復讐の炎がこの身を焼き尽くす前に   作:上光

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ハッピーバースデイ

 静まりかえった部屋にベッドが一つ。隣には小さな机とドレッサー。その他、生活に必要なものが一通り揃えられている。

 アースラに存在する安物のホテルのようなこの部屋は、本局に移送されるまでの間、フェイトに与えられた自室。

 逃亡を防ぐため、本局に到着するまでは魔力にリミッターをかけられ、この部屋から出ることは許されない。

 

 その部屋にこれから訪れる者が一人いる。

 出航の数時間前、面会時間も定められた、限られた邂逅。

 

 

 扉が開く音がする。フェイトと同じくらいの背丈の少女――なのはが、部屋に足を踏み入れた。

 扉の外では両脇に武装隊員が立っている。妙な行動をすれば即座に取り押さえられるよう、デバイスも展開ずみだ。

 

 けれど、フェイトには何かをする気はまったくない。

 ベッドで上半身を起こしているだけで、入って来たなのはを一瞥さえしない。そういった動作をおこなうだけの関心を外界に向けられない。

 フェイトは知ってしまった。自分が本当の子供ではないこと。アリシアという名前のプレシアの本当の子供の()()()でしかないこと。プレシアとの大切な思い出も、いったいどこまでが自分の記憶なのかわからない。

 何も考えたくない。心の中の出口のない迷宮をただぐるぐると回り続けることにも疲れ、フェイトは思考することさえ放棄していた。

 

 なのはもまた、しばらくの間は椅子に座ったまま何も言わなかった。

 貴重な面会時間が無為に削られていく。

 やがてなのはは思い切ったように立ち上がると、フェイトに頭を下げて「ごめんなさい」と謝った。

 その言葉でフェイトの意識は思考の牢獄からほんの少し離れた。

 フェイトには、なのはの言葉の意味がわからなかったから。

 

「なんで?」

 

 フェイトが絞り出すようにして出した声は、その一言だけだった。呟くような小さな声。

 

「わ、わたしのせいで、フェイトちゃんにひどい怪我をさせちゃったから」

 

 泣き出しそうになりながら、なのはは懺悔する。今度こそフェイトの意識ははっきりと現実に引き戻された。目の前のなのはが、あまりにも的外れなことで悲しんでいると感じたから。

 

「そんなこと、なのはが気に病むことじゃないよ」

「そんなことない! そのせいでフェイトちゃん、もう何日も目が覚めなかったんだよ!」

「それは私のせいで、なのはのせいじゃない。……私なんか管理局の人たちとユーノに怪我させちゃったんだよ」

 

 なのはに罪があるなら、三人も傷つけた自分はどれほどの罪を背負わねばならないのか。もしかすると、今の苦しみこそが自分に与えられた罰なのかもしれない。

 しかしなのははその言葉を否定する。

 

「それとこれとは別だよ! だからって、フェイトちゃんを傷つけていいわけがない!」

「なのはに撃たれる前、私はなのはを倒そうとしていたんだよ……たとえなのはの攻撃で私が死んでも正当防衛だよ」

「なんてこと言うの!? 死んでもなんて、簡単に言わないでよっ!」

 

 互いに相手の意見を否定し合う。互いに内罰的なために実現する、責任のなすりつけ合いならぬ奪い取り合い。

 対話ではなく、相手に自分の考えを叩きつける。進展のない不毛なやり取りが続き、互いに感情だけがヒートアップする。その無為な行動を止めたのは、外部からの声だった。

 ベッド向かい側にある大型のディスプレイが自動的に点灯し、少年の顔を映し出す。

 そこに映ったクロノは表情を変えずに注意する。

 

『きみたち、もう少し静かに面会できないのか』

 

 面会の様子はモニタリングされており、クロノは別室でその様子を監視していた。

 最初はお互いに小さな声から始まった二人の会話は、エスカレートしていった結果、部屋中に響くような大音声になっていた。さすがに放置できない。

 

『面会時間には限りがある。お互いに言いたいこともあるだろうが、だからこそ落ち着いて話すんだ。ヒートアップしてはよくない』

『まぁ俺たちもよく意見が合わずに殴り合うけど』

 

