ネタ連載内で、花梨がスタンド『取り立て人マリリンマンソン』を使ってダービーと戦った回です。
6部でのマリリンマンソンの使い手のやり口を思い出しつつ、スタンドとしてのマリリンマンソンの能力の恐ろしさと。
それらを超えそうな花梨の怖さを書きたくなりまして。
ですが、ここで注意して欲しいのは。
・あくまでもこのネタは、二次創作。
・スタンド能力の解釈や展開については、ネタの筆者の独断と偏見がある。
・そのため原作の本来の設定と異なる可能性が高い。
上記のことと。
そして下記の『東方花梨』のスタンド設定があります。
このネタに登場する花梨が使うスタンド能力の各種は、死者から借りた(※ホワイトスネイクによってディスク化されたスタンドも含む)、あるいは長く接していつの間にかコピーして自分が持つスタンドで再現した物です。
そのため本来のスタンドより劣化や応用が利かないなどの問題があります。
また一度に使える能力は、1種類のみで、複数のスタンドを同時に使うことは不可能。
違う能力を使用したい場合は、先に使っていた能力を解除する必要がある。
生きているスタンド使いの能力は、30秒間しか使えず、再度使用するには1分45秒ほど時間をおかないといけない。
一部、発動条件が難しい、強力過ぎるスタンド能力が使用できない。(例:レクイエム、時間操作が可能なスタープラチナなど)
本来のスタンドの持ち主ではないため、そのスタンド能力の全てを理解して把握できているかどうかで言うと恐らくできていない。
他者のスタンド能力のコピーは完全に無意識で、スタンドが勝手にコピーをしている。
コピーするスタンドを選べない。
2022/04/18から翌日まで徹夜してしまうほど熱中して書きました。
読み返して、正直ダービーがかなり可哀想なことになっているかもしれないので、ご注意を!!
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
リメイク加筆版SS31 ギャンブラーvs取り立て人(※本当に怖いのは花梨だった案件?)
ジョセフが公衆電話から、SPW財団に連絡をした。
娘・ホリィの容体についてだ。
聞いたところ、あと、4、5日が限界だろうと……。
そして、一行は、列車を使いカイロへと向かった。
カイロに到着後、あちこち周りながら、あるカフェで尋ねた。
ジョセフが念写したDIOの館の一部を写している写真の建物について知らないかと。
すると店主は、ここはカフェだから何か注文してくれと言った。そしてアイスティーを全員分頼んだ。しかし写真を見た店主は、やっぱり知らないと言った。
わずか5日程度でだだ広いカイロからDIOを探し出さなければならないのだ。列車の旅からすぐに必死に尋ねて回っているがひとつも引っかからないのだ。焦りが積もる。
一行がアイスティーを飲み終え、移動しようとした時だった。
「その建物なら知っていますよ。」
っと言ったカフェの客がいた。
「えっ!? 本当かね!」
「ええ。」
その声を聞いた一行は急いで声がした方にいたテーブルでトランプを弄っているひとりの男の元へ行った。
その男の身なりや雰囲気、容姿などはエジプト人ではない。エジプト以外の異国人であることは間違いないが今はこの男がどこのお国の人間だとか言っている場合ではない。
「教えてくれ! どこなんじゃ!?」
「無料(ただ)で教えろと?」
「むっ? それは失礼した。10ポンド払おう。さ、教えてくれ。」
「私は賭事が好きでね。あなたは賭けは好きかな?」
目の前に出された札束を見ずに男はそう言ってのけた。
「何を言っておる? 20ポンド払う! わしらは急いでおるんじゃ!」
「私は賭事が好きでね。ま、賭事で生活費を稼いでいるのだが、くだらないスリルに目がなくってね。どうですか? ひとつ賭けをしませんか? そしたらタダでその館のことをお教えします。」
「何を言っておるんじゃ?」
「例えば…、この魚の燻製を…。」
すると男は、魚の燻製を二つカフェの外へ投げた。
「あそこにいる猫がどちらを取るか賭けませんか? 左か右か。」
「おい、ふざんけんなよ! 50ポンド払うから、とっとと言えよな!」
