キャベツのクエストから4日ほどが経過した。近年稀に見るキャベツの大豊作で、ギルド職員はキャベツの査定に追われていた。ギルドの仕事を一部ストップさせ、人員をキャベツ査定に回し、なんとか全てを終わらせられた。
カズマは金を既に受け取ったのか、椅子に腰をかけて他のメンバーを待っていた。
「……よし。クリエイトウォーター!」
冒険者カードを弄って、覚えることが可能だった魔法を覚えて試していた。コップには八分目辺りまで水が注がれ、魔法習得は成功。
「ま、初級魔法じゃこんなもんだろう……スキルも覚えて、俺も冒険者らしくなってきたな~」
「カズマ見てくれ!キャベツの報酬で鎧を直したのだが、こんなにピカピカになった!どう思う?」
「なんか、成金趣味の貴族のボンボンが着けてる鎧みたい」
「私だって、素直に誉めてもらいたい時だってあるのだが……カズマは、どんなときだって容赦ないな……!」
若干興奮している。元々のデザインもあるため、成金趣味に見えても仕方がない話だ。しかし、本当に鎧は新品同様の輝きを放っており、とても修理をした物には見えない。ダクネスがいつからその鎧を使っていたかは定かではないが、キャベツの戦闘でかなり破損していた。それを新品同様に直した鍛冶屋の腕には脱帽するしかない。
「今はお前に構ってやる余裕は無いぞ。お前を超えそうな勢いのそこの変態を何とかしろよ……」
ダクネスの横には、報酬で新調した杖に全身を擦り付けて猛烈に興奮しているめぐみんがいた。普段は、まぁまともな部類に入る存在なのだが、今は見る影もない。はっきり言って気持ち悪い。だがそれを追い越すかの様な勢いで更に問題が発生していた。
「なんですって!?アンタ!どう言うことよ!!どれだけキャベツを捕まえたと思ってんの!?」
アクアが受付のお姉さんに掴みかかっていた。しかも大変ご立腹なようだ。
「それが……」
「何よ?!」
「アクアさんが捕まえてきたのは、ほとんどがレタスでして……」
「なんでレタスが混じってるのよ~!」
「わ、私に言われても……!」
「確かに、レタスの換金率は低いな」
「よくわからんが、そうなのか?」
因みに、キャベツの時期は冬と春。それに対してレタスはクソ寒い1月と2月を除いて、種類は違うが栽培や収穫が可能で、キャベツと色々被っている。つまり、生きて移動する、と言うことはあるが、その過程で一緒になっていてもなんら不思議ではないと言うことだ。
「カ~ズ~マ~さん!今回のクエストの報酬は、おいくら万円?」
この国の通過単位、エリスだろ?
「100万ちょい」
「「「ひゃッ!?」」」
カズマの捕獲したキャベツ、どうやら経験値が特に詰まっていた物らしく、質が良いためその分増額されたのだ。その結果が100万エリスと少しなのだろう。しかしそれでもかなり多い方だ。恐らく、この街では1番稼いだだろう。
「よ~し。なら楽しい借金返済の時間だ。財布寄越せ」
「どっから湧いて出てきやがった!?」
単純に、気配を消して金額を言うのを待っていただけである。
「お前らの今の借金、カズマは利息と合わせて11万8550エリス。アクアは12万350エリスだ。さ、耳揃えて返してもらうぞ」
最初の1000エリスから比べて、えげつないくらいに増えていた。色々と重なった為仕方ないとは言え、これはある意味才能である。
「な、なぁ准よ。その、分割でも良いんじゃないか?流石にその額を一括返済は、やり過ぎな様な気が……」
「そ、そうよ!私なんて今回の報酬、利息分にしかならないんだから!」
「誇らしく言うんじゃねぇよ。あのなぁ、俺はお前らに金の大切さと重さを分からせるために一括のみにしてるんだ。その辺分かってないから、お前らはある金をすぐに酒だ遊びだにスッちまうんだよ!俺たちは冒険者なんて言う不安定この上ない仕事に就いてんだぞ!ある分あるだけ使っちまうヤツは、一度痛い目を見るべきなんだよ!」
現に、アクアもカズマも、准が目を離した途端にツケで酒を飲もうとした事があった。すぐに止めたが、1回で大金が入る分、金銭の使用感覚と言うものは、この世界ではどうもバグり易いのだ。
「後は、他に妙なところから借金したり、支払い途中で逃げ出さないようにするためだ。一括なら目に見えて膨らんで、危機感を煽ることができるからな。と言うわけでさっさと借りてた分返せ」
