傾く太陽
巡航L級八番艦、次元空間航行艦船アースラ。
巡行L級艦は戦艦並の図体の大きさでありながら、極めて少ない乗組員で運用できるよう高度に自動化されたシステムで運用されている。
構造強度や艦の制御装置は全体的に余裕のある設計をされており、状況に応じた武装の追加や機能の改良を容易にしている。
また、乗組員の数に比べて大きな船体のおかげで居住エリアは広く、武装隊の追加や避難民の受け入れなど、急な乗員の増加にも問題なく対応できる。
つまり巡行L級艦は様々な事件に対応するため、必要に応じて機能や人員を追加する柔軟性を持った遊撃隊と言える。
そのアースラの中には、艦付きの武装隊や乗組員が使うための訓練施設が供えつけられてあり、中心には艦船の中だというのに模擬戦用のシミュレーションエリアが存在しているのも特徴的だろう。
許可申請は必要だが、武装隊の訓練時間以外であれば他の者でも使用可能なそのシミュレーションエリアを連日使用している二人の魔導師がいた。
紛うことなきアースラ最強の魔導師、クロノ・ハラオウン執務官。そして、彼の友人であるウィリアム・カルマン三尉だ。
青の魔力弾が飛び交う中をかいくぐって、爆音残して影が駆ける。
「相変わらずちょこまかとよく動く!」
「クロノ相手に足止めて相手なんてできるかよ!」
一方的に攻撃をしかけ続けるクロノ。一方のウィルは、的を絞らせないよう、先を読ませないように、断続的な加速と方向転換で常に場所を変えて逃げ続けながら、接近の機会をうかがう。
戦況は一方的に見えるが、その実、特筆してどちらが有利というわけではない。
クロノにとっては、常に攻撃の手を休めずに主導権を握ることで、接近されるのを防ぎ続けなければならない。それでもなお強引に攻め込まれた時に迎撃できるよう余力を残しておかねばならないので、全力を出すわけにもいかない。
ウィルも常に動き回って攻撃を回避しながら、機会があれば瞬時に攻撃に移れるような位置取りを保ち続けなければならない。反撃不可能な位置に誘導されてしまえば、その瞬間にクロノは全てのリソースをつぎ込んでウィルを落としにかかるだろう。
一方的に見えて、お互いに相手のミスを誘い、待ち続ける拮抗した状況だ。
クロノは魔導師ランクAAA+という一流の魔導師。あと一歩、オーバーSという魔の領域に踏み込むための規格外の素養には恵まれていないが、優れた才覚を鍛えぬいて磨かれた技量は極めて高く、同年代の中ではトップクラスといえる。
一方、ウィルの魔導師ランクAAは優れた部類に入るが、クロノには及ばない。
しかしながら、魔導師ランクは強さの単純な可視化ではなく、同等の難易度の任務を安定して達成できるか否かが評価基準。特化型ゆえに任務における汎用性は大幅に劣るものの、純粋な戦士としてのウィルの技量は、決してクロノに大きく劣るものではない。
そしてベルカ式の騎士は一対一の戦いにおいては同格の魔導師を上回るとも言われている。もっとも、それは真正古代ベルカ式の騎士の話であり、近代ベルカ式ではそこまで明確な差はないのだが。
代わり映えのない戦いに、先に変化を与えたのはクロノ。
クロノから放たれた魔力弾が螺旋を描くような軌道で、ウィルとクロノの間にある障害物を貫き破壊しながら迫る。
不規則な動きだが、視認しての回避は容易だ。しかし視認のためにその魔力弾に注視した意識の隙を狙い、クロノが魔力弾を増やす。
クロノは一手一手を重ねるようにして、徐々に相手を追い込んでいく。
「スナイプショット!」
さらにトリガーワードに反応して、先ほど通過したはずの魔力弾が再反応。ウィルを背後から急襲する。
前後からの同時攻撃。
ウィルはF4Wの刃に反射した光で背後から魔力弾が迫るタイミングを計り、軌道を変更して回避。
攻撃のルーティンを変化させる時、そこには大なり小なり隙が生まれる。
先ほどまでは隙がなかった弾幕にできたわずかな空白に身体をねじ込ませ、そのままクロノへと急接近する。
その途中、F4Wに魔力を通わせると、いまだ距離のあるクロノへ向かって振るう。
「アナテマ!」
ウィルの握るF4Wに宿る魔力が大気と交じり合い、赤に染まった衝撃破を撃ち出す。
それはウィルの予定進路を一足先に駆け抜け、その途中で見えない何かに干渉して威力を減じながら、クロノの足元に着弾する。
「やっぱり潜伏させてやがったな!」
魔力を宿す衝撃波が通った軌跡には、設置型のバインドが隠されていた。
魔法の潜伏設置には明確な弱点がある。たとえ顕在化していなくとも、魔力で構築された式がその空間にあることは変わらないため、魔力弾や今の魔力の混じった衝撃波のように、ある程度の魔力が潜伏箇所を通過すると干渉を受けて式が崩れてしまう。つまり遠距離から魔力弾を放って戦う魔導師相手にはまるで意味をなさない。
