私がこの世界に生み出されたのは、つい最近の事だ。
「ぅ……」
生まれる前の記憶はない。けれど、私がこの世で目覚めた1秒後には、おおよそ全ての出来事は覚えている。
私が生み出され初めて感じたものは、心安らぐ羊水の温もりでも柔らかいタオルの中でもなく、やけに湿った空気と鳥肌が立つような寒気だった。肌に優しくない石畳が私を受け止め、肌にまとわりつく髪が不快だった。最悪な
やけに痛む頭に顔を顰めながら、唐突に知覚した手足の感覚を掴む。まるでミミズに手足を無理やり付けたような違和感を覚えながら、私は鼻につく腐臭を感じ、重い瞼を上げた。
飛び込んできたのは目が痛くなるような光景。酸化し、赤より黒に近い色へと染まった血液に、見たことのない怪物の首であった。
「……ぁ?」
意図して出したわけでもない、疑問や困惑に満ちた声が口から洩れる。唐突の出来事だった。誕生し始めて目にしたものがこれだった。
怪物の乾いた目玉が私を見つめ、焦点の合わない瞳孔が心を射抜いた。常軌を逸した光景が胸に粘つく悪心を抱かせる。青白い舌がはみ出る表情は苦しみに満ちていて、決して幸せに死ねたわけではないだろう。まるで獣、主にオオカミに似た化け物の首には、苦悶のほかに恐れが多くを占められていた。断頭により死んだのか、それ以外の方法か。胴体がこの場にない状況で察することは出来ないが、いずれにせよ、その恐怖が私の視覚を伝って伝染するように植え付けられたのは確実だ。
今すぐここから逃げなければならない。生存本能とも言える焦燥感に、恐怖が上乗せされる。
何が起きているのか分からない。誰がこんな鬼畜の所業を行ったというのか。恐ろしい。何も分からないことが、怖くてたまらない。ただ一つ分かることがあるとすれば、ここが唾棄すべき冒涜を執行した場所であり、修羅にも似た人でなしが余すことなく犯し尽した不浄の霊域であることだけ。
恐怖に心を混ぜられる。しかし、以外にも思考はクリアだった。まるで悪意に満たされた所業を見てきたような感覚。だが何も思い出せない。いや、私は今生まれたばかりなのだ。思い出すなど可笑しな話だろう。
無意識に辺りを見渡せば、前方に置かれた首とはまた違う首が四つ置かれていた。まるで何か儀式を思わせる光景。精巧に描かれた血の魔法陣の中心に、私は座っていた。いったいここで何をしていたのか、私は何をされていたのか。崩れ落ちた騎士の像に、祈りをささげる修女の古ぼけた絵、ひび割れたステンドグラス。碌に手入れもされず廃っているが、見るからに教会の聖堂だった。しかし神へ祈りを捧げる場であったはずの神聖な領域は、今は血と怨念に穢されていた。
「おぉ、おお……! これは、まさか、まさかっ!」
戦慄する私に水をかけるように、男の笑い声が聖堂内に響く。広い聖堂に響くほどの声を聞いた私は、驚きと奇妙な気色悪さに背筋が震えた。
私は、私を囲む陣の奥を注視すると、そこには声を発したであろう男が喜びを表すように腕を広げ私を見ていた。彼以外にも、数人、聖職者を彷彿とさせる白を基調とした衣服を着込んだ者達の姿もあった。おおよそ8人、皆が私に視線を投げかけ、あるものは手を組み祈りを捧げ、あるものは何度も顔を拭っていた。何かを成し遂げたような喜悦の気色を含む姿に、私は眉を歪める。私とって、彼らは異様に映ったから。
なぜ私に祈る。なぜ私をそんな歓喜の瞳で見つめる。彼らの行動を理解できない私は、彼らの空気に付いて行けず、必然と不安を胸に募らせた。
警戒する私を嘲笑うように、腕を広げていた男が私へと歩を進める。優雅に、ゆったりと、しかし旺盛な感情をまき散らしながら。
