ありふれたRTAでラスボス撃破 タンクチャート   作:エチレン

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南雲ハジメの一年間。
またの名を超展開のバーゲンセール。


幕間:持つべきものは理解者

 

 南雲ハジメは、いわゆるオタクである。

 

 ゲームや漫画、ライトノベルなど、一般人から見た『オタクが好きそうなもの』をこよなく愛している。それはゲーム会社で働いている父親だったり、漫画家として連載を持っている母親の影響もあろうが、そこには彼自身がそう言ったサブカルチャーが好きであるという確固とした意志があってのことだ。

 だが、同時にハジメはしっかりと常識を持ち合わせている人間でもあった。

 自分の趣味が世間一般的に白い目で見られるであろうことは理解していた。

 だからこそ、こうしてひた隠しにして過ごしてきた。

 

 幸い、中学校の時は問題なく過ごせた。友達こそできなかったものの、誰かから特に嫌われると言う事もなく。いわゆるボッチであったが、ハジメとしては自分の趣味に没頭できるので、むしろ好都合だった。

 

(高校も今まで通り何事もなく過ごせたらいいなあ)

 

 高校で配属されたクラスにはクセの強そうな人がいたが、上手くやり過ごせば3年間平和に過ごせると考えていた。そうして初日をうまく乗り越えて、問題なく空気になれそうだったので油断していたのだ。

 運よく窓際の席を手に入れることが出来たハジメはその日、まだ高校生活2日目だというのに自分の趣味に勤しんでいた。平たく言えば、ラノベを読んでいた。

 当然、ブックカバーは付けてあるので、後ろから覗き込まれなければ自分の趣味がバレることは無いだろう。

 クラスメイトはすでにいくつかのグループを作っていたが、ハジメには関係のない事だった。

 そのまま教室の喧騒を右から左に流しながらページをめくる。

 

「…少しいいか」

 

 ハジメの反応は速かった。声が聞こえた瞬間、音を立てないように一瞬で本を閉じて、丁度挿絵が載っているページを見ていたのを隠し、何事もなかったかのように振舞う。

 

「えっ、もしかして僕? ご、ごめん、本に夢中で気付かなかったよ」

 

 本の中身が見られていませんように、自分の趣味がバレていませんように、と祈りながら愛想笑いを浮かべて声のした方に振り向き、そこでハジメは固まった。

 

「……」

 

 そこには、偉丈夫が立って自分を見下ろしていた。

 表情がなく、何を考えているのか分からない。無言で見つめられると威圧感がものすごかった。

 

(ま、まさか怒ってる? もしくはラノベの挿絵が見えちゃったとか? これってかなりマズいんじゃ……目を付けられちゃったのかな)

 

 背中に冷や汗をかきながらその偉丈夫と見つめ合い、やがて最悪の想像が頭に浮かんでくる。

 たっぷりと10秒ほど経って、二人の間にある沈黙を破ったのは偉丈夫の方だった。

 

「…北条衛」

 

 声量はさほど大きくなく、教室の喧騒に搔き消されてしまいそうな大きさではあるが、不思議と耳に入ってくる声だった。

 

「北条くんだね。僕は南雲ハジメ。これからよろしくね」

 

 内心はビクビクしながら、それをおくびにも出さずに自身も名乗り返す。

 北条はそのハジメの言葉を聞いて頷いた後、ああ、と一言呟いて自分の席に戻っていった。

 心なしかやり切ったような、一仕事終えたような面持ちである。

 

(……あれ? もしかして自己紹介したかっただけ?)

 

 拍子抜けである。ボッチである自分が目を付けられたのかと思ったが杞憂だったらしい。

 ハジメは中学2年生の頃、とある事情で不良グループに暴行を受けそうになったことがある。

 その時も不良たちから威圧感を感じたが、少し離れて見ると、北条から感じる威圧感はあの時のように肩が縮こまるような、暴力的なものではないような気がした。

 

(ひょっとしたら悪い人じゃないのかも?)