しかし近接を得意とする魔導師にとっては極めて厄介な代物だ。並の魔導師であれば潜伏箇所に消しきれない魔力光や空間の歪みを感じさせるが、クロノの高い技量は視覚での看破をほぼ不可能としている。
近寄らせないように一手一手詰めて戦場を支配し、それに焦れた相手が一気に勝負を決めるために接近してくるのを予想して、この潜伏型バインド――ディレイドバインドを仕掛けておくというのは、クロノがよく使う手口だ。
士官学校同期の近接魔導師の八割が一度は引っかかったことのある悪名高いコンボ。ウィルも両手で数え足りないほどにひっかかって負けた経験がある。
「そっちは初めて見る技だな!」
「日々是精進だよ!」
一方、ウィルが放った技――アナテマは、卒業後に独自に開発した魔法だ。
空気に運動エネルギーを与えて加速とするハイロゥの術式を元に、己の魔力と大気を干渉させて衝撃波として放つ遠距離魔法。
魔力のエネルギーへの変換量にもよるが、衝撃波の発生は避けられないため、対物設定以外では撃てず、ジュエルシードを巡る事件では使用する機会のなかった技だ。
クロノは舌打ち一つと同時に、自らとウィルの間の空間に魔力による炎を生まない風のみの爆発を起こす。
アクティブガードという、本来は落下する要救助対象を受け止めるためのエアバッグのような用途で使われる魔法。
それがクロノに向かうウィルの速度を下げ、逆にクロノ自身も爆風で吹き飛ばされる形で距離を取りながらスティンガーレイを連射する。
アクティブガードを強引に突っ切ることは十分に可能だが、速度の減少は避けられない。遅くなった動きではクロノの魔力弾を完全に回避するのは難しいため、一度方向転換してアクティブガードの影響下から離れ、再度突撃。
しかしその時には、すでにクロノは新たな魔法を構築し終えていた。
クロノの周囲に浮かぶ百を超える魔力の刃。
貫通性に優れた魔力刃を生み出す魔法スティンガーブレイド。それを相手を確実に仕留めるために改良した、クロノお得意の
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」
魔法名の宣言がスタートの合図。ウィルの移動速度を理解しているクロノは、ウィルがここから全力で逃げを打ってもぎりぎり避けられない程度に刃の群れを拡散させて面として放つ。
対抗して、ウィルはプレシア戦で偶然使った
バリアジャケットの一部を解除し、空気抵抗で減速しながら片足を横へと。そしてハイロゥから放たれる圧縮空気がウィルの飛行軌道を鋭角的に捻じ曲げる。
雷の如き軌跡を描き、迫る魔力の刃を回避し、間断いれずに再度クロノへと突撃。
今のクロノの立ち位置はアクティブガードの爆風で飛ばされてできたもの。であれば、先ほどのような潜伏型のバインドをあらかじめ設置してある可能性はない。
いや、油断はできない。クロノの周囲には十ばかりの魔力刃が放たれないまま残っていた。
ウィルが回避してくる可能性を考慮して、一度に射出せず保険として残していたのだろう。
しかし間断ない一斉射出ならまだしも、十程度の魔力刃ならウィルは悠々と回避できる。
クロノもそれはわかっているはずだが――と、ウィルが疑惑に頭を悩ませている間にも彼我の距離は三十メートルを切った。
その時、クロノがS2Uを振りかぶる。無骨な黒色のデバイスの先端に、残されていた魔力刃が集結し、瞬時に十メートルほどの長刀へと変化した。
ウィルのF4Wの刃渡り一メートル強の刃よりも、クロノの十メートルを超える魔力刃の方が先に届くのは必然。
そうして振るわれた長刀は、受け止めるために立てられたF4Wと触れ合った瞬間にいともたやすく折れて消失した。
「おいクロノ、勝ち越しが決まったからって最後に遊ぶなよ」
決着後、ウィルは苦笑いを浮かべながらクロノへと歩み寄る。
ウィルとクロノの模擬戦、五セットマッチは先ほどの勝負で終了。結果はウィルの二勝三敗。
一勝三敗ですでに勝敗が決定した状態で始まった五戦目は、クロノの長大な魔力刃が茹でていないパスタのようにぽっきり折れ、そのまま距離を詰めたウィルの一撃が決まって勝利をおさめた。
とはいえ、あの勝ち方では勝利というよりもクロノの自滅に近く釈然としない。
クロノはといえば、ウィルの文句を意に介さず腕を組んで考えこんでいる。
「やはりうまくいかなかったか。状況に応じて遠距離用のエクスキューションシフトから中・近距離に対応できるように切り替える技を考えてみたんだが」
「びっくりはした。でもあれだけ長い魔力刃になると構成が甘くなって当然だろ」