焦れたポルナレフが進み出て言った。
「もう一度言います。どちらをあそこの猫が取るか、賭けましょう。左か、右か。それだけですよ?」
「くっそ~! なら、俺が賭けるぜ! 右だ! 右を取るぜ!」
「グッド! なら私は左に賭けましょう。」
「おいおい…。」
「ところでよー…、お前が負けたら何を払ってくれるんだ? 100ポンドか?」
「金は要りません。魂…など、どうでしょうか?」
「はっ?」
思わぬ男の言葉にポカンとなる中、ひとり花梨だけがピクッと微かに反応して男の方を見た。
「魂ですよ。魂。負けた場合、魂で払う。」
「けっ、ふざけた野郎だぜ。いいぜ、やってやらぁ。」
「グッド!」
そうこうしていると、猫が魚の燻製を左から右へと取った。
「ああ!」
「フフフ…、見ましたね? 左から右へ。私の勝ちだ。」
「くっそ~!」
「おい、ポルナレフ! どうするんじゃ? これではこの建物のことを聞けんぞ?」
「さあ、約束でしたね。」
「へ?」
「魂で払っていただきましょう。先ほど言いましたよね? 魂で……払うと。」
「はっ? お前なに言っ…?」
「魂ですよ! 私は、魂を奪うスタンド使いだ! 賭けというのは、人間の魂を肉体から出やすくする! そこから奪い取るのが、私のスタンド能力!」
「!?」
「ポルナレフさん!」
「なにーーーー!?」
次の瞬間、出てきたスタンドがポルナレフの魂を引っ張り出していた。
「貴様!」
「おっと、私を殺そうなどとしないことだ。私が死ねば、スタンドが掴んだ魂も死ぬ。助けたかったら賭けを続けることだ。」
すると先ほど燻製を取った猫が男の膝に乗った。
「ところで、コイツ(猫)は、私の猫さ。」
そしてスタンドがあっという間にポルナレフの魂をグシャグシャと粘土のように丸め、コインにしてしまった。
「貴様ーーー! イカサマじゃないか!!」
仕組まれていたことだと気づいたアヴドゥルが憤慨して男に掴みかかった。
「イカサマ? いいですか? イカサマを見つけなかったのは見抜けなかった人間の敗北なのです。私はね、賭けとは人間関係と同じ…だまし合いの関係と考えている。泣いた人間の敗北なのです。このまま怒りのままに私を殺しますか? いいですよ? そしたらコインとなった人間も死にますが、それでいいのなら。」
「ぐっ…!!」
「申し遅れました。私の名は、ダービー。D、A、R、B、Y。Dの上にダッシュがつく。スタンドは、オシリス神。」
アヴドゥルが手を離すと、ダービーと名乗った男は、落ち着いた様子で悠然と椅子に腰掛けなおした。
「1984年。9月22日、11時15分。あなたは、何をしていたか覚えていますか?」
「なんのことだ?」
「私は、覚えている。」
するとダービーは、アルバム本を取り出した。
そこには、人の顔が描かれたコインが嵌められた状態で、その下に名前が書かれていた。
すべてダービーがこれまで奪ってきた人間の魂だと理解できた。
ダービーは、ひとりひとり名前も、どのような勝負したかも覚えているそうだ。
ダービーに敗北してコインにされた者達のコレクションアルバムを花梨はジッと見ていた。
「こ、こいつ…。」
「こうやって、ひとりひとり…、俺達を…。」
「面白いですね。似たようなスタンドがいるなんて。」
「花梨!?」
戦慄する一行の中で花梨が場違いなほど落ち着いた声で『似たようなスタンドがいる』と言ったため、ダービーが少し驚いたように声を漏らし頬杖をついた。
「ほう? そちらのお嬢さん…、いや、花梨と言ったか。複数のスタンドを使いこなすとは聞いている。その中に、私のスタンドに似た物があると?」
「ええ。大変、すごいスタンドですよ。試して…みます?」
「それはぜひ見てみたい。実に興味引かれる。」
「言いましたね?」
「花梨ちゃん、ダメだ! この男に不用意に…。」
「なにも賭けをするのは、この人じゃなくてもいいです。」
「? それは、どういう…。」
自分に向けて使わない気でいる花梨にダービーが眉をひそめる。
「あちらの方に協力してもらいます。すみません。」
「ああ? なんだ、お前?」
近くにいたガラの悪い客に話しかける花梨。
「少し……、お尋ねしたいことが。」
「なんだよ?」
