ポルナレフのために、花梨にとある幽霊が頼み事をします。
香港のとあるレストランで、今後の旅路について話し合い。
飛行機でエジプトにひとっ飛びで移動が中断された事が悔やまれるが、これ以上無関係な人間を巻き込まぬ為にはやむを得ないことではある。
50日。されど50日。
決して短くは無く、だが長くは決してない。けれど日本からの距離から見れば悔やまれる距離にその死の呪いの元凶がいるのだ。1日たりとも無駄にはできない。しかし、焦っても元凶には手は届かない。
そのための英気を養うためにも食事と休息がきちんと必要なのである。急ぐ旅ではあるが。長い旅路に疲労・空腹などは一番の敵だ。
花梨は、ソワソワとしていた。
「どうした?」
「う…ん…なんでもない、です。」
「嘘をつけ。」
「…すみません。ちょっと席を外します。」
「待て。ひとりで離れるな。」
「僕が行きます。」
席を立つ花梨に、花京院が付き添った。
そして、店を出て、建物の間に入る。薄暗く、生ゴミのにおいが漂う裏道だ。
花梨は、不意に立ち止まって中空を見上げた。
そこそこ離れた箇所で立ち止まった花京院は、その様子を見た。
「あなたは?」
花梨が誰かに向かって話しかけている。花京院には見えていない。
旅立つ前に、アヴドゥルからチラッとだけ聞いてはいた。花梨が霊能力者であることを。
「?」
ふと花京院は、気づいた。
日の光が遮断された薄暗い裏道に、フヨフヨと、小さな光が舞っていることに。
一瞬、虫かと思ったが違った。目で追うと、花梨の周りにその光の粒が多くあった。
まるで…、そこだけが、天から差し込む優しく慈悲深い光にキラキラと愛されているかのように……、そんな錯覚を覚えた。
「……分かった。」
ぼう然とみていた花京院は、その花梨の声でハッと我に返った。
「? どうしました?」
「あ…、いや…なんでもないよ。それで? 誰と喋ってたんだい?」
「……綺麗な…すごく可愛い女の子…。私と年が近いかもしれません。」
「その子がいったい?」
「……お兄ちゃんに、力を貸してあげてって。頼まれました。」
「おにいちゃん?」
「帰りましょう。」
「えっ? あっ。」
花梨は、さっさと花京院の横を通り過ぎ、店へと戻っていく。花京院は慌てて後を追った。
店に帰ると、すでに戦いが始まっていた。
炎の鳥人と、銀の騎士のスタンドの戦いが……。
「あっ…。」
「どうしたんだい?」
「あの人だ…。」
花梨が銀の騎士のスタンドを持つ銀髪の男を指差す。
「あの人が…、あの子の…お兄ちゃん…。」
「えっ?」
「外へ出ろ。全員切り刻んでやる!」
銀髪の男、ジャン(J)・ピエール(P)・ポルナレフが、そう叫んで店の扉を示した。
「ジャン…お兄ちゃん。」
「っ…?」
花梨の口から出た声は、花梨の声じゃ無かった。だが、同じぐらいの声の高さだったため、銀髪の男がピクッと一瞬反応しただけに終わった。
そして一行は、ポルナレフという男を追って、店を出た。
***
場所は、タイガーバームガーデンという観光名所。
そこの広場のように開けた場所で、決闘が始まる。
ポルナレフと、アヴドゥルのだ。
「アヴドゥルさん…。お願いします。」
「ああ。分かっているとも。」
「違います。」
「?」
「……あの人を…殺さないでください。」
「なぜ?」
「あの人は、花京院さんと同じように操られてるだけですから。」
「…分かった。善処しよう。だが…正直なところ、手加減できる相手ではない。」
「……クレイジー・ダイヤモンドで治します。必ず…勝ってください。」
「分かった。」
「最後のお喋りは終わりかい?」
ポルナレフがクスッと笑って待っていた。
「……。」
「花梨ちゃん?」
花梨は、ジッとポルナレフを見ていた。
花梨にしか見えていないのだが……。
このポルナレフという男に宙に浮いた状態で寄り添っている、美しい少女の姿が見えていた。
彼女は泣いていた。
その悲しみがなんであるかは聞いていない。
そして、ポルナレフという男が、なぜ肉の芽を植え付けられたのか、その経緯も分かっていない。今は、ただの敵でしかない。
勝ってもらわないといけないのだ。アヴドゥルに。
そうしなければ……、あの少女の霊は救われない。花梨はそう感じ取った。
たぶん、分かると思いますが……。
幽霊の正体は、シェリーです。
シェリーは、兄の復讐を止めたいわけではないです。ポルナレフを助けるために、力を貸してくれないかと花梨に依頼したんです。
……生きていて欲しいから。