でも、あんまりイギーは活躍してないかも……?
イギーと花梨の共闘です。
イギーは、状況を飲み込み理解するのに必死だった。
下水道の一角。
遠くからキュオーンっという鳥の鳴き声と共に、羽ばたく音が聞こえる。
イギーは、今花梨といる。正確には下水道の壁に擬態させたザ・フールで花梨と自分を隠していた。
『ちくしょーー! あの鳥野郎! 諦める気ゼロだぜ! 殺戮マシーンなんてもんじゃねーぜ!』
「…ぅ…う…。」
『おい、花梨! 俺の言葉が分かるんだろ!? しっかりしやがれ! こんなところでくたばられたら、俺が花京院にぶっ飛ばされ…いや、殺される!』
「ごめ…ん、ね…。」
コホッ…と咳と共に血を吐いた花梨が弱々しい声で謝罪する。花梨の腹部の横には、氷のツララが刺さっていた。
時は少し遡るが、ジョースター一行が聞き込みをしている間、イギーは単独行動をしていた。
その時、ある屋敷の前を通りがかったのだが、ガラの悪い犬二匹に絡まれたものの、イギーはひと睨みで降伏させた。
そこまでは別によかったことだ。イギーはニューヨークの街で野良犬の王として君臨していたのだから。
しかし、問題はその後だ。
二匹の犬が館の門の隙間に入ろうとしたが、何かの攻撃を受けて大量出血した後、門の隙間に引きずり込まれた。
そして門の向こうから飛んできたのは、1羽のハヤブサだった。だがただハヤブサではなかった。鎧やマントを思わせる布を纏っていて、いかにも奇妙だった。
すると、一台の車が走ってきて乗っていた運転手が手にしていたのは、ジョセフが念写したDIOの館の写真だった。
奇妙なハヤブサが飛んできて氷の塊を生成すると、運転手ごと車を潰してしまった。さらにトドメとばかりに写真を鋭い爪の足でバラバラに切り刻んでいた。
そして標的をイギーへと向けてきたので、イギーはヤバいと感じて馬鹿犬のフリをして難を逃れようとした。
ハヤブサは、この犬は別に敵じゃないと判断したのか、門の向こうへ飛んでいった。
イギーは、ホッとし早々に立ち去ろうとすると、どうやら先ほどの犬たちの飼い主らしき少年がやってきた。
イギーに自分の犬たちを知らないかと尋ねてきたがイギーは犬だ。喋れるはずもない。
だが少年は、門の所に流れる血の海に飼い犬の首輪を見つけてしまった。そして門に近づいた。
イギーは焦るが弱肉強食だ、自分は関係ないと立ち去ったが……。
少年が門の向こうでハヤブサに喰われている飼い犬たちを見つけて悲鳴を上げ、ハヤブサに襲われそうになった時、戻って来てハヤブサを攻撃した。
そして少年は泣きながら逃げていき、イギーは、ハヤブサと不本意だが対立することとなった。
ハヤブサは、氷のスタンド使いらしく、地面に氷を走らせ、足を封じてから氷のミサイルのようなツララを放ってきた。
イギーは、足の裏が破れるのも構わず咄嗟に逃げた。下水道に。
しかし、ハヤブサはどうやってか、下水道に侵入してきてイギーを追撃してきた。
その時、花梨が現れ、イギーを庇ったのだ。
そして…、今に至る。
『謝る暇があるなら、さっさと…。』
その時、ザ・フールで作っていた擬態の壁が氷のミサイルで貫かれ、頭上スレスレで攻撃が当たらず、背後の水道管が貫かれて破裂した。
『しまった! 見つかっちまった!』
「イギー…。」
『うお!? 花梨!?』
花梨に掴まれて横へ投げられたイギー。
「ホワイト・アルバム! 『ジェントリー・ウィープス』…!!」
イギーを投げた直後、ザ・フールの壁を破ってきた、奇妙な衣装を纏ったハヤブサが氷のミサイルを放つ。
それを大気を凍らせ凍った空気の壁を作り上げた花梨のスタンドにより、ミサイルは凍った空気に当たって砕けた。
「イギー…、逃げて…。」
『て、てめぇ…!』
「この技は…、パワーを消費するから長くはもたない…。だから、逃げて…、ジョースターさん達のところまで。」
『ちくしょう…、ちくしょう!!』
イギーは、背を向けて下水道の向こうへと走っていった。
花梨は、それを気配で感じてホッとし、力尽きるように目を閉じようとした。そしてトドメだとばかりに、ハヤブサが氷のミサイルを放とうと構えて、放った。
しかし、それは、当たること無く、突如現れたザ・フールの前足により弾き飛ばされた。
『!』
ハヤブサが目を見開く。
「イギー…?」
『いいか! 俺は、てめぇを助けるんじゃねぇ! これは、俺のプライドの問題だからな、勘違いするなよ!?』
「……あなたは、すごい…。」
『へんっ! あったりまえだぜ!』
『キュオオーーン!』
『とっとと傷を治して援護しな!』
「うん…。」
ハヤブサは、氷のミサイルを放つ。それをイギーがザ・フールで防ぐ。
花梨は、その間に下水道に流れ着いたであろうゴミを拾い、ゴールド・エクスペリエンスで傷口を癒した。
痛みが残る治療ではあるが、耐えて、起き上がる。
『キュオーン!』
「イギー…、砂で防御を。」
『ナニする気だ?』
「これだけ水があれば……。知ってる? 雲って、水蒸気なんだよ?」
『ああ? ……分かったぜ。』
『キュオーーーーーーン!』
下水道内をすべて凍らせんばかりの冷気を放つハヤブサ。
「マジシャンズ・レッド!」
その冷気を熱気で相殺する。するとブシューーっと水蒸気が舞い上がる。
