展開は、ムチャクチャかも。
流血注意。
車内に、スピー…、スピー…っと微かな寝息が響く。
花梨が窓側に身を寄せて熟睡しているのだ。
「かーわいいイビキかいちゃって、まあ。」
「それにしても霧が深くなってきたのう。ポルナレフ、運転はだいじょうぶか?」
「危なくなってきたぜ。おっ? あそこに町が見えるぜ。」
「おかしいな? 地図だとこの道には町は無いはずじゃ…。」
「その地図古いんじゃねーか? この霧じゃこれ以上は危ねぇし、あそこの町で一泊しようぜ。綺麗なトイレのホテルがあればいいが。おりゃどーもあのフィンガーウォッシュトイレは馴染めねーからよぉ。」
「……闇より…。」
「?」
承太郎が、花梨の小さな寝言に気づいた。
「リンプ…。ムグッ…。」
何か言いかけた花梨の口を承太郎が手で塞いだ。
「どうした承太郎?」
「……コイツ…、なにかヤバいことをやらかしかねねぇ。」
「いくらうっかり者でも、そこまでのことは…。」
「うっかりで世界を越えて来るような女だぜ? それにコイツがいくつのスタンドをコピーしているかは分からないが、何かヤバいスタンドを持っている可能性はある。」
「世界を越える?」
「ああ、ポルナレフは知らないんだったな。」
「ホテルで彼女の事情を話す。」
そして一行は、霧の深い町中に車を入れた。
広々とした路上の回りには古い建造物が建ち並び、人々が行き交っている。
霧さえ濃くなければ、普通に賑わっている綺麗な町であった。
「ふむ、中々綺麗な町じゃ。まずはチェックインするホテルを探そう。」
「あそこのレストランで聞きましょう。」
「アッサラーム。」
ジョセフが店の前にいる男にそう挨拶をした。
しかし、男は無愛想な無表情で佇んでいるだけだった。
「聞こえんかったか? アッサラーム、ちょいと聞きたいことが…。」
すると男は突然レストランの営業中の立て札をクローズ(閉店)に変えてしまった。そしてそのまま無愛想なままレストランに入ってしまった。
「おいおい…、なんなんじゃ? わしゃなんもしとらんぞ?」
「ん?」
男がレストランに入って行く際に、首筋に大きなゴキブリが這い、服の中へ入って行くのが見えた気がした。
「……妙ですね。」
眠い目を擦りながら花梨が呟く。
「あんたの発音が悪かったんじゃねーの? あそこに座ってる男に聞いてみよーぜ。」
そう言ってポルナレフが近くの街灯の柱に座っている男に近づく。
「すんませーん。ちょいと聞きたいことが…。」
しかし男は無反応だった。
「もしもーし、聞いてます?」
訝しんだポルナレフが男の顔を見た。
その顔は、とてつもない恐怖で歪んで固まっていた。
「なっ!? おい、どうしたんだ!?」
ポルナレフが驚いて男の肩を掴むと、男はそのまま横に倒れ、口からトカゲが出てきた。
「ば、馬鹿な…、し、死んでいる! 恐怖の顔のまま死んでいる!」
「……銃が。」
「えっ?」
「……コイツは、ただの事故死ってわけでも自然死ってわけでもねーな。見ろ。」
花梨の言葉に承太郎が指で示した。
死んだ男の手には、銃が握られており、さっき発砲したことが窺える小さな煙が出ていた。
「かなり最近の時間に発砲したのか? 2分か、5分前か? わしらが来る前に? しかし、この表情……、ただごとではない! いったいなにを撃ったのか!? それが問題じゃ!」
「2分…、5分…。」
「花梨。オトモダチの出番だ。」
「承太郎? なにを?」
「花梨のオトモダチの力で、この男が死ぬ前に状況を再現させる、それで分かるはずだ。」
「『ムーディー・ブルース』。」
ムーディー・ブルースが出てきて、早速と巻き戻しを始めた。
額に経過した時間が表示された状態の、死んだ男の生前の姿へと変わったムーディー・ブルースが町の奥から走ってくる姿へと再現される。
ヒーヒー!っと息を切らしながらやがて男は地面を転がった。
銃を取り出し、ムチャクチャに何かに向けて周りを撃っている。その顔は、恐怖のどん底に歪められている。
『ひいいいいいいい! か、体がいうことを……。』
そして男は、恐怖に顔を歪めたまま、恐怖に心臓が耐えきれなかったのか事切れた。そして男の姿がムーディー・ブルースへと戻った。
「体がいうことを?」
「これだけじゃあ、わからねーな。」
「……。」
「花梨ちゃん? なにを…。」
「穴が…空いてる。」
