イギーの死因が原作とは違います。
注意!!
これは、夢?
それとも……。
花梨は、知らない建物の中の床で倒れていた。
うつ伏せで、うまく動かない体でなんとか首だけ動かして見上げると、そこには探していたあのケンタウロスのようなスタンドがいた。
薄ぼんやりとしているが、そのスタンドはそこに立っている。
あなたを探してた…。そう言いたいが言葉が出ない。
すると、コツリッと固い靴音が聞こえたので、そちらを見ると、金色に近い黄色の靴とズボンが見えた。見上げたくても首が動かない。
「……あと二人ほどで完璧と言ったところか。」
ぼんやりした頭ではすべての言葉を聞き取れない。
途切れ途切れだが聞こえたのは……。
「………ス。お前に最後の任を与える。」
「……の言葉を。お前に刻む。」
「…そして、死ね。奴らを殺す殺さないは自由だが。」
「…レンス…と、お前の死で…。」
「我が『天国』は、完成する。」
なんのことを言っているんだろう?
花梨はぼんやりとしたまま、やがて眠気が来て、そのまま眠ってしまった。
どれくらい眠っていただろう?
花梨は目を覚ました。
重たい体を起こして周りを見回す。そこは、まるで迷路だった。
「どこ…?」
自分は確かイギーと一緒に、あのハヤブサと戦って…、それからどうした?
そこからの記憶が途切れている。なぜ自分がひとりでこんなところにいるのかさえ分からない。
とにかくこのまま座り込んでいても仕方が無いので、花梨はふらつきそうになりながら立ち上がった。
その時だった。
フワ~っと、霊魂が飛んできた。その先頭に自分のスタンドの白い炎の鳥がいる。
そして、蜃気楼が消え去るように迷路の景色が消え、古い作りの建物の内部が露わになった。
「あなたが、迷路を作ってた?」
自分の元へ運ばれてきた霊魂に尋ねる。
霊魂は震えながら花梨にしか聞こえない声で、DIOの命令で屋敷の中にスタンドの力で迷路を作っていたことを語る。
「DIOの…館? ここが?」
なぜ自分がたったひとりでそんなところに?
もしかして…っと、花梨は思い当たる。
あの黄色い靴とズボンの男の足は、DIOだったんじゃないかと。
そういえば、ジョースターの血筋は、同じ血筋の気配を感じることが出来たはず…。あの足がDIOだと思えたのは、その血筋センサーなのだろうか?
そういえば、なんとなくこの館にイヤな気配がたちこめている。ドス黒い…気配が。
そう考えると花梨はブルッと体が震え、自分の体を抱きしめた。
「アヴドゥルーーー!!」
「……えっ?」
通路の向こう側にある階段の下からだろうか、ポルナレフの悲鳴じみた絶叫が聞こえた。
『花梨…。無事だったか…。』
「あ……。」
フワリッと現れた霊魂の姿に、花梨は震えた。
『急いでくれるか? ポルナレフと、イギーを…頼む。』
「!」
花梨は、唇を噛み、立ち上がるが、力が上手く入らなくてこけた。
「く…!」
「! 花梨!」
階段を登ってきたポルナレフとイギーがこちらに気づいた。
「無事だったか!」
「ワンワンワン!」
「アヴドゥルさんが…。」
「っ……、それより、立てるか!? 敵が来る! とんでもねー奴だ!」
「はい!」
ポルナレフの手を借りて立ち上がった花梨。
『気をつけろ! 来るぞ!』
「ハッ!」
「うお!?」
アヴドゥルの霊の声でハッとした花梨は、ポルナレフを掴んで引っ張った。直後、ポルナレフがいた床に穴が空いた。
『…外したか。』
空間が歪み、球体型にまとまっているスタンドが姿を現わす。
その口からひとりの男が顔を覗かせた。
「奴だ! 奴が、アヴドゥルを!」
「…その女以外は、このヴァニラ・アイスのクリームの暗黒空間で粉みじんにしてくれる。」
「…私?」
「どういうことだ!?」
「貴様らの知ることではない。すべては、DIO様のご意志だ。」
「どうして…?」
「死ね。」
ヴァニラ・アイスは答えず、スタンド、クリームの中に入ると、姿を消した。
「マズいぜ!」
「ワンワンワン!」
イギーがザ・フールの砂を舞わせ、クリームの形を象る。
凄まじい速度で砂を消し去りながら迫ってくるクリームを、ポルナレフはシルバー・チャリオッツの剣戟で迎え撃つが、フッとクリームの存在が消えて、天井に穴が空いた。