「あなたは…、あそこの賭けテーブルにいるダービーという人の仲間ですか?」
「!」
それを聞いたダービーも、ジョセフ達も驚いた。
「はあ? 何言ってんだ?」
「あなたが、今吸っているタバコ…、あとひと吸いで灰が落ちるに、あなたが本当のことを言うに。……賭けませんか?」
「はあ~? なにおかしなこと言ってんだ? この女ぁ?」
「灰が落ちるか落ちないか…、どっちだと思います?」
「わけ分からないこと言ってんじゃーぞ? 落ちないならいいんじゃねー?」
「じゃあ私は落ちるに賭けます。」
「で? 勝ったら何かくれるってか? おじょーちゃん?」
「欲しい物があるんです。今すぐに。」
「ほ~?」
「勝った方が欲しい物を1つ貰う。それだけです。情報でもなんでも。」
「つまり? 勝負が終わった後までリクエストが秘密ってことか?」
「そうですね。だからあなたも私と同様に欲しい物を心の中で決めておいてください。1つだけ。」
「へへっ、そりゃいいな。なんでもっつったな? 本気かよ?」
「はい。」
「っ……。」
花梨が微笑んで返事をすると、男は花梨の美しさを改めて認識し思わず見とれてしまうが、すぐに我に返って気を落ち着かせるようにタバコを吸うと、灰が落ちた。
「落ちましたね…。あなたの負けです。」
「あ、…ああ、落ちたな。それで? 俺の負けか?」
「はい。取り立てお願いします。」
「へっ?」
『この店は、客も全てダービーに雇われている。』
「えっ?」
「花梨、そいつは!?」
モコモコの毛皮のような表面をした、人型スタンドが男の後ろに立っていて、そして真実を口にした。
「この店全体もみんな、金で雇われ、ダービーの手のひらの上だった。これが真実です。」
「て、てめぇ、どうして!? ハッ!」
男が慌てて口を手で塞いだが遅く、ダービーは焦った。
「貴様! まさか最初から我々に仕掛けるためにこの店を!」
「ぐっ…。」
「てめー余計なことを!」
「最初の一発は私が避けるに、腎臓1個。」
「なに!?」
その言葉にダービーが反応。
「おおお!」
負けた男が憤慨して花梨を殴ろうとしたら、花梨はヒラリッと避けた。
『避けられたな! 腎臓を渡せ。』
そして、人型スタンドが男の腹にドスッと針金のような手を突っ込み、腎臓を引っ張り出した。
「ゲボォオ!?」
「なんだとーーー!?」
『色が悪い。闇市で売ってもたいした金にはならないが、取り立ての対象なので奪わせて貰う。』
そして腕の中に腎臓が吸い込まれるように消えた。
「うががが…、だ、ダービー…さん! こんなのアリかよ……。」
「白状したな! やはり店も客も全員此奴の仲間じゃった!!」
「『こんなの聞いていなかった』と言うに…、腎臓を戻す。」
「こんなの…聞いてなかったぜ…。えっ?」
『言ったな。腎臓を戻す。』
するとスタンドが奪った腎臓を出し、男の腹に戻した。
「…? あ、あれ?」
自分の身に起こったことが分からず混乱した。先ほど腎臓を取り出されてから戻された腹部は何事もなく無傷で影響も残っていないようであった。きっと1回取られた腎臓も元通りの位置に戻され、ちゃんと血管などの器官も元通りに繋げ直されているのだろう。
「……分かりましたか? これが、私が持っている、賭事のスタンド。名は、『取り立て人マリリンマンソン』。どんなイカサマも、どんな嘘も見破り取り立てる。金であろうと、物であろうと、情報であろうと、内臓であろうとも……。」
「ぐぅ…く…。な、なんてスタンドを持ってやがるんだ!」
ダービーは想像を超えた取り立て人のスタンドに汗をかいた。
「イカサマをする時、人は、心に弱みを持つ。取り立て人マリリンマンソンは、その人の心の弱みの闇そのモノ。どんなことをしても倒すことはできない。無敵。どうやっても取り立てる。何が何でも取り立てる。死ぬまで……。」
花梨がスタスタと、ダービーがいる賭事テーブルの椅子に座った。
そして、机の上に頬杖をついて、薄く笑う。
「私と賭けをしませんか? ダービーさん。」
「やはり…、そうくると思っていたよ。フフフ! 実に面白いな! 賭けに敗北した人間の魂のみを奪う私のオシリス神などとは、比べものにならんだろう! 取り立て人とはな! 覚えておこう!」
