vsタワー・オブ・グレー。
死ぬ人は死にます。運命故に……。
黒い黒い。暗い暗い。
黒い泥の中を、歩いているような重たい感覚。肌を刺すような冷たい空気。
天を見上げれば光の穴が見える。まるでそれは、昔、本で読んだ蜘蛛の糸の話に出るようなお釈迦様の蜘蛛の糸が垂れてきそうな、そんな希望を抱かせるような温かそうな光であった。
独りぼっちでこんな寒い中、見上げていると、まるで想像していた通りのか細い糸がスルスルと光の方から降りてきた。
掴んでいいものか……。あの物語の最後を思うと易々と掴むのは恐ろしい。
それに、こんな場所に他に誰かがいるなら、譲ってもいいと思えた。
その方が良い。自分はこんな場所にはいたくはないが、他人がいたら譲るだろう。
だって……、こんなに辛い場所なんだから。
やがてその糸を掴んだ者がいた。
ああ、よかった他に誰かがいたんだ。っと思った時、目の前にいたのは……。
***
「……りん…、花梨ちゃん。」
「…ん?」
自分を呼ぶ落ち着いた青年の声が聞こえた。
目を開けると、花京院が心配そうに花梨の顔をのぞき込んでいた。
「ああ、よかった。だいじょうぶかい?」
「か…きょういんさん…?」
「悪い夢でも見てたかい? なんだか胸騒ぎがして起こしてしまったよ。」
花京院は、ホッとして座席に座った。
今、ジョースター一行である自分達は、飛行機に乗っている。エジプト行きの。
正直な話…、飛行機に乗るに当たって花梨は、イヤな予感しかしていなかった。
なぜなら飛行機というひとっ飛びで移動できる手段を、敵が見通していないはずがない。なぜなら相手は、同じ場所から動こうとせず、わざわざ日本から旅行に来ていた花京院を敵の刺客として洗脳してから利用するような輩だ。花京院が失敗することは前提として、対策を取っていないはずがないだろう。何重にも……。
「どうしたんだい?」
「……。あっ。」
見れば、ムーディー・ブルースがウロウロと機内をうろついていた。
「おい。アレを引っ込めとけ。」
後ろの座席にいる承太郎が小声で言ってきた。
「そんなこと言われても……、きっと敵がいるんじゃないですか?」
「なに?」
その時。
ブ~~~ンっと、羽音が聞こえて、反応したムーディー・ブルースが顔を手でガードすると、その手に穴が空いた。
『チッ! 口のねぇ奴はこれだから!』
「敵か!」
ムーディー・ブルースの頭の後ろに、大きなクワガタムシが羽ばたいていた。クルッと即座に反応したムーディー・ブルースが拳のラッシュをクワガタムシに当てようとしたが、すべて避けられた。
「避けやがった!」
「あの速度は、スタンドで間違いないだろう! 今、口と言ったな! 舌を好むスタンドがいると聞いたことがある、タロットカードの『塔』の暗示…、タワー・オブ・グレーだ!」
『ククククク! その通りよ! 破壊と災害…、そして旅の中止を暗示する、このタワー・オブ・グレーがお前達を皆殺しにしてやるぜ! こーやってな!』
「なにを!?」
次の瞬間、瞬間移動のようなスピードで移動したタワー・オブ・グレーは、機内の真ん中、四つほど後ろの方へ移動し、そのまま座席頭部を貫きながら客の口を貫いて舌を抜いて殺した。
「!」
そして舌から滴る血で、『マサクゥル!(皆殺し)』と壁に書いて見せた。
「なんてことを…、焼き殺してくれる! マジシャンズ・レッド!」
「待て、待つんだ、アヴドゥルさん!」
すると、前の方に座っている老人がムニャムニャと目を擦りながら立ち上がり、トイレに行こうとしていた。
そして壁に描かれた血文字に気づき、騒ぎかけて…。
「静かに。」
「アガッ!?」
「あっ。」
っという間に、花梨からの指示を受けたムーディー・ブルースが老人の鳩尾を容赦なく殴って気絶させた。すると、口から出ている串に数枚の舌を刺していたタワー・オブ・グレーが消えた。
「あれ?」
花梨がびっくりして、また、何かやってしまったかと口元に手を置いた。
「……………どうやら、その老人が本体だったようだな。」
「えっ? 終わり? もう終わり? あっけなさすぎじゃぞ?」
「いいじゃねーかよ、面倒じゃねーし。」
「えっ? えっ? ダメでした?」
「いいや。よくやったぜ、花梨。」
「そうだね。よくやったよ、花梨ちゃん。」
このラッキーうっかりめっと承太郎が、軽くオロオロしている花梨の頭をワシワシとなで回し、花京院がポンポンッと背中を叩いた。
しかし、突如として飛行機そのものが傾きだした。
「まさか!?」
イヤな予感が走り、ジョセフと承太郎がコックピットに走って行った。
花京院は、気絶しているタワー・オブ・グレーの本体を解いたハイエロファント・グリーンで縛り、それからコックピットを目指して移動した。
花梨は、それを見てから手を合せ、背中を向けてコックピットを目指して移動した。
コックピットには、ムワッと凄まじい血の匂いで満たされていた。
舌を抜かれ、惨殺されたパイロット達。血塗れのコックピット内部は、破壊されており、自動操縦装置も使えない有様だったが。
「『クレイジー・ダイヤモンド』。」
花梨の後ろに着いてきていたムーディー・ブルースが消え、伯父の仗助のスタンドを出し、破壊されたコックピットを直した。
「おお! よし、このまま香港に着陸じゃ!」
「えっ?」
「このままエジプトを目指せば、先ほどのように無関係な人間が巻き込まれるということさ。」
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」
後ろの方で、凄まじい老人の断末魔が聞こえた。
ハイエロファント・グリーンを引きちぎって逃げようとしたタワー・オブ・グレーの本体が、引きちぎられて怒ったハイエロファント・グリーンに殺されたのだ。
「やっぱり…。」
「……君は予言者かい?」
「違います。死相が見えたので…。」
酷く落ち着いている花梨の様子に、少し訝しんだ花京院が聞くと、小さく首を振った花梨がそう答えたのだった。
「…そうか。」
花京院は、花梨の落ち着きすぎているようにしか見えない綺麗な横顔を見つめ、そう呟いたのだった。
「あなたも…。」
「!」
「…なんでも…ないです。」
花梨が不意に花京院を見てそう言ったので、不意を突かれてビクッとなった花京院に、花梨は変わらず落ち着いた様子でそう言い、視線を外したのだった。
花京院はドキドキする心臓を抑え、落ち着こうと深呼吸したのだった。
こうして、飛行機によるエジプト上陸は断念せざる終えなくなったのだった。
休みに実家に帰ってる間に思い付いた展開です。
基本設定は、フリーゲーム『7人目のスタンド使い』のカオスモードを参考にしました。
なぜか花京院にフラグ?
あと、最終決戦の展開も思い付いたけど、その通りに書けるかどうかは別問題で……。
花梨があーなってこーなって、花京院が……って展開を考えております。(2020/06/28現在)
なお、花梨は美人過ぎて(眼力があるように見える)真顔だと妙な迫力があります。