クエストが無さすぎて正門の門番(夜勤)のバイトを3ヶ月受けることになった。因みに時給は2000エリスで1日9時間。休憩1時間の所謂フルタイムと言うものだ。
「今日からお世話になります。佐藤准です。よろしくお願いします」
こんな感じで一晩が始まった。この日は軽く説明を受けて、先輩門番と一緒に作業をする。基本的には2人1組で動くようだ。この日だけ3人で行動している。
「じゃあまず夜勤門番の仕事だけど、ただ単純に門の矢倉に立って不用意に街の外に出る人が居ないかを見張り、一般人が出ようとしてたら止めるように。後、球にモンスターがちょっかいかけてくるけど、この煉瓦を頭めがけて落として上げてね」
そう言って、まぁまぁにえげつない大きさの煉瓦が入った篭を指差した。たまに街を囲む壁に血飛沫の様な物が付着していたが、どうやらこれが原因のようだ。
「他の業務は、朝に荷物がここに入ってくるときの確認だけど、まぁ滅多に無いから気にしなくて良いよ」
「はい」
この様に、夜勤門番の仕事と言うのは意外と暇なようだ。と言っても、夜勤であるため体と精神の健康がガリガリと削られていくことは間違いない。
そんなわけで、勤務初日は無事に終わった。夜が明けて日勤と交代して馬小屋に帰宅。夜に備えて眠りについた。そして夜に起きてまた出勤したのだが、早々に問題が起きてしまった。
「いや~ごめんね?何故かもう1人が出勤しなくてね~。悪いけど今日は1人でやってくんない?」
「はい?」
「本当にごめん!時給少し上乗せするから、お願い!」
それだけ伝えると、足早に上司は帰っていった。仕方なく1人で門番をすることに。昨日1日で分かったのは、取り敢えず夜勤の門番は1人でやっても問題ないと言うことだ。モンスターも頻繁に訪れない。人も普通は出ていかない。休憩と言う仮眠時間は消え失せるが、まぁ1日位なら問題は無いだろう。
「お~い!」
「不審者の処理は面倒だな」
聞き覚えのある声が下から響いてきたが、こんな時間に出歩くのは不審者だと判断して煉瓦を投げ落とした。
「ウオァッ!?あっぶねぇな!何しやがる!!」
「不審者に制裁を加えたまでだ。仕事の邪魔に来たなら容赦しねぇぞ」
「するかよ!夜食持ってきてやったんだ。ありがたく思えよッ!」
来ていたのはカズマだった。矢倉の上にいる准に夜食の袋を投げ渡してくれた。
「アクアのバイト先の残り物だけど、味は問題ないからな~。じゃあ頑張れよ~」
「…量多いな……」
相当な量が売れ残った様だ。アクアが問題なのか頭のイカれた量を置いているのか、それは定かではないが、貰っていけるバイトからしたら嬉しい限りだ。
「暇なことこの上ないな……」
貰った夜食を食べながら、朝まで勤務を続けた。そして日勤と交代して帰っていく…………予定だった。
「ごめんッ!日勤の担当が来れなくなったからこのまま日勤の勤務もお願い!」
「殺すぞ」
「え?」
「いやなんでも。分かりました」
人は、勤務時間が増えると増やした相手に殺意を覚えるものだ。それはどこの世界であっても変わらない。どんなにストレスフリーな世界であってもだ。
「じゃあ、夜勤もよろしくね~」
「…………」
徹夜決定。そして二撤目に突入した。
「休憩を貰う。1時間ここにいろ」
「え?ちょっと!?」
1日徹夜すると、人間は口調がキツくなる。それでは准の様子を観察していこう。
「戻りました」
「あ、うん。何してたの?」
「眠気を覚ますために色々と」
そして再び夜勤へと突入。カズマが持ってきてくれた夜食を食べながら夜を過ごした。この日も相方は来なかったのは、言うまでもない。
「じゃあこのまま朝もよろしくね」
この日も朝の担当は来なかった様だ。無意識に光剣を展開して上司を斬りそうになったのは内緒だ。この日も徹夜をして仕事をした。
「だ、誰か助けてくれェェェエ!!!」