死んだ男の姿へと再度、ムーディーブルースに変わってもらうと、死ぬ寸前の時に戻し、花梨がそのムーディーブルースが変化した男の服をはだけさせて示した。
男の体には無数の穴が空いており、だがどれも出血はしていない。それがあまりにも不自然だった。
「なんだ、これはーー! こんな大怪我してるってのに、血の一滴も出てねーなんて!」
「花梨。コイツは、そういうところまで再現できるのか?」
「はい。感触や、温度、そして生きているか死んでいるか…、そこまで再現できます。」
「なるほど。心臓は、この時間の時点で止まってるな。そしてこのまま倒れて、座り込むようになっちまったのか。」
承太郎が、死んだ男に変化しているムーディーブルースの心臓当たりを触ってそう判断した。
「だとしても、分からん! なぜこの男が殺された? なにに遭遇した? 敵の仕業だとしたら、なぜこの無関係の男を殺す必要があった?」
「それにしても…、こんな町中で人が死んでいるというのに…、誰も騒いでいないし、見ていない…。なんなんだ? ニューヨークや東京でもこんなことは無い。」
「呼吸が…ない。」
「えっ?」
花梨の言葉に花京院がそちらを見ると、花梨は、宙を見上げていた。その片目に何か計器のようなモノがひっついている。
「私達以外…、呼吸が見つかりません。」
「どういうことだ?」
「『エアロスミス』。」
すると空から小型プロペラ機が降りてきた。
「このスタンドは、生物が吐き出す二酸化炭素を感知できるんです。そこら辺を歩いている人々から…、呼吸が感知できません。」
「それって……。」
「あっ…。」
「どうした?」
「二つ…、呼吸を見つけました。」
「なに?」
「ひとつが移動しています。こちらに。」
「えっ!」
「あそこに…。ひとり…。」
花梨が指差した先に、霧の向こうから現れたのは、大きな杖を持つ腰の曲がった背の低い老婆だった。
一行は、平静を装う。
「旅の御方…。今日の宿は決まっていますかね?」
老婆は、気安く話しかけてきた。
「いいえ。」
花梨が答えた。
「そーでしゅかー。よろしければ、わしが経営する宿にお泊まりしませんか? 古い宿ですが、精一杯おもてなしをさせていただきますゆえ。」
「そうですか。どうします?」
「うう…む…。では、お言葉に甘えるとしようか。皆もそれでよいな?」
ジョセフが汗をかきつつそう聞くと、全員が頷いた。
「では、ご案内いたします。こちらへ。」
老婆は笑顔で、花梨たちを案内した。
***
そして古い歴史を感じさせる宿へ着いた。
宿に着き、チェックインしてから、部屋に案内された。
「夕食が出来るまでごゆっくり…。」
老婆はそう一礼をして去って行った。
残された花梨たちは、お互いに顔を見合わせた。
「どう思う?」
「……呼吸がもう一つ…、この宿に近づいています。」
「どっちかだな。どっちかが、敵って可能性があるぜ。」
「両方という可能性もありますよ。J・ガイルが、ホル・ホースという男と組んで来たように。」
「あ、そうか…。」
「お婆さんの呼吸が酷く乱れています。興奮しているのか…、それとも別の理由…。」
「…DIOにスタンドを教えた、魔女がいるとは聞いたがな。」
「あの婆さんが?」
「可能性は否定できませんよ。だとしたら、とてつもないスタンド使いである可能性が…。」
「……。」
すると花梨があくびをした。
「まだ眠いのか?」
「眠い…です。」
「何かあったら起こすから、寝とけよ。」
「そう…します。」
そして、花梨は返事をしつつ、ベットに横になった。そしてすぐ寝た。
「見かけによらず、かなり消耗しているようですね。やはり、複数のスタンドを使いこなすせいでしょうか?」
「かもな…。反則的なスタンドってのは、やっぱ致命的な弱点があるみたいだな。部屋にいても暇だし、俺、ホテルの中を歩いてくるぜ。」
「気をつけろよ、ポルナレフ。」
そして、ポルナレフが部屋を出ていった。
「ぅ…ん…。」
「うなされとるのう…。夢見が悪いのか?」
「僕が見ておきますから、ジョースターさん達も外に出てていいですよ。」
「……のう、花京院? この子のことが気になるなら遠慮無く相談しなさい。」
「なっ!?」
「ヒヒヒ…、せいぜい襲わんよう自制しなさい。」
「違いますってば!」
「まっ、頑張ることだな。」
「君まで!」
