東方花梨 IN 3部(パラレルワールド)   作:蜜柑ブタ

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勢いづいたので一気に行こうかなって。



花梨の物語は、母・ミナミと違って悲しい物になります。


天獄へ

 

 

「気がついたか?」

 

 花梨は、目を覚ました。

 確か自分は館から落ちたはずだった。

 だが建物の屋根の塔を背に、座らされている自分の前にいるのは、あの黄色い…、いや、DIOだ。

 

「ここなら、満月が綺麗だろう?」

 そう言って顎をしゃくって満月の月を示す。

「……私は…。」

「お前は、いわばサナギだ。」

「さなぎ…?」

「お前は、この世界によく似た別の世界から来た者だ。」

「!」

「お前の世界にも、我が友がいたはずだ。彼が教えてくれたよ。お前が連れて来たのだ。我が友の魂を宿せし、天国への力(スタンド)を。」

「私が…?」

「お前は、アレを探して、旅に同行していたようだが、実はお前の中にずっといたのだ。つまり、お前は知らず知らずのうちに、私が求める天国への道を切り開いた。だが、足りなかったのだ。そのためのエネルギーが。だから、数多の罪人の魂を取り込ませる必要があった。」

「…だから……。」

「その通りだ。私がお前達に寄越したスタンド使い達の魂は美味かっただろう?」

「……酷い…。」

「ひどい? それはお前にも言えることでは無いのか? お前さえ現れなければ…、お前さえいなければ…、死なずに済んだ魂も数多あっただろうに。」

「っ…。」

「まあ、こうして会話をしてやっているのも、冥土の土産という物だ。お前は、もうすぐ羽化と共に死ぬ。……ほぉら、来たぞ。無駄なあがきをしている者達が。」

「…花京院…さ、ん…。」

 DIOが見た方向を見ると、建物の下の方に、車で駆けつけたらしい花京院達の姿があった。

「DIO! 花梨を返せ!!」

「ちょうど良い、お前達が最初の生け贄としてやろう。」

「なに!?」

「花梨ちゃん!」

「うぅ…。」

「時は来た。さあ…、出ておいで。我が『天国(メイド・イン・ヘブン)』よ。」

「ぅ…あああああああああああ!!」

 花梨の左側の体から、バキメキとケンタウロスのようなスタンドが羽化するように出てきた。

「DIOおおおおおおおおおおおおお!!」

「ふんっ。」

 ハイエロファントグリーンのエメラルド・スプラッシュが放たれたが、それをDIOは、指先ひとつで弾き、玉突きのようにすべての破壊のビジョンを防いだ。

 ふと気づくと、スタープラチナを使って建物を登ってきた承太郎が横まで来ていた。そしてスタープラチナを被せた腕を振りかぶる。

「メイド・イン・ヘブン!」

「!?」

 ブンッとDIOが消えて、攻撃が当たらなかった。

「『加速した時』の中では、貴様の攻撃がどれほどのスピードであろうとも無意味…。」

「加速だと…?」

「お前達がどう足掻こうとも、我が天国の時は来ているのだ。お前達は天国へ足を踏ません。ここで死ぬが……、?」

「?」

 DIOの様子が変わったので、承太郎は訝しみつつ、チラッと後ろにいる花梨の方を見た。

 そこには、花梨から羽化しようとしていたメイド・イン・ヘブンの関節という関節からドロドロと赤黒い泥があふれ出している光景があった。

「なん…だと…? これは…。」

「オラァ!!」

「チィっ!」

 隙ありっとばかりに承太郎がDIOに攻撃をしたが、DIOは、自らのスタンド、ザ・ワールドを出して防いだ。

「エメラルド・スプラッシュ!!」

「ハーミットパープルand波紋!」

「シルバー・チャリオッツ!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 それぞれの攻撃をすべていなすが、DIOは内心では状況が飲み込めていなかった。

 メイド・イン・ヘブン。

 それは、DIOにとっては、彼が求める天国へ導くスタンドだ。

 だが、今はどうだ?

 羽化しようとしていたメイド・イン・ヘブンは、関節から赤黒い泥を出しながら崩れていく。

 そして、とうとう形を保てなくなったメイド・イン・ヘブンが、ズシャッとバラバラに崩れて泥の中に沈んだ。

 膝立ちになった花梨の顔…、液体が出る部位、目、鼻、口、耳から赤黒い泥が吐き出されていく。

 それは、広がり、建物を溶かして崩していった。

 崩れた建物から、DIOと、承太郎達が逃げる。

 花梨は、そのまま地面に降りていき、顔から泥を吐き出し続けていた。泥は広がり、まるで穴のように広がっていく。

 やがて泥が蠢いた。そして名状しがたい物体達と言うべきか? そんな物体が形作られていき、鳥肌ばかりが立つような奇怪な鳴き声を上げながら大軍となってカイロへと歩を進めだした。

