大魔道士ハルケギニアへ行く   作:灰汁人

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今回は途中から自宅謹慎と言うか客間に軟禁中のルイズ視点となっており、取り留めのない思考がダラダラと続くだけです。

この辺りから独自解釈と言う名のご都合主義設定が多くなり、公式に存在しない要素は全て捏造または他シリーズからの流用であるだけでなく、それ以外にも勘違いや覚え違いで正しくない情報を書くかも知れません。
例えば、原作でポップが未契約の破邪呪文(マホカトール)を使用する描写はありましたが、砕いた魔法石の力を借りてそれっぽく再現した代物(または近くにあったゴメちゃんこと『神の涙』が願いを受けて起こした奇跡)であり、習得魔法の応用技と思しき五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)極大消滅呪文(メドローア)を除き見ただけの魔法を再現できるみたいな特殊能力は恐らくないと思いますし、ハルキゲニアの魔法に関する赤土先生の授業内容なんかもそれっぽく書いた捏造です。





〔憂鬱な里帰り 前編〕

 決闘騒動の処罰としてお目付け役のコルベールを連れて3日の自宅謹慎となったルイズ、表面的には学院からヴァリエール領までの移動に必要な時間が片道2日半である事を考慮すれば停学一週間(ハルケギニアの暦で8日)を言い渡されたギーシュとは痛み分けのように思えるが、実家に報告の手紙を送られるだけのギーシュに対し家庭訪問されるルイズの方が厳しい処分を受けたと大半の者が見ていた。

 

「……殺される。

 規則で禁止されている決闘をした上、罰で自宅謹慎になりましたなんて言ったらお母さまは確実に激怒するわ」

「安心なさいミス・ヴァリエール、昨日の内にオールド・オスマンが今回の経緯を手紙にして貴女の実家へ送っているそうです。

 それに私もお母上の怒りが収まるよう取り成しするつもりですから元気を出しなさい」

 

 虚ろな表情で小刻みに震えるルイズを心配してか、取り成すような口調で肩を叩くコルベールの背後、処置なしといった様子で肩を竦めるポップの隣にどことなく浮かれた表情を浮かべたシエスタが歩み寄る。

 

「あの私、貴族様の馬車に乗るの初めてなんです。

 普段は荷馬車か乗り合い馬車だからちょっと緊張しちゃいますね」

「悪いなシエスタ、今回はこいつを使うから馬車はなしだ。

 ルイズ、実家を想像しながらこいつを投げてみてくれ」

「何なの?

 やれと言われりゃやるけど何か意味でも……」

 

 ポップの差し出す金属の柄が付いた大き目の羽根飾りを死んだ魚のような瞳で受け取ったルイズがそれでも律儀に投げ上げた瞬間、同行者と判定されたポップ、シエスタ、コルベールと馬車が光に包まれて飛び去り、どこかの城内らしき庭園の池に浮かぶ小船の上へと落下した。

 驚いて暴れる馬の声に駆け付けたらしき使用人らも含めて誰もが呆然としていたが、知識の多さから状況と原因を理解したポップがバツの悪そうな苦笑いを浮かべて頭を掻き

 

「ルイズが使った『キメラの翼』は便利なんだが、目的地の付近に何かしら強い思い出がある場所とかがあるとそっちのイメージが優先されちまうみたいでな。

 ここはルイズにとって、よっぽど思い入れの深い記憶がある場所なんだろうよ」

 

 と、あまりフォローにならないフォローを入れたが、ルイズからは事前の説明不足を責められ好奇心に火がついたコルベールからは質問攻めにされ、貴族用の馬車に乗るのを楽しみにしていたシエスタからはジト目で見られてしまった。

 

 

*

 

 

 騒ぎを聞き駆け付けたルイズの母カリーヌから魔王級のプレッシャーが飛ばされ、幼少時のトラウマを発動させたルイズが池の水ではない水分を撒き散らしそうになったり、事情を説明しようとしたコルベールの不得要領な発言で逆に場の空気が悪くなるなどのちょっとしたトラブルはあったが、事前にオールド・オスマンから説明の手紙を受け取っていた事と場慣れしたポップの取り成しによって詳しい説明は夕食の後ですると約束しただけで一行は開放され、まずは濡れた身体を何とかすべく風呂場に案内された。