「知ってる? 雷はね……、近いところに…落ちるんだよ。」
『! キュ…。』
「『ウェザー・リポート』!!」
下水道内にゴロゴロと音を鳴らす雲が発生し、ハヤブサが異変に気づいた時には、ゴロゴロドーン!っと雷がハヤブサに落ちた。
ブスブスと焦げ、煙を吐き出しながら、ハヤブサが下水の床に落ちた。
『や、やったぜ!』
「……。」
『花梨! おい!』
「ごめんね…。なんか…分からないけど…、心が、消えていくような…気がする…。少し、休ませて…。」
花梨は横に倒れ、そのまま眠った。
『おいおい、こんなクッセーところで寝るか? ったく…、運べねぇぞ? ……えっ?』
イギーがハッと気づいた時には、氷のミサイルがイギーと花梨の間に刺さった。
『こ、この野郎! ま、まだ…!?』
『キュオ…ォ…。』
ハヤブサがフラフラと起き上がる。その背後にスタンド、ホルス神を浮かべて。
『う、うおおおおお! 氷が走る! しまった足が! 俺のスタンドまで! 花梨!』
しかし、花梨は起きない。
ハヤブサが残る力を振り絞っているのか、無数の氷の弾丸を生成する。
『キュオーーーーーーン!』
せめて貴様だけでも、死ネ!っと言わんばかりに氷が放たれた。
イギーの眼前に迫った氷は、何かの手が止めた。
『……? 花梨か?』
花梨の背から燃え上がる白い炎から伸びるスタンドの手が氷を防いだのだ。
ハヤブサは、忌々しそうに睨んでくる。そして再度氷のミサイルを生成する。
すると白い炎が形を変え始める。
それは、まるでケンタウロスのような形状だった。
『キュ…ォ…。』
『?』
『……キュオ…ン…。』
ハヤブサは、そのスタンドを見て、目を大きく見開き、やがてナニかを諦めたかのように、まるで悟ったかのように目を瞑り、生成した氷のミサイルの矛先を、なんと自らに向けた。
『なにを!?』
イギーが驚愕していると、ハヤブサは、氷のミサイルで自分自身を貫き、潰して絶命した。
『な…なんでだ…? コイツどうして…?』
イギーが信じられないと震える。
すると白い炎が触手のように蠢き、潰れたハヤブサの方へ移動すると、そこから抜き取るように、ホルス神とハヤブサの魂を浮かべ、そのまま自らに溶かすように取り込んだ。取り込み終えると白い炎は消えた。
「……。」
『花梨? おい、花梨!?』
ユラリと起き上がった花梨だったが、その目と表情には、『心』が無いみたいだった。
座り込んだ状態で、花梨はブツブツとナニかを呟く。
「天国の……時は……。」
焦るイギーを余所に、立ち上がった花梨は、フラリフラリっと危ない足取りで下水道の奥へと向かって行く。
『待てよ! ちくしょう! どうなっちまったんだ!? 追うか? いや…、アイツらに…。』
イギーは、出口を目指して走った。
イギーがジョースター一行の元へ行き、そして花梨のいるところへ匂いを辿って行くと、門が開かれているDIOの館の中へと花梨が入って行く姿があった。
「花梨!」
走る一行が名を呼ぶが、花梨はそのまま館の奥へと行ってしまった。
『ちくしょうちくしょーー! いったいどうなってやがるんだ!? 最初に花梨に会った時から感じていたアレが…、何かが…、この旅でどんどんデッカくなって…、とうとう? どうなっちまうんだ!? どうなるんだ!? 天国ってなんだよ!?』
イギーは、ジョースター一行には分からない犬語で悪態を吐いた。
「待てよ…、この館は…、それにあの潰れた車は…!」
「もう分かった! イギー、ここがそうなんだな?」
「DIOの…館…。」
一行はついに、最大の目的であったDIOの本拠地に来たのだ。
焦った花京院が開かれている扉に入ろうとしたので、ジョセフが肩を掴んで止めた。
「焦るな!」
「ですが…。」
「気持ちは分かる! 花梨がなぜ…、この館に吸い込まれるように入って行ったのかは分からん! だが何かがおかしいことは少し前からあった!」
「…偶然なのか?」
「承太郎?」
「花梨が、俺達と旅をしていたのは、本当に偶然の成り行きだったのか?」
「なにを言ってるんだ?」
「どういうことだよ? まさか、花梨が実はDIOの仲間でした~、なんてありもしないオチをつけてぇのか!?」
「違うな…。花梨は知らなかったんだぜ。たぶんな…。」
「知らなかった?」
「俺も分からない。だが……今の花梨をそうさせたのは……、おそらくは、俺達のせいだ。」
「僕らが?」
「『白き炎に、罪人の魂をくべる』。ンドゥールという男がそう言っていた。白い炎ってのが、花梨のスタンドのことだとしたら、DIOは、わざと俺達に刺客を寄越して、そして死んだ魂を花梨のスタンドに喰わせていたんだとしたら? そして、俺達はそれを知らずに向かってくる敵を倒してきた……。結果、花梨はDIOの目論見通りに完全に無意識で敵の魂と、スタンドを食い続けて……。」
「だとしても…、なぜDIOは、花梨ちゃんにそんなことを? 理由がまったく分からない!」
「それは、本人に聞くしかねーな。」
「行くんだな?」
「もう時間がねー。お袋を助けるにしても、花梨をなんとかするにしても、行くしかねーんだ。」
「……よし。行くぞ!!」
一行は、花梨が消えた扉の向こうへ向かった。
花梨の異変がピークに!?
ここからは、もうオリジナル展開オンリーかも。
よっしゃあ! ラストまであと少しだ!