デュラハンが准の作ったメタル団子後輩の墓に土下座を始めた次の日、魔王軍幹部が街の前まで来たと言う大ニュースはどっかに消え去り、平和な日常がすぐに戻ってしまった。普通なら警戒している筈だが、流石お気楽冒険者の集まり。昨日の危機はどこかへ行った。
「一瞬にして平和に戻ったな。この街」
「それがこの街の強味だろ。それを取ったら飲んだくれと無能冒険者しか残らない」
「おい。その無能冒険者に、私たちは入れてないだろうな?」
「あぁ~悪かったな。他にも変態に、借金作る天才に、爆裂しかできない弾けたのも残ったわ」
「殺す!」
ギルドで悪態をつく准に、めぐみんが杖を全力で振り下ろそうとした。当然止められる訳だが。どう言う訳か、めぐみんと准は反りが合わない。目を合わせれば喧嘩。とまでは行かないが、なんか衝突が多い。
「ところで……」
「ん?どうした?」
「お前ら、俺になんか隠してないか?主に金の事で」
その言葉を聞いた瞬間、アクアの目が泳いだ。他何人かも視線を反らしている。
「最近、俺のところに何故か借金の督促状が届いてるんだよ。おかしいよな~。キャベツの報酬で借金は消えたし、俺以外の所から借りてなかったんだからよ~。なのによく分からん複数の業者からこんなに」
懐から督促状を取り出し、テーブルの上においた。数にして20枚程ある。1番下は3万エリスで1番上は20万エリスと幅広い。
「この際、金を借りてたことは何も言わない。デュラハンのお陰で高難易度クエストしか無いからな。生活のためにも仕方ないだろ。だがなぁ、なんで俺の所に督促状が、来~る~の~か~なぁ~?」
光の無い眼で借りた人間の眼を真っ直ぐに見る。普通に怖い。なんかいろんな物が吸い込まれるような感覚に襲われてしまう。
「ア~ク~ア~?」
「ヒッ!?わ、私だけじゃないわよ!めぐみんやカズマだって借りてるんだから!私だけ怒らないでよ!!仕方ないじゃないこんなんなんだから!クエストに行けないんだからぁぁあ!!」
「ならテメェで返しやがれ!!なに人を勝手に連帯保証人にしてんだ!拇印まで押されてるし!!俺押した覚えないぞ!お前ら俺が寝てるあいだに書類偽造しただろ!!文書偽造で警察に突き出すぞ!!」
「だって…だって!私たちじゃ貸してくれないのよ!?皆どうせ返せないだろって言うのよ!?酷くない!?あんなに必死に頼み込んだのに!准が保証人にならないなら貸せないって言うのよ?!でも准はそう言うのに名前書いてくんないし!もう偽造するしか無いじゃない!!お金の管理割りとしっかりしてるカズマですら貸して貰えなかったのよ?!もう偽造するしか無いじゃん!!」
アクア以外にもやったのが2人もいるのだが、アクアが必死に弁明していて入り込む隙が無いのか、何か言いたそうにするだけで何も言わない。と言うか言えない。
なお、アクアは言うまでもないが、カズマも冒険者デビュー初日から准に金を借りてそれを十数万エリスまで膨れ上がらせたと言う伝説があるため、金融業者からの信用は微妙なところ。めぐみんもこのパーティーに来る前、爆裂魔法で多額の損失を出し、尚且つ個人で稼ぐ能力がほぼ皆無と見なされている。つまり、3人ともブラックリスト入りとまでは言わないが、それなりに警戒されていると言うことだ。もう非合法な所から借りるしかない。
だが准の場合は最初から金を持っていた言うのもあるが、真面目にクエストやるわバイトやるわで、金を借りた事がない。それに管理がかなりしっかりしているし、未成年故に酒もやらない。日本の法律関係ないのに。最早本職そっちだろと言いたくなるくらいにだ。金融業者からはこのパーティーの中では一定の信用を得ていると言えるだろう。だから引き合いに出された訳だが……それでも偽造は如何な物かと思う。それを3人もやっていたと言うのだから驚きだ。
「と言うわけでクエストに行くぞ。お前らの借金返してたら貯金が尽きたんでな。難易度高くても行くぞ」
「しかし、私たちでやれるクエストはあるのか?私は兎も角として、全員でやれる物となると今は……」
「安心しろ。既に取ってきている」
そう言って、クエストの受付用紙を4人の前に出した。内容は汚れた湖の浄化。しかもクリア報酬が30万エリスとかなりのもの。
「湖の水質が悪くなったことで、ブルータルアリゲーターとか言うモンスターが出てきたらしい。水質が改善されれば勝手に生息地を移してくれるから、湖を綺麗にしてくれだと」
「なるほど。確かに美味しいクエストだな」
「あぁ。俺らに取っては尚更な。水に浸かってるだけで水質を直してくれる女神(笑)がいるんだ」
