ポルナレフと花京院は、J・ガイルを。
オリジナル展開です。
ハーハアー、ヒューヒュー…っと、大汗をかいたホル・ホースが呼吸困難寸前で、路地裏にへたり込む。
次の瞬間、後ろの方で、ザリッ…と音が鳴り、ホル・ホースは、ビクーン!となった。
ガチガチと、震えて歯を鳴らしながら、恐る恐る振り返る。
路地裏へ差し込む表通りの光を背にした、花梨が息一つ乱さず、そこに佇んでいた。
「ま……、負けだ…。俺の負けだ…! い、命だけは…勘弁してください…。」
「……肉の芽がない。」
「あ、ああ! 俺は大金で雇われただけだ! それでいて俺の座右の銘は、『No.1より、No.2』! ひとりじゃ戦わねぇ! それにあんたは、女だ! 俺はよぉ…、信じて貰えないかも知れねーが、女を尊敬してんだ…! ブスだろうが、なんだろうが、女ってモノを尊敬している! だから、戦わねぇ!」
「ふーん…。」
花梨の興味なさげな声に、ホル・ホースは、フウッ…と意識が遠のくような気がした。あっ、死ぬって思って。
「ところで。」
「は、はいぃ!」
「J・ガイルは…、ポルナレフさんの妹を惨殺している。それでもあなたは、彼とコンビを組んでいる。女を尊敬していながら、ただの欲望のはけ口にして、蔑ろにしている男と組むのは…、あなたの流儀?」
「そ、それは…。」
「結局、あなたは、尊敬よりお金が大事。それが、あなたの心。だから……、殺さない。」
「…へっ?」
「殺す価値もない。でも……。」
フワリッと花梨の背中から白い炎の花が咲いた。それを見たホル・ホースは、やっぱ殺す気だ!っと身構えたが。
花梨は、背中を向けて、去って行った。去るときにスタンドは消した。
「……た、助かった?」
去って行く姿に、ヘナヘナとなるが、直後。
ガブリッと、ホル・ホースの左肩に見えない何かが食らい付き、肉に歯形が付いた。
「ぎ…!? ギャアアアアアア!? なんだーーー!?」
「そこで死んでた、浮浪者の死体。J・ガイルがポルナレフさんに殺されるまで…、遊んでて。」
「死体!? ど、どどど、どこだ、イギギギギ!? ひぃいいいい!」
花梨は表通りに去って行き、路地裏には見えぬ死体と戦うホル・ホースの悲鳴とエンペラーの銃声だけが木霊した。
***
「……疲れた。」
表通りをしばらく歩いて、人がほとんどいない場所で、壊れかけた廃墟の壁を背に、花梨はへたり込んだ。
「お姉ちゃん…、だいじょうぶ?」
そこへ、この辺りに住んでいるらしい子供がやってきて、心配してくれた。
「うん…、だいじょうぶ。ちょっと、疲れただけ。」
「お水いる?」
「ありがとう。でも、いらない。」
その時、キラッと小さな光が子供の目に移動したのを見た。光は先ほど通りがかったトラックから移ってきた。
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない。」
花梨は懐から、手鏡を出した。
「マン…イン・ザ・ミラー。スタンドだけが入ることを許可する。」
「?」
『なんだこれはーーー!?』
「……馬鹿な人。まんまと引っかかった。」
花梨は手鏡の向こう側の世界に閉じ込められたハングドマンに言った。
「ちくしょおおおおおおおおおお!! このアマがああああああああああああああ!!」
直後、横の隙間からJ・ガイルらしき醜い男が出てきて、花梨の首を羽交い締めにした。
「花梨!」
「花梨ちゃん!」
そこへ、ポルナレフと花京院が駆けつけた。
「動くなーーーーー!」
J・ガイルは、ナイフを花梨の首に突きつけ、叫んだ。
「おい! ぶっ殺されたくなかったら、俺のハングドマンを解放しろ!」
「イヤです。」
「顔に消えねー傷跡が残るぞ!?」
J・ガイルは、ナイフの先を花梨の頬に軽く刺した。
「…別に。」
「J・ガイル! 彼女を離せ!」
「来るんじゃねーぞ!」
J・ガイルは、花梨を捕えたまま後ろに下がろうとした。
花梨は、自分の腕時計をチラッと見た。
1分45秒。
「J・ガイル。あなたは、殺す気持ちがあるのなら……、復讐される覚悟もある?」
次の瞬間、白い炎の花が咲き、炎を纏った拳を下から振るうマジシャンズ・レッドの腕が、J・ガイルの顎に決まった。
「ブギャアアアアアアアア!?」
高く飛ばされ、背中から落ちたJ・ガイルに、ポルナレフの影が覆う。
「まっ…!」
「待たねーよ。てめぇに嬲り者にされ殺された妹の魂の誇り…、そして我が友アヴドゥルの仇…、この時を…待ってたぜ!! 針串刺しの刑だ!!」
シルバー・チャリオッツの凄まじい突きが、J・ガイルの全身を襲い穴だらけにして、吹っ飛ばした。吹っ飛ばされて瓦礫に足が引っかかった状態になったJ・ガイルの姿は、まさにハングドマン(吊られた男)、そのものであった。
「これが本当のハングドマン(吊られた男)か。心底クソ野郎だった。……シェリー。」
『お兄ちゃん…。』
「!?」
その少女の声を聞いてポルナレフは、ビックリした。
横を見ると、中空に浮かんだ、美しい少女がいた。
「しぇ…シェリー…!」
『ありがとう…。お兄ちゃん…。』
「すまない…! 本当にごめんな! もっと早く……。」
ボロボロと涙を流すポルナレフに、シェリーの霊は首を横に振る。
『これで…、やっとパパとママの所に行ける。お兄ちゃん…、私こそごめんなさい。たったひとりぼっちにしちゃって…。』
「そんなことは…ないさ。さあ、早く…天国へ。父さんと母さんが待ってる。」
『うん…!』
シェリーの霊は、泣き笑いながら、ポルナレフの額にキスを落として、そして、光の粒になって天へと昇っていった。
「……終わった。」
「ポルナレフ…。」
「これで、俺の復讐の旅は終わった。次は、お前らに恩を返す番だぜ。」
「それは、エジプトまでの旅についてくるってことかい?」
「ああ。ここまで来たんだ。最後まで行かせてくれよ。断られたってついていくぜ?」
「そうか。」
「ふふふ…。」
「あっ!」
「?」
「花梨…、お前笑えるんじゃねーかよ!」
「そうですか?」
「あー、やっぱ笑った方が可愛いぜ! ほら、もっと笑顔だ笑顔!」
「難しいです。」
その後、承太郎とジョセフとも合流し、アヴドゥルの遺体を簡素ではあるが埋葬したと言った。
ポルナレフは、俯き悲しみに震える。
そんな彼の様子に、他の者達は何も言えなかった。
本当は…、生きてます…とは。
ホル・ホースを殺さなかったのは、ホル・ホースに死相がなかったことと、敵勢力に自分の脅威を伝えさせるためです。
敵のヘイトを自分に向けることで、死相が濃い承太郎達を守ろうという腹です。
ホル・ホースは、あの後、見えない死体に勝って逃げ帰りました。
花梨は、笑えないわけじゃなく、ちゃんと笑えるんだけどあんまり笑わないだけ。