花梨ちゃん、ちょいキレる。
「ところでよぉ。花梨。」
「はい。」
「お前のスタンドって、結局のところナニ? 背中からなんか炎みたいなもんが出てるのは見えるんだが…。」
「背中から咲くように現れる白い炎が、私のスタンドです。」
「そうそう、花だ花。なんかの花に似てるんだよな~。え~と? イー…、いー?」
「『イースターカクタス』だ。」
博識なアヴドゥルが言った。
「そうじゃな、なんかの花に似てるとは思ったが、イースターカクタスじゃったか。」
「イースターカクタス?」
「サボテンの花だ。花言葉は、「復活の喜び」、「恋の年頃」、「情熱」、「熱情」…。」
「恋の年頃~? 花梨にぴったりじゃねーか。」
「……。」
「まったく似合ってねーがな。人形臭い顔しやがって。」
「顔は生まれつきですので。」
「君ら、そろそろ現実を見ようよ…。」
「現実逃避…、したくもなるわ。」
花京院のツッコみにポルナレフがやっと現実に目を向けたのだった。
インド。
カルカッタ。
そこについて、過去英国の人間がこう言った。
『この宇宙で最悪の所』。
牛は野放し。
浮浪者だらけ。
道は舗装されておらずとんでもなく渋滞。
押し売り、わんさか。
「インドは、不衛生だとは聞いていましたが…。」
「ガンジー川の水は絶対に触らない方が良い。ありとあらゆる汚物や汚水で汚れきっているからね。」
「は、早いとこホテルに行くぞ!」
そんなこんなで避難するようにホテルへチェックイン。
移動する途中、花梨は、ポルナレフの傍にいるシェリーの霊の様子がおかしいことに気づいた。
「どうしたの?」
っと聞いてみると。
『……アイツが…いる。』
「あいつ…、あっ。」
「おい、牛のクソを踏みかけたぜ。足下に気をつけな。」
グイッと腕を承太郎に引かれて踏まずにすんだのだった。
それを見た花京院は、複雑そうな表情を少し浮かべたのだった。
***
ホテルにあるレストランでインドのミルクティー、チャイを飲みながら休憩。
「要は、慣れですよ。」
そう言うアヴドゥル。
ジョセフは、うんざり顔で、とてもじゃないが無理だと言うが、承太郎は気に入ったと言っていた。
「マジか! 承太郎、マジで言ってるのか!?」
ジョセフが孫の言葉に驚いていた。
「君は、どうだい? 花梨ちゃん。」
「……。」
「花梨ちゃん?」
「はい? なにか言いました?」
「どうしたんだい? ボーッとして。」
「ポルナレフさん。」
「ん? なんだ?」
「……仇の存在が近いかもしれません。」
「なに!?」
ポルナレフが身を乗り出した。
「シェリーさんがそう言っていました。」
「どこだ!?」
「いえ…、ただ気配を感じているだけです。敵の刺客になっているのなら、いずれ現れるかと思います。」
「…そうか。なら不審な奴を見かけたら教えろよ?」
「分かりました。」
「トイレ行ってくるぜ。」
そう言ってポルナレフは、トイレに行った。
ところが、少しして。
「ぎにゃあああああああああ!!」
「どうした、ポルナレフ!?」
トイレの方からポルナレフの悲鳴が聞こえた。
「し、信じられん! ぶ、豚…豚が…、便器から!」
ベルトを外してずれるズボンを掴んでいるポルナレフがトイレの中を指差す。
「あー、ここのトイレは設計ミスで豚小屋につながっとるんですわ。こうやって…、棒で豚を突いて、さあ、どうぞ。」
慣れた様子で店員が豚をどかし、ポルナレフに促す。
「……俺、ホテルの部屋まで我慢するぜ…。」
「その方がいいですね。」
「……ウォッシュトイレなら知ってます。」
「ウォッシュ? 洗うのか?」
「いえ…、ウォッシュとは、文字通りの魚…、『ウオ』と、『Fish』(フィッシュ)です。ベトナムで見ました。宿便を目当てに魚が便器から…。」
「……潔癖そうに見えて、お前も意外と経験値高いな。」
「そのあと、トイレを貸してくださったお宅で、ウォッシュ魚を焼いたのを…。」
「あーーー! この話は止め! やめだ!!」
花梨の言葉の想像を振り払うように手を振るポルナレフであった。
その時だった。
『危ない!』
「!」
シェリーの霊が叫んだとき、花梨はトイレの鏡に映る包帯男の存在に気づいた。
「『マン・イン・ザ・ミラー』!」
「花梨!?」
マン・イン・ザ・ミラーのスタンド象を出し、鏡を攻撃させて割った。
「……どうやら…、来たみたいですね。『吊られた男』が。」
「!」
「鏡を利用する…、節制のカードのスタンド使いが言っていました。包帯男のような…スタンドです。」
「やろう…ついに、ついに!」
「落ち着けポルナレフ!」
「邪魔すんじゃねーよ!」
「落ち着け! 敵は我々が分断するよう、わざと仕掛けてきた可能性があるのだ! ここでひとりで飛び出してしまったら…。」
「香港じゃ、お前におくれを取ったがよぉ! 俺は長年探し続けた妹の仇を見つけて、怒りで煮えくりかえってんだ! DIOが怖くて逃げた臆病者のてめーにゃ分かるわけねーよな?」
「なっ…なんだと?」
「ほー? プッツン来るかい?」
「……行きましょう。」
「花梨? なんでお前が…。」
「ポルナレフさんは、仇の顔を知りません。」
「両手が右手だってことが分かれば…。」