「(笑)ってなによ!(笑)って!!ちゃんと水の女神なんだから!」
「ふ~ん」
「なによその反応?!ねぇ!カズマからもなんか言ってよ!」
「あぁ~…ぶっちゃけ俺、お前のことセクハラの女神と思ってるから。ここ最近は特に……寝ながら俺の体を好き放題…うっく、ヒック……」
アクアにされたことを思い出したのか、カズマが泣き出してしまった。准は面倒になったのか反応を示していないが、めぐみんとダクネスはちょっと引いてる。
「因みに、昨日はなにをされたんだ?」
「前から抱かれて、一晩中尻を揉まれました……耳や首筋も好き放題されました……」
「……アクアは確かに私たちの中ではステータスがずば抜けています。紅魔族でアークウィザードの私をも凌ぐ魔力量に、ダクネスや准を簡単に越える身体能力。どれを取っても人間離れしすぎています。人間ではない何かと言われても、納得できなくはありません。更に先日の死の宣告の解呪。女神その人と言われても、おかしくない力です」
「めぐみん!」
めぐみんの一言でパァッと明るくなったアクアだが、次の一言でまた地面に叩きつけられた。
「ですが、カズマに対するセクハラの数々や、普段の言動から見て、女神なんて言う事はまずあり得ないでしょう。女神を自称しても、悲しくなるだけですよ」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!!」
「めぐみん、その、さすがにそれは口撃力高くないか?アクアが少し可哀想だぞ?そ、その、なんなら私に向けてくれても……!!」
いつものダクネスの発作を無視して、准は受付用紙を提出しに行った。クエスト関係では何かとお世話になっているいつものお姉さんに出し、正式に受注した。
「承りました!お気をつけて下さいね!」
「…………」
「ど、どうしました?」
何を思ったのか、周りの視線とお姉さんの服装を交互に見た。そして、自分の来ていた上着を脱いで、それを多少強引に着せる感じに羽織らせた。自分で来ている時はボタンを2、3個外しているが、今回はキッチリと閉めている。
「ルナさんアンタ、少しは自分の服装に気を使った方が良いぞ」
「え?」
周りの男性冒険者から大量のブーイングが聞こえてくるが、無視してカズマ達の元へと戻っていき、クエストの準備に入った。
「カズマ。なんかよさげな安全策はないか?」
「アクアを丈夫な檻の中に入れて湖に浸ける」
「出汁パックか?」
「感覚としてはそれだな。それよりお前、いつものロングコートはどこに行った?」
「あそこ」
指をさされ、カズマはその先を見てみる。
「お前なにしてくれてんだぁぁあ!この街の数少ない楽しみを奪いやがって!!末代まで呪ってやる!!」
「切り刻むぞ」
「黙れ!なんなんだお前!お姉さんの恋人が何かなのか!?なんの権利があってあんなことしてんだよ!!」
「テメェらがそう言う目で見てるからだろ!!世話になってるこっちに身にもなりやがれ!!俺にもその視線がグサグサ突き刺さるんだよ!!気になるんだよ!!」
文句を良いながら、巨大モンスター捕獲用の檻をレンタルし、それを荷車に乗せて目的地へと向かっていく。意外と近い所にあり、ピクニックなんかに来たいと言う感想を抱く場所だった。
「これ、水質悪化してるのか?」
「確かに……そんな汚れてないよな?飲めるかどうかと言われたら別だけど、普通に遊ぶくらいなら問題ないような……?」
言うほど汚くない。と言うのが、今のところの感想だ。とは言え、依頼が来ていると言うことは、元々はこれ以上に綺麗だったと言うことになる。予定通りアクアを檻の中に入れて、湖の浅瀬に浸しておいた。
「これって、どのくらいかかるんだ?」
「さぁ?」
「のんびり待ちましょう。ブルータルアリゲーターも姿を見せてませんし」
「だな」
「そう言えば、ブルータルアリゲーターってどんなヤツだっけ?」
「ワニみたいなヤツだ。そこそこ大きめの」
「ワニか……食えるかな?」
准のこの発言にカズマ達3人は少し引いている。とは言え、ワニは食べられない訳ではない。実際、東南アジアや北・南アメリカの一部、アフリカ等では普通に食べられているし、オーストラリアでは食用のワニが養殖される程だ。下手物の部類には入るだろうが、食べられない訳ではない。
「まぁブルータルアリゲーターが食えるかどうかは置いといて、湖の浄化はどうなってんだ?」
「見た目では一切変わってないな」
「ですね。カズマ、聞いてきて下さい。私は動きたくありませんので」