 実際カリーヌ側からすれば、ヒステリックに騒いでいたルイズの淑女らしからぬ行動とコルベールの歯切れの悪い説明に不快感を抱いていただけであり、愛娘が魔法を使えるようになるかも知れないと書かれた手紙に一縷の望みを託しているのだからわざわざ邪魔をしようとは思わないし、件の家庭教師とやらも見た目に似合わず思わず決闘を申し込みたくなるくらいの実力者だと直感したので逆に期待していたりする。

 それでも鋼鉄の規律を信条とするカリーヌは翌日から自宅謹慎3日の処分をきっちり受けさせると明言したが、とある縁から学院に来訪した東方の賢人でルイズの家庭教師を引き受けた人物としか紹介されてないポップはお咎めなし、ギーシュとの決闘は使い魔の主人であるルイズが行ったものとして処理されており、色々と面倒な説明を嫌ったオスマンの手紙にも決闘の詳しい経緯や内容は書かれてない。

 

 

*

 

 

視点変更:ルイズ

 

 

*

 

 

「これから3日間、許可なくこの部屋を出てはなりません。

 食事は運ばせますし、風呂とトイレは奥の扉、あなたが連れて来たメイドを連絡役として隣の部屋に控えさせます。

 それと同行した教員と家庭教師ですが、彼らには謹慎期間中の授業を遠慮してもらう代わり、領内での自由行動を許可しました」

 

 平坦な声で切り口上に述べたお母さまが立ち去り、付き添っていたシエスタにも呼ぶまで自由にしてて良いと告げてしまえば、暇潰しになりそうな本や遊具の類が取り除かれた部屋でする事はなく、謹慎中の立場で何をしたものかと歩み寄った窓際から外の風景をぼんやり眺める。

 

 こうして一人になると考えてしまうのが、わたしの使い魔として召喚されたにも関わらず気付けば家庭教師となっていた黒髪の少年、地図では確認できないくらい遠くの出身らしい彼はポップと名乗り、口が悪くて無礼だけど食堂でしょっちゅう隣に座る風邪っぴきみたく変な目で見たりしないし、魔法を使えないからって憐れんだり馬鹿にする連中と違い対等な人間として扱ってくれた。

 

 家族にだってわたしを憐れんだり辛そうな目で見られる事があったし、領民や使用人からは尊敬されるどころか腫れ物扱いで魔法に関する話題を避けるよう気遣われる始末、授業で指名される度に爆発を起こしまくった学院では鼻摘みの嫌われ者となっており、罵倒やからかい以外の目的で話し掛けて来る物好きは変人で知られるミスタ・コルベールくらいしかなく、同世代の男の子とまともな会話したのは何気に初めてだったりする。

 

 他に対等の会話をした男性は婚約者のワルドくらいだが、彼は十歳も年上かつ数年前に魔法衛士隊で出世してから音信不通となっており、今でも鮮明に思い出せる優しい笑みと言葉を再会した時にもくれるかどうかすら不明だし、そもそもが酒宴の席で交わされた親同士の口約束である以上、わたしの事などすっかり忘れて恋人を作ったり結婚しているかも知れない。

 

 口約束と契約は違う事くらい知ってるし、だけどわたしは自分を特別扱いしてくれる人が欲しくって、ワルドが優しかったのは婚約者に対する愛情からじゃなく、それを誰も訂正してくれなかったのは子供の戯言と思い相手にしてなかったから……これ以上は考えても惨めになるだけね。

 

 婚期に焦ったエレオノール姉さまに横取りされるとか、本当はちいねえさまが好きだからそっちに乗り換えるみたいな最悪の未来と比べれば、子供の頃に憧れた人が自分の婚約者だと勝手に思い込んでた痛い子って方が気分的にはいくらかマシだし、それこそ魔法が使えないわたしに愛想を尽かしての婚約破棄とかになったら立ち直れなくなるわ。

 

 気性が荒いエレオノール姉さまは婚約者に逃げられてばかり、病弱なちいねえさまは子供を望めない身体と言われてて、残るわたしが婿を取らないとヴァリエール公爵家は断絶する以上、このまま魔法が使えなくても学院を卒業したら結婚させられる事だけは確実だ。

 

