大魔道士ハルケギニアへ行く   作:灰汁人

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 作品によって強さの解釈が違うギーシュのレベルってどのくらいなんでしょうかね。
 軍人の息子だからそれなりに鍛えててもレベル10以上は無理があると思うし、遊んでいるからレベル1ってのも逆にありえない気がする。
 ワルキューレの具体的な強さも謎、見た目が似ているさまよう鎧よりかは弱いんだろうなと思いますが、ウィキで調べたら1グループ最大7体を同時に操れるみたいだし、原作やアニメでサイト相手にいけ好かない態度だったのにも納得ですわ。


*


 なお、レベル51時点のポップは力46、勇気の心に目覚めた後はレベルごとに1くらいのペースで成長していたので現在値は推定51前後、これって武闘家(DQ3)に換算するとレベル13くらいの数値なんですが、素早さはヒュンケルやマァムより低いものの160以上で守備力も計算式は不明ながら恐らく60以上、更に最大HPは266以上と来れば、普通に戦ったら魔法を使わなくてもギーシュの負けは確定なんですよね。



〔本作ポップのレベルは56ですが、平均的なギーシュのレベルはどれくらいでしょうか?〕

 学院に勤めるメイドのシエスタは自分がまだ寝ぼけているのだと思った。

 それは食堂に向かおうとしていたら視界の端で奇妙な物体が動いていたからであり、何だろうと気になって目を向けると庭の隅で見覚えのない黒髪の男性が放置されていた巨大鍋を背に乗せたまま、重さを感じさせない軽快な走りで入り口側の壁から裏側の壁までの距離を往復していたからである。

 鍋は直径1.5メイル深さ80サント程度と広幅で水平に背負っている事から表情こそ見えないが、一定のペースを保っている足取りに乱れはなく素人目にも無理をしている様子はない。

 

「ん、何か用かい?」

 

 しばらく見ていると走り終えたのか、男性は鍋を持ち上げたままの姿勢で振り向いた。

 見た感じはシエスタと同世代かそこら、怪力に似合わぬ中肉中背でこれまたシエスタと同じ黒髪と黒目を除くと目立たない平凡な容姿をしている。

 しかし、少年が何気ない動作で傾けた鍋から水が流れ落ちるのを見たシエスタは恐怖に近い感情を抱く、こんな物を軽々と持ち上げるのは力自慢とかのレベルでは断じてない。

 

「俺はポップ、昨日からルイズの使い魔として働く事になってね。

 良ければ洗濯する場所を教えてもらいたいんだが、ついでに道具とかあるんなら貸してくれるとありがたいんだけど頼めるかな?」

「……わっ、私はシエスタです。

 ミスタ・ポップ、お洗濯の道具をお探しでしたら持って来ます」

「いや、道具の置き場所とか知りたいから一緒に行くよ」

 

 最初は怯えていたシエスタだが、歩きながら雑談している間にあっさり警戒心を解いてしまっていた。

 貴族かと思っていたポップが異国の平民だったのと話し上手で陽気な性格に好感を抱いたらしく、自分にも仕事があるからと洗濯道具が置いてある場所に案内してすぐに名残惜しそうな様子で立ち去った。

 

 

*

 

 

「おーい、朝だぞ起きろ!」

「ウェヘヘッ、どぉらわらしの使い魔はドラゴンよ。

 ちぇるぺふとぉにゃんかへひゃにゃいは……」

「幸せそうで結構だが、こいつやたらと寝言が多いのな」

 

 腕組みしながら呆れ顔で呟くポップ、ルイズと自分の分の洗濯を終わらせてから部屋に戻り、瞑想などの室内でもできる修行をしていたら起こせと言われていた時間になったのだが、締まりのない笑みを浮かべて涎と寝言を垂れ流すルイズは声を掛けても起きる気配がなく、かと言ってわざわざ呪文を使って起こすのも馬鹿らしい。

 そこで鼻を摘んでみると効果覿面、間抜けた悲鳴を上げて手足をバタつかせたかと思うとすぐさま飛び起きた。

 

「おはよう、目は覚めたかい?」

「……あんた、誰?」

「誰とはご挨拶だな、お前さんが雇ったポップだよ。

 ほれ、着替えはここに置いとくから準備が終わったら朝飯を食いに行こうぜ?」

 

 寝惚けた様子のルイズに気分を悪くするでもなく、クローゼットから適当に取り出した着替えを置いてから退室するポップ、昨夜の騒動から下手にからかうと長くなると判断しての行動だ。

 何やら後ろから聞こえるのを無視して廊下に出ると隣室のドアがタイミングを合わせたかのように開き、昨夜の豊満赤毛娘が姿を現す。

 

「おはよう使い魔さん。

 あたしはキュルケ、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー、昨夜は色々あって聞けなかったけどあなたのお名前を聞かせてもらえるかしら?」

「俺はポップ、家名とかはないただのポップだ。

 そっちにいるのはあんたの使い魔かい?」

 

 ポップがキュルケの足元に視線をやる。

 そこにいたのは薄い赤色の巨大な爬虫類、尻尾の先が燃えているのとやや角ばっているのを除けばサンショウウオに似てなくもない。

 

「そうよ、この子があたしの使い魔、火属性のあたしに相応しいサラマンダーで名前はフレイムよ。

 見てこの尻尾、この子はきっと火竜山脈の生まれに間違いないわ!」

「ふーん、俺はここらの生まれじゃないから火竜山脈とか言われてもさっぱりだが、フレイムだっけか?

