東方花梨 IN 3部(パラレルワールド)   作:蜜柑ブタ

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イギー登場。


ミナミの時は、ミナミに媚びたイギーだったが、花梨には……?


愚か者の暗示は、賢く誇り高い犬

 

 敵の襲撃で漁村から逃げるように砂漠へと出発した一行。

 氷点下に及ぶ夜の砂漠はやがて太陽が上がり、灼熱の砂を晒す。

 砂漠と言えば、まずイメージに浮かぶのが、エジプトかもしれない。それだけ砂漠という地形が定着している。スフィンクスや、ピラミッドなどの、古代の文明の強大さを表わすようなすごい建造物が砂漠にあるという圧巻な景色がそうさせるのだろうか。

「スフィンクスって、元々は、砂に埋もれていて、それを掘り起こす作業を繰り返していたそうですが、完全に掘り起こしたせいで砂風で顔が風化しつつあるとは聞いたことがあります。」

「観光地の名所として利用するのはいいが、そのせいで古代文明の遺産が失われるのは痛いことだね。」

「かつて、日本の侍達がスフィンクスの前に来たことがあるという歴史もあるほどですし…。」

「ほう! ソイツは初耳じゃな。ジャパニーズ・サムライが、エジプトに!」

「ひとりスフィンクスに登ろうとして、転がり落ちた瞬間の写真が集合写真として残っているのが見つかったんです。」

「ダハハハ! そいつは、間抜けじゃのー!」

「ジジイも同じ事やりそうだがな。」

「わしゃ、落ちんわ!」

「登らないって選択肢はねーのかよ。ジョースターさんなら、やっちまいそうだぜ。」

「同感だ。」

「ポルナレフ! アヴドゥルー!」

「それにしても随分と詳しいね。そういうの好きなの?」

「はい。日本と海外の交流の歴史が好きなんです。」

「へー、歴史文学が好きなんだ。」

「面白いのが、日本から伝わった英語って言うのもあるってことですね。」

「例えば?」

「ShogunとかTycoonなどですね。あれって、Shogunは、Generalとも言うけど、そのままの意味で日本の幕府を治めていた将軍を意味するみたいです。どっちを使っても伝わるみたいですし、Tycoonは、経済的な大物、実力者を意味しますが、元は日本語で、日本国大君(にほんこくたいくん)…、略して大君、もしくは征夷大将軍の外交称号のことを指していて、朝鮮とのやりとりで利用され、その後ドイツ語のTycoon(タイクーン)の語源になったとされています。」

「へー! Shogunと、Tycoonって日本語なのかー!」

 意外だ意外っと、ポルナレフが驚いていた。

「ジジイも知らねーことだな。」

「し…知っておったわ!」

 意地になるジョセフであるが、本当は知らないのであった。

 やがて車は、砂漠のある地点に到着する。

 すると空からヘリコプターが降りてきた。

「あのマーク…、SPW財団ですね。」

「そうじゃ。助っ人を連れて来てもらったんじゃよ。」

「助っ人?」

「じょ、ジョースターさん! アイツは、助っ人にはなりませんよ!」

「知ってるのか、アヴドゥル?」

「ああ…、よーくな。スタンド、『愚者(ザ・フール)』の使い手だ。」

「ザ・フール? へへへ、間抜けそうな名前。」

「ポルナレフ、おまえじゃ勝てん。」

「なんだとー?」

「おい、ヘリコプターの扉が開くぜ。」

 そして着陸したヘリコプターの扉が開かれた。

 二人のSPW財団の制服を纏った男が出てきた。

「どっちだ? どっちが助っ人だ?」

「いいえ、我々は、助っ人の方をお連れしに来た使いの者です。助っ人の方は、後ろの席に…。」

「ん? 誰も乗ってねーけど?」

「あっ! 近づかないでください! ヘリが揺れてご機嫌斜めなんです!」

「ポルナレフ、お前では勝てん。」

「お…? お、おお、おおおおおおおおおお!?」

 

「ワンワンワンワンワンワンワンワン!!」

 

「犬ーーー!?」

 小型の犬がポルナレフの顔に飛びかかってきた。

「ボステリアン…ですか。」

「君は淡々としてるね…。」

「ポルナレフの髪をむしってやがるぜ。」

「あっ、そうだ。コイツは人の髪をむしるとき…、顔に屁を…。」

 

 プッ

 モワ~ン

 

「このどちくしょうが!! 懲らしめてやる!!」

 キレたポルナレフが、シルバー・チャリオッツを出した。

「!」

 すると、ボステリアンが反応し、後ろの砂から自らのスタンドを出した。

 まるでネイティヴアメリカンの仮面のような顔に、後ろ足がタイヤの奇妙なスタンドだった。

 スタンド、ザ・フールは、砂のようになると、シルバー・チャリオッツの針剣を包み込み、そのまま固めて固定した。

「なっ! 砂が固まって…、動かねぇ! ひ、ひぃ! た、助けてくれー!」

 動けなくなったポルナレフの頭を再びむしりだすボステリアン。

「ほれ、コレが目の入らないか?」

「! ワンワン!!」

「それは?」

「コーヒーガムだ。コイツはコレが…。」

「アヴドゥル! 箱を見せるな!」

「あっ!」

 っという間に、ボステリアンはアヴドゥルの手から箱の方を奪い取ってクチャクチャと食べ始めた。

「こいつの名前は、イギー。どこかの血統書付きの飼い犬だったらしいが、野良犬の帝王として君臨していたところを、わしとアヴドゥルが捕えたのじゃ。見ての通り、人に懐かん、媚びん奴じゃ。」