 画面外から誰かがクロノに話しかける声が聞こえた。

 

『うるさい、きみは余計なことを言うな! ……とにかく、落ち着いて話し合うんだ。あまりこんな言い争いが続くなら、面会を途中で打ち切らないといけなくなる。良いね?』

 

 映像が消える。しかし、ディスプレイは点灯したままだ。ディスプレイのスピーカからクロノの声が聞こえてくる。

 

『まったくきみはどうしていつも! 茶化したい気持ちは百歩譲って受け入れよう! しかし仕事中に――

 『執務官! 音声のスイッチ切れてませんよ!』

 ――しまった!』

 

 どたばたとした音が聞こえたかと思うと、ぶつりと大きな音をたて、今度こそ完全にディスプレイの電源が落ちた。

 

 なのはとフェイトは毒気を抜かれて、顔を見合わせる。二人の心が妙に澄んでいるのは、クロノたちの間の抜けた会話のおかげ、だけではない。

 先ほどの口論で大声を出したことで、内省的になっていた二人の心は楽になっていた。

 なのははフェイトの顔を見ながら、一つ一つ言葉を選んで話し始める。

 

「……えっと、フェイトちゃんは自分のせいだから謝らなくていいって言うけど……わたしは、それは違うと思うの。どんな理由があっても、友達に怪我をさせちゃったんだから、謝るのは当たり前だと思うんだ」

「友達……私が?」

「あ、あれ? 友達……のつもりだったんだけど……もしかして嫌だった?」

 

 フェイトは首を横に振る。嫌なはずがない。

 でも実感がない。生まれてから今まで、友達はいなかった――いたのは母と師と使い魔。師は消えた。アルフは使い魔だから根っこのところでは対等ではなかった。

 

「嫌じゃない……でも、今まで友達がいなかったから、友達がなんなのかわからない」

「友達がなにかなんてわたしもよくわからないよ。でも、難しく考えなくてもいいと思うの。いっしょにお話しして、いっしょに遊んで、悩みがあったら相談して、困ったことがあったら助ける。まずはそれだけで良いと思う。

 フェイトちゃん。あらためて、わたしと友達になってほしい」

 

 フェイトへと、なのはの右手が差し出される。そのなのはの暖かな思いが、ありし日のプレシアと重なった。

 それにすがろうとおずおずと手を伸ばし、

 

 ――だめだ!!

 

 フェイトはなのはに触れる寸前で、必死になって自分の手を止めた。

 これではプレシアに怯えて、なのはに逃げ込んでいるだけだ。

 プレシアに会うのは怖い。もしも拒絶されたら――そう想像するだけで体が震える。

 自分自身に向き合うのも怖い。どこまで与えられた記憶なのか知らなければ、大切な記憶だけは与えられたものでないと、自分自身を欺くことができる。

 でも、ここでなのはの優しさにすがりついては駄目だ。そんなことをしてしまえば、いつか絶対に同じことを繰り返す。なのはとの関係が悪化したら、恥もせずにまた新しい人にすがりつくだろう。

 

 それに、自分は時の庭園でアルフに告げた。たとえプレシアが自分を見てくれなくても、自分がプレシアを好きだから戦うのだと。だから、ユーノと武装隊の人たちを傷つけた。プレシアが自分の母親ではなかったからといって、今さらそれを曲げることはできない。そんなことをすれば、そんな薄っぺらい信念のために彼らを傷つけたことになってしまう。

 たとえ存在を否定されることが怖くとも、フェイトはプレシアと向き合わなければならない。

 だから、()()()()()()()いけない。

 

 フェイトは、差し出されたなのはの手を()()。そしてなのはの顔を見ながら、言った。

 

「相談したいことがあるの。聞いてくれる?」

 

 もたれかかり依存するのではなく、支えて助けてもらうために。

 

 

