑戦させて貰うわ!という事で一端CMー!」

 

「……アドリブ苦手かよ」

 

「で、わざわざ配信切った理由は?」

 

「いやな、てっきりタネ明かしを求められると思ってから」

 

「それだけ?」

 

「ほら、JGEでも真っ先に攻略見てただろ?」

 

「そりゃあ説明書と攻略書は先に呼んでた方が効率いいもの。これは()()()()()読んでないけど……ん?」

 

JGEでシャンフロのWikiなんて見たかしら?

 

あぁ、そういえば昼休憩の時に……

 

「……顔隠し(ノーフェイス)?」

 

「………………バレてしまっては仕方がないな!」

 

「あなたココでも覆面(マスク)なのね」

 

「まあ、Wiki見てないならむしろ好都合かもな」

 

「どういうこと?」

 

ルスト(比翼連理)戦う(ヤル)なら一般構築じゃダメってことだ。速さに翻弄されて瞬殺されるのがオチだろう」

 

実際そうだったので否定はできない。

 

オピリオネス(それ)なら勝てるってこと?」

 

()()はダメだ。ルストなら見てから対処される」

 

じゃあなんで出してきたのよ……。

 

◇◇◇

 

『ルストを研究してメタを張れ』。カオナシの言いたいことは要約するとそういう意味だったらしい。

 

「ある意味いつもどおり、ね。問題はセオリー通りじゃ対処できない、ってことだけれど」

 

その前に顔隠しとの再戦だ。同じ機衣人(オピリオネス)で来るのは確定なのだけれど、どうしても解せない点がある。

 

8脚あった手足には全て接地歩行用で、噴脚や重力浮脚はおろか、飛行用ブースターも見えなかった。

どの脚もブレード系の武装で中・遠距離の武装も無かった。仮に有ったとしても、本体から離れた弾にまで迷彩がかかるとは思えない。

 

でも確かに、射程圏外の筈のオピリオネスに私の機衣人(ネフィリム)は撃墜された。

 

「また建物の陰に隠れてるわね?」

 

「どうだろうな?」

 

…………

 

……

 

「今は隠れてないわね?」

 

「無い陰には隠れられないと思うんだが?」

 

そうは言うが、やはりオピリオネスは影も形もない。やっぱり「光学迷彩」は確定でしょうね。センサーは確かに()()に機衣人がいることを示している。

 

私は確認のために降りた(高度を下げた)タイミングで攻撃されたわ。私は射的範囲外から攻撃されたのではなく、()()()()()()()()()()のよ。

 

仕組みはまるで分からないけれど、あの機衣人(オピリオネス)は見た目の数倍の射程を持っている。

 

「確かにセンサーを見れば居場所はバレバレだものね」

 

居場所は分かるのだから、絶対届かない上空から弾を撃ち続ければいいだけなのよ。要するに。

 

「……いた!」

 

運良く「光学迷彩」ユニットに被弾したのか、オピリオネスが姿を表したが……あれは……

 

「えぇ……?」

 

剣、ね。剣が2本、地面に刺さっている。その上にブレードが1本ずつ()()乗っている。

ブレードは脚に装備されていて……視線を上にずらすと胴……つまり()()()()()()()()()()のね……。腕には電動鋸を握っている。確かにこれなら8本脚装甲と比べても、直立から比べても……あれ?

 

「腕か長い……?」

 

腕自身も伸縮してるの???

 

手品のタネは分かったけれど、よけいに謎が増したというか……それ歩けるの?そもそも前見えてる?

 

「動きに馴れてきたくらいの初心者によく刺さるんだよなこれが」

 

「最初から狙ってたわけね……!」

 

腕を伸ばして武器を積み重ねてもなお、私の機衣人(ネフィリム)はその射程外。落ち着いて、冷静に、狙いを定めて……

 

「ところで知ってたか?「光学迷彩」は『ネフィリムを見えなくする』装備じゃない」

 

「じゃあなんだって言うのよ」

 

一斉砲撃!

 

「『接触しているモノを透明化する』装備さ」

 

瞬間、目の前で光が爆ぜた。

 

視界がブラックアウトする。メインカメラをやられたのね。

衝撃と立ち眩みで落下して……落下?

 

「あ、ちょっとまって?!どっちが上?!」

 

射程圏内に()()()私の機衣人(ネフィリム)は、あっさりとそのコアを打ち抜かれた。

 

◇◇◇

 

「……「光学迷彩」爆弾?」

 

ふと言葉に出てしまった一言は、多分正解なのだと思う。

 

結局あのあと、ロビーに戻ると対戦希望者の列ができていて、顔隠し(ノーフェイス)との再戦はできなかった。

 

だからこそ今こうして、完璧な視聴環境で(フライドポテトとコーラ片手に)今日の配信の録画をリピートしている。

 

「光学迷彩」は機衣人(ネフィリム)を視覚的に隠す装備なので、録画にも多くは映っていない。それでも、序盤と終盤に少しずつ映っていたそれから、分かることがあった。

 

()()()()()()()()

 

最後の対戦、オピリオネスの頭部が忽然と消えていた。

 

――ところで知ってたか?「光学迷彩」は『ネフィリムを見えなくする』装備じゃない――

――『接触しているモノを透明化する』装備さ――

 

光学迷彩と爆弾を装備した頭部を()()()()()()()()投擲する。それがあの不可視の攻撃のカラクリ。

 

相手の攻撃に併せてやれば、光学迷彩が破損したと勘違いさせられる。油断して砲撃しようとしたところに、投げた爆弾がズドン。

 

「よく考えるわね……」

 

世間的な評価は分からないけれど、『パフォーマンス用の自爆装置』だと思っていた爆弾をこんな風に使うなんて……どうかしている。

 

「でも、そのおかしなヤツに負けたのも事実なのよね」

 

Wikiに伸びそうな手をポテトに進路変更。ここのは美味しいのだけど、なんとなくケチャップを付けたくなる。

 

「んー。残り少ないわね。今度買い足さないと」

 

対ルストさん対策はまた録画を見るとして……

 

「まずは打倒顔隠し(ノーフェイス)ね。GH:C(本業)の分も含めて借りを返さないと」

 

そう心に決めて、私はスマホを開い……あ、ケチャップついた。

 





ヘリング・ロー(かずのこ)はサンラクのサブアカウントです。流石の変態も()()()()のままネット配信――それも顔隠し(ノーフェイス)を知っている人間が主体――には出たくはなかった。


『WMH』の正式名称は『Widerange(全天)Mold(鋳造型)Headgear(通信機)』通称スイカ頭(WaterMelonHead)

んー、こんな長編にするつもりは無かったのだけれど、なぜ?
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