前半は、花京院と花梨が……?
「かきょーいーん? そんな落ち込むなって。なっ?」
一旦離脱していたアヴドゥルが買ってきたという、潜水艦に乗り、エジプトを目指す中、隅っこで膝を抱えて背中を向けている花京院に話しかけるポルナレフ。
ポルナレフは、チラッと潜水艦の計器を見ている花梨を見た。花梨は相変わらず淡々としている様子だ。
「ほれ、花梨も気にしてないみてーだし。むしろ、ラッキーだったて思おうぜ? お前の気持ちが伝わったんだし…、ブッ!」
理不尽なエルボー(肘打ち)がポルナレフを襲う!
「……土人形を利用して、ちょっとでも邪なことをやらかしたことを、見られて、知られた時のショックなんて君にゃ分からないさ。」
「あ…あれか? エロ本を妹に見られた時のような…、ウゲっ!」
「穢らわしいことほざくな! いや…、この場合僕の方が穢らわしいか……。」
「殴ってから反省するな…。うっ…。」
「まあ、落ち着くんだ。」
そこへアヴドゥルがコーヒーを入れたカップを花京院に渡した。
「そんなに気になるのなら、本人に聞けばいいではないか? イヤだったのかどうかを。」
「……。」
「君も年頃の青年なんだ。年長の私が色恋沙汰に口出ししないようにしたいが、だが、時に勇気は必要だと思うがね。」
「………無理です。」
花京院はコーヒーのカップを両手で持ちつつ、泣きそうな声で言う。
「おい、花梨。お前としてはどー思ってんだ?」
「承太郎!?」
承太郎が花梨に聞いていた。
「…どう…って……。」
「花京院まで戻ってこねーから、探しに行ってみれば敵の土人形に抱きつかれてるアイツ(花京院)を見つけたんだろ? それについてだ。」
ストレートに聞く承太郎に、花京院は気が気じゃ無かった。
「……。」
花梨は、手元でモジモジと両手の指を絡ませたりする。
「………イヤじゃ無かった…です。」
「だ…そうだぜ? 花京院。」
「き、君って奴は…。」
「むしろ…、なぜ、私だったのかが、分からないですけど。」
「って、言ってるぜ? てめーが招いたことなら、ハッキリ言えば良いだろうが?」
「そ…れは…。」
「でも…、土人形だったとはいえ、パパと、弟以外に男の人に接してる私が見れたのは、なんだか不思議でした。」
花梨は、そう言って俯く。
「私みたいな笑わない女に接してくれる男の人なんて…。」
「っ…、君を避ける男達が見る目がないんだ!」
「?」
「笑わないからなんだっていうんだい? 人に無い力があるからってそれが嫌われる理由にする方が問題だ!」
「花京院さん…。」
「あっ…。」
立ち上がって勢いよく言った花京院は、我に帰った。
「ヒューヒュー。花京院、お前、言うときは言うじゃねーか。」
「こんな大変なときで無ければ、祝福してやりたいところだ。」
「あの…えっと…。」
焦る花京院は、恐る恐る花梨を見た。
花梨は、目を見開いていて、ポカンッとしていた。
しかし、やがてその顔がほんのり赤く染まる。
「……嬉しい…です。」
「花梨ちゃん?」
すると花梨が花京院に近づくので、ポルナレフとアヴドゥルがどいた。
そして、ギュッと抱きついてきた。
「えっ!?」
「……本物の私じゃイヤですか?」
「そ……!」
花京院の顔がぶわーっと赤くなった。
するとポルナレフがものすごい嬉しそうな顔で、パチパチと拍手してきた。
「…おーい、盛り上がってるところ悪いが、そろそろエジプトが見える頃合いじゃないかのう?」
「あっ。そうでした。…ん! 見えた、エジプトです!」
潜水艦の望遠鏡でエジプトの陸地を確認したアヴドゥルが言った。
「ついにこの旅も…、終盤ってわけか。」
「おい、お前ら聞いてるか?」
「聞いてますよ。」
花梨が振り向き、花京院はガッチガチに固まっていた。
ところが。次の瞬間。ムーディーブルースが突如出現した。
「えっ?」
花梨が驚いていると、ムーディーブルースが花京院ごと花梨を突き飛ばし、シュパンッ!とムーディーブルースの首筋が深く切れた。
