オリジナル展開。
ジャッジメントに遭遇したのは、ポルナレフじゃなく……?
紅海(こうかい)。紅(あか)い海と書いて、紅海と読む。
しかし、海が紅いのではない。
東と西の砂漠が赤くて、これに挟まれるように存在する場所であることから、この名が付いたのだ。
実際の紅海は、まさに穢れの無い、世界で一番美しいとダイバー達が言うほどの澄んだ海なのである。
しかし…っと、花京院はボートの上で思う。青く海の底まで見えそうなほど澄んだ青い海を見つつ、チラッと花梨を見た。花梨も海を眺めていた。
横顔が見えるが、彼女の澄んだ青い瞳……の方が綺麗だな…、なんて言えるか!っと、花京院は身を縮めて己の膝をバンッと殴った。
「?」
花京院の挙動に気づいた花梨が、ハテナマークを浮かべて訝しんだ。
「おい、ジジイ。方角がおかしいぜ。どこへ向かっている?」
「ああ、このボートではエジプトには向かわん。とても大事な男がいる島に行く予定でな。」
「大事な男ぉ?」
ポルナレフが訝しんだ。
「ほれ、見えてきた。あの島じゃ。」
「あんなちっぽけな小島に?」
紅海の青い海に浮かぶ、うっそうと草木が茂った小島にボートは停泊した。
「こんな所に誰が住んでんだ~?」
「この島にたったひとりで住んでいる人物じゃ。『彼』がインドでそう教えてくれた。」
「えっ?」
「なに? インドのカレー?」
花梨、花京院、承太郎がジョセフの言葉の意味を理解したが、ポルナレフだけは分かってなかった。
無理も無い……。
この島で、実は生きているアヴドゥルと再会するということなのだから。
アヴドゥルが死んだと思っているポルナレフが気づくわけが無い。
その後、アヴドゥルに似た白髪の男を見つけ、逃げられ、島にあるボロ小屋に逃げ込まれた。
ポルナレフには、彼がアヴドゥルの父親だと言っておいたのだが、ポルナレフは、自責の念から俯いた。
ポルナレフがひとりで浜に行くと言って、いなくなった後、ボロ屋に変装したアヴドゥルが残りの面子を招き入れた。
「それで? 予定通りいったか?」
「ええ、言われていた買い物は終わりました。」
「買い物?」
「かなり大がかりで金のかかる物を頼んでたんじゃよ。」
「それにしても…、ジョースターさんもお人が悪い。いくらDIOの手下の目を欺くためとはいえ、こんな台本まで用意して…。」
アヴドゥルは、そう言ってジョセフが用意していた台本をテーブルに置いた。
「ポルナレフの奴は、完全に信じこんじまってたな。」
「ふふふ。私の演技もそこまで悪くは無かったかな?」
「それにしても、ポルナレフさん…、来ませんね。」
「仕方ない。僕が探しに行きます。」
「気をつけろよ。こんな小島でも敵の目がどこにあるか分からんからな。」
「分かってますよ。」
そして花京院は、小屋から出てポルナレフを探しに行った。
***
花京院は島の浜辺で、ポルナレフを探した。
「どこにいったんだ?」
浜に行くと言っていたが、姿が見えない。
浜の砂を見た時、何かがキラキラと光っているのを見つけた。
「これは…、ランプ?」
フジツボだらけで、いかにも漂着したゴミであることを伺わせる、まるでアラビアンナイトの物語登場するような形のランプだった。
「……錆びてはいないな。フジツボを剥がせばそこそこいい値がつきそうな…。」
そう呟きながら、カリカリとフジツボが付着している表面を爪で引っ掻き擦った。
その瞬間。
ボワンッ!と、ランプの先端から煙が吐き出された。
「うわっ!」
『願いだ! 願いを言え! 三つ叶えてやろう!』
ランプの魔人というには、あまりにもメカメカしい見た目のソイツが煙の中から現れた。
「ま、まさか…! 本物だったのか!?」
『さあ、願いを言え! 叶えてやる!』
「そう言いながら、叶えられない願いもあるんじゃないのか?」
『そーんなことはない! さあ、言ってみろ! お前の願いを!』