「はぁ……全く」
寝転がっていたカズマが起き上がって、アクアの元へと歩いていく。が、途中で物凄い形相で戻ってきた。アクアもなんの事だか分からず、首を傾げていたが、湖の中心の方に目を向けたときに、なぜカズマが逃げていったのかが分かった。
「ちょ、ちょっと!!なんか来たんですけど!?沢山出てきたんですけどォォォオ!!!!」
「うぉぉぉおい!!!なんかヤベェ!マジヤベェ!スゲェヤベェ!!」
「「「ッ!?」」」
ブルータルアリゲーターが大量に出てきたようだ。檻の中に入ってるアクアを完全に獲物と見なしたのか、大群で襲ってきた。
「ダクネス!檻を引き上げる準備をしてくれ!」
「分かった!っておい!どこに行くのだ准!」
「経験値稼ぎに決まってんだろ!!」
ブルータルアリゲーターから得られる経験値を稼ぐために、単身で湖へと乗り込んでいく。准が湖に到着してからは、まさに地獄絵図だった。血飛沫や肉片はその辺に普通に飛び散り、ブルータルアリゲーターの断末魔とアクアの悲鳴がひたすらに木霊し、パニックに陥ったアクアは浄化魔法を乱射。血や肉片が綺麗に消え失せて無くなっていくが、准によってそれらがすぐ元に戻されていく。見ている方がシンドくなってくる絵面だ。
「ギャァァァア!!!ピュリフィケーション!ピュリフィケーション!ピュリフィケーション!!」
「なんだコイツら意外と経験値少ねぇな。まぁ数いるから問題ねぇか」
「ちょっと!!綺麗にした傍から汚すの辞めてよ!!コイツらがいつまでも経っても居なくならないでしょ!ピュリフィケーション!ピュリフィケーション!!ピュリフィケーション!!!!」
「今日は楽しい解体ショ~。ワニどもを容赦なくバ~ラバラバ~ラバラ~」
変な歌を口ずさみながらブルータルアリゲーターを切り刻んで行く准と、血や肉片や内臓まみれになりながら必死に湖の浄化を繰り返すアクア。そんな光景が10分程続き、いつの間にかブルータルアリゲーターは姿を消していた。狩り尽くされたのか、環境が改善された事によって居なくなったのか、それは定かではないが、取り敢えずクエストクリアとなった。
「おぉ~……スゴい透明度ですね」
「あぁ。なんて美しい湖なんだ……」
「心が洗われるな……」
アクアが浄化した湖は、それはそれは美しかった。心が荒れ荒んだ者が見れば、一瞬にして豊かになり、美しさに感動して涙を流し、病んだ者が見れば病が吹き飛ぶ程の光景になっていた。
「あぁ~スッキリした~。少し寝てから帰るか」
「のんきですね。それより、クエスト報酬の話なんですが」
「俺の分はいらねぇや。アクアにくれてやる」
「珍しいですね。守銭奴の准がそんなことを言うなんて」
「今回のクエストに限り、アクアのお陰でクリアできたからな。あとこの景色だ。下世話な話は止そうぜ」
「それもそうですね。私たちも今回はアクアに上げることにしました。まだ何とか貯えがありますので」
「俺名義の借金の間違いだろ」
普段の准なら、キレてアイアンクローをかましてる所だが、なんか良い感じと叫びたくなるこの光景の前では、そんな気力は起きなかった。
「あ、アクア?今回の報酬なんだけど、俺たちそんなに活躍してないし、全部お前にやることにしたよ。だから、檻から出てきてくれないか?帰るぞ?」
「イヤ……このまま連れていって……檻の外は危険なの……ここ以外に安全な場所は無いの……私、檻の外に居たらきっと今頃、ワニどもにグチャグチャにされて准に切り刻まれて、原型が分からない感じに酷いことになって、でも私女神だから簡単に死ねなくて、この世のものとは思えない苦痛で歪んだ体を更に歪ませて……そして、そして……!」
「分かった!もう良い!もう良いから!!それ以上なにも言うな!!俺たちがキッチリ街まで運んでやるから!!」
アクアの心にはにはバッチリとトラウマが刻み込まれた。
ついでに、はたらく細胞の映画も見たんですけど、正直公開のタイミングが最悪だったとしか言えません。無限列車公開終了後しばらくしてからだったり、公開前だったら楽しめる映画だったのかもしれませんが、タイミングがタイミングなので、正直薄味に感じましたね。面白かったんですけど、アニメの良作が多かった今期は、マジで相手が悪かった。と言う感じです。だって前にドラえもんと鬼滅がいて、後ろにはモンストやヴァイオレット・エヴァーガーデンですよ。もう、マジで御愁傷様です。
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