男の服には多くの装飾品が多分に使われており、それが他の者たちとの区別化を図っていることは直ぐにわかった。恐らく、周りで喜びを歌っている者達より上の立場の人間であろう。
「……」
男は描かれた陣の前で停止すると、途端、自身にまとっていた歓喜の色を霧散させ、今度は疑心に満ちた瞳で私をじろりと見つめ始める。先ほどまで身から零れるほどの喜びを表していた者が、急に不機嫌に近い態度へと豹変したのだ。
男の急な変貌に私は戸惑う。彼の、彼らの感情の動きがまるで理解できなかったから。しかし、そんな一瞬の戸惑いを払いのけるように私の中で新たな感情が湧き上がる。つまり、羞恥という感情を。
私は今、生まれたばかりなのだ。この場に産み落とされたのだ。つまり、肌を隠す衣類は一切身に付けていない。私は何も纏っていない裸体を遠慮なしに凝視されているのだ。
湧き上がる嫌悪感と気恥ずかしさに身を捩る。この身は幼い容姿であるが、性別は女だ。鏡を見たわけではないので正確には分からないが、身長や各所の発育具合からして十代前半くらいだろう。
このような幼子の裸体に大の大人が何を思うはずもないだろうが、たとえ不浄の念がなくとも不愉快なのは事実。私は足を曲げ、腕で身体を隠し、不愉快であると視線で訴えるが、それでもこの男は私を見ることを止めようとはしない。舐め回されるような不快感が背中を駆け抜け、口の中が気持ち悪くなった。
「すぐにステータス開示のポーションを」
急かすように、男は背後の者たちに声をかけた。特段荒げてもいない声であるが、男の声に含まれた焦りと困惑の色が見て取れた。私の何を見て動揺を誘ったか分からない。一見して出会ったばかりの怪しげな男の思考を読めるほど、私の観察眼は卓越していない。
黙って男を睨み続けること数秒、聖職者の服を着た女性が一つの瓶をもって駆け寄ってきた。男は瓶を受け取ると、私を見据え、蓋を開けながら他の信者たちに指示を飛ばした。ただ一言、「押さえろ」と。
「——っつ…! なんだ貴様ら……! っ、この……離せ!」
指示を聞いた三人が、私を取り囲み、腕や頭を掴まれる。無理やり膝を付かされ、胸を晒すように固定された。
顔はローブで隠れて見えないが、私を押さえる者が成人した男性であることはそのガタイの良さと硬く大きい手によってすぐにわかった。
血が止まるほど強く腕を掴まれ、力強く押さえられたゆえ腕に痛みが走る。こちらに対し何の考慮も遠慮もない蛮行だった。
あの瓶の中身が何であるのか分からないが、このような悪鬼の如き空間を作り出した者達だ。どうせ碌なものではないだろう。
危機感を感じた私は、けれど一方的な力を前に抵抗することは叶わない。声を荒げる事でしか私に抵抗の術は残されていなかった。
「……んっ…!」
瓶に入った怪しげな薬を男は何の躊躇もなく私に垂らす。人肌より冷えた雫が胸へと数滴落ち、想像以上の冷たさに背筋が跳ねた。
しかし、掛けられた箇所には何の異常も感じられない。毒でも媚薬の類でもなかったのだろうか。ただ即効性のない薬なのかもしれないが、もしそうなら効き目が出るまでに何とかしなければ。
困惑しながらもそう思った矢先、私からゲーム画面のような映像が飛び出した。
想定外の出来事で思考が停止してしまう私を捨て置き、男は私から飛び出した映像に目を向ける。まるで答えを求める学生のような忙しなさで、浮かび出る文字や数値をすらすらと読み進める男は、徐々に怪訝の表情から怒りや落胆といった表情へと変わった。歯をむき出し、聖職者であるはずの男の顔は獣のように歪み、憎しみの籠った瞳で私を見下ろした。
「……失敗、か…っ! こいつは————偽物だっ……!」
失望の色を潤沢に含んだ言葉に、先ほどまで歓喜の表情をしていた信者たちが一斉に騒ぎ出す。