 優秀な研究者でもあるエレオノール姉さまの婚約相手はすぐに見つかるが、魔法を使えないわたしだと家柄と財産が目当てで婿入りするみたいな汚名が付きまとう為、そうなると外部の人間ではなく一族を支える郎党の誰かと結婚させられそうな気がする。

 

 この後、落ち込んだまま変な方向に思考が迷走し、昼食を持って来たシエスタが心配して声を掛けるまで続いた。

 

 

*

 

 

「では、何か御用があれば控え室までお声を掛けて下さい」

 

 シエスタに一人になりたいと告げて退室するのを見送り、改めてポップの正体と言うかどんな奴なのかを考える。

 

 わたしに平民呼ばわりされてそれを認めるような言動はしてたが、そこらの平民にメイジであるギーシュを殴り倒せる度胸はないと思うし、足はそんなに速くなくても6体のゴーレムに追い掛けられて逃げ切るとかわたしだったらまず無理ね。

 

 それと昨日の朝に渡された装飾品みたいなマジックアイテム、放り投げるだけで思い浮かべた場所に瞬間移動できるとか意味わかんないし、一昨日の授業中にわたしとミセス・シュヴルーズを助けた方法もあれだったのかしら?

 

 東方までは飛べないだろうが、ポップのマジックアイテムは学院と家を一瞬で移動できたし、使用回数や条件は不明だけどかなり高価であろう事は間違いなく、他にも何か凄い薬を使って自分の怪我を治したとかミスタ・コルベールが言っていたので、実は大きな商家の跡取り息子が修行で行商中に召喚されたみたいな感じなのかも知れない。

 

 東方にはこちらと異なる独自の文化や技術があると言われており、どこかの商人が王都で売り出した緑色をしたお茶と風変わりなお菓子とかお父さまがちいねえさまの薬として取り寄せた臭くて茶色い塊なんかも東方の産物と聞いてるし、何年か前に社交場で流行した折り畳めない扇や細長いヘアピンも東方のデザインを参考に作られたらしく、東方から嗜好品や装飾品の類を取り寄せるのは貴族や豪商が自身の力を示す為によくやるアピールである反面、それっぽく拵えた偽物の販売や交易隊のパトロン募集を騙った詐欺が横行している。

 

 

*

 

 

 東方に関する考察でおよそ2時間経過

 

 

*

 

 

 又しても思考が他所に逸れてしまったが、こうやって考えててもポップは出会って数日の相手だし、少し口が悪くて無礼だけどそんなに意地悪じゃなくって、不思議なマジックアイテムを持っててギーシュが油断してたとは言え決闘に勝ったくらいしか分かんないのよね。

 

 参考までにシエスタの意見を聞きたくなって控え室を覗いたら熟睡してて、呼ばれるか夕食までに起きるつもりだったとか昼寝が趣味なんですとか、聞いてもないのに控え室にあるベッドの寝心地を褒めてたけど控え室で待機してるのも仕事の内だし、貴族の傍付きをしてるのに居眠りどころか堂々と昼寝するとは、この娘ってば大人しそうな見た目のくせに不真面目と言うか神経が太過ぎるわよ。

 

 立場的に学院所属のメイドだから本来はミスタ・コルベール付きだし、こっちから一人になりたいと言った手前もあって文句を言い難く、起こした際にこちらが気の毒になるくらい謝られたのを改めて責めるってのも後味悪いから軽い叱責だけで不問とする。

 

 何だか今日は考えが上手く纏まらないし、ここ数日の寝不足もあって夕食まで仮眠を取るとシエスタに告げたのだが、それなら愛用するマジックアイテムの予備があるからと強く勧められて差し出された枕を試してみたら、夢も見ないで熟睡したのか気付いたら明け方になっていた。

 

 平民にも買えるくらい安い値段のマジックアイテムなんてどうせ偽物だと思っていたのに、少し変わった形と何かの花みたいな匂いがする以外はそこらにありそうな枕でこんなにぐっすり眠れるなんて驚きね。

 

 ……って、謹慎中なのに昼寝してたら次の日になってるとか、お母さまに知られたらエア・ストームでぶっ飛ばされるじゃないの!