 

 そう考えたところで白崎香織という目が奪われるような美少女に声を掛けられて、その考えは打ち切られる事となる。

 

 だからその翌日。所々にあざを作り、絆創膏を貼った姿の北条が現れた時は驚いたのだ。

 驚いたのはハジメだけではない。明らかに殴り合いました、という風体だったのでクラスの皆が遠巻きにしながらコソコソと好き勝手言っている状態だ。

 

「おはようございます! さて、今日から授業が始まりますが……って北条くん!? どうしたんですかその怪我!?」

 

 担任の畑山愛子が朝礼を始めてすぐに北条の怪我に気付いて驚愕の声を上げる。

 それに対して北条は、転びました、とだけ言って口をつぐむ。

 追求しようとした畑山先生だったが、転んだの一点張りだったので、せめて保健室で治療してください、とだけ言ってやがて諦めた。

 

「南雲。食べるぞ」

 

 その日の昼休み。物珍しくても人はやがて飽きるということで、すでに北条の怪我の件については誰も話さなくなっていた。

 ちょうどハジメの前の席の生徒がいないので、机を挟んで向き合ってお弁当を食べる。

 ハジメとしては栄養が摂れるならばゼリー食などでも良いと思っているが、母親がやけに気合を入れて作っていたので断れずにこうして持ってくることになったのだ。

 

「その、北条くん。怪我の事についてなんだけど……あっ、もちろん答えたくなければそれでいいから! 変な事を訊いてごめんね!」

「…路地裏で転んだ」

 

 好奇心が抑えられずについ訊いてしまったハジメだが、その直後に後悔した。

 もし触れられたくない事だったら怒らせてしまう可能性があったからだ。

 だが、その心配は必要なかったようで、北条は弁当を食べながらポツポツと説明をしてくれた。

 

(もしかしてこの人、ポンコツなのでは?)

 

 それが話を聞いたハジメの感想である。まず、説明が言葉足らずで分かりにくい。

 何とか断片的な説明をつなぎ合わせてみると、ますますその思いが強くなるのを感じた。

 ハジメなりに解釈したものが次のとおりである。

 

「昨日の夜、散歩して街の路地裏に入ったら不良に絡まれた。喧嘩になり、有利に立ち回っていたが、落ちていた布切れを踏みつけて足を滑らせて転んだ。その後、何回か殴られたので怪我をした」

 

 である。それが何故か省略に省略を重ねて「路地裏で転んだ」だけになってしまったのだ。

 その後も昼休み中、ハジメは北条の数少ない言葉から真意を読み取る作業に勤しむことになる。

 

 これが北条衛と南雲ハジメが出会った日でもあり、ハジメにとっては苦労の日々でもあり、後に輝かしい思い出となる初めの日でもあった。

 

 次の日から、北条は毎日のようにハジメに話しかけてくるようになる。

 やがて一月が経ち、二月が経ち、じっとりと汗をかいて衣替えをする季節になった頃。

 ハジメは北条の人となりを大体把握することができていた。

 

 不愛想に見えるが、むしろ感情は豊かである。

 あまり表情が動かないのでそうは見えないが、こちらの話にはしっかりと答えてくれるし、言葉少ないながらも感情を示してくれる。

 頭の方も悪くはなく、最初に行われたテストでは平均以上の成績を取っていた。

 怪我をして登校してくるのは相変わらずだが、それもすでに誰も気にしなくなっていて、むしろ無傷で登校してくる方が珍しいとまで言われるようになっていた。

 話を聞いたところ、夜の街に出かけるたびに喧嘩を売られているということだった。

 口数が少なく言葉足らずで、聞きようによっては下に見られていると感じる人もいるので、気の短い相手なら確かに手が出るだろうなとハジメはそう思った。

 

 制服が完全に夏服になった頃から、時々ハジメは北条と放課後や休日を過ごすようになっていた。

 本屋まで新刊を買いに行ったり、普段は入らないような路地裏にある怪しい店を巡ってみたり、あるいはゲームセンターで並んでゲームに興じたりと、色々な事を一緒にした。

 

 そうして二人の間柄が親友と言ってもいい様になると、ハジメは言葉少ない北条の言いたい事をほとんど理解できるようになり、そのお陰もあってか翻訳係として不動の地位を得るようになっていた。

 

 その頃から、北条が夜な夜な街で他校の生徒と喧嘩をしているという噂話が流れることになる。

 時々畑山先生や天之河に呼び出されては説教を受けているが、顔色一つ変えずに聞き入れ、それでも一向に変わらないものだから、やがて『札付きの不良』のレッテルを貼られることになる。

 ハジメも北条に話を聞いてみたが、必要な事、とだけ言われて、それ以上は聞きだすことが出来なかった。

 

 文化祭が大成功に終わり、長いはずの夏休みがあっという間に過ぎる。

 夏休みにも北条に時々誘われて色々なところに遊びに行っており、特にプールに一緒に行った時の北条のアスリートもかくや、という肉体美による注目され具合は強烈に記憶に残っている。

 友達がいないんじゃないかと心配していた両親も、ハジメが北条を紹介することで安心したようで、「イマジナリーフレンドじゃなかったんだな、良かった」と、割と失礼な言葉を撤回させることができた。