「やはりそこがネックだな」
魔力刃はつぎ込む魔力によって長さを変えることができる。
五年前に、十代の魔導師が覇を競うインターミドルチャンピオンシップ世界代表選のチケットに運良く当選し、クロノや当時の士官学校の仲間と一緒に見に行ったことがあったが、第四管理世界ファストラウムの世界代表に自在に魔力刃の長さを操る女の子がいたのは印象深い。
最大で五十メートルに届く魔力刃を詠唱などの予備動作なしに瞬時に形勢、伸縮させ、その場からほとんど動くことなく腕を振るうだけで並み居る強豪を打ちのめして世界代表の座を獲得し「指揮者」の異名をとった魔導師。結局その人も二戦目で負けたのだが。
世界にはそのような規格外もいるが、普通は魔力刃を伸ばすのは非常に難しい。
クロノの魔力量でも、大半を注ぎ込めば百メートルほどの魔力刃を形成することは可能だ。ただし、そこまで長くすると少し動かしただけで構築が崩れ、魔力刃の強度が低下。相手と打ち合うどころか、触れた瞬間にぽっきりと折れるかわいそうな代物になってしまう。
その問題を解消するには、密度を上げるためにより多くの魔力をつぎ込むか、より精度高く演算できる高性能なデバイスを使用するか、魔法の構築そのものを強固にするかだが。
「素直に詠唱魔法に、ってわけにはいかないか」
「あくまでもエクスキューションシフトを展開後に接近されそうな場合への備えだからな。その状態から悠長に詠唱にしだしても、構築を終える前に斬られて終わりだ。何かしら別のアプローチは必要か。ところで……」
「わかってるよ。それよりも重要なことがある、だろ?」
ウィルはすっと目を細め、少しだけクロノに身体を寄せ、クロノもまた真剣な目でウィルを見返す。
「やはりきみもそう思うか」
二人してうなずき合う。クロノの新技、目下最大の課題とは、
「「技名をどうするかだ」」
「やはり統一感は欲しいな。遠距離用のエクスキューションシフトの対となる技だから、名称にも類似もしくは相反する要素をいれたい」
「
「断罪ならコンヴィクションシフトか。しっくりこないな」
「刃系の魔法なんだ。斬首でディキャピテーションシフトなんてのはどうだ?」
「さすがに物騒すぎる。サンクションシフト、パニッシュメントシフト……どれもしっくりこないな」
「処刑もたいがい物騒だと思うけど……少しニュアンスを変えて、介錯はどうだ?」
「
「介錯……セップクシフト」
「それはなんか違う」
しばらくお互いに案を出し合うも、良いものは浮かばず、技名は保留となった。
使用可能な時間が終わり、二人してシミュレーションエリアの入り口のベンチに腰掛け、エイミィが用意しておいてくれたスポーツドリンクで水分補給。
学生時代から仲間内で模擬戦をやる時は、よくエイミィやその友人が自作のスポーツドリンクやらプロテインドリンクやらを全員分用意してくれていた。自作なので時々味覚や栄養素の限界に挑戦しているようなものが出てくることもあったが。
「こうしてクロノと思いっきりやり合うのも随分久しぶりだよなぁ」
学生時代は頻繁にやり合っていたが、お互いに配属されてからは会う機会も減っていった。
クロノは普段から艦船に乗りこんで哨戒任務で次元世界を彷徨っているし、ウィルも地上配属のキャリア組によくある形として、様々な部署や他所の管理世界の部隊に配属されて転々としていた。
たまに同期で集まることもあるが、みんな明日の仕事を気にして本気で模擬戦をやろうとなることは少ない。
「こうしてきみと戦えるのも、本局につくまでだな」
「そういえば、本局に着いたらユーノ君はどうなる? やっぱり、裁判は受ける必要があるんだよな?」
ユーノは艦内で手伝いをして回っているようで、乗員からの評判も上々だ。
友人としてフェイトやアルフとも親しくしており、彼女たちの世話役にもなっている。
そんな様子を見ると忘れてしまいそうになるが、ユーノもなのはへの管理世界技術の譲渡など、いくつかの管理局法を破っているので一応は犯罪者。本局に戻れば法に則って裁かれなければならない。
「事態が事態だ。ユーノも弁護人を雇って徹底抗戦と考えているわけでもないし、今回の事件における彼の貢献は著しい。裁判自体は略式で迅速に終わらせて、せいぜい二・三カ月の奉仕活動になるだろう。当分は本局に滞在してもらうことになるけれど、悪いようにはしない。きみはまぁ……事情聴取の後に厳重注意か、訓告くらいにはなるかもしれないが、すぐに解放されて元の配属先に戻されるはずだ。アースラもしばらくは本局に停留しているから、しばらく