 こいつが並みの戦士じゃ相手にならねぇくらい強いってのは分かるぜ」

「ありがとう、褒め言葉と受け取っておくわ。

 でもね、フレイムを褒めるのならメイジを引き合いに出さないと駄目ね。

 この子の強さは……」

「朝っぱらから下らない自慢してんじゃないわよ!

 それにあんたも、ツェルプストーの相手なんかしなくっていいの!

 朝は忙しいんだから早く食堂に行くわよ!」

「へいへいっと、そんじゃキュルケにフレイム、またな」

 

 癇癪を起こして噛み付くルイズを言葉巧みに宥めながら歩き去るポップ、取り残されたキュルケはポカンとした様子で見送っていたが、少しして楽しそうな笑みを浮かべると二人の後を追った。

 

 

*

 

 

「うへぇ、朝からそんなに食うのかよ?」

「これは貴族用、あんたの分は調理場に用意させてあるからさっさと食べて入り口で待ってなさい」

 

 無駄に広く豪勢なアルヴィーズの食堂、馬鹿長いテーブルに並べられた大量の料理を前にげんなりとした表情のポップを振り向きもせず奥の調理場を指差すルイズ、夕食を食いそびれて空腹だったのもあり反論せず行ってみると仕事の区切りが着いたのか休憩するシエスタがいた。

 

「よっ、シエスタちゃん。

 また会ったな」

「あれっ、ポップさん?

 どうしたんですか?」

「ん、調理場に行けばメシを食わせてくれるってルイズに言われてね。

 悪いんだけど簡単なモンでいいから何か適当に食わせてくれないか?」

「それでしたら料理長のマルトーさんに……」

「……ミスタ・ポップですね?

 食事はもちろん待遇も全て貴族様と同じ扱いにするようミスタ・コルベールから伺ってます。

 今から料理を並べますんで、もう少し待ってて下さい」

 

 笑顔で返事をしようとしたシエスタの前に、不機嫌さを隠そうともしない調理人らしき大柄な男が割り込み、事務的な口調で告げると奥にいる他の調理人に料理を運ばせようとしたので、

 

「いや、コルベールさんが何を言ったのかは知らねぇけど俺は遠い国から呼ばれたってだけの平民なんで、待遇はもちろん食事だって他の使用人と同じで頼んます。

 それと、あなたの方が年上なんだから俺みたいな若造は呼び捨てにでもして下さい」

 

 平民の生まれで最近は保存食ばかり食べていたポップとしては、朝からフルコースを食べ切る自信がなく残すのも悪いと思っての発言だったが、大柄の男が背を向けたまま肩を震わせているのを見て気分を悪くさせたかと思うも

 

「気に入った!

 お前さん気に入ったぜ!

 俺はマルトー、ここを任されてる料理長だ。

 おうっ、お前らもこいつの言葉を聞いたかよ?

 この若さで謙虚な態度、ミスタ・コルベールが頭を下げて頼みに来たのも納得ってもんだ。

 全く、魔法が使えるってだけで偉ぶってる貴族のガキどもとは大違いだぜ」

 

 と豪快に笑いながら背中を何度も叩き、希望通り使用人向けの賄いを出してくれたので気にしない事にした。

 実際、マルトーは頑固で気難しい面があるものの認めた相手には素直に敬意を表する公平さを持ち合わせている。

 少しばかり思い込みが激しく感情を隠せない単純な人物ではあるが、オスマンから信頼され調理場を任されているだけあって学院で働く者からの人望も厚い。

 そんなマルトーに認められたポップは、他の使用人からすれば敬意を表すべき人物なのだろうが、出された食事に笑顔で感謝する姿は明るく素直な少年そのものだった。

 

 

*

 

 

 シエスタらと雑談していたので少し遅くなったが、食堂でキュルケに絡まれていたルイズより早く待ち合わせ場所に到着する。

 合流したポップが仲裁に入るも嫌味と皮肉の応酬は教室に入っても終わる気配がなく、教員らしきふくよかな中年女性が入って来るまで続けられた。

 

「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。

 このシュヴルーズ、毎年どのような使い魔が召喚されたのかを見るのがとても楽しみなのですよ。

 それとミス・ヴァリエール、あなたが東方の賢人を召喚したとミスタ・コルベールから伺いましたが随分とお若いのですね?」

「おいおい、ルイズ。

 いくら召喚したのが平民だったからって、そんな頭の悪そうなのが東方の賢人なんて誰が信じるもんかよ!

 あんまり馬鹿な嘘を吐いてると親の教育を疑われるぜ?」

 

 シュヴルーズの挨拶に割り込み、下卑た笑みを浮かべた小太りの少年が立ち上がるとルイズに対し上から目線で諭すような言葉を馬鹿にした口調で吐いた。

 

「先生、風邪っぴきのマリコルヌに侮辱されました!」

「僕の二つ名は風上で風邪っぴきじゃないぞ!