 なお、母親は漫画の登場人物のネタが出来た、と喜んでいた。

 

 休み明けの定期試験が終わり(一緒に勉強したおかげか成績はかなり良かった)、修学旅行という一大イベントが終わるころになると、北条が怪我をして登校する事がほとんどなくなった。

 畑山先生はついに喧嘩をしなくなったのか、と喜んでいたが、実際に話を聞いてみると単純に喧嘩で傷を負う事がほとんどなくなっただけで、普通に今まで通り不良のたまり場である路地裏には行っているようだ。

 

 時間は経ち、少し肌寒くなってきた頃。

 ハジメはこれ以上は隠すのは難しいと判断して、両親の後押しもあり北条に自身のオタク趣味を打ち明けることにした。

 もちろん隠す事も出来なくはないのだが、ハジメ自身が隠したくないという想いがあったのだ。

 とある日の帰り道。その日もハジメは北条と一緒に放課後を過ごしていた。

 いつも通りであればそのまま解散になるが、今日に限ってハジメは北条を呼び止める。

 

「……ちょっといいかな。どうしても話したいことがあるんだ」

 

 北条は喋らない。ただ、黙って話を聞く姿勢を取る。

 夕暮れ時の閑散とした住宅街にカラスの鳴き声が3回響き渡り、ややあってハジメは緊張で乾いた口を開いた。

 

「実は僕、漫画とかゲームとかラノベとかが好きで。世間ではその、……いわゆる『オタク』って呼ばれるような人なんだ」

「…ああ。知っている」

「へあっ!? そ、そうなんだ…。それで、その…、北条くんは僕を軽蔑したりしないの?」

 

 あまりにもあっさりと自分のカミングアウトを流されて変な声が出る。

 しかし冷静になって考えてみれば、何度も一緒に本屋に行っているのだ。

 自分がどのようなものを買っているのか、自然と見えてしまうというもので、それに今まで気付かなかった己がひどく滑稽に思える。

 

「…人による。俺にとってお前は軽蔑どころか嫌悪にすら値しない」

 

 普通、こう言われれば無価値な趣味だと切り捨てられているように聞こえる。

 ハジメとて、出会った当初にこう言われたらそのままの意味で受け取っただろう。

 

「えっと、『好きなものは人によって違う。少なくとも俺にとってはお前の趣味は軽蔑するどころか嫌いになる理由にすらならない』、でいいのかな…?」

 

 だが、この半年間で鍛えられたハジメは一味違う。

 基本的に、北条は相手を貶すつもりでものを言うことは無い。

 ほんの時々、致命的に言葉が抜けるので真逆の意味に聞こえる事があるのだ。

 ある意味、才能なんじゃないかとハジメは思っている。

 北条が頷いたので、今の翻訳で合っているようだ。

 

「でも、その、僕のせいで迷惑が掛かっちゃわないかな…?」

「思わない。好きならば胸を張ればいい。周囲を伺っても付き合いはその程度だ」

 

 つまり、そこまで付き合いがないたくさんの他人の顔色を伺って、陰気に過ごすのではなく。

 自分を受け入れてくれる少しだけの仲間と陽気に過ごした方が良いと、そう北条は言っているのだ。

 その言葉は、ハジメの中にストンと落ちた。

 

「! はは、確かにその通りだね。好きなものはしょうがないんだし、いっそ開き直っちゃえばいいか。……ああ良かった、実はこの事で嫌われないか、すごく不安だったんだ」

 

 そして、少なくともここに一人、自分の趣味を受け入れてくれる人がいる。

 ならば、何も心配するような事は無いのだ。

 

「ありがとう北条くん、やっぱり相談して良かったよ。これからもよろしくね」

「ああ、俺からもお願いする」

 

 その日から、ハジメの世界は少しずつ変わっていく。

 オタク趣味を隠すのではなく、むしろオープンにしていくスタイルに。

 当然、敬遠されることも少なくないが、北条のように受け入れてくれる者もいた。

 元々優しい性格をしているハジメであったから、北条以外の友達が幾人か出来るのにさほど時間はかからなかった。

 

「よぉ南雲ぉ! また徹夜でゲームでもしてたのか? 俺も人の事は言えねぇが夜更かしはダメだぜぇ?」

「お前にエロゲはまだ早ぇぜ。俺くらいのキモオタにならねぇとなあ!」

「ちょっ、斎藤言い過ぎ! いくら本当だからってさあ、ぎゃははっ!」

「なんで毎回新刊を買えるわけ? 俺なら小遣いが足りなくて無理だわ! はあ……」

 

