大魔道士ハルケギニアへ行く   作:灰汁人

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原作サイトって召喚当初はファンタジーな異世界に拉致されても現代日本の常識を根拠に文句を言うばかりな上、これと言った後ろ盾もなしに半殺しにされながら下げたくない頭は下げられないと啖呵を切っていましたが、若さゆえの無謀さも含めた平和ボケと言うにはいくら何でも考えなしの蛮勇が過ぎるし、もしかするとルーンの影響でそこらの危機感が麻痺していたのでは思い当たり別の意味で怖くなりました。
なお、本作サイトはハルキゲニアで召喚が行われた数日後にとある同級生の美少女から告白されており、そこから更に後輩や幼馴染からも告白され……と言った青春ストーリーの日々を送っていますが、そんなリア充は末永く爆ぜるが良いと思うので細かい描写はしません。
そして他のサイト不在作品でも古代中国展から盗み出された銅鏡を追い掛けて外史に迷い込んだり、東京タワーの展望台から女子中学生三人と一緒に異世界召喚されるみたいなイベントが起こっているかも知れませんし、何の脈絡もなくバイオハザードが起こりゾンビがうろつく世界で強制サバイバル生活とか、謎のメールに添付されていた悪魔召喚プログラムを興味本位でインストールして……みたいなクロス設定でガンダールヴのルーンなしに頑張っている可能性も皆無ではなく、逆にこれと言ったイベントが起こらず退屈な高校生活を送っているサイトも存在しているはずです。




〔土くれのフーケ〕

 明けて翌朝、初めての任務で使命感に燃えるルイズと使用人仲間から大まかな事情を聴いて心配するシエスタに軽い修行をさせたポップは、2人と別れマルトーに頼んであった人数分の弁当を受け取ると出発の時間にはかなり早いが待ち合わせの厩舎へと移動した。

 厩舎には寝不足なのか顔色の良くないギーシュが先に来ており、特に会話もないまま気まずい時間が流れて案内役のロングビルと身だしなみを整えに戻っていたルイズが前後して現れ、最後にキュルケが合流したので準備を終えた馬車に乗り込み出発する。

 ゆったりとした並足で走る馬車に乗っているのは、待ち合わせの時間ぎりぎりに現われたキュルケを責めるも度量のなさを指摘され怒るルイズ、やはり寝不足だったのかマントに身を包み居眠りするギーシュ、シエスタに渡しても受け取り拒否されない品はないかと荷台の隅で様々な道具を広げるポップにあれこれ質問するコルベール、その横でいつの間にかしれっと紛れ込んでいたタバサが本を読むふりをしながら聞き耳を立てており、案内役と御者を務めるロングビルは内心で自身の不運と迂闊さを嘆いていた。

 

(あぁクソッ、オスマンの爺ぃに脅されたとは言え土くれのフーケともあろう者がガキどもの引率ってかい!

 しかも間抜けでお人好しなコッパゲだけならともかく、見た目と違って切れ者な東方人の小僧も付いて来てやがる。

 どうせ今も使い魔のネズミとは別に遠見の鏡か何かでこっちを覗いてるんだろうし、こんな事なら打ち合わせてた通り衛兵と教師が駆け付けるまでゴーレムを暴れさせたら包囲される前に逃げ出すって爺ぃの筋書きに従っときゃ良かったよ。

 まっ、教師も衛兵も臆病風に吹かれたのか誰一人として現れなかったし、いつも広場の端にある小屋で何かしてるはずのコッパゲが今日に限って留守だったり、おまけに本来なら強力な固定化が掛かってるはずの宝物庫の壁が壊れるとか、これでお宝を盗み出さなきゃ逆に怪しまれちまうからねぇ。

 後は爺ぃの注文通り、お宝を回収したタイミングでゴーレムにヴァリエールの小娘を襲わせて小僧の実力を試すだけってかい。

 ガキどもに抵抗されたら少し面倒臭くなりそうだけど怪我で済ませて命は取らないつもりだし、運悪くおっ死んだとしても逃げなかった本人と杜撰な計画を考えた爺ぃの自己責任なんだから後で何か面倒が起ころうと知ったこっちゃないさね)

 

 何かあってもゴーレムで蹴散らせば良いと高を括るロングビルこと土くれのフーケ、彼女はモシャスのカードを使用したオスマンに誤魔化していた本来の実力が露呈し、冗談交じりに鎌を掛けられ過剰反応した事で正体を見破られ、官憲に突き出さない代わり協力するよう強いられている。

 緩み切った教員や衛兵に活を入れる目的である程度暴れたらそのまま逃げ去る予定だったが、本来ならゴーレムが少しばかり殴った程度ではびくともしないはずの壁が壊れた事で予定が大きく狂っており、仕方なく侵入した宝物庫で追い掛けて来たオスマンと話し合いフーケとしてのアジトに宝物を置いてから誰かに回収させると決定し、元より盗み出す予定で受領書を書いていた重くて用途不明な金属製の筒(破壊の杖)を渡され、馬に乗って数時間の距離を往復して帰り着いたのは深夜遅くになっていた。