「あなたが本当にDIOのことを知っているに、1000ポンド。」
「なに!?」
「花梨!?」
思わぬ不意打ちの賭けにダービーだけではなく、味方も驚く。
しかし、取り立て人マリリンマンソンは取り立てるための行動に移さない。
「……動かない。つまり、あなたは、本当に知っているということ。」
「!?」
「おお! そういう使い方も出来るのか! さあさ、オービー君! 早く白状しないと、すっからかんになるぞ! って、おい!?」
『本当のことを知っていないと疑った。だから我々が1000ポンド払う。』
取り立て人マリリンンマンソンは、花梨の財布とジョセフの財布から1000ポンド奪いそれをバサッとダービーの前に置いた。
「こ、こりゃ、花梨! どういうことじゃ!?」
「取り立て人は、絶対なんです。こちらも弱みを見せれば、そしてイカサマをすれば、当然取り立てられる。私は先ほどお金で賭けると言いました。だから、お金がもし足りなかったら……。」
「臓器で払わされていたか…。」
「な、なんてことだ!」
無敵の取り立て人スタンドのおかげでこちらの要求が押し通せると考えた矢先に、とんでもないルール発覚となり喜びは一気に萎んだ。
「フフハハハ、これはいい! お前達の味方と思っていた取り立て人が、実は公平なる取り立て人とは! これで、お互いに安易なことはできなくなったということだ!」
「けれど、ダービー。お前もお前で、DIOについて知っているということが露顕したわけだが? それについては、どう考えて?」
「ハッ!」
取り立て人マリリンマンソンの能力のルールに驚きはしたものの冷静でいる花京院の言葉にダービーは大汗をかいた。
ダービーは、ハッとした。横を見ると1、2メートル離れた場所に取り立て人マリリンマンソンが成り行きを見守るようにジーっと見ていたことに。
「安心してください。私は先ほどの賭けで、あくまでもあなたが『DIOのことを知っている』かどうかを確かめただけですから。それ以上のことは聞いていない。」
「……なるほど。」
「酷くホッとしているようだが…。つまりお前は、DIOの能力についても知っているってことでいいな?」
「それは、お前達が賭に勝ってからだ。ほら、取り立て人も動いていない。賭けは成立していないのだよ。君らもそれに相当するモノを賭けなければならないのだ。」
「あなたにとって、DIOについての情報に相当するモノは…、私達の命?」
「私はすでにお前達に、私がDIO様のことを知っていることがバレている。しかし、私は、ポルナレフの魂を握っている。私に賭で勝たなければ解放は出来ん。早くしないとポルナレフの肉体が腐ってしまうぞ?」
「分かりました。では、ポーカーなど、いかがですか?」
「ポーカー! それは、私がもっとも得意とするゲームだ。」
「そうですか。」
「おや? 君も自信があるのかね?」
「ですが、ポルナレフさんという大きな弱みを握られている、そしてあなたは、取り立て人に見張られている、新品のカードでの公平なる勝負を願います。」
「それは当然だ。だが、そちらもイカサマをすれば……。」
「取り立て人に殺されるでしょう。」
「か、花梨…。」
アヴドゥルが心配する。
取り立て人マリリンマンソンは、ジッと少し離れた場所で花梨達の行動を眺めているようであった。
「勝負の前にお伝えしておきます。すでにご存じかと思いますが、改めて。」
「なにかな?」
「私のスタンドは、ひとつのスタンド能力しか使えません。よって現在、取り立て人マリリンマンソンを使用しており、それ以外のスタンド能力を使うことは不可能です。」
「しかしそれでは解除すれば違う物を使えるということじゃないか?」
「そうしたいのはやまやまですけど、現時点で使える能力のすべてが都合良く切り替えられるとは限りません。つまり取り立て人マリリンマンソンは使用者にとって都合の良いスタンド能力とは限りません。」
「……なるほど、先ほど君は言ったな。『イカサマをする時、人は、心に弱みを持つ。取り立て人マリリン・マンソンは、その人の心の弱みの闇そのモノ』だと。だからあの取り立て人は、我々の影に立っているのか。」