二人にからかわれ、花京院は顔を赤くしながら怒った。
その時。
「う~ん…、り、『リンプ・ビズキット』……。」
「あっ。」
「えっ?」
「コイツ!! やらかしやがった!!」
「承太郎!?」
小さいうわごとだったがハッキリと聞こえたソレに、承太郎が表情を歪め、部屋から飛び出していった。
それから、下の階の方で、老婆の悲鳴と、男の悲鳴が聞こえた。
「花梨! 花梨ちゃん! 起きるんだ!」
「……ん? かきょういんさん?」
「君…何をしたんだい!?」
「えっ?」
花梨は分かっていなくてキョトンとした。
「リンプ・ビズキットっと、今…。まさか…?」
「えっ…? あっ…。」
花梨は、口を押さえた。
「まさか、スタンドを使ったのか!? リンプ・ビズキットっとは!?」
「……死…。」
「し?」
「死体を…蘇らせて…見えないゾンビにする…スタンドです。」
「ゾンビ!?」
「見えないだって!?」
「しかも…、上とか壁とか…も、無視します。空腹と乾きに飢えて…、生き物の脳を食べたがります。」
「そんな…、まさか…、そんなことが…呼吸が無いこの町の人間達がすべて死体だと仮定して…、それを変えたら…。」
「町……ひとつぶんの見えないゾンビが…。」
「ばかものーーーーー!!」
ジョセフ絶叫。
そうこうしていると、下の階の方で、凄まじい破壊音とかが聞こえだした。
下の階に降りると、見えないゾンビに襲われたのかボロボロの老婆や、ヒーヒーっと悲鳴を上げながらエンペラーを連射するホル・ホースと、見えないゾンビにわけ分からず、だが身を守るために戦っているポルナレフがいた。
「ぐ、ギギギ…、こんな…こんなことがぁ…!」
ボロボロの老婆は、身体のあちこちを噛みちぎられたことで血を垂らしながら恨めしげに声を漏らす。
「ばーさん! てめーの霧のスタンドを使え!」
「ぐぎ…?」
「見えないなら、霧で形を浮き彫りにしろ!」
「!」
承太郎の叫びに、その手があったかと気づいた老婆は、自らのスタンドを発動させ、濃い霧を発生させた。
すると、見えないゾンビの姿がうっすらと浮き彫りになり、攻撃しやすくなる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
姿が見えたゾンビをすべて殴り、破壊するスタープラチナ。
しかし次から次に窓やドアなどから入ってくるゾンビ。
「ばーさん…てめぇ…何人…何人殺した!?」
「ひ…ヒィ…。」
「おい、花梨! この状況はてめーのせいだぞ! なんとかしろ!」
「……。」
「花梨ちゃん!」
「花梨!」
「……っ、『アンダー・ワールド』!」
背中に白い炎の花を咲かせ、アンダー・ワールドを出した花梨は、『町の記憶』を掘り起こした。
その瞬間、霧によって表面上は形作られていた町が、押しつぶされるように本来あった昔の記憶に塗りつぶされていった。
そして、見えぬ死体が生きていた頃の姿へと戻り、やがて町の記憶と共に消えていった。
霧が晴れ、あとには廃墟だけが残された。
「うまく…いった…。」
花梨は、ヘナヘナとへたり込んだ。
承太郎が、ズカズカと花梨に近づき、その胸ぐらを掴んだ。
「承太郎! やめるんだ! 彼女は故意にやったわけじゃないんだ!」
花京院が慌てて止めに入る。
「……ごめんなさい…。」
震える消えそうな声で、俯いている花梨が謝罪した。
それから、老婆こと、エンヤを治療し、気絶している彼女からDIOの能力などの秘密を吐き出させることになったが、DIOに忠誠を誓う者がそう簡単に口を割るはずがないので、テレビを使ってハーミットパープルを使うことになった。
だがここにはテレビは無い。なので次の町で…っとなった時。
ホル・ホースが車を盗んで逃げた。
逃げる際の捨て台詞に。
そのばーさんを殺しておけ。でないと、DIOの恐ろしさを知ることになるぜと言っていた。
その後、徒歩で移動し、馬車を見つけてそれに乗せて貰うことになったのだった。
いつのタイミングでやらかすかを、悩みに悩んでこの展開……。
最初の段階では、原作通りに事が進んで、エンヤが本性を出したときにうっかりでリンプ・ビズキットを使っちゃったってのをやろうとしましたが……。
花梨の能力だと早々に町の人間が死体だって気づいてしまうので、悩みに悩んでこの展開になってしまいました。
さて……、次の敵は、どう料理してやろうかな?