さて、希望は見えたが同時に絶望も見える。
あのバケモノの進行方向には、原子力実験炉がある。
そんなデンジャラスでバイオレンスな展開は、映画やゲームのなかだけで充分なのだが、この世は理不尽だ。
このままでは表現しがたいひどい惨状が待っているに決まってる。
上条のとった行動は至って簡単。
(警備員も役に立たないし、俺が引き付けるしかないか……)
バケモノに向かって走りだし、少し大きめの石を拾う。
そして、その石を全力で投げた。
それはバケモノに命中した。バケモノが上条の方を向く。
「少し俺と遊ぼうぜ。怪物さん」
意味は無いとわかっていたが、上条は銃を取り出し、発砲した。
初春はその後、無事にデータを入力することができた。
それにより、学園都市中にとある音楽が流される。
『あ……えー、ここで番組の途中ですが臨時ニュース……。あ、いえ、臨時のリクエストです』
明らかに異質な発言。
学園都市某所で四人組の女のうち一人がつい口に出す。
「何だそりゃ」
響き渡る音色。それは、
「……何か不思議な……曲?」
学園都市某所、
もう一人の少女が気にかけ、声をかける。
「……? どしたの」
「や……、なんかさ、音楽が……」
学園都市の某病院、医者たちはその音色を聞いた。
一人の医者はこう例えた。
「何だこの曲は、五感に訴えかけてくるような……」
「先生っ!」
看護師の声が響き渡る。
「患者さん達の発作が止みました……!」
学園都市の某病院で細工をしていた食蜂は、患者達の様子を見て能力を止めた。
「突然発作が起きたときは驚いたけど、思ったよりもあっさり収まったわねぇ……」
能力を止めた理由は簡単。
患者たちの発作が止まったのを見て、もう問題は無いと判断したため。
普段から洗脳をしまくっている食蜂が言うのも何だが、これ以上脳波を弄くっても負担以上にはならないから。
「この音楽は関係あるのかしら……?」
バケモノの戦っていた上条は、あるタイミングを境に、少しずつバケモノが弱くなっているのを感じていた。
しかし、完全に停止したわけではない。
当然だが、それでもまだ上条は防戦一方で、なにかしらの決定打がほしいところだった。
上条の放った銃弾は、バケモノにダメージを与えることができていない。
「くっそ……」
上条は呟く。
「なにか倒す方法は無いのか? これじゃあじり貧だ……」
だが、その呟きはよい方向に転んだ。
「アレはAIM拡散力場の塊だ。それを自立させている核のようなものがあるはず……。それを破壊できれば……」
「木山……。お前まだいたのか」
木山の発言は大きなヒントになった。
しかし、実行するには対象が大きすぎる。少しずつ弱く、小さくなってはいるが、拳銃で狙うのは無理がある。
ちょっと近くの隠れ家にいけば、ガトリングガンでもバズーカ砲でもあるのだが、数分間ここを離れることになる。
それはかなり危険だ。
原子力のもたらす被害といったら、学園都市中が被害を受ける可能性も高い。
チェルノブイリといえば結構な人がその惨状を理解できるだろう。そのレベルになる可能性を否定はできない。
それを放置するのは問題外。
だとすれば、
「なあ、木山。お前は闇に堕ちる覚悟は……、いや、もう遅いか」
「なにを言いたいんだい?」
「少し協力しろ。いや、俺らの組織に入れ。『樹形図の設計者』程度なら使わせてやる」
普通なら言えない発言。
だが、少し脅せば一・二回の使用程度ならさせてもらえる。
「君の言葉を信じるかはともかく、アレを産み出した責任は私にある。協力させてもらうよ」
「ならば、あの建物からガトリングガンを持ってきてくれ。ここは俺が持ちこたえる」
「……私が裏切ることは考え無いのか?」
「そんなことを言ってたらなにもできない。裏切られることには慣れてるからな、それはそれで何とかする」
上条はそれだけ言って、再び戦闘を始めた。
リミットは不明。原子力が壊れたら終了だ。人生も含めて。
「……人を簡単に信じる人間が多くて困る」
そう言いつつも、木山は指定された方向へ、重い足を引きずって走り出した。
怪我もあるため、歩きとの差が無いレベルの速度だったが。
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