窓も壁もない吹きさらしのカフェから射し込む太陽光でテーブルとダービーと花梨が座っている姿からできた影の中に立つように取り立て人マリリンマンソンが存在していた。
「その通りです。」
「グッド! 理解した。花梨、君が私に勝負を持ちかけた時点ですでに取り立て人のスタンドの力が使われ、そして勝負がつかなければ解除できない状態になっているということだ。」
「その通りです。」
「………花梨、…お前……。」
「ごめんなさい…。」
『恋人』のスタンドの時みたいに自分を蔑ろにする行動をしている花梨に、承太郎が呆れたとばかりに長いため息吐くと花梨は少し猫背になってシュンッとして弱く謝罪した。
承太郎と花梨のやり取りで状況を理解したジョセフとアヴドゥルは、諸刃の剣を簡単に使う花梨の行動に頭を抱えた。(恋人のスタンドの戦いについてはアヴドゥルと合流の時にアヴドゥルに話している)
一方でダービーは、嬉しそうに笑う。
「どうしましたか? 呆れましたか?」
「イヤイヤ! むしろ私は歓喜している! このような勝負はおそらくこの先体験することはない。絶対的な無敵の取り立て人のルールでの勝負! 呆れるどころかむしろアレを使ってくれた君に感謝すらしているのだ! ありがとう!」
「そうですか。それは良かった。」
「感謝の印に、この勝負で私が勝利したなら君のコインだけは世界にひとつとない特注のコレクションケースに大事にする。」
「私が勝ったら……、未来の先まで屈指の凄腕ギャンブラーとしてダービー…、えーと、フルネームは…。」
「ダニエル・J・ダービー。それが私のフルネームだ。」
「わざわざありがとうございます。」
「お前らーーー! 勝負を忘れとらんか!?」
「忘れてませんよ。」
「忘れてなどいない。これは一世一代の人生を賭けた勝負なのだからお互いを認め、勝負のあとのことを語りたいと願ってしまうのだよ、アメリカの不動産王ジョセフ・ジョースター。」
「激ヤバスタンドの重圧でボケが進行したかジジイ?」
「緊張感を持て! この状況の悪さを!!」
「緊張しすぎでとち狂わないでくださいよ、アヴドゥルさん。」
「外野がうるさいからそろそろちゃんとポーカーを始めるとしようか。準備はいいかな?」
「そうですね。」
というわけで、やっとこさポーカーでの勝負開始。
「良し。セキュリティーシールを張ったカードを開ける! あそこにいる無関係の子供にディーラーを。」
「カードに異常なし。ジョーカーも1枚。普通のカードだぜ。」
とんでもない精密さを誇るスタープラチナでの確認も行う。もちろんその間も取り立て人マリリンマンソンがジッとこちらを観察するように眺めているが、動きがないのでスタープラチナがやましいことをしていないことを物語っていた。
「では、ボウヤ頼むぞ。」
「はーい。」
そして、子供がカードを配った。
「……。」
「どうした、花梨。早くカードを持て。」
「少し気になることがありまして…。ねえ、そこの君。」
「えっ? ぼ、僕?」
花梨がディーラーをしてくれている子供に話しかけた。
「あなたは、ダービーの仲間?」
「知らない。」
「あなたが、もしもダービーからお金を貰っているなら、そのお金を徴収してもらうけど。それでもいい?」
「おい! そんな小さな子供から金をむしり取る気かね?」
「はい。」
花梨は淡々と答えた。
「えっ、あ…あの…。」
その声と花梨の表情にゾッとした子供が焦り始める。
すると同じ場所に立っていた取り立て人マリリンマンソンが消え、子供の影に取り立て人マリリンマンソンが出現した。
『金を貰っているな。徴収する。』
「ああ!」
一瞬で消えたマリリンマンソン。そして少しして戻って来た、その手に札束を持って。
『5ポンド足りない。生活費として使ったか…、ならば…。』
「貴様、そんな小さな子供から内臓を…!?」
『この服を売れば足りる。』
「うわー!」
マリリンンマンソンは、子供から一瞬で上着とズボンを奪った。
「おい…、もし、私がその子供に払った金がもっと足りなかったらどうしていた?」
「分かりません。私がそう操作しているではなく、取り立て人が勘定するので。」
「ぐ…、恐ろしい女だ…。」
ダービーは、分かっていたつもりでも改めて取り立て人マリリンマンソンの容赦のない取り立てに戦慄を覚えた。