「ん?──ッ!?ジャイアントトードの群れ!?」
朝からどっかの冒険者パーティーがジャイアントトードの群れを引き連れて戻ってきてしまった。カズマ達だったら容赦なく殴り飛ばしてた所だが、そのカズマ達は今自分が立ってる矢倉の下で出掛ける準備をしている所だった。
「准!俺たちが倒そうか?」
「…………」
そう提案するカズマ達だったが、准はその言葉を無視して矢倉から飛び降りてきた。
「お、おい?」
「切り刻まれたくなかったらどけ」
酷い顔をしながら、ジャイアントトードの群れを引き連れてきたパーティー達の元へと向かう。
「コイツら引き連れてくる原因になったのバカは、どこのどいつだ?」
「ヒッ!」
「とっとと答えろ。カエルの餌にするぞ」
「だ、ダストです……」
そう言って、パーティーメンバーの女性が槍を持った男を指差した。ダストと言われた男は気まずそうに笑いながら頭を掻いているが、謝るそぶりはない。
「そうか。自分で片付けろ」
「え?ちょっ!助けてくれないのかよ!?」
「俺には関係ない。じゃあな」
「じゃあ何しに来たんだよ!おい!バイト門番!怖じ気づいたのか?!」
この発言が不味かった。ドカッ!と言う鈍い音が聞こえたかと思うと、ダストがその場から消えていた。その数秒後、街を囲む壁から何かが当たってめり込む様な音が聞こえてきた。准に蹴り飛ばされた様だ。
「おい。お前らもあぁなりたくなかったら消えろ。さもなくば、カエルの餌になれ。アイツらが飲み込みやすいように、ぶつ切りにしてやるからよ」
完全に猟奇殺人犯の様な目になっている。徹夜を続けたお陰で、普段は理性で抑え込まれている人間の狂気が表に出てきているのだろう。
「なぁアクア、俺たち、今からどんなトラウマを植え付けられるんだろうな?」
「考えたくないわよ。そんなの……」
そこからは、目を瞑りたくなる様な惨劇が起きた。本来、ジャイアントトードを斬ったって大して血は出てこない。にも関わらず、辺りにはジャイアントトードの血液が飛び散っていた。准が相手したジャイアントトードはバラバラになっている。
「あと、9体……」
言うまでもないが、勿論残りのジャイアントトードも全てバラバラに切り刻んだ。1匹だけ准を飲み込んだのが居たが、体の内側からバラされた。
「ねぇ、私たちって、あんな化物とパーティー組んでるのよね?」
「あぁ」
「私たち、殺されたりしないわよね?」
「多分な」
「カズマカズマ」
「はいカズマです」
「私、新たにトラウマが刻まれた様な気がするんですけど……」
「安心しろ。俺もアイツが怖いし、この光景がトラウマになったよ」
「カズマよ。私は何故か、アイツが戦っている範囲には飛び込みたくないのだが……」
「本来はそうだろ」
ジャイアントトードを文字通り蹴散らした准に対して感想を言うが、それを無視して矢倉へと戻っていった。
「大丈夫だったか?」
「問題ありません」
クリエイトウォーターとウィンドブレスで汚れてしまった服を洗濯し、業務に戻った。訳もなく、一緒に仕事をしている上司にこの場を任せて、街の中へと向かっていった。
「残りの業務はコイツにさせろ」
せっかく魔法で洗濯をしたのに、返り血にまみれて真っ赤になった准が、本来の担当者を連れてやって来た。
「夜勤は通常で出てやる。じゃあな」
それだけを伝え、ボコボコにした本来の担当者を矢倉に置いていき帰っていった。これで少しはよく眠れそうなくらいにスッキリしている。この滅茶苦茶な勤務を強いた上司をぶった斬れたら更にスカッとしただろうが、一応この世界にも法律はある。切り刻むのはこの後、法廷でと決めている。
はいはい。次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録もよろしくお願いします!!
またどっかで力の賢者の読み切り版乗っけます。