「なんて奴だ…、シンプルな奴ほど強いとはこのことか。俺でも倒せるかどうか分からないぜ。」

「紙ぐらい取って食え! ちくしょー! 俺の髪が…。」

「花梨ちゃんは、どう思う? 花梨…ちゃん?」

「……。」

「……ワン…? ヒッ!」

 ジーッとイギーを見ていた花梨に気づいたイギーがビクーンっと震え上がり、距離を取って威嚇体制になった。

「やっぱり…。」

「なにかしたかい?」

「いいえ。私…、動物から嫌われるんです。」

「あのイギーが……。あそこまで恐怖に震えるとは…。」

「この中で一番やべぇ奴が誰なのか動物の勘が警告をするんだろうぜ。」

「承太郎、そんな言い方は…。」

「いいんです。」

「でも…。」

「たぶん…、そういう運命ですから。」

 花京院が花梨を見ると、花京院を見た花梨は、どこか切なそうに微かに微笑んだのだった。

 

 

 その後、ヘリコプターに積んでいた水と食料などを車に積んでもらった。

 するとジョセフが聞いた。

 ホリィの容体はどうかと。

「……言いにくいですが…、我々にSPW財団の医師団の診断では…、もって、あと、2週間…です。」

「2週間…。」

「それと、カイロ市内にいる、DIOと思われる人物を密かに調べていましたが、報告によりますと…、2日前に9人の男女がDIOが潜伏していると思われる建物に集まって、そしていずこかに旅立っていったとのことです。」

「9人の男女!?」

「何者かは分かりません。それ以上の追跡はスタンド使いではない我々には不可能のことです。遠くから写真を撮ることさえ危険です!」

「新手のスタンド使いか!」

「ちょっと待ってください。タロットカードの暗示は、逃げ去った皇帝の暗示のホル・ホースを除けば、残すは、『世界(ザ・ワールド)』のみです。このザ・ワールドがDIOのスタンドかと思いましたが…、アヴドゥルさん?」

「わ、分からん…。9人だと?」

「……もしかしたら、量産したとか…?」

「えっ?」

 思わぬ言葉が花梨の口から出たので全員の視線が集まる。

「私もあくまで聞いた話です。スタンド使いを人工的に生み出す手段があると。ただし、非常に危険で、素質がなければ死にます。」

「その方法とは!?」

「矢です。」

「や?」

「太古の時代に作られたとされる、ルーツ不明の矢です。それに射貫かれたり、傷をつけられると、スタンドを身につけるか…、死にます…。聞くところによりますと、犯罪者が覚醒しやすい傾向があると。」

「つ、つまり、なにか!? DIOってやつにはスタンド使いを量産する手段があるってことか!」

「私自身、矢を見たことも、もちろん矢で射られてスタンド使いが生まれたのも見たことがありません。すべては、聞いた話です。それに、覚醒したとしてもそれを扱えるかどうかは、やはり本人次第ですから…、場合によっては自分のスタンドに殺された方もいらっしゃったみたいです。」

「それは、そうなった幽霊から聞いたのか?」

「はい。」

「なんて…ことじゃ! そんな手段が敵側にあるとなると…、これから先、どれほどのスタンド使いが…。」

「……余計なこと…言ってしまいました。」

「いや…、むしろそんな手段があることを教えてもらえたんだから、用心することが出来るんだよ。」

 またうっかりしたかと、落ち込む花梨に、花京院が落ち着かせようと肩に手を置いたのだった。

「そういや、花梨。お前が使う死んだ奴のスタンドも、アヴドゥルが知らねーのばっかみたいだが…、そいつらも元は矢を使って覚醒したって口だったのか?」

「分かりません。鳥は、スタンドを連れてきて、花がそれを取り込んで使い方を学ぶだけで、ルーツとなる魂に辿り着けることは少ないんです。」

「そうか…。」

「……?」

「どうした?」

「……今、誰か、私を呼びました?」

「いや?」

 花梨がキョロキョロと周りを見回した。

「聞こえる…。」

「どうしたんだい?」

「あっち…から…、呼ぶ声が聞こえる気がする。」

「んん? その方角って…。」

「カイロ?」

「えっ?」

 言われて方角を指差していた花梨は驚いた。

「なんか聞こえるのか?」

「……喰え…。」

「?」

「数多の罪人の魂を喰らいて、蓄えろ、その時が…、っ…。」

「花梨ちゃん!」

「だいじょうぶ、です…。なんか立ちくらみが。」

「この気温じゃ。熱中症を起こしかけておるのかもしれん。ほれ、冷たい水じゃ。」

「ありがとう…ございます。」

 冷たい水と氷をもらい、花梨は一息吐いたのだった。

 

 

 不穏な…先の見えない旅路に大きな不安を覚えながらも、一行はエジプトのカイロを目指して旅立つことになる。

 イギーは、花梨にビクビクとしながらも渋々といった様子で車に乗ったのだった。

 

 

 

 




イギー、花梨が一番ヤバいと感じて怯えてしまう。
花梨は、自分が動物に嫌われていると知っている。なお本人は、動物好きです。


そして、花梨の身に起こり始める異変とは……?


あと、花梨のトリビアは、筆者がテレビなどで得た情報と、Wikipedia参考にしました。


次回が、ゲブ神かな。

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