 檜山大介、中野信治、斎藤良樹、近藤礼一の4人は最初、ハジメのオタク趣味を知って、それをネタに虐めようとしていた。

 が、その場に北条がやって来たのが運の尽きだった。

 すでに多くの不良が道を開ける程に強さが知れ渡っていた北条に4人は締められた。

 

「ま、まあまあ。北条くん、別に僕は怒ってないから。あ、そうだ。折角だから4人とも、コレ読んでみる? もしかしたらハマるかもしれないよ?」

「…分かった。次は無い」

 

 制止するついでにラノベの布教を試みるハジメは、この半年でだいぶ強かになっていた。

 その翌日、4人から「続きはねぇのか」と催促される事となる。

 今ではこうして、友達という程ではないが、軽口を言い合う程度の仲にはなっている。

 

 それから少し時は流れて12月25日。

 クリスマスに北条から手触りの良い革製のブックカバーが贈られた。

 ハジメからは、家にあったものから厳選したお気に入りの資料集を贈る。

 普通、高校生が贈るようなものでは無かったが、北条は喜んで受け取ってくれた。

 

「俺も持っている。いつか、古びたら交換しよう」

 

 ブックカバーを渡された時に北条が言っていたことがハジメにはよく分からなかったが、それについては両親が後で教えてくれた。

 

「あら、これってブライドルレザーじゃない。良い友達を持ったわね、ハジメ」

「ちょっと不愛想だがいい子だな! 彼との繋がりを大切にするんだぞ!」

 

 どうやら、このブックカバーは何十年もの使用にも耐えうる物のようで、年月を重ねるごとに変化が楽しめるらしい。

 次の日から、ハジメはこのブックカバーにラノベを入れて持ち歩くようになった。

 

 大晦日になって、新年を迎える興奮が煮えたぎる中、活気付いた街をハジメが歩いていると、いつか見たような光景がハジメの目に飛び込んできた。

 

「すいません、すいません!」

「あぁ!? 謝って済む問題だと思ってんのかコラァ!」

 

 泣いてぐずる子供を庇って、必死に頭を下げる中年の女性と、それを睨みつける3人の不良たち。

 2年前のあの時に比べると、おばあさんか中年の女性か、という違いこそあれ、焼き増しのような状態だった。周りの人達は関わりたくないのか、遠巻きに眺めているだけだ。

 ハジメに迷いはなかった。

 

「すいません、堪忍してください!」

 

 あの時と同じように間に割って入り、迷わずに衆目の前で土下座をする。

 だが、前と同じように上手くはいかないようで。

 不良たちは見事な土下座をするハジメを見て、ゲラゲラと声を上げて笑い始めた。

 

「どっ、土下座っ! 俺初めて見たぜ! 超面白れェ!」

「傑作だ! 写真撮れ写真!」

「オラ、そいつらの代わりにお前が殴られとけ!」

 

 腕が振り上げられる気配がしたので、歯を食いしばって殴られる痛みに備えるが、痛みは来ない。それどころか、不良たちの笑い声も止んでいる。

 どういうことかと思いハジメが顔を上げると、他でも無い北条が不良の腕を掴んで、ハジメに振り下ろされる前に止めていた。

 

「間に合ったな」

「ぶ、黒鬼(ブラックオーガ)……!」

(えっ、何その厨二病満載の二つ名!?)

 

 彼は自分の与り知らない所で一体何をやっていたのか、ものすごく気になった。

 

「お、おい! これマズいんじゃ…!」

「…何が楽しい。何が面白い。何がまずい。言ってみろ」

「づうっ…! ギブギブッ! すいませんでしたぁ!」

 

 目を細めた北条が不良の腕を握ると、骨が軋むような音が鳴る。

 たまらず不良は謝り、次の瞬間には北条の手から解放された。

 這う這うの体で逃げていく不良たちを見送って、何度も中年の女性にお礼を言われた後、今度は二人の不良らしき男が息を切らせながらハジメと北条の前に現れた。

 

 すわ何事か、と身構えるハジメには目もくれず、二人は北条に向かって一礼した。

 

「北条のアニキ! 奴らのアジトを見つけたっすよ!」

「ここからさほど遠くない廃工場です!」

「…そうか」

 

 置いてけぼりにされるハジメに構うことなく話が進んでいく。

 街中で何してるんだこの人たち、という視線にハジメも巻き添えになりながら待つこと数分。

 話が終わったようで、北条はハジメに向き直って結論を述べた。

 

「南雲、俺は行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」

 