 

 その後、無駄と知りながら朝食を運んで来た使用人に口止めを頼んだが、昨日の夕食時には報告されてたけれど怒るお母さまをポップが取り成し、監視役のミスタ・コルベールからオールド・オスマンに報告して追加の罰則を科すか否かを裁定してもらう事で何とか収まったらしく、何とか命拾いできた幸運を始祖ブリミルに感謝する。

 

 

*

 

 

「ポップさんをどう思っているか、ですか?

 第一印象は凄い力持ちでした。

 こーんな大きな鍋を担いだまま走ってて、しかも中にいっぱい水が入ってたのにちっとも零してなかったんですよ!

 だから怖い人かと思ったけど話したら凄く気さくな方で話してても退屈しないし、自然な流れでドアを開けたり荷物を持ってくれるとかの気遣いもしてくれて、私には弟しかいないけどもしお兄ちゃんがいるとしたらこんな感じかなって思いました」

 

 朝食を食べ終え、昨日は寝てしまって聞きそびれたシエスタの意見を聞いてみたのだが、どうして水が入った鍋を背負って走るのか前後を説明しないとわけわかんないし、両腕を大げさに広げるものだから一人じゃ絶対に持ち上がらないサイズになってるし、そもそも水をいっぱい入れて走ったら撒き散らすかバランス崩して取り落とすかのどっちかになるわよ。

 それとあいつが兄みたいな感じってのは何となく分かるけど、力持ちで気さくで話題が豊富で気遣いできるなら恋人にしたいとかは考えないの?

 

「えっとその、例えが恋人じゃない理由は、ポップさんが凄くて優しい人だとは思っているんですよ。

 だけどやっぱり私もお年頃ですし、彼氏にするなら劇場で『烈風のカリン』役を演じているファビアン様みたいな美形とか、相棒のサンドリオン役を演じているクレマンさんのような渋い大人の男性が好みでして、何と言うかポップさんは家族とか友達よりも遠いけど他人じゃないくらいの距離感ですかね。

 例えて言うならば、近所に住んでる仲の良いお兄さんとか頼れる仕事仲間みたいな、男女の関係は考えられないけど好ましい異性って感じ、ミスタ・コルベールのような人って言えば分かりますか、間違いなく良い方なんだけど恋人は違うなってイメージですよね?」

 

 ……ノーコメントで、と言うか男性は見た目も大切だけど学院の生徒みたく内面が駄目だと意味ないわよ?

 

 この後も変な勢いのまま異性談義が盛り上がってたらお昼になり、食事が終わってからは学院に勤める使用人や生徒のゴシップを語りたがるシエスタの圧力に負けて聞き役に徹し、気付いたら夕方になっていたので食事と入浴を済ませて今度こそポップの正体を考えようとしていたのだが、ワイン瓶を抱えた酔っ払いの襲撃でそれどころではなくなった。

 

 翌朝、昨夜の乱行狼藉をすっぱり忘れていたシエスタには禁酒を言い渡し、恐らく善意だろうがワインとチーズを差し入れた犯人に文句を言ってやろうかとも思ったが、お母さまに知られれば間違いなく大事になるので不問とする。

 

 

*

 

 

 謹慎中の3日間、意図的に触れないようしていたが、そろそろ現実を受け入れテーブルに置いた羊皮紙と向き合う事にする。

 

 帰宅した日の夜に良く考えてサインするよう告げられ渡された『魔法使い養成スペシャルハードコース受講申込書』って表題の契約書、副題に添えられたスペシャルハードの文言が気になり詳しく読み込んで見れば、怪我や危険な修行に文句を言わないとか最悪だと命を失う可能性すらあるみたいな恐ろしい内容が列記されていたが、ポップに問われた際に下手な冗談と思っていたにせよ『魔法が使えるようになるなら命くらいいくらでも掛けるし、どんな無茶苦茶な修行だってする』と答えた以上、気が変わったから難易度を下げたコースにしてくれとかは格好悪くて言い出せない。

 

 ちょっと口が悪くて無礼だけどシエスタが優しいと評するポップなら脅かしてるだけだろうし、実際の授業はミスタ・コルベールが担当するだろうからには、本当に危険な行為をやらせようとしても止めてくれるはずであり、恐らくこの書類はわたしのやる気と覚悟を試す代物でしかないはずだ。

 