『チッ!』
下品な女の舌打ちが聞こえ、花京院の後ろにあった計器が不気味な顔のスタンドに変形していた。
「なにーーー!? いつの間に!?」
『ムキャナハハハハ!』
計器から剥がれ、カサカサと移動する小型スタンドは、別の計器に溶けるように姿を消した。
「だいじょうぶか!? 二人とも!」
「え、ええ…。」
「今のは…。」
「敵だ! 今の現象を見た限りでは、相手は無機物に変身できる! …おそらく、ハイプリエステス(女教皇)だろう!」
アヴドゥルの説明によると、遠距離型スタンドで、プラスチックや鉱物などに変身でき、触っても動き出さない限り分からないという変身能力の持ち主らしい。
「け、けどよぉ! どうやってこの潜水艦に?」
するとバシャーっと水が入ってきた。
「なーるほど、単純に穴を開けてきたのか…。」
「呆けてる場合か! 奴のことだ、おそらくもう潜水艦のアチコチに穴が…。」
「いかん! 潜水艦の浮上システムが破壊されておる! 沈没するぞ!」
「結局こーなるのねー! 俺らが乗る乗り物は!!」
「クレイジー…。」
「ダメだ! 酸素の残り残量が!」
「衝撃に備えろ!」
そして潜水艦は海底にぶつかって止まった。
「だ、だいじょうぶか?」
「この潜水艦はもうダメじゃ! 放棄してこのまま海面へ逃げるぞ!」
「けど、ここは、深度40メートルだぜ!?」
「急げ! 隣の部屋へ逃げるぞ!」
アヴドゥルが隣の部屋への扉を掴んだとき、ハイプリエステスが扉から出現した。
「しま…。」
「オラァ!」
それを承太郎のスタープラチナが掴んで止めて捕えた。
「よくやった! そのまま握りつぶしちまえ!」
「アイアイサー。」
そう言ってスタープラチナでハイプリエステスを潰そうとすると、ブシュッと血が零れた。
慌てて手を開くと、ハイプリエステスは、カミソリの刃に変身していた。手を開いた隙に、ハイプリエステスは逃れ、そのまま別の計器に化けて消えた。
「くっ…。」
「治します。」
「頼むぜ。」
「急げ! 襲ってくる前に、奴をこの部屋に閉じ込める!」
花梨が承太郎の傷を治してから、一行はすぐに隣の部屋へ逃げ込み扉を固くロックした。
***
緊急脱出用のために用意されていた、ダイビング用の酸素ボンベを使い、海面を目指す。
ポルナレフと花京院が、ハンドシグナルで、ちょっとふざけて怒られたりもしたが、全員準備を終え、海水を部屋に注入。そして、あとは脱出だっとなった時、花梨の口につけていたボンベのマウスがハイプリエステスになり、花梨の口の中へ入り込んだ。
「花梨!」
「ハイエロファントグリーン!」
「ハーミットパープル!!」
花京院とジョセフが急いでスタンドを発動し、喉の奥へ移動したハイプリエステスを捕え、花梨の体内から引っ張り出した。
「あ…ありがとうございます…。」
「礼には及ばないさ。」
「急げ! 奴が水中銃に変身したぞ!」
引っ張り出されたハイプリエステスが水中銃に変身し、銛を発射してきたが、すんでの所で扉を閉めて全員脱出した。
ゆっくりと、だが急いで海面を目指す。
急いではいけないのは、水圧で肺が破裂するからだ。
必死に泳ぐ一行だったが、実は泳ぎがそこまで得意じゃない花梨が遅れる。それを花京院がハイエロファントグリーンで引き寄せて一緒に泳いだ。
陸地まであとすこし…っとなった時。
海底に、ハッと花梨が気づいたが、遅かった。
海底に化けたハイプリエステスが巨大化した口で一行を吸い込んだ。
そして一行は、口の中に閉じ込められた。
『このままハイプリエステスの胃液で消化してあげるわ! あ~ん、でも残念ね~、承太郎、あなたとっても好みだからこのまま殺すのは惜しいわ…。』
っと、ハイプリエステスの本体ミドラーの声が響く。
すると、何か名案が思い付いたポルナレフが承太郎にヒソヒソと語りかけていた。
「やるのか…?」
「やれ。ほれ、早く。」