 そっちこそ侮辱するなよゼロのルイズ!」

「あんたの声、風邪をひいてるみたいにガラガラなのよ!」

 

 低次元な口論を呆れたように見ながら杖を振るシュヴルーズ、するといきなり現れた赤い玉が宙を飛びながら膨れ上がり、罵り合う二人の口元を覆うように張り付いた。

 

「二人とも、お友達をゼロだの風邪っぴきだのと呼んではいけません。

 罰としてしばらくそのままでいなさい。

 それとミスタ・グランドプレ、ミス・ヴァリエールの使い魔を東方の賢人だと言っているのはミスタ・コルベールであり、あなたの言葉はミス・ヴァリエールだけでなく彼女のご実家やミスタ・コルベールをも侮辱したのと同じになります。

 何より、証拠もなく人を疑うのはお互いを称え合うべき貴族の礼節に反する恥ずべき行為ですよ?」

 

 シュヴルーズに指摘され顔色を失くすマリコルヌ、教師であるコルベールの発言を確たる根拠もなく嘘だと決め付けた時点で失態だったが、下手をして今回の発言をルイズの実家に知られれば更なる騒動の種になる。

 普段から気楽にゼロ呼ばわりしているが、ルイズの実家は王家に連なる大貴族である公爵家だ。

 そんなラ・ヴァリエール家の子女を馬鹿にしたとなれば、マリコルヌを含むド・グランドプレ男爵家に繋がる全員が王宮や貴族仲間から断罪されたとしてもおかしくない。

 今更ながらに己の浅慮に気付いたマリコルヌだが、謝罪するタイミングを逃したままいつ来るかも分からぬ破滅にしばらく脅え暮らす事となった。

 

「私の二つ名は赤土、赤土のシュヴルーズです。

 これから一年、土系統の魔法を皆さんに講義します。

 ではミス・モンモランシ、魔法について簡単で構いませんので説明して下さい」

「はい。

 私たちが使っている魔法は、偉大なる始祖ブリミルより伝えられた水土風火の4つからなる系統魔法です。

 今は失われた虚無を合わせて全部で5つの系統とする説もあり、また少数ながらコモンマジックは独立した系統であると定義する意見も存在します。

 魔法の才能は血統に宿るとされており、王家や有力貴族の家系から多くのトライアングルやスクウェアクラスのメイジが生まれている反面、ドットやラインばかりの家系から強力なメイジが生まれるケースは極めて少数です。

 また、高い知性を持つ一部の幻獣や亜人が使うとされる先住魔法も存在しますが、こちらは杖が必要なく系統魔法とは全く異なる効果があると言われている他は詳細不明です」

 

 指名された金髪縦ロールで後頭部に赤い大きなリボンの生徒が淀みなく答え、それを聞いたシュヴルーズが我が意を得たりとばかりに満足そうな笑みを浮かべ頷いた。

 

「はい、結構です。

 少し補足すれば、生まれながらのクラスが生涯のクラスであるとは限りません。

 長い修練の末、ドットからトライアングルへと成長を遂げたメイジも少数ながら確かに存在します。

 また、土と風、火と水は互いに対抗しており、優れたメイジでも得意とする系統と反対の系統は不得手だったり使えない事が少なくありません。

 更に言えば、系統特化型とでも言うのか得意とする系統のみトライアングルやスクウェアクラスで、それ以外の魔法はコモンマジックを除くと全く使えない者も数は多くないにせよ確実に存在し、逆に全ての系統を満遍なく使用できる者はドットやラインクラスばかりでスクウェアどころかトライアングルすら滅多にいません。

 さて、少しばかり前置きが長くなってしまいましたが、これより新年度初の授業を始めたいと思います」

 

 生徒の説明で不足していた部分に自論を混ぜた解説を終え、懐から小石を取り出したシュヴルーズが詠唱しながら杖を振ると小石が淡く光を放ちながら黄金色に輝く金属に変わり、それまで興味なさげに見ていた生徒らの態度が急変し、教室内に興奮や驚きの声が飛び交った。

 

「そっ、それは、もしかして……ゴッ、ゴールドですか!」

「いいえ、残念ながらこれは真鍮です。

 ゴールドの錬金が可能なのはスクウェアクラス、私のクラスはトライアングルですからね。

 さて、今やって見せた錬金は対象となる物質の構成や質量を変化させる土系統の基本にして真髄と言える魔法です。

 自分の系統だから言うのではありませんが、土系統は万物の組成に加えて戦闘にも応用可能な系統であり、汎用性の高さにおいて他の系統とは比べ物にならない正に万能と言っても過言ではない系統だと私は思っています。

 錬金に限らず魔法を使うコツは明確なイメージであり、それを支えるのは深い知識に裏付けされた理論と飽くなき反復練習の積み重ねです」

 

 興奮した様子のキュルケに答え、授業を進行するシュヴルーズの姿を横に座るルイズがげんなりするくらい凝視していたポップだが、彼が見ていたのはシュヴルーズ本人ではなく魔法力の流れと変化である。