「ば、馬鹿なっ…何故!? あれほどの魔力を込めたというのに!」
「そうです! 我々の編み出した召喚陣も完璧だった! なのに……あぁ! なんでっ……!」
「我らの願いは、救いの声は、あのお方達に届かなかったという事ですか!? ただの、一人も……!?」
「勇者様たちは、我々をお見捨てになられたという事ですか……? ———ああ、そんな、そんなぁッ!!」
「やはり、伝承は、覆すことができないと……そういう事でしょうか…!?」
皆が一様に絶望の苦言を漏らし、涙を流し、虚脱する。子供のように泣き叫ぶ彼らには、私の何かが希望となり、何らかの期待となっていたのだろう。しかし、彼らはそれが幻想と知って、泣いているのだ。私の何かが、彼らに絶望を与えてしまったのだ。
「うろたえるなっ!!!」
一人の男が、皆が一様に落胆し絶望する中で、声を張った。絶望に呑まれることなく、確かな意思を感じさせる怒号に、泣くことしかできなかった信者たちは一様に彼を眺める。
男は右手に持つ薬品の瓶を静かに盆へ置くと、己を見つめる信者たちに慈悲の目を向けた。
「勇者様たちは、神は、我らを見捨ててはいません」
泣き暮れる子供たちをあやすように、優しさと温もりを持った瞳で、淡々と必要な事を語る。あの方たちは、我らを捨てたわけでも、見放したわけでもない。
我らの信仰が、錬成が足りなかったのだと。
無理だったのなら、何度でも挑めばいい。見放されたくないのなら、信仰を深めればいい。いつの時代の勇者様たちも、我らを見放したことは無かった。見ず知らずの我々に深い慈悲と救いを与えてくださった。
「ならば、我々はただ専心するのみ。彼らを信じ、彼らを愛し、修行を積む。これこそが、かの英雄たちをお呼びするために、必要最低限の条件なのです。我らは彼らに救いを求める。我らは彼らに慈悲を乞う。ならばこそ、これだけの代償では足りない。私たちは彼らに世界の全てを託すのです。世界を救えるほどの英雄を、天でお眠りになる勇者様の眠りを妨げ、再び血に塗れた戦場へと身を置いてもらうことがどれほどの非礼であるか、分からない貴方達ではないはずだ」
ここにいる誰もが彼に心奪われる。彼の話す希望は、彼の語る願望は、この場にいる信者たちの不信感や絶望を一瞬にして吹き飛ばした。軽々しくのたまっている狂者の妄言ではない。必ずそうであるのだと。必ず救いは訪れるのだと。根拠も証拠もなしに男は信者たちの心に植え付けた。目に見えないものを証明した。その眼前に未来を見せた。
「一度は昇天した命。あの方達はすでに使命を全うし、我々を救っている。それでも尚、再び彼らの救いを求めると言うのならば、私たちの命をいくら傾けても足りはしない。しかし、我らの願いはいずれ届く———ゆえに」
———捧げろ、全てを。
———掲げろ、命を。
———受け入れろ、試練を。
男は語る。進み続けろと。私についてくれば、必ずその意味も意義も見出せるのだと。終わらない夜はない。沈まない闇はない。朝日は昇るし、光は浮かび上がる。だからこそ、我らは手を伸ばし続けるのだ。
男の言葉を聞き届け、胸を打たれた者達が感謝と共に嗚咽を漏らす。自分たちのやってきた事は無駄なんかじゃなかった。いずれはたどり着き救われる。既に信仰に依存していた信者たちは、更に男に対し心酔した。もう恐れる物は無くなった。我らは救われるのだと。血肉を捧げてもよいのだと。ならば————火の海であろうと、血にえずく様な戦場だろうと、私たちは喜んで命を捧げましょう。
信者たちが手を合わせ、跪き、誓い始めた。最初から打ち合わせていたわけでもなく、何の相談も応答も無しに、まったく同時に各々が神へと、男へと祈りを捧げだした。