 それから、残りの面会時間を使って、フェイトはなのはに語った。自分の出生の真実や、プレシアと会うことへの不安を。

 口に出すという行為を経ると、人はその内容を認識してしまう。フェイトはなのはに話す過程で真実と向き合う。話している途中でその重さに何度も押しつぶされそうになった。怖くて泣きだしたこともあった。

 そのたびに、なのははフェイトを支えてくれた。怖くて悲しくて震えだせば、おさまるように抱きしめてくれた。よく聞いて、一緒にどうすればいいのかを考えあった。

 そして一つの結論が出た時、部屋のディスプレイが再び点灯し、面会時間の終わりが近づいていることを伝えてきた。

 

 なのはは立ち上がり、自分の髪をくくるリボンをほどいた。そして、フェイトに差し出す。

 とまどいながらも、フェイトはリボンを受け取る。

 

「願いを叶えるおまじないの話、覚えてる? クロノ君と始めて会った日に、翠屋で話したこと。わたしの願いは、フェイトちゃんとお友達になること。私の願いは叶ったから、フェイトちゃんにあげる。だから、お母さんのことも大丈夫だよ」

 

 なのはは部屋を出ていく。それからすぐに、アースラは地球を離れた。

 

 

 

 その日の内にプレシアは目覚め、翌日にはフェイトに面会が許可された。

 

 フェイトはディスプレイを鏡面モードに切り替え、身だしなみを整えて、最後になのはがくれたピンクのリボンで髪を結んだ。

 リボンの隅に書かれた小さな文字を思いだし、笑みを浮かべる。

 

 今でもプレシアに会うことは怖い。

 それでも、やることなんて最初から決まっている。

 

 私は母さんが好き。私に笑いかけてくれた母さんはもういない――始めからいなかった。

 でも、私が好きになった人は今もいる。そして私はまだその人のことが好きで、母さんだと思っている。

 だったら、やることなんてたった一つ。

 

 フェイトは通路を歩く。これから母に会うために。それから母と話すために。

 その足取りに迷いはなかった。

 

 

 

 

 

 六月三日 夜

 

 時計の針がかちかちと音をたてる。

 秒針が正確にリズムを刻んで時を未来に進めてくれることが妙に愛おしく思えて、はやては時計にキスしたい気分になった。

 

 明日は、はやての誕生日。去年までは一人の誕生日だった。でも、今年からは違う。

 明日には友達が家に来て、誕生会を開いてくれる。来てくれるのはなのはとすずか、アリサ。

 ずっとは無理だけど、石田先生も途中で顔を出しに来てくれると連絡があった。石田先生には、前の検診の時に一緒に食事でもいかないかと誘われたが、その時にはもうなのはたちと約束をしていたから断らざるをえなかった。

 そのことを聞いた先生は残念がるどころか、立ちあがって喜び、その日の診療時間は、ずっと質問され続けた。その喜びようと言ったら、はやても嬉しくなってしまう――を通り越して、思わず笑ってしまうほどだった。

 自分のことでもないのに、石田先生はこんなに喜んでくれるのか。ウィルと出会うまではやては自分が孤独だと思っていたが、どうやらそれは思い込みで、自分は意外とみんなに気にされていたようだ。

 

 石田先生だけではない。近所の人たちとも、少しだけど交流できるようになった。

 どうやら近所の方々の中にも、以前からはやてのことを気にしていた人はそれなりにいたらしい。

 それを聞いた時は、「なんでもっと早くに声をかけてくれへんの!」と怒りたくなってしまった。でも話しているうちに、その人たちは悪い人どころか良い人たちばかりだということがわかった。ただ、はやては孤独で、ほとんど誰とも交流がなかった。そういった子に話しかけることはやっぱり難しいらしい。気難しい子だったら――とか、立ち入ってはいけないような事情があるのではないか――とか。

 しかし、ウィルと共に行動し始め、最近はなのはたちに連れだされてよく街に出たりしていることもあって、その敷居が下がってたようだ。特になのはと行動を共にしていたことは、大きな影響があったらしい。

