ここは何処とも知れぬ大陸のどこか……天災によって荒れ果てた大地。
そこにひっそりと佇む建物が一つ。
とある研究室のような、機械に覆われた一室に一体のロボットが眠っている。
機械は未だに機能を停止しておらず、休むことなくロボットを造り続ける。
赤きボディに4つの脚、2本のアーム。後部に荷物を収容できるコンテナを装備した全体的に丸みを帯びた形状。
頭脳ユニットの取り付けが終わり部屋の機械の停止を確認したとき、それが僕の目覚めだった。
「う~ん、よく寝た~って!?なにこれ~!?」
そして目覚めると同時に混乱する。だって僕はいつも通り朝に起きて、ごはんを食べて学校に行く。
それだけのごく普通な日常を過ごす、そのはずなのにも関わらず目が覚めれば体は機械で構成され、どこかずんぐりむっくりとしたボディにトランスフォームしている。
驚かない訳があるだろうか、いやない。
と、反語を活用しながらも頭脳ユニットとして搭載されたAIらしきものが急速に僕の現状を解析する。それによって得られた情報が余計に混乱を呼ぶのだが高速処理された思考は時間の経過を感じさせない。
「なんだか未来のマシーンって感じがしてワクワクしますね~!」
焦っても悩んでもどうしようもないとコンピューターのたたき出した答えに、ですよね~という諦めを抱きつつも腕や足らしきものを動かして感覚を確かめる。
「うわ~、これってマニピュレーターってやつですか~意外と器用にものを掴めますね。4脚は先のホイールを連動させて滑らかに動けますね~。面白いですよ~!」
そう言って起用に超信地旋回を高速でやってのける。普通の人間であれば酔って倒れるほどの速度だが、それを気にも止めない。
止めるものがいないのだから仕方がないのだが、寝起きの変なテンションと高速で思考しているせいもあってか、僕は施設から出て外に向かう。
「なんだかよくわからないけど、レッツゴーーー!!」
自分のいた場所、自分が作られた理由、それら全てはすで搭載された頭脳ユニットに知識として埋め込まれている。
なんだかよくわからないと言っているがそこはやはりお約束というやつなのだ。
「ここが、既に僕の元いた世界ではなく。ある種厄介な天災と呼ばれる自然災害によって人々は都市ごと移動する技術力の進んだ世界。」
オリジニウム、鉱石病その両方がキーワードとなる世界と言えば……
「アークナイツ、ここはまさにそう呼ばれたゲームの世界。そう認識すればいいのですかね?」
施設を飛び出し、荒れ地の向こうにそびえる山に突き刺さるオリジニウムの塊を見て再認識する。
この世界に僕が来た理由はわからない。なにせ寝て起きたら既にロボットの中にいた。
それならばこれからどうするのか。このボディが作られた理由はかつてあった戦争における物資の輸送。それをトランスポーターなどではなく、完全に機械にやらせることで人件費と人的資源の消費を抑える。
それの試作一号機。どうやら戦争には間に合わなかったようで破棄されていたものの、施設のコンピュータは指示通りに作り続けた。
「つまり今の僕は誰の所有物でもなく、ただ燃料の続く限り自由というわけですね。」
そうするとどうしたものか、この世界は割と自由である。元となったゲーム『アークナイツ』の主人公勢力であるロドスにはロボットもオペレーターとして存在するのは知識として知っている。
で、あれば第一目標はロドスで決まりだろうか?しかし、この世界の今現在における時系列が不明な以上、ロドスに行く前に違う勢力に所属するという手もある。
「まあ、ロボットな僕を雇ってくれるような殊勝な組織があるのかって話ですが。」
荒れ地を高速で進みながら考える。時折見つける使えそうな物は後部の輸送コンテナにしまい込む。
どうにもコンピュータの予測によればここの近くを移動都市が通過するらしいのだ。
「上手く、入れればいいんですが。」
とにもかくにも、実際に人に会って考えればいいか~と呑気に考えながらもカメラが捉えた移動都市を見据えながら近づいていく。
「なんだかスチームパンクっぽくて、ワクワクして来ましたよ~。」
移動すること数時間、ついに移動を停止した移動都市の近くまで接近した僕は早速、検問所の列に並んだ。どうやら他の移動都市から来たトランスポーターや、移民難民が行列の主体らしい。
ロボットなのは僕一人だけ、そのせいだろうがいろんな人に変な目で見られています。
「いや~、なんだかすっごく注目を浴びて少し恥ずかしくなってきましたよ~。どう思います?」
「お、おう。お前さん随分流暢に話すな?もしかして中に人がいるのかい?」
「いえいえ、中には誰もいませんよ。僕は市民に優しい安全なロボットですよ、多分。」
「た、多分なのかい!?ロボットなのにユーモアが効くね。」
「もちろんです、なにせ元はひ……イエ、ナンデモアリマセン。」
「おい、今元は人って言わなかった?」
「イッテマセンヨ~、キノセイジャナイカナ~、ピューピュー。」