言ってることはもっともだが、恐らく最後の部分が本音だろう。逃がさないための恐怖として、一括返済しか使っていないと言うのが准の考えだ。しかし、これには借りる側にもメリットがある。貸したヤツが姑息な真似ができないことだ。分割払いでは、払える時がくるまでの間の期間にも利息が発生する。しかし、一括である以上、そんな小細工をすることができない。基本的に慈悲も涙もない様な人間なのだが、これが最後の慈悲と言うものなのだろう。
「あの、カズマは100万エリスがあるので一括返済は可能でしょうが、アクアはどうするのですか?正直な話、これ以上膨れ上がったら、アクアでは返済不能だと思うのですが……」
「まぁ一応考えてはいる。さてカズマ。お前に選択肢を2つやろう。1つは、自分の借金だけを返して晴れて借金と言う重圧から解放される」
「ふ、2つ目は?」
「アクアの分も払って、2人揃って借金の重圧から解放される。この2つだ」
「決まってんだろ。自分の分だけ──」
「良いのかそれで?」
「へ?」
「アクアはお前が装備代を揃えるまで、1人でできた筈の返済をせず、寝床代や酒代や食事代に稼いだ金を使ってたんだぞ?お前1人に借金と言う苦しみを与えないためにな。言ってしまえば、お前はアクアに恩があると言うことだぞ?本当に自分の分だけで良いのか~?」
このパーティーでアクアと一緒にいた時間が1番長いのは他でもない。カズマだ。装備を揃える前段階、アクアがカズマの為に返済をせずに自分のために使ってくれていた事も知っている。そして、これ以上増えた場合、アクアが絶対に返済できないことも。
「か、カズマさん?」
涙目になって訴えてくるアクア。固唾を飲んで見守るダクネスとめぐみん。逃げた時即刻足を斬るために光剣を展開している准。そんな面子に囲まれてカズマが出した答えは……
「……しょうがねぇな!分かった!払う、払うよ!アクアの分も!」
「か、カズマさ~ん!ありがとう!ありがとうぅぅぅぅう!!」
「抱き着くなって!まぁなんだ。お前が俺のために返済してなかったのは知ってるし、いつも一緒にいてそれなりに恩は感じてるし、払う理由の方が大きいからな」
泣きながら抱き付いてくるアクアを無視して、借金を徴収。この日はこれで解散した。カズマが用事があるとかなんとからしい。アクアはそれにくっついていき、ダクネスは筋トレ、めぐみんは街をブラつく。
「……クエスト行くか」
唯一やることが思い付かなかった准は、クエストをするためにクエストボードの許へと向かう。
「……は?」
クエストボードを見て驚いた。超高難易度クエストしか残ってなかった。准でも少しキツい感じの物が多い。一撃熊やブラックファングとかなら行けそうだ。骨を5、6本犠牲にした上でだが……他は1人では難しい。腕の1本は持ってかれそうな気がする。
「せめてゆんゆんが居たらな~……そう言えばアイツどこ行った?」
今更ながら、パーティーに入れるつもりで居たが、気付けばこの街には居なくなっていた。カズマ達がバイトに明け暮れていた時はよく一緒に行動していたのに、今になって気が付いた。
「すいませ~ん。最近ゆんゆん見てないんですけど、なんかあったんですか?」
「ゆんゆんさんですか?あぁ、最近王都で活動してる様ですよ。魔法の勉強をしたいとかで。来月の初めには帰ってくる予定と言ってましたよ」
「あぁ。どうも」
対応してくれた職員に頭を下げてクエストボードに向き返った。
(ちくしょう…聞くの後回しにするんじゃなかった……)
ゆんゆんの予定を押さえてなかったことに後悔しながら、クエストに行くことを諦めて割りの良いバイトを探すことにした。ここはバイトの紹介もしているため、探すのは簡単だ。クエストと同じ様に、別の場所に置かれている掲示板から紙を取って受付に出すだけだ。
「あ、これ良いな」
時間
22時~7時
休憩
1時間
時給
1500エリス(交渉可)
期間
3ヶ月(週休2日)
備考
夜に強い人を募集しています。急な戦闘もあります。倒した場合、特別給与もあります。死んだらごめんなさい』
「これやろう。2000エリスにしてから」
そのまま受付に持っていき時給の交渉。無事2000エリスに時給を上げて貰い、次の日から仕事開始となった。
物語の都合上、ベルディアの登場はもっと先になります。次のタイタスの読み切り版、いつ出そうかな?まぁ良いや。次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録もよろしくお願いします!!