「……。」
花京院は考えるフリをして、思う。
胡散臭い。
どう考えてもスタンドじゃないか?っと。
コイツに出くわしたのが、馬鹿正直なポルナレフだったら、コイツの術中にはまっていただろう。
自分で良かった…っと思う反面、少し欲が出てしまったのは自分が若すぎるからなのだろうっとも冷静に考えた。
「例えば…、気になる女性に告白してそれを叶えるといったことも可能なのか?」
『んん~。女への愛の告白か! つまり意中の女とい~い仲になりたいのか? それがお前の一つ目の願いか!』
「大声で言わないでくれ。彼女は僕の好意に気づいてないっぽいんだから。」
『失礼失礼。では、それがひとつめの願いなら、叶えてやろう! Hair 2 U!』
「花京院さん。」
「か、花梨ちゃん…。」
茂みから花梨が出てきてた。“笑顔”で。
「嬉しいです。」
「花梨ちゃん、僕は…。」
「私も好きです。貴方のことが。」
「ああ…、嬉しいよ。そういってもらえるなんて夢のようだ。」
「花京院さん。」
抱きついてきた花梨を、花京院が受け止めた。
しばし抱き合い、そして。
『ヒューヒュー!! さあさ! 浸ってるところ悪いが、次の願いを言え! あと二つだ!』
「……本当に、夢のようだ。お前の、上っ面だけの能力は。」
『!?』
ギロッと花京院の目が魔人を見る。
「僕が気づかないとでも思ったか? こんな都合の良い話なんてあることを信じると思ったか? ……お前は、どうやら観察眼が足りないようだな。花梨が、こんな笑顔でいるなんて不自然にもほどがある。」
『チッ! 気づいてたか! そうさ、俺の名は、ジャッジメント! 審判のカードの暗示さ! 抱きついている花梨の土人形に喰われろ、Hair 2 U!!』
「ふっ…。」
『? ………………!?』
「僕のスタンド…、ハイエロファントグリーンは、気づかれること無く、周囲を探れるんだ。そう…、間抜けな形で隠れている、お前の本体をすでに見つけている!」
『あ…! あぁ…!!』
「……ほんのひとときでも、素敵な夢を見せてくれたことだけは感謝するよ。エメラルド・スプラッシュ。」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「おい! なんの騒ぎだ!? って、花梨!?」
ジャッジメントの本体を倒したと同時に、土人形の花梨がボロボロに崩れて消えたのを、ズボンの端を掴んで走ってきたポルナレフが見て困惑した。
「……ポルナレフ。なにやってたんだ? まあ、その格好からすると聞くまでも無いし、聞きたくない。」
「お、おいおい…、ちゃんと穴は掘ったぜ? 急に腹が痛くなったもんだからさぁ…。」
「こっち来るな。手を洗ってこい。」
「辛辣!」
その後、花京院に連れられ、島の反対側で待っていた承太郎達と合流し、アヴドゥルが生きていたことを伝え、ポルナレフは号泣すると同時に、自分だけ仲間はずれだったことに拗ねたのだった。
「ところで、花京院さん…。」
「ん? なんだい?」
「……。」
「えっ…? なにかな?」
「なんでも…ないです。」
「えっ?」
花梨は、プイッとそっぽを向いてしまい、花京院は自分が何かしたか?っと考え、思い至る。
もしかして…、見られたか、聞かれたか!?っと。
ザーッと青ざめて顔を覆った花京院は、気づいてなかった。
花梨の耳がほんのり赤く染まっていたことに。
ジャッジメントって、強いんだか、弱いんだか?
もしかして、普通の人にも見えるタイプだった?
能力的に。
花京院、気づいてて、つい欲が出て利用。
愛の告白と聞いてついノリノリのジャッジメントは、つい叶えちゃって(贋物だけど)、残りの願いを叶え終えたら殺すってなってたが…、本体を探すためのブラフであったため、あっさり退場。
で、花京院のその行動を見てたか、聞いていたか?
花梨の様子が…?