 ポップには魔法を解析して再現したり無効化する能力があり、錬金を解析して自分の知識にある錬金術との相違点や応用について考えを巡らせていたのだが、ルイズからすればシュヴルーズを食い入るように見詰めて黙り込んだ自分の使い魔候補はひょっとして熟女好きなのではとの疑惑を抱かせるだけだった。

 

「では、実際に錬金をやってもらいましょう。

 ……そうですね、ミス・ヴァリエール、こちらへ」

 

 何気ない呼び掛けに、それまで騒がしかった教室が息を呑む音を残し沈黙に包まれた。

 

「わたしが、ですか?」

「ええ、そうです。

 この石ころを錬金で望む金属に変えてごらんなさい」

「ですがその、わたしが魔法を使うと……」

「ミス・ヴァリエール、早くこちらへいらっしゃい?」

 

 再度シュヴルーズは呼び掛けるが、曖昧に答えて俯いたままのルイズは立ち上がろうとしない。

 

「先生!」

「どうかしましたかミス・モンモランシ」

「ミス・ヴァリエールの魔法は爆発します。

 とても危険なので他の生徒を指名して下さい」

 

 怯え交じりに懇願するモンモランシーに教室のほぼ全員が同意しているのを見て、嘆かわしいとばかりに頭を振ったシュヴルーズは包容力のある笑みを浮かべ、

 

「ミス・ヴァリエール、努力を諦めた者に成長はありません。

 ここは学び舎なのですから、失敗や批判を恐れず何度でも挑戦してごらんなさい?」

 

 その暖かい励ましに暗い表情でポップをチラチラと見ていたルイズが顔を上げ、

 

「やります」

 

 と、力強く答えて歩き出すや他の生徒は慌てて机の下に潜り込み、避難完了とばかりにこれから起こるであろう衝撃に備えているのを見たポップが事情を察して表情を引き締める。

 そして予想通りに爆発が起こり、それに驚き興奮した生徒の使い魔が暴れ出した。

 

「だから言ったのよ!

 あいつにやらせるなって!」

「もうヴァリエールは退学にしてくれよ!」

「俺のラッキーが蛇に食われた!

 ラッキーがぁ!」

 

 黒煙が漂い悲鳴や怒りの声が飛び交う教室の隅、爆砕した教卓から数メイルばかり離れた場所、左手でシュヴルーズを支えるように右手でルイズを荷物のように抱えたポップがそこにいた。

 連続瞬間移動呪文(ルーラ)で爆発の範囲から逃れたので3人には煤汚れすらないが、激しく揺られたルイズの顔色は良くないし、爆発に驚いたシュヴルーズは気絶している。

 失礼ながら単純に重量と体型の問題で抱き寄せると小脇に抱えるになっていたが、激しい自己嫌悪に囚われているルイズにはそれを抗議する元気もない。

 

「こりゃまた派手にやったなぁ?」

「……そうね」

 

 片目を閉じて冷やかすように問い掛けるポップだが、顔も上げず力なく答えるルイズに気付き、その原因に思い当たるや弛緩していた表情を引き締めた。

 

「なあルイズ、お前さんを立派な魔法使いにしてやると約束したよな?

 んでもって、昨日は色々あったからコースを聞いてなかったんだがどれにする?

 基本の復習からのイージーコース、ノーマルだと理論からでハードコースは実戦式、お勧めはイージーから段階を上げてくって感じだが……」

「ハードだろうがスペシャルハードだろうが何だっていいわよ!

 魔法が使えるようになるなら命くらいいくらでも掛けるし、どんな無茶苦茶な修行だってする。

 でもね、努力じゃどうにもならない現実があるのよ。

 あんたが気を使ってくれてるんなら、しばらく一人になりたいから夕方くらいまでどっか行っててくれない」

「そっか、スペシャルハードコースに挑むんだな。

 後で書類とか作っとくからサインよろしく、それと明日の朝までに運動用の動き易い服と靴を用意しとけよ?」

 

 言うが早いかその場にルイズを降ろしシュヴルーズを両腕に抱え直して教室を後にするポップ、少しばかり時間を置いて入れ替わりに駆け付けた教師らから罰として後片付けをするよう命じられたルイズは1人で黙々と作業していたが、作業は遅々として進まず終わったのは昼食の時間が始まって少し過ぎた頃だった。

 

 

*

 

 

「やあミスタ・ポップ、わざわざここへ来るとは私に何か用事ですかな?」

「ミスタはいりませんよコルベールさん、それよりちょいとばかり協力してもらいたいんすよ。

 約束通り明日からルイズの修行を始めたいんで、3~4日ばかり授業を休ませて旅に出る為の手続きをしたいのと、ついでに最初の1日だけ先生にも同行してもらえませんかね?

 あいつの系統は虚無だけみたいなんで、他の系統を覚えさせるのに特殊な修行をやるつもりなんすよ」

「……ポッ、ポップ君。

 ななな、何を根拠にミス・ヴァリエールの系統が虚無だと?」

「そんなの簡単な推察ですよ。

 ルイズはコモンや他の系統魔法が使えない。

 なのにサモン・サーヴァントは使える。

 状況から考えれば、普通ではない系統の特化型と考えるのが妥当でしょ?

