仲間(特に承太郎)から失望を買ったと思い込んだ花梨は……。
一部流血表現有り。注意。
馬車に乗って、パキスタンのカラチという土地へ。
馬車の席の後ろの方で、正座して猛反省する、花梨。俯いて背中を丸めている姿は、非常に暗い。頭からキノコ生えてそう。
「な…なあ、そろそろ許してやれよ、承太郎。」
さすがに見てられなくなったポルナレフが言う。
承太郎は、腕組み足組みして、ブスッとしていた。
「俺ら、こうして無事なんだしさ~。」
しかし承太郎は何も言わない。
「ま、まあまあ! ひとまず腹ごしらえでもせんか? ほれ、あそこに名物のドネル・ケバブを売っておるわい。」
悪い空気を変えようと、ジョセフが明るく言い、馬車を止めてドネル・ケバブを買ってきた。
「はい、花梨ちゃん。」
「……。」
花京院が花梨にドネル・ケバブを渡す。花梨は顔を上げずそれを手で受け取り、モソモソと食べた。
「美味しいかい?」
「……。」
花梨は返事をせず、コクリッと頷いた。
これは、相当堪えているな…っと、花京院は知られないようにひっそりとため息を吐いた。
パラレルワールドとはいえ、ジョースター一族の子である花梨。彼女の元の世界では、ジョセフが祖父にあたるのなら、当然その孫である承太郎のことも知っていて顔を合わせているはずだ。ジョセフの浮気で出来た子の子だから、承太郎から見て、母親の異母兄弟の子で、従兄弟という関係になる。実にややこしいが。
血筋は遠からず、近からずという関係……。
そういえば、日本の法律では、従兄弟同士は結婚でき……。
瞬間、花京院はムカッときて、ハッと我に返りブンブンと頭を振った。
「?」
花梨は、その気配を感じてふと顔を上げた。
すると。
「あっ、起きてる。」
「えっ?」
見るとエンヤが起きていた。
なぜか大汗をかいてガタガタと震えている。その視線の先を花梨は辿ると、ケバブの店の店主に行く。
「な、なぜお前がわしの前に来る!? このエンヤがDIO様の秘密を喋るとでも思ったか!?」
「?」
「ふふふ…。」
するとケバブの店の店主がクスクスと笑い、そしてアラブの衣装を取った。
現れた男は、ニヤニヤ笑いながらエンヤを見る。
「エンヤ・ガイル殿。口封じさせていただきます。」
「なにーーー!? あ…? あ、ああ、アババババ!?」
直後、エンヤの顔や頭から無数の触手が突き破ってきて生えてきた。
「な、なぜ、わしを…!?」
「ばーさん!」
「DIO様は、何者にも心を許していないということだ。残念でしたね。」
「ばーさん! 花梨! 治してやれ!」
「はい、クレイジーダ…。」
「おおっと、そうはさせませんよ?」
クレイジー・ダイヤモンドで治そうとした花梨だったが、直後その両手に傷が出来て出血した。
「!」
「花梨!」
「ぎぎぎ、ぶげぇ……、D…IO…様…、なぜ……。」
「婆さん!」
血と涙を流しながら、エンヤは死んでいった。
「フハハハハ! 最後の最後まで哀れな老婆だ! まあ、それこそがDIO様の魔の魅力と言えますかね?」
「てめぇ…!」
「花梨…、せめて綺麗にしてやれ。」
「はい…。」
「それより、花梨! おまえさっき…。」
「どうやら、敵の術中にはまっているようだね…。敵はすでにコチラの一番の戦力を知っている!」
「ええ、そうですとも。そちらの女…。その女が一番の脅威だと漏れ聞いていますよ! だからこーして、封じさせて貰いました。」
男は、自身の両手を見せた。そこにはナイフで傷つけたような傷が出来ていた。
「なにをしやがった!?」
「奴のスタンドか?」
「どこを見ている? 戦いはすでに始まっているんだ。おい、そこのガキ。駄賃をやるから、その箒で私の足を叩いてくれ。」
「!」
花梨は、ハッとした。
直後、子供に足を叩かれた敵の男と同じ箇所が痛くなった。
「っ…。」
「花梨ちゃん! まさか…!?」
「そう、その通り。スタンドとは本体と一心同体だ、それは、捉え方によっては、こういった芸当も出来るのだよ。自分の痛みや苦しみを何倍にも相手に与えるということをね。」
すると男の足をもう一度子供が殴った。
「誰が…、もう一度殴れと言った?」
男は子供を蹴り飛ばした。