「この辺りの人間は信用できんな。仕方ないアヴドゥル、お前がディーラーを。」
「私が?」
「このままだと取り立て人が金どころか、買収されただけの人間からマジで内臓をぶっこ抜いて殺しかねねぇからな。」
「…分かった。」
「仲間にイカサマをさせる気か?」
「それなら、私が取り立て人にイカサマを見抜かれ殺されるでしょう。私がアヴドゥルさんに指示していなくても、アヴドゥルさんが勝手にイカサマをさせようとしたならアヴドゥルさんが対象になるかも。」
「うっ! そうか…、当たり前だな。」
「あれ? やる気でした?」
花梨が小首を傾げて聞くとアヴドゥルは汗をにじませ激しく首を横に振った。
「むっ…。では…、勝負の前にあの言葉を言って貰おう。私のスタンドはそうしなければ魂を抜けない。」
「分かりました。私の魂を賭けます。」
「グッド!」
「では、カードを配る!」
そしてアヴドゥルがカードを配り直した。
さっきの子供から取り立てを終えて花梨達のところへ戻って来た取り立て人マリリンマンソンは、その動きさえも見ているだろう。配り終わっても動かないということはイカサマはないということだ。
「あなたに、賭けて貰うモノが決まりました。私がこの勝負で勝ったらそれをください。」
「ほう? なにかな?」
そういえばまだ花梨は勝負を持ちかけてはいたが、勝負の後に求める物を決めていなかった。
賭けの勝敗で求める物があるのは当然だと受け入れるダービーに、花梨は、ゆっくりと微笑み、そして、要求するモノを口にした。
「あなたの心臓ひとつと、……DIOの能力について。」
「!」
「私が賭けるのは…、私達の命すべて。」
「なっ、なんだとーーーーーー!? 貴様、正気か!?」
「花梨!」
「僕はそれで構わないよ。」
「同じく。」
「花京院、承太郎!?」
「腹くくれ、ジジイ、アヴドゥル。」
「あなたにとって、私達の命は、DIOに捧げるこれ以上無い捧げ物。ギャンブラーとして絶対なる自信とスリルを求める、あなたにとって、お金なんてほとんど無価値。なら、あなたは、あなた自身の命と、DIOの能力を教えてもらいます。」
「ど、どっちにしろ、私に死ねと!? そしたらポルナレフはどうなる!?」
「私のスタンドに…、元に戻すスタンドがないと思っていますか?」
「そ……それは…。」
「てめーらに花梨の情報が入っているなら、どんな状態からでも治せるスタンドがあることぐらいは知ってるはずだぜ。」
「うぅ…、どっちにしろダービーは死ぬということか! 心臓を取られて死ぬか! DIOを裏切り殺されるか!」
「両方じゃないですか? 心臓を抜かれた上で情報も奪われる。」
「あ……ぅ、ああああああああ!?」
「さあ…、賭けましょう。どうします? さあ、早く…。」
「か、かかかか、花梨!! き、きさま……。」
「ダービーさん。負かした人の魂をそうやって奪ってコインに変えてコレクションにしちゃうあなたは知らないでしょうね。」
「何が言いたい!?」
「『死人に口なし』。あれは……、聞こえない、話ができないことが普通だからその言葉は当然ですけど、死んじゃった人って嘘は言わないんです。世界をギャンブラーとして渡り歩いて、何人の人の死に目に、その手で直接、あるいは間接的に命を奪ってきましたか? 覚えているのはそのアルバムの中に納めたコインの人達だけなんでしょう? 勝負の時にあった人の目は勝負の相手だけじゃなかったでしょう?」
「まさ…、っ………………!? お…、お、おおお、おおおおおおお、おま…、お前…、お前!!」
花梨の言葉からダービーは気づいて激しく動揺した。
「私は、どうやって、『本当の意味で、公平な取り立てをしてくれる取り立て人に立ち会ってもらうか』、……………考えながらこのカフェに来ました。」
「なにーーーーーーーーー!?」
「うわー、花梨ちゃんの前じゃ『死人に口なし』もクソも無いってことか。どんな嘘も隠し事も自覚の無い罪の諸々も筒抜けか…。まあ、僕は全部さらけ出しても構わないけど。」
「ケツの毛まで見られて構わないことにはとやかく言わねーが、今惚気んな。」
「いや~、惚れ直しちゃって。つい…。」