 そうなると残りは虚無だけ、だったらルイズの系統は虚無か突然変異のサモン・サーヴァント専門になる。

 謎の爆発を失敗ではなく虚無の成功だったと仮定すれば、どうしてルイズが魔法を使えないのかにも筋が通りますしね」

 

 時間は少し遡りルイズが罰掃除を言い渡されたくらい。

 保健室にシュヴルーズを運んだポップは、担当授業をすっぽかして薬草の研究を始めていたコルベールの下を訪れ、他愛のない世間話をするような気楽さでとんでもない爆弾発言をしていた。

 途中までは温和な笑みを浮かべていたコルベールだったが、途中で聞き捨てならない単語が出て来るや驚愕に息を詰まらせ硬直する。

 しかし、続く説明に納得したような表情を浮かべると快く授業を休む手続きと修行への同行を引き受けた。

 

 

*

 

 

 さて、そんな事情も知らないルイズはやっと教室の片付けを終え、時間を確認すると昼過ぎだったので食堂に行ったものの食欲がなかったからスープとパン以外には手を付けず果実水を飲んでいたが、

 

「おーい、ギーシュとルイズの使い魔が決闘だってよ!」

 

 思わず盛大に吹き出し、デザートの余り待ちなのか食事が終わっても隣にいた小太りな生徒の顔面にぶっ掛けてしまった。

 

 

*

 

 

 決闘の舞台となったヴェストリの広場は、魔法学院の端にある風と火の塔の間に位置する普段は人気のない中庭であり、敷地の西側に位置するだけあって外壁と建物に挟まれた立地から日当たりはあまり良くない。

 いつもは通り過ぎるか逢い引きするくらいしか用事のない場所だが、平民と貴族が決闘すると聞いて見物に詰め掛けた物好きな生徒達でちょっとした人垣が出来ていた。

 少し離れた壁際にはキュルケの姿もあり、彼女の隣では青い髪の少女が我関さずと言った表情で本を読んでいる。

 

「諸君、決闘だ!」

 

 言葉と共にギーシュがバラの造花を掲げると周囲の観客から期待するような歓声が巻き起こった。

 余裕の表情を浮かべギャラリーに腕を振って答えるギーシュに対し、渋い表情で腕組みしたままシエスタに揺さぶられているポップ、ちなみにシエスタの表情は必死そのものだったが全く相手にされていない。

 しばらく満足げな様子で腕を振っていたギーシュだが、やっと気が済んだのかポップに向き直ると気取った笑みを浮かべ、全身を使った大仰な動作で造花を振り上げる。

 

「とりあえずは、逃げずにここまで来た勇気を誉めてやろうじゃないか?

 だがね、僕は勇敢な者に敬意を表さなくもないが分別のない者を見逃すつもりはない。

 そこで提案だが、君とそのメイドが誠意を込めて謝罪するのならば決闘を取り下げてやらなくもないと考えている。

 これは僕からの慈悲であり最後通告でもあるがどうするね?」

「おいおい、ここまで盛り上げといてそれじゃ周りの連中が納得しねぇだろ?

 それに俺があんたに謝る道理なんざねぇし、近くにいただけのシエスタは無関係だからその理屈はおかしい」

 

 突き付けられた造花に膝を折ろうとしていたシエスタの肩を右手で掴み、任せておけとばかりに優しく押し退けながら軽い口調で指摘するポップ、それに激高したギーシュが口を開こうとしたものの駆け込んで来たルイズの怒鳴り声に遮られた。

 

「あっ、あんた姿が見えないと思ってたら何やってるのよ?

 決闘だなんて平民がメイジに勝てるはずないでしょ!

 わたしも一緒に謝ってあげるから早くギーシュに謝りなさい」

「待ちたまえミス・ヴァリエール、いくら君が頭を下げようともう遅い。

 その使い魔に貴族を舐めた報いを与えなくては僕だけでなくここに集まった誰もが納得しない。

 残念ながら既に手遅れなのだよ」

「悪いなルイズ、こっちにも事情があって後には退けねぇんだわ。

 それと修行にゃ体術も含まれてっから、ちゃんと今日の戦いを見て予習しとくんだぞ?」

 

 焦り気味なルイズと高慢なギーシュに対し、飄々とした表情を浮かべあくまでマイペースを崩そうとしないポップの様子に周囲から非難の声が上がり、使い魔の死を予想したルイズの顔から血の気が引き言葉を失くす。

 

「良いだろう、命までは取るまいと思っていたが仕方ない。

 貴族を侮るその増長、死を以って償うがいい!

 我が名は青銅のギーシュ、このワルキューレで貴様を血の海に沈めてくれる!」

「餓鬼の喧嘩に大仰な口上なんざいらねぇ、ぶちのめしてやっからとっとと掛かって来やがれ」

 

 獰猛な笑みを浮かべゴーレムを生成するギーシュ、顔面蒼白で硬直するルイズをシエスタに預けのんびりと歩くポップ、数名を除いて緊迫感と興奮した人々の声に包まれるヴェストリの広場、騒ぎを聞き付けた教師らは人垣に阻まれ決闘を止めるどころか現場に辿り着けず右往左往している。

 

 

*

 

 

「ポップ君の持っている薬草の知識は正しく素晴らしい。

 すぐにでも王室にレポートを提出し、是非ともアカデミーで本格的な研究を開始するべきですぞ!」

「却下」

「何故です!