「まっ、私…スティーリー・ダンのスタンド恋人の暗示…、ラバーズは最弱だ。髪の毛ひとつ動かせないほど脆弱で小さいスタンドだ。だがね、人を殺すにはその程度の力も必要はないんですよ? そうそう、私のスタンドは先ほどエンヤにやったように肉の芽を持って、その女の脳内に入っている。つまり、あと、十数分でエンヤのように死ぬのです。」
「なんてことを!」
「てめぇ!!」
「おいおい…、下手に私に攻撃してみなさい? そしたら何倍にもなってそっちの女もダメージを受けるのですよ?」
「!?」
「ふーん…。」
すると花梨が興味なさそうに声を漏らす。それを見てダンが眉間を寄せた。
「おい、聞いてないのか? あとお前は十数分で…。」
「じゃあ、あなたは、これも予測していた?」
「はっ?」
「花梨ちゃん?」
すると、花梨がケバブの店に置いてあった肉切り包丁を取って、それを左手首に当てた。
「っ…!」
そしていきなり手首に刃を食い込ませ出血させた。
「なにやってんだよ!?」
「おいおーい? まさか自傷趣味が…、……えっ?」
ダンは、自分の左手首の激痛に気づいて一瞬呆けた。
「ぐっ…くっ…。」
花梨は、構わず歯を食いしばり手首をざくざくと切っていく。すると傷口は広がり、出血量も増えていった。
それとともに、ダンの左手首にも同様の傷と出血が起こった。
「なんだとーーーー!? いでぇぇぇぇ!」
「あっ、よく見ろ! 変なプロペラみたいなのが…!」
「……は、…『ハイウェイ・トゥ・ヘル』。」
ダンの腕から生えている複数のプロペラのような物体に気づいたポルナレフが叫び、花梨がスタンド名を言った。
「どうやら…、こっちの方が強いみたいですね…。よく分かりました。なら…、あなたも道連れです。」
「なに!?」
「このスタンドは…、自死することで、道連れにしたい相手を同じ死に方をさせて殺すスタンド…。私が今、手首を切って自殺しようとしたら、あなたも同じ傷が出来た…。だから、あと十数分で私が死ぬと分かっていれば、自死を選べば、あなたも道連れになる。」
「ば…、馬鹿な…、そんなスタンド…聞いたことがないぞ? お、お前…、まさか本気で自死…、いや自殺するつもりで?」
「そうですけど?」
なんてことないように言う花梨に、全員が言葉を失った。
「は、ハハハハ! もっといい脅しをしろよ! クソアマ! 手首切ったぐらいじゃ、中々死なねーよーだ!」
本気じゃないと思ったダンがそう言って引きつった笑みを浮かべる。
だが。
「そうですよね。なら…。」
「…………えっ?」
「花梨ちゃん!?」
花梨が、建物の傍に置かれていた水の溜まった樽を見たので、ダンは、ハッと察し、花京院達が慌てて止めようとしたが、途端に花梨の背中から咲いた白い炎の花に遮られ、花梨は樽の中に頭を突っ込んだ。
「ガボボボボ!?」
すると今度はダンの顔の周りに水が発生し、ダンは、溺れた。
「オラァ!」
「ボボッ!?」
承太郎がダンをど突いて胸ぐらを掴んだ。
「選べ…、このままてめーのスタンドを解除せず、肉の芽を持って外へ逃げ出すか。それとも、アイツと不本意の無理心中をするか!」
「ガボ…。じにだぐな…。」
息ができず白目をむきかけていたダンは…、やがてラバーズと肉の芽を外へ出し、解除した。
「花梨ちゃん!」
「やめろ、馬鹿!!」
花梨を花京院達が樽から引っ張り出し、花梨はゲホゲホと必死に息を吸った。
同時にダンの方も息が出来るようになるへたり込んで、必死に息を吸っていた。
「た、助かった…! 助かったぁ! 死ぬかと思った…。」
ダンは、やられる側になってやっと死の恐怖を理解したらしい。
すると、複数人の影が彼を覆った。
「ハッ?」
影の正体は、承太郎達だった。
「肉の芽は…、本当に外へ出したんだろうな?」
「えっ? あっ、はい! 出しました! さっき私のスタンドが外へ出しましたとも! 彼女の脳内には欠片もありません! 誓います! 本当です!」
「ジジイ。」
「念のため…、波紋を流しておこう。」
そう言ってジョセフが、波紋を使っておいた。
「ばーさんには、あのJ・ガイルの件で因縁があるがよぉ…。あんな死にかたされたら、さすがに複雑だぜ。」
