特にこれと言って何もない空間に、2人の男と1人の女がいた。男2人の片方は、もう片方の首をガッチリと掴んで持ち上げて睨み付け、女の方はその様子をオロオロしながら見ていた。
「ちょ、ちょっと!いい加減私の話を!」
「あ゛?」
「いえ……何でもありません。どうぞ続けてください」
男の迫力に圧されたのか、スタスタと後ろに下がっていき黙り混んでしまった。
「おいカズマ。どう言うつもりだ?テメェ1人で死ぬなら別に文句は言わねぇ。むしろ大助かりだ。年に一度テメェの墓に線香をあげに行くだけで済むんだからなぁ。だがなに俺も一緒に殺してくれてんだ?あぁ?」
「いや……その、不可抗力でして……あれは不幸な事故としか……」
「不幸?どうやら長年社会を拒絶して引きこもったお陰で、脳みそだけじゃなく目まで腐ったようだな?どう考えてもテメェの不注意が原因だろ!」
察しのいい人はもう分かってるかも知れないが、この2人は既に死んでいる。何があったのかと言うと、話すのも馬鹿馬鹿しくなってくるのだが、カズマがトラックとトラクターを見間違えて、その前を横切ろうとした女子高生がひかれると思い込み突き飛ばし、それが原因で現在カズマを掴み上げている男が、その女子高生にぶつかり農業用水を引いている用水路に頭から落ちていき首の骨を折って即死。カズマはひかれてもいないが、ひかれると思ったショックでショック死した。と言うわけだ。
「だいたい……テメェが引きこもってるせいで毎回俺がお前にプリントを届けたり提出物を学校に出してやっていると言うのに……最後は殺されるとはな……テメェの友人と言う不名誉な勲章まで与えられても手伝ってやっていたと言うのにな」
因みに死んだことは先程睨みを効かせたらビビって下がっていった女から聞いた。どうやら、女神と言う存在らしい。見るからに頭が悪そうだが、恐らく事実だろう。
「あ、あの~。そろそろ話を進めたいんですけど……」
「あぁ。すまなかったな。始めてくれ」
「ゲブッ!」
カズマを地面に叩き付けて、話を始めていった。目の前の女神が言うには、2人に与えられた選択肢は2つ。1つは時間と言う概念が無い、と言うか何もない天国的な所に行って程好い日光を浴びながらお爺ちゃんやお婆ちゃんの様に延々と世間話をして来世への転生を待つ事。もう1つは記憶やら何やらを全て消して、0から人生を再スタートさせると言うもの。
「なんだそれ?普通は裁判とか受けてからだろ」
「あぁうん。説明面倒だから端折ったけど、勿論ちゃんと裁判と罰を受けてからその2つになるわ」
正直どっちもイヤだ。と言うのが2人の感想だ。どの道裁判やら罰やらを受ける事に変わりは無いし、そもそも2人はまだ高校生。やりたい盛りにその2択は酷すぎる。
「うんうん。その反応はどっちも御免って感じね。そこで!ちょっと耳寄りな話があるの!貴方たち、ゲームは好きでしょ?」
「まぁ人並みには」
「その世界は!長く続いていた平和な時間は、魔王軍の軍勢によって脅かされていた!人々が築き上げてきた生活は、魔物に蹂躙され魔王軍の無慈悲な略奪と殺戮によって皆怯えて暮らしていった!────」
「長い!要点をまとめろ。プレゼン能力0かお前は」
「ちょっと酷くない!?アンタさっきから何なのよ!私女神なのよ女神!なのに睨み効かせたり話遮ったり暴言吐いたり!ちょっとは敬いの気持ちを持ちなさいよ!」
「うるせぇ。さっさと続きを言え。手短にな」
「……まぁそんな世界だから、皆転生を嫌がって人口が減り続ける一方なのよ」
「まるで今の日本と同じだな。ブラック校則にブラック企業、挙げ句に使い物にならない政治家多数。地獄に一生籠ってでも輪廻転生を拒否したいな。担当してる神誰だよマジで」