「天井に! クソーー、ちょこまかと移動しやがって!」
「ホワイト・アルバム! ジェントリー・ウィープス!」
凄まじい冷気が発射され、空気がビシビシバシバシと固まる音が鳴る。
『!?』
ポルナレフのすぐ傍で一瞬顔を出したクリームの顔が凍結する。
「今!」
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
凍って隙が出来たクリームとヴァニラ・アイスの頭部を、シルバー・チャリオッツの針剣が貫いた。
「取った!」
「ぐ…く…。」
「なに!? 頭を貫かれて…。」
「あなたは…、もう人間じゃ…。」
花梨は、察した。
ヴァニラ・アイスは、すでに人間では無いのだと。おそらくDIOにより吸血鬼かゾンビになっていると。
「おのれ…! 貴様らは…必ずこの私が仕留める! DIO様の求める『天国』のため! 何も知らぬテレンスが死に、そして私が死ぬ時に!」
「なにーー!?」
「DIO様のため、花梨以外は死ね!!」
クリームの手がシルバー・チャリオッツの空いている左手を掴み、自身に近づけた。すると見えぬ部分に触れたシルバー・チャリオッツの左手の一部が砕けて消えた。
「うおおおおおおお!?」
ダメージフィードバックで、ポルナレフの左手が同じように欠けた。
「アオーーーン!」
ザ・フールが巨大化し、砂の塊となってヴァニラ・アイスに突撃した。
すると、ヴァニラ・アイスを入れているクリームが壁へと叩き付けられ、刺さっていた剣が抜けた。
「クレイジー・ダイヤモンド!」
「すまねぇ!」
花梨がすぐに治療した。
ガラガラと崩れていく壁。瓦礫の下からヴァニラ・アイスがクリームと共に這い出てきた。
「DIO様は…、言われていなかった…。花梨という女の…手足をもいではダメだとは…。」
「!」
「命だけは奪わぬ! だが、その手足は奪わせて貰うぞ!」
クリームの中へ入ったヴァニラ・アイスが姿を消した。
「マズいぜ! 花梨、逃げ…。」
「下!」
「えっ? しま…っ。」
二人の間の床からクリームが顔を出し、花梨の右足の先を消し去った。
「ああ!」
「花梨!」
「女…、お前はそこで大人しくしていろ。」
床から現れたクリームの手が花梨を突き飛ばしてポルナレフとイギーから離した。
「花梨! てめぇ!!」
「これで傷は癒やせない。今度こそ殺す。」
クリームが消えた。
その時、花梨は急な吐き気を感じ、耐えきれず床にナニかを吐き出した。
それは、赤黒い泥の塊だった。
「なっ!? そ、ソレは…。花梨…おまえ…。」
「ワンワンワンワンワンワン!」
咳き込む花梨の傍らで吐き出された泥の塊がたちまち膨れ上がり、奇怪な形を作り上げる。
そして、触手を伸ばして姿を消しているクリームに絡みついた。
『ぐ、ぐああああああああ!?』
たちまち姿を現わしたクリームから、ヴァニラ・アイスが転がり出た。
「こ、れは…なんだ? この苦痛…は…?」
「隙ありだ!」
「アオーン!」
ダメだとばかりにイギーが鳴いた。
その瞬間、赤黒い泥の怪物がポルナレフに襲いかかろうとした。
「なっ…。」
「アオーーーーーン!」
「イギー!?」
ザ・フールがポルナレフを突き飛ばし、ザ・フールがイギーもろとも、泥に飲まれた。
「イギーーーー!!」
「あ、ああ……。私は…、イヤだ…こんなの…。」
それを見ていた花梨はガタガタと震えながら口を押さえた。口を押さえた端からボタボタと黒い泥のようなモノが漏れてこぼれ落ちる。
「この女は…危険だ!! DIO様にとって!! ならば!!」
フラフラと立ち上がったヴァニラ・アイスがクリームを出し、花梨を殺そうと腕を振り上げさせた。
その腕が花梨の頭部を捉えようとした直後、ヴァニラ・アイスの腹部と胸に大きな穴が空いた。
赤黒い巨大な棘が彼の体を貫きそのまま持ち上げた。
「ガッハ…! ち、違う…これは…コレは…! DIO様がお求めになられている…モノ…じゃ……。」
血を大量に吐いたヴァニラ・アイスの体を、クリームごと喰おうとした。
その瞬間だろうか、その口らしき部位の奥からザ・フールが飛び出し、赤黒い泥を内部から破壊した。