 貧困に喘ぐ平民でも手が届く秘薬が完成すれば、怪我で苦しむ多くの人々が救われるのですぞ。

 貧しさを理由に満足な治療も受けられず助かるはずの者が死ぬような状況を見過ごせと言うのですか?」

「そりゃ確かに、水の秘薬の代替品が平民でも気安く買える価格で出回るようになれば助かる者は増えよるわい。

 じゃがのミスタ・コーベルル、安価な治療薬の製法となれば王宮の馬鹿どもが独占するのが目に見えとる。

 それに、治療系の秘薬作りを生業とする連中とて黙っちゃおるまいよ。

 確実に騒動が起こるじゃろうし、下手をすれば研究者が良からぬ目に遭うやも知れん。

 仮に君の言う通り貧困に喘ぐ平民でも買える価格で広まったとして、日常的に怪我をする傭兵やら盗賊の手にも渡るとなれば後は言うまでもなかろう?」

「……私はコルベールです。

 治安の悪化とメイジ殺しの増加、救われる数と犠牲者の数を比べるのは不可能でしょうが、現状を考えると安易に広めるべき知識ではないのかも知れませんね」

 

 色々な意味で機嫌が良く意気揚々と学院長室を訪れたコルベールだったが、自分とルイズの外出手続きついでに提案を持ち掛けたらあっさり否定され落ち込んでいた。

 

「お話し中に失礼します。

 ヴェストリの広場で生徒達が決闘をしているとの報告が入りました。

 騒ぎを聞いた教員らが止めようとしたそうですが、興奮した生徒達は言う事を聞かず手に負えない状況だそうです。

 現場からは騒動を収めるのに眠りの鐘の使用を求めていますが許可なさいますか?」

「アホらし、たかが子供の喧嘩にわざわざ秘宝を使う必要もあるまい。

 止められんのなら放っておきなさい」

「宜しいのですか?」

「構わん。

 何ぞあった場合の責任はわしが取る。

 時に、そのバカ騒ぎを起こしたのは誰かね?」

「決闘を申し込んだのは2年生のギーシュ・ド・グラモンです」

「グラモンと言えば色と争いを好む家系、血の気が上か下にしか集まらんような連中ばかりなだけに決闘と言われても驚かんわい。

 して、不運な犠牲者は誰かね?」

「ミス・ヴァリエールの召喚した使い魔の少年、つまりミスタ・ポップだそうです」

 

 ノックもなく入室したロングビルの報告に顔色を変えるコルベールだが、やる気のなさそうな態度で聞いていたオスマンの方は慌てるでもなく頷きを返し、

 

「そうか、報告ご苦労じゃった。

 ついでに念の為、水系統が得意な教師に治療の準備をするよう手配しておいてくれるかね?

 もちろん、治療費は相場通りきっちり請求するように」

「わかりました」

 

 短く答え退室するロングビル、それを見送ったコルベールは問い掛けるような視線をオスマンに向け、

 

「オールド・オスマン、何か考えあっての判断ですよね?」

「うむ、正体不明なポップ君の実力が見たいと思っての。

 君とて彼が自分で言っておるような旅の商人なんぞと本気で信じちゃおるまいよ?」

「それは……確かにそうですが、私としては生徒を危険に晒すのはどうかと思います。

 大丈夫だとは思いますが、最悪の事態になる前に止めに入る許可は頂きますよ」

「決闘が禁じられておる理由を考えん血気盛んな若者にはええ薬になる。

 悪いがグラモンの馬鹿息子には試金石となってもらう、それにわしとて傍観はすれど生徒の安全くらいは確保するわい」

 

 両名が具体的な言葉にしないまま想定しているのはメイジ殺し、様々な手段を駆使してメイジを倒す平民と貴族の関係から外れた存在であり、慢心したメイジが平民の前に破れるのは珍しくとも皆無ではないのだが、世間知らずなこの生徒はそんな疑惑のあるポップの正体を探る危険な役目を頼まれもせず自ら買って出てくれたのである。

 気が気でない様子のコルベールに意地の悪い笑みを浮かべ答えたオスマンが杖を振ると、部屋の端に置かれている大きな鏡にヴェストリの広場の様子が映し出された。

 

 

*

 

 

 襲い掛かるワルキューレに足を引っ掛けて転がし、詰め寄られてから慌てて杖を振ろうとするギーシュの顔面を殴り飛ばしたポップは、背後で起き上がろうとするワルキューレを視界に入れるよう距離を開け、

 

「ぶん殴られても杖を手放さなかったのは褒めてやる。

 けどよ、相手が魔法を使わないからって舐めてると見せ場なしに負けちまうぜ?