「日本はまだマシな方よ!!……兎に角、人口が減ってるから他の世界で死んだ人の記憶や肉体をそのままに、そっちに転生させようって話が出てるの」
「そしてあわよくば、魔王を倒して人口回復をしてくれと?」
「そうそう!その通り!…あっ」
まさかの神たちの裏事情が暴かれてしまった。普通に聞けば大変魅力的な話だが、ここで今まで黙っていたカズマが口を開いた。
「でもそれじゃあ、普通にすぐ殺されて終わりだろ。意味ないじゃん」
「だから大サービス!何か1つだけ、好きなものを持っていける権利をあげているの。強力な武器だったり、とんでもない才能だったり!」
つまりすぐに死ぬような事はないと言うこと。更に向こうの世界の言語に関しては、サービスで神々が転生者の脳に負荷をかけて一瞬で覚えさせる様だ。運が悪ければパァになってしまうようだが。
「さぁ選びなさい!貴方たちに、何者にも負けない素晴らしい力を1つ授けてあげましょう!」
そんなこんなで床に広げられたカタログを見ながら選んでいくのだが、乱雑に広げられたお陰で物凄く見辛い。与えてもらえる特典の内容としては、強力無比な物から特別効果のない武器まで様々。武器や装備以外にも、圧倒的知能や魔力何て言うのもある。本来ならそれ1つ1つに説明をしながら教えるのが女神の役割りなんだろうが、ポテチをかじりながら寛いでいやがった。
「ねぇ早く決めてくんない?どうせ引きこもりのオタクになんか期待してないんだから~」
「お、オタクじゃないから!」
「んなことどうでも良いから早くして~。他の死者の案内とか沢山あるんだから~」
見た目が良い分、なんか余計にムカついてくる言い方だ。そこでカズマは何かを思い付いたのか、ゆらりと立ち上がって女神を指差した。
「異世界に持っていける物だろ?じゃあ、アンタ」
「……それじゃあ魔法陣から出ないように立ってて……ん?今、なんて言ったの?」
魔法陣を作り出して椅子から立ち上がると、空に当たる部分からもう1人のザ・女神と言う感じの人が現れた。こっちの方が数倍女神っぽい。
「承りました。ではアクア様の仕事は今後私が引き継ぎますので」
「え?」
「佐藤数馬さんの望みは、規定により受諾されました」
「ちょ、え?なにこれ?嘘でしょ?イヤイヤイヤ!ちょっとあの、おかしいからぁぁぁぁあ!!女神を連れていくなんて反則だからねぇ!!」
「行ってらっしゃいませアクア様。無事に魔王を倒された暁には、迎えの者を送らせます」
「私!女神だから癒す力はあっても戦う力なんて無いんですけど!!魔王討伐とか無理なんですけどぉぉお!」
慌てているが、時既に遅し。カズマはこれでもかとアクアを煽り倒している。
「さぁ勇者よ、願わくば数多の勇者候補の中から、貴方が魔王を打ち倒すことを祈っています。さすれば神々からの贈り物として、どんな願いでも叶えて差し上げましょう!!」
アクアが私の台詞とか叫んでいたが、そのまま異世界へと旅立っていった。
「酷いもんだな~」
「それでは、貴方の特典を選びましょう。なにかお望みの物はありますか?」
「じゃあこれで」
2人が旅立っていくのを見ていたもう1人の男は、五月蠅い連中を無視して特典の書かれたカタログを読み漁っていた。その中から選んだ物が、
「
「別にいいよ。持ち運びが楽そうで使いやすそうだから選んだ。強力なの欲しければ向こうで探せば良いだけだし」
「分かりました。では、こちらがお望みの光剣です。ボタンを押せば自身の魔力を一定値消費して刀身を出すことができます」
「意外と軽いんだな。こりゃあ良い。持ってても疲れそうにないし」
「はい。それでは──」
「おっと。俺はさっきの口上はいらないからな。早く送ってくれ」
「失礼しました。では、ご武運を!」
タグは今後追加していきます。なにかに気付いたら教えてください。