「シェリーさんは…、間近で顔を見ています。それに約束しました。あなたに力を貸すことを。だから、行きます。邪魔はしません。それに、敵がたったひとりで6人組の私達を倒しに来たとは思えません。別に敵にいたら、私が相手をします。」
「そうか…。邪魔、すんなよ?」
「花梨、それだと君が危険じゃ!」
「承知の上です。それに……、追跡については…。」
するとムーディー・ブルースが現れた。
「人間だけじゃなく、スタンドでも可能です。」
ムーディー・ブルースが、吊られた男……ハングドマンになり、鏡にくっつく。
そして巻き戻しすると…。
「? なんだ? 消えたぜ。」
「……どうやら、鏡の中の直接入り込むタイプのスタンドではありません。おそらくは、鏡の反射でしょう。ほら、薄っぺらい。」
「あっ、マジだ!」
時間を鏡に映っていた時に戻すと、砕いた鏡があった壁の部分に極限までなんてレベルじゃないほど平たくなったハングドマン(ムーディー・ブルース)の姿が鏡の厚さ分離れた状態で浮いていた。
「ありがとよ、花梨! 恩に着るぜ!」
「いえ、まだ終わっていません。」
「ここまで分かりゃ、勝て…。」
「私は、あくまでも復讐の邪魔をしないというだけで、“追跡”をしないとは言っていません。このまま追跡し、スタンドが消えたら、そこの場所に誰がいたのかを再生します。そうすれば…。」
直後、花梨の首の左側が切れて出血した。それに続いて、右足に穴が空いて出血した。
「ぁ…。」
「花梨!」
『くっそ…、なんて能力のある女だ…! 予定外にもほどがある!』
「J・ガイルか!?」
『ククク! これで俺を追跡するのは難しくなったなぁ? 来いよ、ポルナレフ。』
砕けて床に散らばっていた鏡にハングドマンがいた。ハングドマンの手首に付いている刃に、血が付いていた。
「てめーーー!」
「待て、ポルナレフ!」
怒りの限度を超えたポルナレフがレストランから飛び出した。アヴドゥルがそれを追って行った。
「だいじょうぶか!?」
「花梨ちゃん!」
「…『ゴールド・エクスペリエンス』。」
花梨は、ゴールド・エクスペリエンスを出し、砕けた鏡を拾わせて部品を付くって傷を塞いだ。
「いたたたた…。」
傷は治るが、痛みが残る。それがゴールド・エクスペリエンスの治療。
「追います…。」
「無理をするな!」
「傷は治りましたから。」
「敵は、君が一番の脅威だと分かってしまったんだ! わざわざ敵の懐に入るようなマネはしてはいけない!」
「……それでも…。」
花梨は立ち上がった。
「約束は…、守りたいんです。」
そう言って、どこか悲しげに微笑んだのだった。
その微笑みの承太郎達が言葉を失っていると、花梨は背を向けてレストランを出て行った。そして我に返った承太郎達は、花梨を追った。
そして、ムーディー・ブルースを使ってポルナレフの動きを追跡し、見つけたときには……。
アヴドゥルが、銃のスタンド、エンペラー(皇帝のカード)で額を撃たれた瞬間だった。
「アヴドゥル!!」
「ヒヒヒ! コイツはラッキーだぜ。俺達の攻撃にアヴドゥルのマジシャンズ・レッドが一番の敵だったからな。」
「アヴドゥルさん…。」
「……これだからお人好しは嫌いなんだ。説教垂れてよぉ…。これだから…、俺は…!! 俺の周りで勝手に死なれたくなかったんだ!!」
ポルナレフが大粒の涙を零しながら叫んだ。
「カモ~ン、ポルポルく~~ん?」
「……嘘ですよね? アヴドゥルさん…。」
追いついた花京院が倒れているアヴドゥルに近づき、脈をみた。
「……なんてことだ。」
花京院は辛そうに顔を歪め首を振った。
「……アヴドゥルさん…。」
花梨は、アヴドゥルの傍に座り込み、その手に触れた。
そして、ゆっくりと、立ち上がる。
そして、ジィっとエンペラーの使い手、ホル・ホースを見た。
「おう…、こりゃ、とんでもない美人さんじゃねーか。危ないからどいててくれるかい?」
「……あなたは。」
「?」
「殺すなら……、復讐される、覚悟も、ありますよね?」
次の瞬間、背中に咲いた白い炎の花から、凄まじい火炎を纏ったマジシャンズ・レッドが飛び出した。
「なにーーーー!?」
「花梨ちゃ…。」
ビックリ仰天するホル・ホースと、花京院だったが、花京院は、花梨の横顔を見て気づいた。
キレてる…! メチャクチャ怒ってる! っと…。
だが顔には出ていない。雰囲気で分かったことだ。
そして、花梨は背中にマジシャンズ・レッドを浮かばせた状態でホル・ホースに突撃するように全速力で走り出した。もう、なんていうか、100メートル走世界チャンピオン顔負けの超スピードなダッシュで。
「ひ、ひいいいいいいいいいいいい!!」
その迫力に恐れをなしたホル・ホースが背中を向けて、一目散に逃げ出した。
残された花京院とポルナレフは、ポッカーンである。
生きてますよ?
アヴドゥルさんは。
ただ元の世界ですでにコピーしていたのを、30秒間使うだけです。
アヴドゥルが生きていることを隠すために、花梨は敵を脅すことにしたのです。
殺したはずのスタンド使いのスタンドが出てきたら、あとほぼ無表情で全力ダッシュで突撃してきたら、そりゃ敵であろうともビビると思う。
花梨は、父親がギャングとはいえ、普通の家庭で育ったので感情のブレがジョルノより激しいです。(顔に出ないけど)