花梨が暴露した驚愕の事実にほぼ同時に絶叫するダービーとジョセフとアヴドゥルとは反対に、取り乱さずにむしろナチュラルに惚気る花京院とそんな花京院に呆れている承太郎。
「ということは、花梨ちゃんが取り立て人マリリンマンソンの話題を出した時には、もうダービーは花梨ちゃんの手のひらの上だったってこと?」
「はい、そうです。」
「だろーな。自分のスタンドに、『似たようなスタンド』がいるって聞いたら、そりゃ食いつくぜ。まず気になるからな。よっぽどの馬鹿な鈍感という名の無関心か自分以外を見下すヤローでもねー限り、撒き餌としてはこれ以上はない、俺でも食いつかない自信がねー。」
追い打ちをかける花京院の言葉と、承太郎の言葉が更にダービーを絶望させる。ジョセフとアヴドゥルは絶句していた。
配られたカードを持っていた手の指どころか足からも温度が消えるような恐ろしい事実。
東方花梨は、先にダービーのことを知っていた。
そして無敵の取り立て人マリリンマンソンを立ち会わせた勝負にダービーを引きずり込むために思考を巡らせ、顔色ひとつ、挙動ひとつ悟らせずに、ダービーを手のひらの上に乗せるよう仕向けた。
そしてまんまとダービーは花梨の手のひらの上で弄ばれ、勝敗、更にイカサマを含めたルールを破った場合の罰として絶対に何が何でも取り立てを行う取り立て人マリリンマンソンのルールの上の勝負に乗せられた。
自分の息がかかったカフェにいる人間、その周囲にいる人間も使えず、公平に配られた新品のポーカーのカード。
ここでコールするか、降りるかしなければならないが、もし、勝てるカードだったら? 勝てないカードだったら?
しかし勝負を降りる(ドロップ)とは、損切りをすること。失う物を減らすための手段だ。減らすだけで得はしない、むしろ小さくてもマイナスはマイナス。
一発で首を断頭台で切り落として即死するか、じっくり致死量に達するまで流血するか。
花梨にとっては、どちらでも良かった。苦しまなくても、苦しんでも、本当にどちらでも良かったのだ。例え他の仲間の魂を奪われた状態でダービーが死ぬことになっても魂を戻せる手段があるのだから。魂を先に奪って人質にした意味がなかった。
ダービーを八方塞がりに追い込んだ最大の要因は、取り立て人マリリンマンソンのルールの絶対性と取り立ての確実性の高さにある。つまりダービーが負ければその瞬間に花梨が要求した物である、ダービーの心臓と、DIOのスタンド能力の情報が取り立て人マリリンマンソンによって花梨達に渡されるのだ。
挑んでも逃げても負けるだけの勝負だったことを早く見抜けなかったこと。それがダービーの敗因だった。
花梨が微笑む。それはそれは、美しく。ジョセフとよく似た顔立ちと同じ色の青い目なのに、まったく別物でその美しさがあまりにも恐ろしい。
ダービーは、その笑みにゾッとなり声にならない悲鳴をあげた。人の顔が、表情がこんなに恐怖の対象になるとは、これまで賭事で食い扶持を稼ぎ、相手の表情、挙動で勝負の駆け引きをして人生としてきたダービーにとって初めてのことだった。
なにを考えているのかさっぱり分からない。そんな美しい微笑みの顔だったからだ。
「約束は守りますよ。あなたのことを、凄腕ギャンブラーだったことを語り継ぐように。」
「ヒッ…ぃ…!!」
『DIO…の能力は…。』
「ひ、ひいいいいいいいいいいい!? やめろおおおおおおおおおお!!」
マリリンマンソンが言いかける。するとポルナレフの魂が解放された。
「負けを認めましたね。では、徴収して、マリリンマンソン。」
「うわあああああああああああああ!!」
『逃がさない。心臓を取る前に、DIOの能力の情報を…。』
マリリンマンソンがダービーを捕まえ、胸に手を突っ込んでから言いかけた時だった。
ダービーのこめかみに銃弾の穴が空き、テーブルに突っ伏して死んだ。
「なにーーーー!?」
「しまったーーーー!!」
「またか!? またやられた!」
「誰じゃ! ここにいる誰かに…!?」
「いいや、角度からして、かなり遠くからだぜ。この店の客じゃねぇ…。」
「……。」
ダービーのあまりの焦りから来る壮絶な顔のままの死に様に、花梨は黙ったまま見つめる。
「マリリンマンソン…、情報は?」
『相手の死により、無効とする。』