「ザ・フール! イギー、生きて…。」
グズグズと崩れていく泥から、泥まみれのザ・フールとイギーが出てきて、棘に刺されていたヴァニラ・アイスの体が床に落ちた。
イギーは、ゼーゼーハーハーと荒い呼吸をしていたが、急に倒れ込んだ。そしてザ・フールも砂となって消えた。
「イギーー!」
ポルナレフが駆け寄り、イギーを抱き上げた。
「……イギー? おい? 嘘だろ…? なあ? 俺の髪の毛を毟ってみろよ。なあ、おい!」
抱き上げた瞬間に感じた鼓動のないイギーの体に、ポルナレフは焦り、泥を拭ってやりながら声をかけ続けた。
「イギーーーーーーーー!!」
ポルナレフは、大粒の涙を流して絶叫した。
「貴様を…、貴様だけでも…。DIO様には近づけさせ…な…。」
体に二つ大穴が空いているヴァニラ・アイスが立ち上がり、花梨を狙った。
「……ま…マジシャンズ・レッド!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!? なんだとーーー!?」
「燃え尽きてしまえ!!」
白い炎の花から発生したマジシャンズ・レッドの爆炎が、ヴァニラ・アイスを包み込み、やがて骨まで燃え尽きさせた。
ヴァニラ・アイスが死亡し、残されたのは、静寂だった。
「ごめんなさい…。ごめんなさい……。」
「花梨…お前…? まさか…今まで出てきたあの泥みたいな化け物達は…お前が?」
「私の…せいだ……。ゴホッ…。」
ボロボロと泣く花梨は口を押さえ、咳き込んだ。すると、ボタッと手の隙間から泥が落ちた。
「花梨!」
「………殺して…。」
「!?」
「体が……、もう…。」
花梨の背中から燃え上がる白い炎がやがて、ケンタウロスのような形状へと変化していく。
すると花梨の脳内に、14の言葉が駆け巡った。
『らせん階段』
『カブト虫』
『廃墟の街』
『イチジクのタルト』
『カブト虫』
『ドロローサへの道』
『カブト虫』
『特異点』
『ジョット』
『天使(エンジェル)』
『紫陽花』
『カブト虫』
『特異点』
『秘密の皇帝』
「イヤだ……。ママ…パパ……、助けて…。」
花梨は、フラフラと立ち上がり、ヴァニラ・アイスが開けた館の壁から外へと転落した。
「花梨!」
ポルナレフは、イギーの遺体を抱えたまま穴へ身を乗り出したが、どこにも花梨の姿は無かった。
「ポルナレフ! 無事か!」
「ジョースターさん…!」
「アヴドゥルは? イギー…まさか…。」
「アヴドゥルもイギーも…けど…、イギーは…、あの泥で…。」
「なに?」
「花梨が…あの泥みたいなもんを吐き出して……。そこから落ちた…。」
「花梨ちゃん!」
花京院が穴から下を見ると、どこを見ても花梨はないなかった。
「ふふふ…。ご苦労だった。」
「てめぇは…。」
「DIOか!?」
「花梨ちゃん!」
見ると、通路の奥の階段の上に、花梨を小脇に抱えたDIOが立っていた。
「思わぬ収穫だった…。まさかこのような形で近道が出来るとはな。礼を言うぞ。」
「なにが目的なんじゃ!!」
「ふふふ…、それを知りたければ…、私を追って来い。もう間もなくだろうが。」
「なにを…。」
「来るがいい。」
そして、DIOが花梨を抱えたままフッと姿を消した。
「どこへ!?」
「いかん! 実にマズい! 奴の時間が来る!」
時間はすでに、日が落ち、夜の時間へと変わっていた。
「なんだ?」
「どうした?」
「時計が…、早くなっておる?」
時計を見ていたジョセフの声で時計を見ると、時計の針が奇妙なほど早く動いていた。
「なにかマズい!! 早く追うぞ!」
「しかし、どこに!?」
「わしら、ジョースターの血筋がDIOの位置が分かるように、向こうもわしらの位置が分かる! それで追うぞ!」
一行は、DIO、そしてDIOに攫われた花梨を追って、館から飛び出した。
イギーの死因は、泥に飲まれた事による浸食死…かな?
アヴドゥルは原作通り。テレンス戦も原作通りです。
なお、テレンスは、自分が死ぬようにされていたことを知りませんでした。
あと、DIOの方も、花梨の身に起こっている異変の全てを知ってはいません。つまり、泥のことを知らない。
さー、もうすぐラストバトルだ! 頑張るぞー。