その状況を呆然と眺めることしかできなかった私は、先ほどまで救いについて語っていた男に、いま目の前で信者たちに祈りを一身に浴びているこの男に、侮蔑の視線をもって吐き捨てた。
「馬鹿馬鹿しい」
「…ほう」
信者たちに向いていた男は、興味深そうに私に視線を傾ける。
「貴様の言葉は、全てに中身がない。 薄っぺらで透けて見える」
「先ほどまでご清聴していたと思っていたら、また随分と野暮なことをおっしゃる。 我らは人類の希望なのです。 あの勇者を語る忌まわしい偽物ではなく、本物の御方を召喚し、世界を救わねばなりません。 しかし、それには数多の努力と信仰が必要だ。 我らも希望が必要なのです。 希望を授ける側である我々にも、境地へとたどり着くための光が要る」
「そうか、それは結構。 先ほどの演説は聞かせてもらったよ。 貴様のその饒舌には感心した。 よくあそこまで思ってもいない事をさも本心であるかのように並べ立てられるものだ—————この詐欺師め。 虫唾が走る」
「…これはこれは、大変失礼いたしました。 ですが詐欺師というのはいささか聞き捨てなりませんな。 私は本心で世界を救おうとしているのです。 襲い来る波を退け、全ての者に救いの光を注がんとしているのです」
「こんな
見下すようにそう吐き捨ててやれば、司祭であろう男を含めた信者たち全員が、殺気を含んだ視線を送ってくる。まあ、この者たちが成そうとすることを真っ向から否定しているのだ。当然か。
男の顔に若干のしわが寄り、けれども決して怒鳴り散らすようなことはなく、再び静かに口を開いた。
「あなたが何を思い、そうおっしゃるのか理解できませんが、我らは必ず成就します」
「しない。 ありえない。 絶対に————」
食い気味にそう告げると、視界が一瞬にしてぶれる。
「ガっ…!」
「このクソガキ! さっきから黙って聞いてりゃ、適当なことをほざきやがって!!」
ずっと私を押さえていた男の一人が、私の頭を石畳へと叩きつけたのだ。頭の中で鈍い音が鳴り、視界がチカチカと眩しく点滅する。激しく打ち付けた頭が割れるように痛み、顔を顰ませた。けれど男の怒りはそれだけでは収まらない。
男は私の髪を掴み、何度も石畳へ振り下ろした。額が割れ、血が辺りに撒き散らされる。私は頭蓋が割れるような痛みと、酔うほど回転する視界の中で、鈍い音が再三部屋に鳴り響くのを聞いていた。
————男の狂ったような暴力は、私の髪がちぎれるまで行われた。
「チ…っ—————らあァッ!」
男はちぎれた髪を忌々しそうに捨て、今度は力いっぱいに私の身体を蹴り飛ばす。
「ぐ……ぁがっ、!? お…ぇ…ッ!?」
幼い女の体にとって男の蹴りは凄まじく、私は想像以上の衝撃に抑えきれず胃液を床に垂れ流す。くそ…っ、本当に手加減なしに蹴りを入れてくるとは。幼い少女の姿であっても一切容赦はないか。
内心そう愚痴るも、男は蹴る足を止めはしない。頭に血が上っているのか、彼の目は血走っており、私に向けて唾を飛ばしながら罵詈雑言を投げつける。そうして蹴られ続けること数十秒。苦しみに喘ぐ私を静かに眺めていた男が、ようやく信者たちを止めた。
暴力の嵐から解放された私は、反射的に酸素を取り込もうと荒い呼吸を繰り返す。けれど、呼吸すら苦痛に感じるほど腹の中が気持ち悪さで満たされていた。臓腑をぐちゃぐちゃに混ぜられる苦しみと、腹の中に水風船を余すことなく詰め込まれたような冷たさに、意識が朦朧と薄れ始める。
司祭らしき男は私の痴態をみて留飲がいくらか下がったらしい。先ほどの怒りは薄れ、また再び優しそうな表情を張り付けていた。
私は再び信者たちによって体を起こされる。前回とは違い、傷を負った状態で体を押さえられているせいで、所々に激しい痛みを感じた。