そう言い残しマリリンマンソンは、消えた。
「花梨。」
「……………ごめんなさい。」
「ダービーの幽霊から情報を聞き出せないのかい?」
「マリリンマンソンが無効って言っちゃったので…。」
「死人からの情報も消したのか。」
「さすが公平な取り立て人。徹底してるね。」
「心臓爆発すると思ったわい…。そのスタンド使用禁止じゃ!」
「頼むから、できることなら事前に相談をしてくれ…。」
「できる時はやります。」
「行けたら行くってのは、行かねーって答えだ。」
「日本人のYesに見せかけたNoの遠回しな返事のひとつだね。」
「お前達ーーーー!!」
「うぅ…、お、俺は…。」
「だいじょうぶか、ポルナレフ?」
「ハッ! そうだ、俺負けて…。」
「一から聞き込みのやり直しだ。行くぜ。」
「えっ? な、なんで、コイツが死んでんだよ? なにが…あったんだ?」
「気にするな。もうどうしよーもねー。」
「……。」
「花梨ちゃん、だいじょうぶ?」
「はい…。」
花梨は、花京院に手を貸して貰いながら立ち上がったのだった。
ダービーは、第三者によって殺されることでDIOに関する情報漏洩だけは防げるという抜け道があったことに気づけなかった。
どうやっても死ぬ、死ぬうえに情報も取られるという恐怖に負けてしまうことで頭がいっぱいで、花梨が出した条件と取り立て人マリリンマンソンの絶対的な公平さの中にあったその抜け道に考えが及ばなかった。
まさかDIOから秘密裏に殺されることが事前に決まっていたことを知らなかったが故に。
あとついでに。
「ところで花梨。」
「はい。」
「お前の治すスタンドだが……、引っこ抜かれた魂も元に戻せるのか?」
「………………失われた命は戻せません。」
「……そうか。」
花梨が持つ直せるスタンドが、失われた命、つまり魂が抜けて死んだ者を生き返らせることができないということ。
あれが相手を動揺させるために、『元の状態に直す』スタンドの話題を出した。けれど完全に尽きた、消滅した、終わってしまった物は直す対象ではなかった。言葉の綾とはよく言ったものだ。『直(治)せる』とは言ったが、『生き返らせる』とは言っていない。
「わし……………、泣きそう………。」
「パラレルワールドのお孫さんとはいえ、種類が違いますからね……。」
ホラー的な意味で。という出そうになった言葉をアヴドゥルは飲み込んだ。
花梨が持っている直(治)す手段は、クレイジーダイヤモンドと、ゴールドエクスペリエンスの二通りあります。
自分以外を直すときは、クレイジーダイヤモンド。
自分を直す時は、ゴールドエクスペリエンス。
そのため敵側に情報が混在していて直(治)せる物の対象が正確に伝わっていないのと、言葉の綾で誤って認識された結果、ダービーは自分が死んだとしても花梨が魂を抜かれているポルナレフを生き返らせれると誤解してしまったという流れにしました。
『元の状態に直せる』の言葉が、『生き返らせる』とは違うということに。
けど意図せずマリリンマンソンによって死後のダービーから情報を聞き出せなくもなったという弊害も発生してしまい、マリリンマンソンの無敵で使い方次第では敵味方にもヤバい方に作用する能力を活かせたかは分かりません。
6部でのマリリンマンソンの使用者自身、最後のところでマリリンマンソンが命令に従っていないところと、アニメ版での展開の違いからすると存在自体がある種の脅し要素であると勝手に解釈しました。
花梨は、その怖い部分を利用する事にしてダービーにマリリンマンソンが取り立てる姿を何度も見せて、逆に取り立てる理由が無ければだいじょうぶだというのを刷り込むという戦略を取ったのです。
しかしこれらの戦略は、ダービーがいるカフェに行く前に霊能力者である花梨がダービーによって命を奪われた幽霊(※コインにされている人間ではない)に会って彼らから情報を知ることができなければそもそもできなかったことなので、本当に怖いのは取り立て人マリリンマンソンじゃなく、花梨の方だったというのを目指しました。
本当にこれでダービーと取り立て人マリリンマンソンの勝負が描けたか分かりませんので、おかしい部分がありましたら教えていただけると助かります。