「ロボットが口笛吹いてる……」
そうやって一緒に行列に並ぶ人と会話していると、僕の番が回って来たみたいだ。
「それではお先に~。」
僕は会話に付き合ってくれた、リーベリの青年、鳥のような羽などの特徴が出ている人に別れのあいさつを済ませ、ゲートをくぐる。
「あ~、君は~ロボットでいいのかな?製造元と訪問理由、あと今の管理者登録されている者の指名、性別を教えてください。」
「はい僕は型式番号LCM22、自動追走型兵站システム ロジスティクス・コンベイヤー・マシンの一つです。製造元、管理者共に非公開情報となっています。というか未登録?訪問理由は観光ですよ~。」
どこかで聞いたことのある自己紹介をしつつ、僕は包み隠さず検問官にこれまでの過程を話した。
製造されたばかりで管理者が不明なこと、製造元がデータとしてロストされていること、製造目的およびそれが既に目的として機能しないこと。
これらの話を聞いた検問官は自分の手には負えないとして責任者を呼ぶこととなった。
「それで、こいつが問題のロボットか?」
「はい、チェン隊長。いかがいたしましょうか?」
「ふむ。ここは私が引き受けよう。お前は残りの仕事を終わらせておけ。」
「了解しました!」
チェンが部下の検問官を元の仕事に戻すのと同時に、彼女は僕のボディをペタペタと触りながら話しかけてくる。
「それで、お前は何しに来たのだ?」
「何しにと言われましても。単純に最寄りの移動都市がここだっただけですので。明確な理由はなんとも~」
「答えられない……と。お前もう一度自己紹介してみろ。」
「自己紹介ですか?」
既に検問官に提出した情報は記録として渡っているはずだと思うんだけど……そんな疑問を目とは言えないカメラとボディで主張してみる。
「存外器用だな、いやここまで感情の表現が上手いなら相当なAIを積んでいるのだろう?自己紹介ひとつでもある程度の判断材料になる、やってみろ。」
なるほど納得である。これはいわゆる面接なのだ。前世?では未だ学生の身で、就職活動とは無縁だったが僕は今、貴重な体験をしているのかもしれない。
まあありえない経験を起動してからずっとしているわけだが。
「では改めまして。僕は型式番号LCM22、自動追走型兵站システム ロジスティクス・コンベイヤー・マシンの一つです。製造元、管理者共に非公開情報となっています。というか未登録?訪問理由は観光ですよ~。」
最初の検問官に行った自己紹介と全く変わらない言葉を1秒のずれもなく言って見せる。
しかし、ここにきて疑問である。ロジスティクス・コンベイヤー・マシンとはなんでしょうか?
「輸送車両……ね、物を運ぶためだけに造られたと?」
へ~、輸送車両って意味なんだ。製造目的を考えると納得だけどロボットが輸送車両?って感じはあるよね。
「ええ、多分。製造目的は戦時中における物資運搬とのことだったので。」
「戦時か、私の世代ではあまり実感のわかない言葉だが。まあいい、確か管理者登録は未登録といったな?」
「はい、そうですが。」
確か戦争をしていたのはここからも離れているうえに、10年以上前となるとこの若い隊長さんもその頃はまだ現職ではないか。そう考えながら返事をする。
僕の返事に対して彼女は人差し指を立てながらある種の提案をしてきた。
「お前を龍門に入れてやってもいいが、条件がある。」
「条件……ですか?」
「わかっていると思うが、お前のようなロボットがそもそも龍門に入るために検問所を通るということが前例のないことだ。」
「まあ、僕は人ではありませんからね。」
前例がない。まああったらあったで仲間がいるのかと期待しちゃいますけど。
「なのでお前を備品扱いで納品されたという体で龍門に入れる。無論隅々までチェックさせてもらうがな。」
「それは僕をあなたの所属している組織に入れるということですか?」
「そうだ、といっても仮だがな。お前のことを調べつくして問題なければ再就職先でも探してやるよ。」
再就職先の斡旋!!これはコネ入社まったなしですよ~
「本当ですか!?わ~い、ヤッター!」
「かなり精神年齢の設定が幼くないか?製造元は何を考えていたのやら。」
ああ、それは素の僕の性格が反映?されているからですね。まあ元の人格そのままでは無くなってきている感覚もしますが。これも超高性能AIのおかげですかね?
「まあいい、着いてこいロジコマ。」
今なんと?
「ロ・ジ・コ・マですか?」
「名前が長いと不便だからな。それともLCM22とでも呼ぼうか?」
「いえ~、可愛い名前ありがとうございます。」
ああ!!どこかで見たことあるな~と思っていたけどあれか!攻殻機動隊の映画に出てきた思考戦車じゃなくて……えっと輸送車両のロジコマか!
なんかスッキリ~
「ほら何してる!着いてこいロジコマ!」
「アイアイサー!!命令は了解されました!!」
いや~これからなにが起きるのかワクワクしてきますね~