「いや、いったんミッドに帰省するよ。はやてを養子にする件で親父と話し合う必要があるから。クロノにはこれからもいろいろ頼ることになるけど……」
「気まぐれなら付き合わないが、人のためになることなら断わる謂れはないよ」
さらっとこう言えるあたりに、クロノの人の良さがうかがえる。
「ありがとう。はやての誕生日が来月だから、プレゼントを買おうと思うんだ。クロノに預けるから今度地球に訪れる時に俺の代わりに渡しておいて」
「わかった。……ところで、今年の墓参りはどうする?」
「あー……もうそんな時期か。俺、二ケ月も地球にいたんだもんなぁ」
配属されてから会う機会は減ったと言ったが、それでも一年に一度、できる限り予定を合わせて顔を合わせる時があった。
自分たち二人の父親の命日。その墓参りのために。
「これだけ配属先を空けといて、またすぐに休暇申請するのも気がひけるから今年は命日には行けないなぁ。メモリアルガーデンには今回の帰省の時に一人で行くことにするよ。クライドさんのとこにも花供えとくから」
「ああ、じゃあ僕たちも後でヒューさんの方に」
メモリアルガーデンは、ミッドチルダ西部にある墓地の名称だ。非常に広大で、単なる墓ではなく、一種の観光地としても機能している。
ウィルとクロノが初めて出会ったのもその場所だった。
だが、メモリアルガーデンに彼らの父の遺体は存在しない。彼らはもうこの世界のどこにも存在しない。二人とも分子一粒も残さずに消滅した。墓の下には骨の一つもない。
ならば、墓とは何のためにあるのだろう。
第一管理世界ミッドチルダ首都クラナガン。その高級住宅街の一軒家のリビングで、一人の女性がソファに寝そべりながら映画を見ていた。
オーリス・ゲイズ、十八才。ウィリアム・カルマンの義姉にして、時空管理局地上本部の若き才媛と称される女性だ。
事務的な物腰と、女性にしては少し低い声。魔法の素質はないため戦闘能力は皆無だが、士官学校を出ているだけはあって運動能力は一般人よりもずっと高い。
適度に鍛えられた体は均整のとれたプロポーションを維持しており、亡くなった母親譲りの理知的な顔には、必要以上の感情がうかぶことはめったにない。少なくとも公人としてふるまう時は。
学生時代から愛用しているフォックス型の眼鏡は切れ長の目と相乗して、見る者に鋭敏で少々威圧的な印象を与えている。代償として女性的な艶には欠けており、他者に媚を売ろうとしない父譲りの姿勢のせいで快く思わない者もいる。
とはいえ、クロノがそうであるように、彼女も決して情が薄いわけでもない。公私をきっちりわけているだけで、身内への情は深い方だと自分では思っている。
たまに通信してきて、益体もない世間話と職場の愚痴を聞いてくれる義弟のことはそれなりに大事に思っている。
だから義弟が行方不明になった一件は彼女の心に影を落としている。
先日ようやくハラオウン提督の船に見つけられたらしいが、どうせ彼のことだからそのまま大人しくしているとは思えない。
真面目なようで奔放で、従順なようで頑固で、聡明なようで間抜けで、明るく見えて繊細な子だ。きっと知らない土地で余計なものを背負い込んで、周囲を振り回しながら周囲に振り回されて傷ついているに違いない。
世間的には一家揃って管理局のエリートコースを歩んでいるように見えるそうだが、オーリスにとってのあれは、周囲に心配をかけさせてばかりのただの放っておけない愚弟だ。
だから不安を紛らわせるために酒を飲んでしまうのは愚弟のせいなのだ。
と、クライマックスにさしかかる映画を見ながら次の缶を開けようとする。父は今日は遅くなるはずだから、もう少し飲んでいても問題ない――
「オーリス・ゲイズ二尉!!」
「ひゃ、ひゃい!……って、お父さん?」
雷鳴のごとき一喝に思わず手に持っていた酒缶を取り落としそうになる。
リビングの入り口に父のレジアスが立っていた。
齢四十を越えてなお熊のような体格を維持している。非魔導師だからとなめていると魔法を唱える前にラリアットでふき飛ばされそうだ。
慌てながら、おかえりと挨拶をするオーリスに彼は再度一喝。
「平日はほどほどににしておけとあれほど言っただろう! 体調管理を怠るようでは士官は務まらんぞ!」
雷鳴のような、もとい熊の咆哮のような大声。アルコールのまわった頭にはきつい一発。
オーリスは父の説教を覚悟したが、意外にもレジアスはそれ以上注意をせず、棚から自分の酒とグラスを取り出しに行った。
父が平日に酒をたしなむのは珍しい。仕事で何かあったのだろうか。しかし、親子とはいえ仕事の内容をぺらぺら話すわけにはいかない。レジアスのような将官の関わる仕事となればなおさらだ。向こうが話さない限りは、何も聞くわけにはいかない。