腰まで届く髪を掴まれ、無理やり顔を上へと向かされる。頭皮の刺すような痛みに思わず顔を歪ませるが、司祭らしき男は気にした様子はない。白い衣服を揺らしながら腰を落とし、私の顔を覗き込んだ。
「一つだけお聞きしたい、なぜあなたは我らの宿願が成就しないと思いで?」
「……クはっ」
私は男の声の奥、有無を言わさない無言の圧力を感じ取った。それがたまらなく可笑しくて、滑稽だった。男が余裕を少し無くした姿に、少しだけ気を良くした。だから、馬鹿にするように笑ってやった。ついでにニヤリと顔を歪ませ、見下す視線を送り付ける。
なぜ成功しないか? それが分からない時点で、偽物と断じた私に聞いている時点で、お前は永遠に目当ての勇者様とやらを召喚することは叶わない。
この男はわかっていないのだ。この儀式の無意味さに。
この男は理解していないのだ。己の行動を。その意味を。
だからこのような冒涜を犯せる。このような残酷で卑劣な行為を平然と行える。ゆえに私のような真っ当ではない、不純物だらけの存在を召喚してしまうのだ。
私は答えを知っている。捧げられた魂たちの記憶がなくとも、私はこの召喚が成功しないことを、その理由を知り尽くしている。どうすればいいのか、どのように行えば良いのか、紙に書かれた文章を読み上げるように全てを答えることができる。
—————そんなこと、死んでもこいつに話す気はないが。
だから代わりにくれてやるのだ。答えではない、まったく関係のない侮蔑の言葉を。
だから代わりに教えてやるのだ。お前の犯した罪は、必ずおまえ自身が支払うことになるのだと。
私は吐瀉物で汚れた口で、はっきりと一言、答えてやった。「くたばれ、外道」と。
「………———そうですか」
静まり返った静粛の中、男はやむを得ないとため息を吐く。その姿には心底諦観の念が感じ取れた。まるで惜しいものを無くしたような、そんな様子だ。男はくるりと振りむき、出口へと向かいながら信者たちに告げる。
「仕方ありません、浄化しなさい」
—————浄化
その言葉を聞いた途端、全身の肌が粟立った。
「よろしいので?」
「ええ、本当は隈なく研究し、我らの悲願への足掛かりとなっていただきたかったのですが、仕方ありません」
「そうおっしゃるならば」
「ああそれと———骨も残さないように」
「かしこまりました」
淡々と事務的に交される言葉。この男と信者たちにとっては大して何の関係もないただの言葉だ。しかし、私にとってその言葉の意味は、己の命の沙汰が決まった判決の言葉なのだ。
信者たちが私に手を向ける。
ゴミを処分するような目で。
彼らは人形だ、崇拝する神の奴隷。
信託が下ったならば。彼らは実行するのみ。
四人の信者が、一斉に詠唱を開始した。
「「力の根源たる我が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者の速度を下げよ。『スピードダウン』」」
「————!!?」
「「力の根源たる我が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を焼き払え」」
巻き添えを食らうまいと私を拘束していた信者たちが離れ、代わりに魔法を放たれた。
————このままでは殺される……!
そんな確信と共に全力で逃げようとする体は、まるで水の中にいるように鈍くにしか動かせない。先ほどかけられた魔術はどうやら妨害魔術、つまり相手の身体能力を低下させる物のようだった。
そうして紡がれる、時間切れの
『『ツヴァイト・ファイアブラスト』』
吹き荒れる2つの豪炎が、私に向かって放たれた。