 疲れていたので入浴は諦め夜食用に取り置きしていたパイで空腹を誤魔化し、ベッドに潜り込もうとしたら手紙を背負ったオスマンの使い魔がやって来たので仕方なく受け取り、書かれていた追加依頼の内容にこのまま宝物庫に駆け込み適当なマジックアテムを持ち逃げしてやろうかとも思ったが、相手は悪ふざけが好きな助平老人に見えて数百年を生きるとも言われる凄腕メイジであり、ルイズをゴーレムに襲わせるまでは指示に従いその後は成り行きに任せて身の振り方を決める事にする。

 穏便に事件が解決したなら辞職して口止め料代わりの退職金を受け取れば良いし、死人が出たらそのまま破壊の杖を叩き売って治安が悪化しているらしい故郷へ逃げ帰るか、いっそ土くれの悪名が広まってないゲルマニアやガリアで盗賊家業を続けるのも悪くない。

 寝不足と苛立ちから捨て鉢な思考をするフーケだが、仮に間違ってルイズに被害を加えようものなら子煩悩な両親が国外だろうと追い掛けて確実に報復するだろうし、例えそれがキュルケやギーシュだった場合でも追手が賞金稼ぎやグラモン家の私兵に代わるだけで絶望的な未来が待っているのは大差なく、本人に全く自覚がないまま人生最悪の貧乏くじを引かされていた。

 

 馬車がアジト近くの森に到着する頃になってもキュルケとルイズの言い争いは続いており、仮眠したギーシュは顔色が良くなったものの暗い雰囲気に変わりはなく、ポップとコルベールの会話に混ざっていたタバサは女性視点のアドバイスを行う代わりにいくつかのアイテムを受け取っている。

 苛立ちに外れ掛けたロングビルとしての仮面を被り直したフーケは、途中離脱する口実としてアジトがある森の奥には馬車が入らずここから先は徒歩になるので案内を終えたら自分は留守番に戻ると告げた。

 

 こうしてルイズの初冒険は幕を開けたのだが、最大戦力であるポップは本当の危機に陥るまでアドバイスはしても助けるつもりはないし、次点の戦力であるコルベールも偵察優先で積極的に戦うつもりはなく、戦闘に参加できそうなのは反りの合わないキュルケと疎遠なタバサに居ないよりはマシ程度なギーシュのみであり、本来なら救済アイテムとして使用可能な破壊の杖もガンダールヴのルーンがなければただのガラクタでしかない。

 




現状のキュルケとルイズがメイジとして戦った場合、ルイズの性格的に勝ち目がなくても真っ向勝負を挑みランクの違いで惨敗すると思われますが、逆に暗黒闘気と精霊魔法(主に回復呪文(ホイミ))を解禁した場合は近寄られた時点でキュルケの勝ち目がなくなる為、貴族の誇りを掛けた決闘かルール無用の殺し合いかで両者の勝率は大きく変動します。

現在のルイズはドットにしては異様に精神力が多い火系統メイジですが、元からの気質もあって好戦的な脳筋と化しており、暗黒闘気の糸を伸ばして縮めるフックショットみたいな移動方法で一点集中させたパンチを放つ人間ロケット的な攻撃方法を閃きました。

ポップが馬車の荷台に並べているのは見た目的にあまり高級そうでない装飾品や武器類が中心であり、キュルケの好みからは外れていたので何かやってるけど興味ないなくらいにしか思われてません。


【今回のオリジナル技】

オーラスマッシュ:フェニックスウイングを参考にルイズが開発した技、少女なのにビンタではなくグーパンを繰り出しているのは性分的な問題らしい。
 暗黒闘気を腕に集中させる事で本来以上の威力を出せるが、防御などは疎かになるので繰り出す場面を考えないと痛い目を見せられる。

ストリングショット:闘魔傀儡掌を参考にルイズが開発した技、指や手に持った物品の先から暗黒闘気の糸を放ち対象を拘束する。
 応用技として飛び上がりながら糸を縮めれば反動で自分を引っ張る移動手段としても使えるが、途中で方向転換できない上に移動先がバレバレなので簡単にカウンターを合わせられるし、今回のように糸を引っ掛けた対象が動くと自滅してしまう可能性が高い。

フロート:飛翔呪文(トベルーラ)を暗黒闘気で再現しようとした技、出力不足で低空をふわふわと浮かぶのがやっとな上に呪文やルーンを唱えたりする余裕はなく、移動速度も落下の勢いがなければ普通に歩くよりも遅くなる。

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