 もしかすると東方のメイジに伝わるとても危険な修行法を知っているのかも知れないし、恐らくあり得ないだろうけど実はポップもメイジでわたしを本物の魔法使いにしてやるって言葉が本当だったり、たまたま向こうの教本とかを持ってて翻訳してくれるだけの可能性もある。

 

 少なくともオールド・オスマンが許可を出している以上、ポップの修行には授業を休んでも受ける価値があると判断したのだろうし、実際に魔法が使えるようになる可能性があるなら多少の危険は受け入れるつもりだ。

 

 いくら考え込んでも魔法が使えるようになる可能性を逃す選択肢はわたしになく、何だかんだと昼食後まで悩んだものの覚悟を決めて書類にサインし、そこでポップに支払う賃金をいくらに設定すれば良いか決め兼ねていた事を思い出す。

 

 手付けとして新金貨100枚、食費などの必要経費と別途に月額エキュー金貨15枚、働きに応じてボーナスを出すと言ったが、あれは貴族が住み込みの使用人を雇う場合の給与から算出した金額であり、相場があってないような家庭教師の給与は雇い入れる側の家格と財政状況で金額が変動するだけでなく、月謝にするのか支度金だけ渡して残りは成果に応じるみたいな支払い方法の違いもあるし、本当に魔法が使えるようになったとしてその給与が使用人と大差ない金額でしたとかお母さまに知られたら怒られるだけでは済まない。

 

 とりあえずは最初に決めた給与を払うとして、目に見える成果を出せたらボーナスを支払うみたいな文言を契約書に入れれば、実際に魔法が使えるようになってから増額とかの対処が可能だし、逆に最初から好条件で雇って魔法が使えないままだとお父さまの怒りに触れたポップが詐欺師として牢屋に入れられたり、最悪だとそのまま無礼打ちにされて晒し首とかも大げさでなくあり得る。

 

 何年も前になるが、ちいねえさまの病に効果があると称して麻薬の類を売り込んで来た男は、見せしめも兼ねてロマリア本国から呼び寄せたブリミル教の高位司教から破門を言い渡した上で火炙りの刑に処されており、そこらも踏まえて契約書にサインしたのは自分の意思であるとお父さまに伝えなくてはならないが、事前にオールド・オスマンからお母さまに説明の手紙が出されているし、卒業まで2年間も時間があれば結果を出せなさそうなら逃がすとかの対処も可能な為、大怪我にだけ注意して後は今回の修行を受けてから考える事にした。

 

 後に色んな意味でこの判断を盛大に後悔するのだが、当時のわたしはポップにそこまでの期待をしてなかった為に自分が何の書類にサインしたか理解してなく、それでも過去に戻れたとしてコースの変更やサインの拒否だけはしないと確信している。

 

 

*

 

 

ルイズ視点終了

 

 

*

 

 

 ルイズの予想は半分くらい当たっており、少なくともポップは人死にの出る授業をするつもりはないし、コルベールが同行している理由は本人が休暇申請してまで監視役を名乗り出たからでしかなく、オスマンが個人授業を許可した理由に至っては駄目で元々くらいの軽い気持ちでしかない。

 そして肝心の授業を行うポップだが、アバンに師事していた一年間で満了した受講者がいないスペシャルハードコースの授業内容に関しては、通常の特訓に加えて早朝と夕方も特訓する程度の知識であり、困った時は師匠に相談とばかりに異世界転移と弟子取りの報告も兼ねてマトリフが隠遁する洞窟に瞬間移動呪文(ルーラ)していたりする。

 

 




カリーヌの声が平坦だったのは、『禁止されてるのに決闘するとか私に似ちゃったのかしら?』的な感じで上の空だったからです。

ルイズは本人が考えている以上の愛情を受けて育ちましたが、娘に優しいと言うより過保護なピエールは一方的な溺愛ぶり、対人関係に不器用なカリーヌはどことなく距離感のある態度で接し、苛烈な性格のエレオノールも愛情と心配の裏返しで厳しい態度が多く、残るカトレアだけが親密な関係を築いているものの彼女は平民や動物にも優しい人物、自分は家族から無条件に愛されていると言えるだけの自信がありません。

シエスタ秘蔵の快眠グッズはただの安眠枕ですが、魔法的な効果こそないものの寝不足だったルイズには効果ばっちり朝までぐっすり状態だった為、原価分の50スゥに心付けを足した新金貨1枚で買い取られました。




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