「やれやれだぜ。この空条承太郎…、ここで死んじまうのか。短い人生だったぜ。ミドラーって言ったか? あんたの顔を見ずに死ぬなんてよ~。もしかしたらタイプかも知れねーしな。恋に、お・ち・る・か・も。」
『……。』
棒読みだが効果は抜群のようだ。
花梨がスタスタと、歯の方に近づいて、コンコンッと歯のひとつを叩いて確かめていた。
『あ~ん、叩いても無駄よ? この歯はダイヤモンド級の硬度はあるんだから。』
「ふーん…。アヴドゥルさん。ちょっと試したいことがあります。」
「なんだね?」
「今から、この歯を絶対零度で凍らせます。そこを焼いてみてください。数千度で…。」
「? ……ああ。分かった。」
『?』
「ホワイト・アルバム!」
「マジシャンズ・レッド!」
ホワイト・アルバムをフルパワーで使い、歯のひとつを凍らせ、冷やす。そこへアヴドゥルのマジシャンズ・レッドの灼熱が当たった。その瞬間、温度差により、歯に亀裂が走った。
『なにすんじゃ、コラーーー!』
「えいっ、ホワイト・アルバム。」
『あギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
「んっ? どうしたんだ?」
「あー、そういうことか…。」
「なになに?」
「歯には神経が入っているんだ。そこが露出していると……、冷たい物を食べると恐ろしく染みる。」
「ホワイト・アルバム、ホワイト・アルバム、ホワイト・アルバム、ホワイト・アルバム、ホワイト・アルバム、ホワイト・アルバム、ホワイト・アルバム…。」
『アアアアアアアアアアアアアア!! やめんか、ゴラーーー!!』
「うお! 舌が!?」
『潜水艦でもイチャコラしやがって、このクソアマが!! てめーからぶっ殺す!!』
「口内炎発見。」
『!?』
「『バット・カンパニー』。」
舌の下に、口内炎を見つけた花梨は、小型戦車や、小型のヘリを出し、砲撃させた。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! やめ! やめて!! もう…勘弁して…、お願いします…。』
最後の方はひっぐえぐっと泣き言が混じるミドラーの懇願。
「待て、花梨。」
「承太郎さん。」
「歯ってのは、大事だぜ。そんな攻撃してたら、さすがに…なぁ。」
『じょ、承太郎…。』
「だから…。こうだ。オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
承太郎のスタープラチナが、凄まじい打撃を一部壊れた歯を攻撃し、さらに他の歯を攻撃して破壊し始めた。
「いっそ、全部ぶっこ抜いてやるんだぜ。そーすりゃスッキリだ。分かったか?」
「あなたが一番、容赦ないです。」
「ふんっ。」
そして一行は、歯を破壊したハイプリエステスの口から脱出したのだった。
浜辺に上陸すると、倒れている女を見つけた。
アレがミドラーらしい。
ポルナレフが美人かブスか見てくるっと言って、近づいた。が…、歯が全部折れていて見れた物じゃないとすぐ戻って来たのだった。
「よーやく、エジプトか…。」
「DIO…。」
「長い旅だった…。」
「……?」
「花梨ちゃん? どうかした?」
「なんでも…ないです。ちょっと立ちくらみが。」
花梨は、腕で濡れた額を拭った。
「だいじょうぶかい?」
「はい。」
「辛いなら、僕が…支えるよ。」
「…はい。」
花京院と花梨は、手を繋いだ。
その後、浜辺の近くの村に行ったが。
その夜、花梨は白い炎の鳥が連れてきたハイプリエステスを見て…、ああ…っと、切なく声を漏らしたのだった。
アヴドゥルの出番がイマイチなので、次回辺りで、7人目のスタンド使いを交えてちょっと活躍させたい。
7人目のスタンド使いをプレイした方なら、分かると思いますが…、エジプト初上陸時に立ち寄った村には、7人目のスタンド使いオリジナルキャラがおります。
しかも、炎関係なので、いいかなぁって思ってる。
ミドラーは、ジョースター一行の始末に失敗したため、処刑されました。