 ほれ、待っててやっから全力を出してみな」

 

 と、不敵な笑みを浮かべながら挑発するかのように指で差し招いた。

 ポップの職業は非力な魔法使いだが、普通では到達不能な高レベルかつ大魔王を筆頭に様々な強敵と戦いを繰り広げ生き延びた歴戦の猛者であり、鍛え上げても凡人レベルの攻撃力を除けば超一流の戦士や武闘家にも劣らぬ高い能力とアバンやマトリフの教えを下地に、濃密な戦闘経験から築き上げた独自の必勝パターンをいくつも持っている。

 今回はルイズに見せる目的で一般人にも再現可能な程度に抑えているが、本来なら青銅で作られたゴーレム程度は素手でも少し手間取る程度で問題なく叩き壊せるだけの実力があった。

 

「くっ……な、嘗めるなァァァァァァァァッ!!」

「あれだけ言っておいてギーシュったら情けないわねぇ、タバサもそう思わない?」

「逆」

「逆って何が?」

「青銅が弱いのではなくあの使い魔が強い。

 彼は攻撃のタイミングを読んでいる。

 でも、高度な技術は使ってない。

 それなりの実戦経験があれば到達できる動き」

「ふーん、見た感じパッとしないけど喧嘩慣れしてるのかしら?」

「恐らく」

 

 怒り狂って5体のワルキューレを追加するギーシュ、つまらなそうに眺めるキュルケとは対照的にそれまで読んでいた本を閉じ顔を上げるタバサ、立ち去るタイミングを逃したシエスタは逃げ回るポップに悲鳴混じりの声援を送っているが、挑発を強がりと判断したルイズは怪我をしない内に降参するようしつこく呼び掛けている。

 派手に逃げ回りながら徐々にギーシュから離れるポップ、数が増えた上に距離が開いたワルキューレの動作は最初と比べてかなり大雑把なものになり、合い間に地面から土の手を生成して対象の足を掴んだり土礫を飛ばす呪文を唱えてはいるが、遠くで動き回る目標に命中させるだけの技量がないので精神力の無駄使いでしかない。

 もう1歩で捕まえられそうな状況が何度も続き苛立ったギーシュは、役割分担して回り込ませるなり包囲させると言った戦術もなくひたすら逃げるポップの背中を追わせる事にのみ集中する。

 頭に血が上っているのか、喜劇じみた攻防の末に6体のワルキューレを引き連れて走るポップが捕まらない程度に速度を調節していたと気付けなかったのが勝負の別れ目、ある程度まで距離を稼いだポップが反転加速して追っ手を引き離した時点でやっとギーシュも危機感を覚えたらしく、呪文の乱発で消耗した精神力を振り絞ってワルキューレを生成しようとしたものの、詠唱の途中で距離を詰められ抵抗する間もなく杖を奪われた。

 

「さて、まだ続けるかい?」

「残念だが杖を失くしては勝ち目もない。

 平民相手と僕は慢心していたらしい。

 諸君、このギーシュ・ド・グラモンは無様ながら平民に敗北した!

 どうか勇敢なる勝者に祝福の拍手を送ってやってくれたまえ」

 

 投げ掛けられた降伏勧告に抵抗や反論もなくあっさり降伏するギーシュ、自嘲の笑みを浮かべ舞台役者じみた大げさな仕草でポップの腕を持ち上げ朗々と自身の敗北を宣言し、周囲に同意を求める視線を送る。

 芝居掛かった敗北宣言に応え、お義理で数人が拍手するとそれに釣られるようにして拍手の量は増えたが、全体的に見て祝福の笑顔より困惑や憮然とした表情を浮かべている者が圧倒的に多かった。

 それも当然、貴族>越えられない壁>平民こそがトリステインの常識であり、平民が貴族に逆らった上に決闘を行ってしかも勝利する異常な状況をすんなり受け入れるのは不可能だったからである。

 数秒の思考停止から立ち直った者がギーシュの潔さを褒め、他の者もそれに追従するような賞賛の言葉を述べるに至り、まばらだった拍手は満場の歓声に変わった。

 つまりあれは、平民の実力ではなく貴族に立ち向かう勇敢さに心を打たれたギーシュが勝ちを譲ったのだと解釈し、貴族と平民の決闘ではなく即興の茶番劇だったのだと受け入れ難い現実を書き換えたのである。

 

 

*

 

 

「……ポップ君が勝ってしまいましたね。

 しかも、武器や特殊な技術を使わずにドットメイジを手玉に取った。

 ですがオールド・オスマン、もし彼に特殊な能力があったならもっとスマートに戦うのではないでしょうか?