そう考えて躊躇していたところ、レジアスはあっさりと原因を話し始めた。
「アースラが本局に帰還したそうだ。先ほど、ウィルからも連絡があった」
「それは良い知らせではないですか? どうしてそんなに怒って……」
「見ればわかる」
レジアスは彼自身の携帯端末を操作して、一つの動画ファイルを開いた。テーブルに置いた端末から空中にホロディスプレイが投影され、椅子に座るウィルが映し出される。
『長らく音信不通でごめん。心配かけただろうけど、俺はご覧の通りぴんぴんしているよ。明日……は無理かもしれないけど、近いうちにクラナガンに帰省して、顔を見に行くよ。だったら、こんなメッセージを送らなくても良いだろって思うかもしれないけど、実は帰った時にお願いしたいことがあるんだ。いきなりだと混乱させるだけだろうし、通話だと怒鳴られそうな気がするから、このメッセージで頼み事の内容だけは伝えておこうと思う』
そう言うと、映像の中のウィルは携帯端末を操作すると、一人の少女の姿を映し出す。
『かわいいでしょ? この子には、今回の事件でとてもお世話になったんだ。三食昼寝つきのヒモ同然の生活を送らせてもらってた。この子を俺みたいにゲイズ家の養子に迎えてほしい。無理なら誰か信頼できる人のとこでも良いんだけど、とにかく彼女が管理世界に移住できるようにしてほしいんだ。詳しい事情は帰ってから話すよ。ちゃんと本局に確認をとってからじゃないと、些細なことでも漏洩扱いされるかもしれないし。それじゃあ二人とも風邪をひかないように……って、言わなくても親父はひかないか。とにかく、元気で』
普段と変わらないにこやかな笑顔を残して動画は終了し、ディスプレイも消失する。突拍子のない提案に、オーリスの口は開いたままだまだった。
そんな、帰り道で子犬を拾ったから飼って良い? みたいな軽さで言うことではないだろう。
「まったく……人間を犬や猫みたいにぽんぽん持って帰ろうとするんじゃない!」
レジアスも同じような感想だったのだろう。しかし、ぷんすかと怒るレジアスを見たら、オーリスはおもわず笑ってしまった。
怒ってはいるものの、同時に少し嬉しそうだったから。ウィルがこんな馬鹿をしでかすのも元気な証拠だ。我が子の無事を知れて嬉しくないはずがない。決して
こんな風になかなかに凸凹な人間が三人。心の内までさらけ出し、何でも言える理想の家族とはいかないが、ゲイズ家はそれなりに仲良くやっている。
男は多くの情報に囲まれていた。周囲の空間に投影されているホロディスプレイと三次元空間ホログラフィの総数は三十を超え、時間の経過とともに刻々と内容を変えていく。その全てに映る情報を把握することなど、ただの人には不可能だろう。
部屋には男が一人だけ。彫刻のように動かない。時折するまばたきだけが、彼が生物であることを示している。
動かない彼の代わりにディスプレイの方が動き、彼の目の前を流れていく。男は瞬時にそれらの情報を頭に
これだけ大量のデータを次々に処理できる彼は間違いなく天才――などと言うと、男は笑って否定するだろう。
いくら男がすごくとも、情報を入力するだけなら機械の方がはるかに上だ。
天才とは、情報処理の速さや知識の多さでは決定されない。
データを全て覚えることは男にとっては簡単なだが、同時にそんな能力は絶対に必要なものではないと考えている。大切なことは、データが何を表わしているのかという個の絶対的な存在意義を理解し、それが全体の中でどのような立場にあるのかという相対的な存在意義を把握すること。
そして目的のためにこれから何をおこなうべきかその道筋を見つけること。
天才とは機械ではなく人間を表わす言葉。ならば、機械が持ちえない能力こそが天才の条件。
すなわちモノとモノを関連付ける能力、そしていまだ何も存在しない思考の白地へと飛び立つことができる、思考の飛翔力――ネットワークの構築能力こそが人間の持つ偉大な力であり、天才を決定する基準となる。それが男の持論だ。
響く電子音――通信の合図。男はディスプレイの流れを止める。
新しく男のそばに投影されたホロディスプレイには、年の頃二十ほどの女が映っていた。彼女もまた、彫像のようだと感じさせる雰囲気を持っている。男のように動かないからではなく、動いていてもなお彫像に思えてしまうほど。
「定時報告の時間ではないね。何かあったのかな?」
男は先ほどの理知的な雰囲気とは裏腹に、誕生日プレゼントを開ける子供のように期待に満ちた顔をする。予定にない連絡、未知の情報が自分に何をもたらすのか、期待に胸をふくらませて。