 人気喫茶店翠屋の娘である彼女を知っている人も多く、そういった人たちが翠屋に立ち寄った時に、桃子に聞いてみる。そんな風にしてはやてのことが伝わったそうだ。

 そのことを桃子に聞いた時、彼女は「勝手に話しちゃってごめんなさい」と謝っていたが、彼女のことだから大丈夫だと思う人だけに話したのだろう。

 そうして今、八神はやては生まれて初めて自身がとても恵まれていると実感している。養子の話がまとまれば離れなければならなくなる世界に、今さらながら未練がわき上がってしまうほどに。

 

 ともかく、今まで内心で世をすねていた八神はやては今日で終わり。明日からは新・八神はやての誕生だ。

 誕生日はもはや誕生した日を祝うだけのものではなく、新しい自分の誕生を祝う日となるのだ!

 

 そんなことを考えて――でも、一つだけ不満点がある。

 誕生日にウィルが来れないこと。

 

 管理外世界である地球に来るためには、事後処理のための管理局の船に乗るしかない。本局と地球の間は、往復で一週間はかかる。管理局の仕事がどのようなものかはわからないが、それだけの間休むのが難しいのは仕方ない。

 仮に休みを取れたとしても、船がやって来るスケジュールをはやての誕生日に合わせるなんてことはできないので、休みをとってやって来ても誕生日には来ることはできない。

 もう少しすると、月村邸の敷地内に大型の転送ポートが設置されることになるらしい。それができれば、船がなくともポートを乗り継いでミッドチルダとも行き来が可能になるそうだが、残念ながら誕生日には間に合いそうもない。

 

 新・八神はやての誕生のきっかけ、先駆者は間違いなく彼で、一番祝ってほしい人で、一番一緒にいたい人――それがいないというのは画竜点睛を欠くけれど仕方ない。

 

 来れないお詫びとして、メッセージカードが届いていた。メッセージカードは、日本語で書かれていた。書きなれていないのだろう。ところどころ変なとこもあった。

 ちなみに、プレゼントには地球に存在しない技術が含まれていたため、途中で没収されてしまったと、先月メッセージカードを届けに来たクロノという少年が言っていた。

 

 

 これまでのことを思い出し、これからのことに思いをはせていると、もう十一時を過ぎていた。

 

 用意もひと段落ついたので、後は明日の朝からやれば良い。そう考えて、さっさとお風呂に入って寝床についた。

 

 ところがなかなか寝付けない。時計を見ればもうすぐ十二時だ。日付が変わる。

 この際だから、それをこの目で確認しよう。

 布団から身体を起こし、時計を目の前に置いて、カウントダウンを始める。

 

「十、九、八」

 

 何をやっているのかと自分でもバカバカしくと思う。

 

「七、六、五」

 

 どうせカウントダウンが終わったら、またすぐに寝るだけだ。

 

「四、三」

 

 でも、楽しい。わくわくする。

 これまでは、失うことを恐れて希望をもたないようにしてきた。

 なんてもったいない。未来に希望を抱けば、こんなにも世界は楽しいものになるのに。

 

「二、一」

 

 零!

 両手を上げて、自分で自分を祝う――ハッピーバースデイ!!

 

 

 その瞬間だった。自分の中で、何かが鳴動するのを感じたのは。

 心臓のよう――でも、心臓ではない。これまで感じたことのない脈動。

 

 一冊の本が勝手に本棚から出て、宙に浮かび上がる。それは、物心ついた頃からはやての部屋にあった本だった。鎖と錠がかかった奇妙な本。

 本から光が漏れる。発光しているはずなのに、なぜかそうは思えない。じわりと、手のひらいっぱいにすくった水が隙間から漏れているよう。その光は黒い。闇色の光。

 

 本が蠢き始める。血管が浮き出て、膨張と収縮を繰り返す。そのたびに少しずつ鎖がほどけていく。合わせるように、はやての中に現れたもう一つの心臓も膨張と収縮を繰り返す。

 鎖が完全にほどけた時、本の装丁が見えた。

 十字架――中心に丸い宝石を置き、四方に剣を向けたような十字。

 まるで、その宝石を守るために、周りの全てに敵意を向けているような。

 

『Anfang(起動)』

 

 今までにないほどに強い光が漏れ、はやては思わず目をつぶった。

 

 光がおさまった時、今まで時計しかなかった目の前に、新たに誰かがいた。

 人――四人の、人間?