「なんだこれは…、なんだコレはーーーー!?」

「おい!? てめぇが言う天国ってのはコレのことか!?」

「違う…、これは天国などでは…、地獄…? いや…“天獄”?」

 狼狽えるDIOに、承太郎が聞くと、DIOは首を振った。

「うわあああああああああ!」

 名状しがたい物体達がこちらに襲いかかってきた。

 DIOは、飛び上がって建物の屋根へ逃れ、承太郎達は名状しがたい物体達に取り囲まれた。

「くそおおおおおお!」

 ジリジリと間合いを詰めてくる名状しがたい物体を、シルバー・チャリオッツが針剣で貫き、切り裂く。

 名状しがたい物体達の体は、泥から生まれたからか脆く、すぐに崩れるが、泥の穴から次から次に現れるためまったくキリが無い。

「うが、ああああああああ!?」

 うっかり近づかれ触られると、そこから凄まじい苦痛が全身を襲う。それは、まるでこの世全ての罪や悪意のような、そんな苦痛だった。

 泥から作られる穴も広がっていく、まるでカイロを…世界を飲み込まんとしているかのように…。ジワジワとだが確実にゆっくりと広がっていく。

「こんな物が…、たかがひとりの女に? こんな物のために……。」

 DIOは、広がっていく泥を見おろしながら、DIOは、首を振った。

 完全なる計算違いだとDIOは、おそらく生きてきた中で最も後悔していた。

 その時、DIOの足を、名状しがたい物体が掴んだ。

「グオオオ!?」

 脳を駆け巡る凄まじい痛みと苦しみ。それは吸血鬼でも耐えがたいモノだった。

 DIOは、足を掴んだソレを蹴って潰し、頭を押さえてふらついた。

「これは…、悪意? この世の…すべての…? 馬鹿な…なぜあの女が…花梨にそんなモノが…?」

 すると、足場にしていた建物がぐらついた。泥が広がり、そこに建物が飲まれようとしていたのだ。

「どうしたら? どうしたらいい!? 落ち着け、考えるんじゃ…!!」

 ジョセフ達は、名状しがたい物体達から逃れるため、スタンドを使って高く飛び、建物の屋上から屋上へと移動していた。しかし、泥に街が飲まれつつあり、次々に建物が穴へと沈もうとしていた。

 見れば、花梨は変わらず穴の中央で泥を吐き続けている。

 これは…、どう考えても…。

「やれというのか? やるしかないのか!?」

「ジョースターさん!」

「花京院! お前の気持ちはよーく分かっている! じゃがのう…、この状況を見ろ! このままではどうなるか!」

「いえ…違います…。」

「花京院? …! お前…、その傷は!」

「すみません…。飛び上がるときに…やられました…。」

 花京院は、腹部の横を手で押さえていた。赤黒い血があふれ、彼の制服を大きく濡らす出血量。内臓までやられているのは分かった。

「……僕は…もう、ダメです…。」

「諦めるな。」

「承太郎……、ごめん。ポルナレフ、ジョースターさん…、後は…よろしくお願いします。」

「なにを!?」

「たぶん…、これが…僕の…運命だったんでしょう。僕も見ていたんです。彼女と同じ夢を…。僕が…『門』を閉じてきます。」

「花京院…。」

「何をする気じゃ!? まさか…。」

「ジジイ、行かせてやれ。」

「承太郎!」

「行け、花京院。」

「……ありがとう。」

 花京院は笑い、それから泥へ沈んでいく建物から建物へ移動していった。

 そして、泥の中央にいる花梨の傍へと降り立つ。

「花梨…。来たよ。」

「……。」

「…ごめんね。守ってあげられなかった。辛かったよね? 悲しかったよね? あんな辛い夢を見続けて…こんな結末は……イヤだよね?」

 花京院は、膝を折り、花梨の正面から抱きしめた。

「……これからは、ずっと一緒だよ。」

 そう言い目を瞑った花京院を、穴のように広がっていた泥が渦を巻きながら花梨ごと飲み込んだ。

「かきょういーーーーーん!!」

 ポルナレフとジョセフの悲鳴じみた絶叫が木霊した。

 承太郎は耐えるように拳を握り、唇を噛んだ。

 

 そして…、包み込まれ竜巻のように渦巻いていた黒い泥の内部から白い光りが漏れ、すべての泥を浄化するように白い炎が黒い泥を燃やし尽くした。

 

 

 

「……花京院…さん?」

 花梨は、目を開けた。

 自分を抱きしめる花京院の存在。

 しかし、花京院は答えない。

「花京院さん…?」

 その体に触れると、花京院の体がズルリッ横へ倒れてしまった。

「…あ……。」

 花梨はそうなってすべてを悟った。

 

 燃え上がる白い炎が教えてくる気がする。

 自分がこれまで無意識に取り込んできた罪人達が解放されていく気がする。

 そして……。

 あの天使と悪魔の絵が彫られた門の前に…花京院は…。その魂は……。

 

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 花梨は頭を抱えて天に向かって絶叫した。

 

 門の前にいる花京院の服装は、緑から白へと変わっており、振り返る。

 その顔は、まったく憎しみも恨みも無く、ただ晴れやかだった。

『これで…、君と永遠に一緒だよ。花梨ちゃん。』

 花京院は嬉しそうにそう言って笑った。

 門の前にあった赤黒くなっていた泥も、これまで倒してきたスタンド使い達の死体も消えていた。

 

 花京院という『人柱』を得て、門は閉まり、浄化されたのだ。

 

 

 

 




最後の方書いてて、花京院、若干のヤンデレ?って思ったりした。
ヤンデレの定義はちょっと分からないけども。
ここでの花京院は、花梨がいずれ元の世界に帰るならっという気持ちもあって、自分の最後も悟ったことが重なり人柱になることを選びました。

花京院(パラレルワールド)は、これで門の守り人(人柱)として花梨の傍に永遠にいることになります。
なお、花梨の住む元の世界での花京院には影響はありません。




次回辺りで、最後かな……、それとももうちょっと先か。
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