『ウィルの行方が確認できました。輸送船の事故の後、ロストロギアの違法回収者と争いながらも、本局より派遣された部隊と合流して、事件の解決に協力していたようです。現在はクラナガンに戻っています』
男は「そう」と一言返す。顔は嬉しそうだ。しかしプレゼントの中身は最近発売されたゲーム機だった――つまり意外性がなかったことを残念がるような表情でもあった。
「それは良かった。何を為すにも、まずは命ありきだからね。無事でなによりだ。でも要件はそれじゃないだろう?」
ウィルの無事は喜ばしいことではあるが、重要ではない。ウィルが以前のように大怪我を負ってすぐにでも助けを求めているのならともかく、無事なのであれば何もすることはない。それこそ定時報告の時にでもすればいい。
男の予想通り女は「はい」と答える。表情は変わらないが言葉の重さが増していた。
『プレシア・テスタロッサという科学者を覚えておいででしょうか。何度か学会でお会いになったことがありますが』
「覚えているよ、研究内容もね。セル・マテリアルズ・ジャーナルに掲載された彼女の論文はどれも面白かった。時間が許せば私も研究してみたいくらいだったよ。それで?」
『ウィルが争ったロストロギアの違法回収者が、彼女でした。彼女はロストロギアを回収するために、亡くなった娘のクローン体を手駒として使っていたようですが、そのクローン体は
男の雰囲気が変わる。ふっと呼気が吐かれる音が聞こえたかと思うと、男の肩がぶるぶると震える。
「彼女はプロジェクトFを完成させたんだね。そうか……あれが理解できる者が現れたのか」
その震えは喜びゆえに。嬉しくて、嬉しくて、震えてしまうほどに。
「長かったなぁ……せっかく世界中に論文をばらまいたのに、こんなに時間がかかるとは思わなかったよ。他人に期待する時は、少し悲観的に見たが良いのだろうね。それでも彼女は完成させたわけだ。私の論文を理解し、私と同じモノを見ることができたわけだ。数多の生命工学の専門家が実現できずにいたプロジェクトを最初に完成させた者が、まさか異なる分野の専門家だとはね。それだけ彼女が素晴らしいのか――それとも私が知らないだけで、とっくに完成させた者もいるのかな? やっぱり人は捨てたものじゃないねぇ」
男は言葉を紡ぐ。それは決して通信相手の女に聞かせるために話しているのではない。ただ、男の内側に溢れる喜びが、外に表現しなければ抑えられないほど大きいだけだ。女は男が話している間、何も言わずに聞き続けていた。そして男の言葉が途切れてから、ようやく続きを話す。
『プレシアからドクターのことが漏れるかもしれません。処分しますか?』
「放って置きなさい。私がばらまいた中でも、F、G、Hに関する情報は拡散しすぎて、もはや誰が持っていてもおかしくない」
『ですが、万が一ドクターに辿りつく可能性も――』
男の耳には、女の言葉は入っていない。彼は再び、自分の欲望に従って言葉を発する。
「それにもったいないじゃないか。それだけの才能を、たかだか我が身の危険程度で潰すなんて。ああ、会いたいなぁ。会って語りたい。尋ねてみたい。彼女の心を、頭脳を知りたい。細胞と細胞をつなぐネットワークが、その間を流れる電気信号が、どんな彼女という幻想を創り上げたのか。私の領域にたどりつく可能性とはどのようなものか。私の見ているモノをかいま見ることができた彼女がいったい何を感じたのか」
男は、「ウーノ」と女に向かって呼びかける。それが女の名前なのだろう。
「今すぐ彼女と事件について調べなさい。スケジュールはきみに任せる。会いに行くよ、彼女に」
不可能な注文だった。まだ事件は裁判すら始まっていない。プロジェクトFという未知の技術の影響もあり、概要はともかく詳細については一級の報道規制がかかっている。
だが、彼女はまったく逡巡せずに『はい』と答えた。彼女にとっては――正確には、彼女たち姉妹にとっては、その程度のことは難しくもなんともない。
その間にも、男の思考はすでに別のことに飛んでいる。
「手土産は何が良いかな。やはり彼女が望むものが良いな。でもそれだけではつまらない。他に何か……そうだ、花を贈ろう。古来より男性が女性のもとを訪れる時は花を贈るんだったかな?」
『該当するケースは相当数あります。絶対ではありませんが、定番かと』
「なら、薔薇にしよう。青い青い薔薇が良いな」
男は笑う。子供のように邪気のない顔で笑う。この世の全てを祝福しているかのように。
多くのディスプレイの光が、幻想的に部屋を照らし続けている。しかし、どの光よりも強烈に輝くのは、男の両目に宿る金の光だった。
住宅街にセミの声がする。蝉の声が岩にしみいると表現した詩人がいるそうだが、現実は音がコンクリートで反響して、ウィルの脳天に響いてくる。
