その巨漢、阿呑は困っていた。
突然召喚され、目の前には目から光の消えた小さなマスター……
俗に言うレイプ目というやつかのう……
自分に向かってくる害意の感じられる微小な何かを足裏から放つ波紋で蒸発させながら悩んでいた。
(召喚されて……そのシステムからの情報によると我は
ズンッ!!と足を踏み鳴らす。
少女がビクッとかすかに反応した。
(我がぁ……狂戦士だと!!我のどこが狂戦士だというのだ!!)
コォォォォォォ……
息を深く吸い、再び苛立ちから足を踏み鳴らす。
ドォォォン!!
地面に蜘蛛の巣状の罅が入り、少し陥没する。
周辺に居た微小な何かはいつの間にか姿を消していた。
ふぅ……これは元凶にモノ申すしかあるまい……
「問うぞ、小娘。お前が我を呼び出したるマスターか?」
「……え?…」
微かな反応、見える感情は戸惑いと疑問。
「そして何故に何も着ておらぬ……それが現代の流行りか?」
見当違いのことを言い出すバーサーカー。
「臓硯!!出てこい!!」
勢いよく扉を開けて入ってくる
「ここか、臓硯!!」
呼んでも出てこないので探し回っているが出てこない。
「クソッ!!やっぱり蟲蔵か!!」
屋敷を巡った後、彼は蟲蔵へと急ぐ。
そしてそこで見たものは、救いたい少女と、見知らぬ巨人だった。
蟲の姿は欠片もない。
蟲蔵の戸を開けた時の悪臭以外で、蟲の存在を匂わせるものがない。
何があった。
雁夜の心はその一言に尽きる。
そこへ巨人が声をかけた。
「うぬは何者か、敵か?味方か?それともただの通行人か?はたまた不法侵入の賊か?」
低い、とても低い声での質問であった。
そしてその目は明らかに雁夜を観察している。
「ふむ、どうやら通行人かこの家のもの、と言った所か、憎悪に戸惑い、そして慈愛と……強盗の類ではなさそうだな。それでぇ?敵かぁ、それともマスターに仇成すものか?」
そのセリフとともに
「まっ…」
ドゴォォォォォン!!!
「歩みを止めよ、それ以上進めば敵対と判断し叩き潰す」
いつの間にやら
この時、冬木市では震度一程度の地震が観測された。
近場にいた雁夜は転び、倒れた状態で現状をようやく理解できた。
自分は今、生死の境に居る。
このあとの己の吐く一言で生き延びれるか、あの槌で潰され赤いスープになるかが決まる。
うまく回っていない頭でもそうであると理解ができた、理解させられた。
「のう、応えてくれんか?流石に我もマスターに服を着せたいのでな……」
槌が振りかぶられた。
「ま、待ってくれ。俺は敵じゃない、その子を助けたくてここへ来たんだ!!」
急ぎ返す。
「ふむ、それは真であろうな、もしその発言が偽りなれば……四肢を潰し、投げ捨てるぞ?」
「誓って、この言葉に偽りはない」
暫く目線を合わせた後、バーサーカーは槌を下ろした。
「嘘ではなさそうだ、ならばさっさと退けい」
そう言われて雁夜は気づいた、自分が階段に登っていたことを。
蟲蔵に入って対面したときは確かに床に立っていたはずなのに無意識のうちに体が後退していたのだ。
(なんだよこれ、サーヴァントってのはここまで圧倒的なもんなのかよ!!)
雁夜は理解していた、この男はさっきの地面を割った振り下ろしで全力を出しては居なかった。
あれで警告なのだ、大地を揺らすだけの威力を持ちながら、あれは只振り下ろしただけ、力も体重も乗っていない、言うなればただ落とした。それだけなのだ。
「ぬう、どうしたことか……」
バーサーカーが呼ばれてから一日が過ぎた。
だが、肝心の聖杯戦争は未だ始まらない。始まる兆しもない。
それもそのはず、雁夜が一年蟲による改造を受けてその結果の出場だったのだ。
その枠に、桜が入り
つまりは、聖杯戦争の開始は約一年後。
「うむ、とりあえずは鍛えておくかのう」
「え?サーヴァントって全盛期で召喚されて成長しないんじゃ……」
「なにィィィ!?」