 

 

 

 

 同刻。第百二十二無人世界。

 

「こんな時間に出かけるのか?」

「ちょっと空を飛びたくなっただけだよ。すぐに戻ってくる」

 

 ウィルは基地の正門を警備している局員にIDを呈示し、二言三言、言葉を交わしてから、飛行魔法で空に飛び上がった。そのまま砂漠へと向かう。

 

 アースラが本局に到着した後、ウィルはミッドチルダに寄って家族に顔を見せたりしている内に時間はどんどん流れ、勤務先のこの世界には戻って来たのはつい先日だった。

 ウィルがいない間にも、この世界ではいろいろと事件が起こっていたらしいが、ウィルが帰る頃には事件は完全に終わっていた。

 また、いつも通り管理局の局員としての生活が始まる。もう数ヶ月もすれば、この世界への出向期間は終わる。そうなれば、ウィルは再びミッドチルダに戻ることになるだろう。ミッドに戻ることができれば、はやてにも頻繁に会うことができる。

 そんなことを考えている自分に苦笑する。不確定の未来に過度な期待は禁物だ。

 それに、うかれてばかりはいられない。幸福なことは良いことだが、それで目的を忘れてはいけない。

 

 ウィルは果たすべき目的を忘れていない。

 父が死んだ原因であるロストロギア『闇の書』と、それを守護する四人の騎士をこの世界から完全に消し去るという目的。

 闇の書という存在そのものに、燃え続けているこの瞋恚の炎を叩きつけ、復讐する。十年という長さはそのために費やした。

 プレシアが忠告したように、いつかはこの感情も薄れるのかもしれない。それならそれで構わない。その時は復讐ではなく、管理局の一人として世界を守るために闇の書と戦おう。

 だが、少なくとも今は断言できる――この身を焦がす永遠の炎は消えることはない。

 

 ウィルにとって闇の書は不倶戴天の敵。まさしく不倶戴天――やつらに、俺と同じ(そら)は戴かせない。

 そのためには、もっと強くならなければ。

 戦い方をさらに習熟させなければ。新しいデバイスも必要になる。共に戦ってくれる仲間や、支援してくれる味方――もっと大きなコネクションも。

 

 かぶりをふる。

 もうすぐはやての誕生日だ。こんな暗い思いは彼女には似つかわしくないし、見せる必要もない。

 きっと彼女は、クロノと同じように良く思わないだろうから。

 

 

 基地から離れ、遺跡を越え、何もない砂漠の真ん中に着く。この星には衛星はないので、夜はとても暗い。そしてだからこそ、星の光がよく映える。しばらくの間、星を眺め続けた。

 携帯端末が、第九十七管理外世界の日本の日付が、六月四日に変わったことを伝える。

 誰もいない、周囲に何もない砂漠の上空で、ウィルは地球のはやてに届けとばかりに祝福の声をあげる。

 彼女のこれからの人生にあらん限りの幸福が訪れんことを願って、星のまたたく闇夜の天へと。

 

 ――――ハッピーバースデイ!! 八神はやて!!

 

 

 

「闇の書の起動を確認しました」

「我ら闇の書の蒐集をおこない、主を守る守護騎士にございます」

「夜天の主のもとに集いし雲」

雲の騎士(ヴォルケンリッター)――何なりと命令を」

 

 呆然とするはやての前に跪き、彼ら四人はそう告げた。

 彼らの後ろで、棚から落ちたカップが粉々に砕けていたことに、まだはやては気がつかない。

 

 ――――ハッピーバースデイ!! 闇の書の主!!

 

 

 

 ジュエルシードの発掘に端を発した事件は、かくして終わりを告げた。

 全てのジュエルシードは回収され、海鳴の街は元通り平穏につつまれている。

 

 そうして次の事件が産声をあげ始める。

 ずっと前から始まっていた事件の終わりが、ようやく始まる。

 

 




無印編 完

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