久しぶりに訪れた地球は、来る星を間違えたかと思うほどに暑い。
ウィルは先日まで一面砂漠の世界に配属されていたので暑さには慣れているという自負を持っていたが、地球の暑さは質が違う。サウナといい、この星の人々は蒸されるのが好きなのだろうか。
いっそバリアジャケットを展開して熱をシャットアウトしようか――と、半ば本気で考えながら、変わらぬ海鳴を歩く。
季節は夏。地球の暦では七月下旬。約束していた
はやてに会いたいだけではない。ウィルと入れ替わるようにして八神家に居候することになった、三人の女性の顔を見ておきたかった。
彼女たちのことは、はやての誕生日から少し経った時分に送られてきた手紙で知った。はやての後見人である今はイギリスに住んでいるというグレアムおじさんの紹介で、世話人としてはやてのもとにやって来た旨が手紙に記されていた。女性三人と大型犬が一匹。一人暮らしの女の子の世話係としては適任だろう。
インターホンの音が響き、八神家の玄関の扉が開く。扉の向こうにいたのは初めて見る女性。しかし、はやてからの手紙に書いてあった特徴から類推するに――
「えっと、金髪の美人さんだから……シャマルさんですよね?」
「あなたがウィルさんですね。はやてちゃんから聞いています。どうぞお上がりください」
靴を脱ぎながらシャマルに注意を払う。シャマルは優しい笑みを浮かべているが、探るような色がこびりついている。なかなかの演技派だが、リンディには遠く及ばない。意識すれば若干の不自然さを感じ取れる。
良い気はしないが、彼女たちの立場を思えば当然か。
管理世界でのウィルは管理局の士官、社会的信用のある立場だ。が、管理外世界である地球では、単なる住所不定、身分証明不可の不審者でしかない。グレアムからはやての世話を任せられているシャマルにとっては要注意人物に見えるのだろう。
あえて気付かないふりをして、八神家のリビングに入る。
(……ここまでとは)
笑顔でウィルを迎えてくれるはやては良い。
しかし、他の面々は明らかにウィルを歓迎していなかった。
髪を後頭部の高い位置でくくっている長身の女性、シグナムは警戒の色をにじませていて、小柄な少女、ヴィータは剣呑な空気を醸し出していた。こころなしか大型犬にも睨まれているような気がする。そしてウィルの後ろに立つシャマルからは相変わらず探るような気配。
いくらなんでも初対面の人物への対応ではない。かつてウィルを問い詰めた月村忍たちでさえ、これに比べれば幾分か穏やかだった。
先ほどとは真逆に寒気で汗を流しながら、ウィルは彼女たちの威圧感に気付かないふりをして――むしろ怖いので積極的に目をそむけつつ、挨拶を始めた。
はやてと二人きりになるまでに、それから一時間もの時を消費した。
リビングの外、ウッドデッキの椅子に二人で腰掛ける。
「手紙、読んだよ。本当に行く気はないんだね」
「……うん。やっぱり、頑張ってくれてる石田先生にも申し訳ないし、私を頼って来てくれたみんながおるから」
新たな同居人の報告には、養子の件を断る旨も一緒に記されていた。シャマルたちにも事情があり、はやてがいなくなったからといって、もとの場所に帰るというわけにはいかないらしい。はやてがミッドチルダに移住してしまえばシャマルたちの行く場所がなくなってしまう。だから今はミッドチルダには行けない。
残念だが仕方がないとも思う。その優しさがはやての良さ。そんなはやてだからこそウィルを拾ってくれたのだから。
「ごめん。せっかくウィルさんがいろいろ骨を折ってくれたのに」
ウィルは苦笑しながら、はやての頭をなでる。
「提案した時に言わなかった? はやてはそんなこと気にしなくて良いんだよ。……ところでさ、みなさんに俺のことをどんな風に話したの?」
「え、えーと、別に普通のことしか話してないよ?」
「本当に? 魔法のこととか話してないよね」
魔法のことをはやてが話したのなら、この対応も納得できる。
彼女たちが魔法を信じないのであれば、ウィルは年齢一桁の子供に魔法を使えると騙り、一月以上ヒモになっていたろくでなしでしかない。
「もちろん話してないよ! そんなこと話しても、私が頭の弱い子やと思われるだけやし!」
「そっか。でも、すごく警戒されていたような気がするんだけど」
「気のせいやって」
はやては妙に強い口調で否定する。これはどこかでうっかり漏らしてしまったなと確信を抱く。
(まあいいか)
シャマルたちがウィルのことをどう思っていようと、それはこれから解決していけば良い。悪い人たちでないなら、誠意をもってつきあえばきっと大丈夫と、ウィルには珍しく脳天気な思考をする。