「よくも、花梨ちゃんに…。」
「えっ、えっ? あ、あの……、スタンドも、肉の芽もとりましたよ? 見逃しては…もらえないんですか?」
「俺は、一言も言ってねーぜ。見逃すとはな…。」
「ヒイイイイイイイイ!?」
カラチの地に、ダンの悲痛な断末魔が響いたのだった。
***
その後…、花梨は、ゴールド・エクスペリエンスで治療し、絶賛、正座中。
「言うことは?」
「……ごめんなさい。」
「謝罪じゃねー。なんで、あんなマネをした?」
「……。」
「俺への贖罪のつもりでやったんなら、良い迷惑だぜ。」
ケッと承太郎が吐き捨てるように言った。
花梨は、シュンッと項垂れる。
「いいか? 二度とあんなマネはやるな。いいな?」
「はい…。」
「もっと大声で。」
「はい!」
「誓え。」
「誓います!」
「……。」
すると承太郎が右手を伸ばしてきた。
花梨はそれを気配で察して身を縮めた。
花梨の頭にポンッと承太郎の手が乗る。
「……?」
「無事で何よりだ。…やれやれだぜ。」
「……ごめんなさい…。」
「もう謝るな。」
頭を撫でられながら謝罪する花梨に、ヤレヤレと承太郎が言った。
「寿命が縮むかと思ったよ。頼むから二度とやらないでくれ。」
「はい。」
立ち上がった花梨に、花京院が胸をなで下ろしながら言った。
「それにしても、君はなぜあんな危険極まりないスタンドを?」
「……私のスタンドが、勝手に連れてくるんです。」
「あのスタンドも…、すでに本体が?」
「死んでいます。」
「あの霧の町でもそうだが…、君は自分のスタンドをちゃんと把握しているのかい?」
「……正直、とても難しいです。」
「消すことってできないのかい? 整理整頓。」
「できたら…、苦労はしません。」
「そうか…。」
会話が続かない。
そして解決策も無い。
花梨のスタンドは、完全に味方では無いらしい。自爆を想定したスタンドを覚えられる時点で。
「私のスタンドそのものが、無限にある本棚みたいなもの…、記憶の媒体と言えばいいんでしょうか?」
「うん。」
「……連れてくるんですよ。鳥が…。」
すると、どこからともなく、白い炎の鳥が飛んできた。
「こうやって…。」
「なにを…連れてきたんだい?」
「『ラバーズ』です。」
「奴(ダン)のスタンドを? もう?」
「あと、ジャスティス(正義のカード)を。」
すると、花梨の前に霧の髑髏のスタンドが現れた。
「あのエンヤのスタンドか?」
「はい。」
「それだけじゃない、運命、吊られた男……も。」
「…ポルナレフには見せない方がいい。」
「はい。」
花京院は、花梨の横顔を見た。
花梨は、鳥が連れてきたスタンドと戯れながら、どこか悲しげである。
やはり、堪えるのだろう。死者のスタンドを連れてきて、自分のモノとして扱うというのは……。
彼女は、16歳だと言った。
なら、たった16年の間にどれだけのスタンド使いのスタンドと接触したのだろうか?
その苦しみと悲しみは、どれほどのものか…、それは想像できない。
生まれた時からハイエロファントグリーンと共にいた花京院の孤独や悲しみなど霞なるほどだろう…っと花京院は思った。
そう考えていると花京院は…。
「?」
無意識に花梨の腕を掴んで、引き寄せ、そして…。
その手首に口づけをした。
「……花京院…さん?」
「………ハッ!」
我に帰った花京院は慌てて離れたが、顔が真っ赤になっていた。
「ぼ、僕は…その…。」
「……。」
「花梨ちゃん? …わっ。」
「お返し。」
腕を引かれた花京院のおでこに、花梨がキスをした。
「あなたにも…良いことがありますように。」
「………あ、りがとう。」
花京院は紅潮する顔を抑えきれず、そっぽを向いた状態でオロオロした。
花京院は見ていなかったが、その時花梨が、クスッと可愛らしく笑っていた。
原作じゃ、なんでジョセフだったんでしょうかね?
ジョセフのハーミットパープルを警戒してのことかな?
もっとボコボコにした方が良かったかな?
まあ、死の恐怖は十分味わったと思うけども。
ハイウェイ・トゥ・ヘルって…、使いにくいけど、怖くね?
花梨は、ちょっとばかり先走りやすく、自分の命を軽く見ている節があるってことにしました。