 手際こそ見事でしたが、あれでは喧嘩に慣れたそこらの若者と大差ないように思えます」

「確かにの。

 グラモンの子倅が抜けておった分を差し引いても見事な作戦勝ちじゃったが、ポップ君の戦い方から高度に洗練されたものは見られなんだ。

 とは言え、数体のゴーレムを差し向けられ、避け損なえば大怪我か下手をすれば死ぬかも知れんような状況で躊躇なく動き回れるなんぞ素人の域を超えておるわい。

 それとこれは興味本位の質問なんじゃが、ミスタ・コルベール……いや、炎蛇のコルベールはあの少年と戦ったとして勝てると思うかね?」

 

 半ば疑うようなコルベールの感想に答え、結果ではなく前提を踏まえた見解を述べてから逆に質問したオスマンだが、緩い表情やのんびりした口調でごまかしてはいてもポップに対する隠し切れない警戒心がその瞳に宿っていた。

 だがしかしそれも当然、内容そのものはお粗末な喜劇じみた展開だったにしても場慣れした素人レベルの技量でドットメイジを出し抜くなんて曲芸を見せられては、大半の者は偶然の勝利と誤解するだろうし現に経験の浅い生徒らは完全に騙されているようで、ほとんどの者が平民に勝ちを譲ったと解釈している。

 

「そうですね、彼は見た目とは裏腹にかなりの実戦を経験しているのは間違いないと思います。

 私が戦うとすれば、その時の状況や準備の有る無しで勝率は変わるでしょうが、少なくともポップ君はラインメイジと戦っても勝てる程度の実力はあると見るべきでしょうね。

 とは言え、彼は問題解決の手段として安易な暴力よりも対話を好む理知的な人物のようですし、勝ち負け云々を考えるのではなく戦いを避ける手段を考えるべきだと私は思います。

 結論を言えば、あからさまにならない範囲で便宜を図りつつミス・ヴァリエールと友好関係を築かせるのが賢明ではないかと?」

「うむ、それが無難じゃろうな。

 しかしそうなると今回の騒ぎが大きくなるのはちと都合が悪い。

 どうせ授業を休む予定だった事じゃし、見せしめも兼ねてミス・ヴァリエールを自宅謹慎にして決闘禁止のルール違反には厳罰で臨む姿勢を示せば下手な手出しをする者もおるまいよ」

 

 穏やかな笑みを浮かべ同意を求めるコルベールに答え、愉快げに笑って肯定するオスマンだったが心中は穏やかでない。

 もし今後の対応を間違えれば、国内有数の大貴族であるヴァリエール家や個人的にはもっと怖い烈風のカリンを敵に回す状況だと言う事に今更ながら気付いてしまったからである。

 

 

*

 

 

「おお!

 『我らの拳』だ!

 『我らの拳』が来たぞ!」

「何ですか、その『我らの拳』ってのは?」

 

 シエスタを送って調理場を訪れたポップに突進する勢いでマルトーが声を張り上げ抱き付こうとしたが、するりとかわされ転びそうになったところを腕を引っ張って助けられると言ったやり取りを数度ばかり繰り返し、押し留めてから仕切り直しも兼ねて問い掛ける。

 

「お前さんは、いけ好かねぇ貴族の小僧をぶん殴った上に全力を出させてから勝ちやがった。

 普通の平民が貴族に勝とうと思ったら不意打ちするか、媚びを売って油断させといてから騙し討ちにするくらいしか手がなくって、その場は勝てても後んなって腹いせに家族や親戚どころか下手すりゃ関係ない奴らまでぶっ殺されちまうってのに、きっちり負けを認めさせて自分は怪我なしと来てやがる。

 だからお前さんは『我らの拳』なのさ」

「んなこたぁねぇ、メイジなんてのは魔法を使えるってだけの人間だよ。

 俺の故郷にゃ人間離れして強ぇ戦士やら武闘家がゴロゴロいたし、知られてないだけで探せばこっちにもいるんじゃないですか?

 確かに貴族に魔法を使える奴は多かったが、魔法が使えるってだけで偉いってな考え方はほんの少数だったし、そもそも魔法にあんま良いイメージがないですからね」

 

 語る側のポップ本人にしてもトリステインの常識からして荒唐無稽な内容だと思っていただけに、マルトーら聴衆からは法螺だらけの愉快な与太話だと笑われても気にはならなかったが、間近で戦いぶりを見ていたシエスタのみが瞳をまるで夢見る子供のように輝かせていた。

 

 そんなシエスタの様子を面白がったマルトーがいっそポップに弟子入りすればどうだと唆し、盛り上がっていた場の勢いもあって新たな弟子が増えたのは、ある意味で当然の流れだったのかも知れない。

 




デルムリン島での修行時代に大岩を担いだままスクワットしてたポップの力は17(コミック三巻のデータより)以下、DQ3のレーベで大岩を動かしてたオマージュだと思いますが現在値はその3倍、そんな超人に喧嘩を吹っ掛けるとか知らないって怖いですよね。
ポップとギーシュが決闘するまでの流れは原作とほぼ同様なので省略、適当に丸め込もうかとも思ったけどルイズを馬鹿にされたので一発ぶん殴る事にしました。
コントじみた戦い方はキュルケのお気に召さなかったらしく、プロ視線で見ていたタバサのお眼鏡にもかなわなかった為、恋愛フラグに繋がる特殊イベントは発生しません。
最後にマルトーが述べていた貴族との戦い方や陰険な報復は極論であり、原作でもアニエスとかトーマスみたいな武闘派のメイジ殺しがいましたし、平民に喧嘩で負けたから仕返しで一族郎党を皆殺しとかは少数派の考え(ただし復讐しないとは言ってない)です。
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