仮に何かあったとしても、高町家と月村家の人たちがいる。はやてが何かに悩んでいても今のはやてには支えてくれる人がたくさんいる。
ウィルは、ウィルにできること、やるべきことをしなければ。
まずはなのはを迎えに行かなくてはならない。そろそろ向かわなければ遅刻してしまう。
「それじゃあ、今日はこれくらいで帰るよ」
八神家を出て少し歩いてから、ほんの少しだけ振り返って、また歩き出す。
居場所をなくした喪失感で胸が少しだけ痛んだ。
「やっぱり話してみてもええんやないか? きっとウィルさんやったら――」
目の前で閉まった玄関の扉を見ながら、はやてはシグナムに話しかけた。
「なりません。時空管理局は我らの敵。歴代の主の多くは、奴らによって殺されてきました。主はやてが闇の書の主と知られた時には、必ずや命を奪いに来るでしょう」
「そやけど、隠しごとは……」
「でしたら、我らに蒐集の許可を。全ての
「あかん。人様に迷惑かけてまで治そうとは思わへん。自分一人のわがままで他の大勢を傷つけるなんて、そんなことはできへんよ。やっぱりええよ、諦める。ウィルさんとは今すぐ会えへんようになったわけやないし、足が動かんのもなれっこやしな。それに、今はなのはちゃんやすずかちゃんみたいに助けてくれる友達もおる。もちろん、新しい家族も」
はやてはシグナムの方を向き、曇りのないように見える顔でにっこりと笑った。
その夜、シグナムはリビングのソファに身をゆだねながらも、少し寝付けずにいた。
『まだ起きているか?』
空気を震わせぬ声。念話でシグナムに語りかけるのは、リビングの床に伏している大型犬――ザフィーラだ。
『起きている。何かあったか?』
『……私たちは本当にここにいて良いのだろうか』
ザフィーラがぽつりと呟く。
『今さら何を言う。主の傍に控え、その身をお守りする――それが我らヴォルケンリッターの使命だろう』
自分たちの使命、存在意義を疑うような言葉を、シグナムは強く否定する。それでもザフィーラは疑念をぬぐい切れないでいた。
『私たちさえいなくなれば、主は幸せになれるのではないか。ベルカの時代はとうに過ぎた。もはや戦乱の世ではない。守護などせずとも、主が災禍に飲み込まれることはない。私たちがここにいる意味はあるのだろうか?』
『……必要のない疑問だ。我らが何を思おうと、主はやては闇の書に選ばれた。我らはその身をお守りするしかない。それとも、お前は使命を放棄するつもりか?』
『私とて主の元を離れたいとは思わん。今代の主は優しい。どのような主にも心よりの忠誠を誓ってきたつもりだ。だが、主は……はやてのことは、今までのどの主よりも守りたいと思う。だからこそ、疑問に思うのだ――私たちは、本当に主のためだけに、ここにいるのか?』
『それ以外に何がある』
シグナムの詰問めいた問いに、ザフィーラは八神家のある方角に顔を向けながら応える。
『ヴィータやシャマルは、はやてが主になってから、よく笑うようになった。これまではこんなことはなかった。私はあいつらにもっと笑っていてほしいと思う。そして、そう考える自分が怖い。今の私たちは、主のためと言いながら、自分たちが楽になりたいだけではないのか?』
『……くどいぞ。たとえお前の言うことが正しかったとしても、我らのやることは変わらない。魔法がない世界とはいえ、現に今日のように管理局の者が主はやての周りにいるというのに、離れることなど……できるものか』
何を望もうが、何を考えようが変わらない。ヴォルケンリッターの使命が闇の書の主の守護であり、管理局が闇の書を滅ぼそうとする限りは。
『そうだな……すまん、忘れてくれ。しかし、気を張っていたのはわかるが、昼の対応はないのではないか。あれでは管理局の男を不審がらせるだけだ』
その言葉に、シグナムは憮然として顔をそむけた。
なぜあのような態度をとったのか自分でもよくわかっていない。管理局だからというだけではない何かが、彼の名前を聞いた時からずっとシグナムの頭の片隅にこびりついていた。
単独で掲載するには短すぎる話をまとめた結果、短編にも関わらずこれまでで最長の話になってしまいました。
前々話のはやてとの会話中にさらっと流しましたが、この作品ではヴォルケンリッターの容姿や固体名などの闇の書に関わる情報の大部分は機密情報として公開されておらず、闇の書にご執心なウィルも現段階では知らないとしています。本編でもクロノたちがヴォルケン自体ではなくシャマルが抱える書の装丁を見て気づいていた覚えがありますし(うろ覚え)
それはそれとして、敵と知らずに仲良くする展開が好きなだけでもあります。最近は忍者と極道という漫画がお気に入りです。