 言葉は少なく、気持ちは多く。

 今から北条が何処に行くのかは分からないが、決意を宿した目をした親友を送り出してやるのが自分の役割だと、ハジメは直感的に判断した。

 

 一人を先導にして去っていく北条。残ったもう一人がハジメに声を掛ける。

 長ランにリーゼントという絵に描いたような不良の男だった。

 

「アンタが南雲サンっすか?」

「え? うん、そうだけど…」

「なるほど。アニキのマブダチってのはアンタの事っすか。なら話しといてもいいっすね」

 

 そこから先は、想像力豊かなハジメをしても超展開と言わざるを得なかった。

 ひょんなことから街を荒らす不良グループに一人立ち向かうことになった北条。

 一つ一つ路地裏を回っては、不良グループのメンバーを倒して回る日々。

 孤独な戦いの中で二人の舎弟に出会い、とうとう本拠地に殴りこむ。

 

(北条くん……きみは一体どこの世界に生きてるんだ……)

 

 頼りになる親友が、喧嘩番長の世界の人だった。

 ラノベが一本書けそうなくらいの濃い内容である。

 

 その後、家に帰ったハジメは年末の行事もそこそこに、自室でダラダラと過ごすことになる。

 薄っすらと朝日が見えそうになる頃に北条から電話があり、初日の出を見に行かないかという誘いがあったので、両親に行先を告げて小さな山の上にある有触神社まで出かける。

 

 石で出来た階段を上ると鳥居の間に、朝日を後光のように背負った男が立っていた。

 

「勝った」

「うん、知ってる。…お疲れ様」

 

 初めて話をした日と同じように怪我をした北条に拳を突き出すと、驚いたように目を少し見開いた後、同じように拳を突き出して、コツンと拳がぶつかり合う小さい音が鳴った。

 大きくて堅い拳だった。

 

「…俺は、あまり言葉を伝えるのが得意ではない」

(今更過ぎるよ…)

 

 おみくじを引いて参拝を済ませた後、帰り道で北条はおもむろに口を開いた。

 最初の頃より少しだけマシになったが、それでも他人に誤解されることは多い。

 

「だが荒事には強いと思っている。お前は口が上手いが荒事はできない」

「そうだね。何と言うか、あまり怒ったりするのが得意じゃない事は自覚してるよ」

「ああ。だから埋め合っていければと思う」

 

 ハジメはそうだね、と一言返してそれっきり二人は何も話さなかった。

 

「それじゃあ僕はこっちだから、ここでお別れだね」

「…次は新学期か。またな、ハジメ」

「うん、またね、衛」

 

 3学期は怒涛の速さで過ぎていった。

 充実していればこうも日が経つのが早いのかと、自分でも驚いたものだ。

 

「ねえねえ南雲くん、北条くんって甘いものは好きなのかな?」

「うん、確か結構な甘党だったと思うよ」

 

 バレンタインでは北条が割と女子に人気がある事を知ったり。

 ついでにハジメもいくつかチョコレートを貰うことになったりした。

 

 そうして3学期が終わり、平和な春休みが始まる。

 春風を感じながら街を歩いていると、恰好からして不良であろう学生たちが、何故かボランティアに精を出している光景が毎日のように広がっていた。

 

 春休みが終わって新学年になると、ハジメや北条にも後輩ができる。

 桜がはらはらと舞う通学路を歩いていると、校門の前で北条がおろしたてであろう制服を着た生徒と話していたが、あまり言葉が通じていないのか怖がられているようだった。

 

(全く、仕方ないなあ。ここは僕が一肌脱ごう。あ、ついでに布教するのも良いかも)

 

 そんな他愛もない事を考えて、ハジメは桜吹雪の中を軽やかに走り出した。

 

 

 南雲ハジメは、いわゆるオタクである。

 

 自分の趣味が世間一般的に白い目で見られるであろうことは理解していた。

 けれどもう、それをひた隠しにすることは無い。

 

(今年もまた楽しい事があるといいなあ)

 

 だって、それが原因で誰かから嫌われる事はあるけれど。

 

 それでも一緒に笑い合える人がいるのだから。

 




ハジメ「まあまあ、ラノベどうぞ」

檜山「くやしいっ、でもっ……!」(ペラッペラッ
中野「CLANNADは人生」
斎藤「ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああ(ry」
近藤「俺、将来同人サークルを作るんだ…」

本編の裏ではこんな感じだったということで一つ。
ハジメくんは豹変するのではなく少しずつ変わっていく感じでした。
いや、これもある意味豹変なのかもしれないような…。

何か文章を書くコツとかってありませんかね…?
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