この素晴らしい世界をキレッぽい友人と!   作:憲彦

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ネタが出なかったときにやってくる読み切り版。タイタス、フーマときてタイガかと思った?残念。全くのジャンル違いです!


【読み切り版】この素晴らしい世界に地獄の鬼神を

「閻魔庁の判決は……焦熱地獄!!そのどの過ぎた性根の悪さを顧みよ!!」

 

 ここは地獄の閻魔庁。彼の有名な閻魔大王が死者に対して判決を下す場所である。

 

「ふぅ……鬼灯くん。今日はこれで全員?」

 

「いえ。あと1人います……遅れている様ですね」

 

 判決を下したときの威厳はどこへ行ったのやら。急に親しみやすい体の大きなお爺さん程度になってしまった。そして質問された一本角の黒い服を着た鬼。鬼灯はあと1人いると言いながら、判決を終えた亡者の事が書かれた巻物をまとめている。

 

「…………ちょっと遅くない?」

 

「遅すぎますね。基本一本道なので迷うことはない筈なのですが……」

 

「鬼灯様~!!」

 

 最後の1人が来ないことに困惑しつつも待っていると、子供の姿をした鬼が走ってきた。なんか焦っているような気もする。

 

「唐瓜さん。どうかなさったんですか?」

 

「それが、今日裁判予定の亡者1人が、秦広庁に来ていないと連絡があって……ハゲィさんにも確認したんですが、確かに死亡したと……」

 

「……御迎え課に確認する必要がありますね」

 

 仕事を切り上げて、鬼灯は御迎え課に直行。一頻りまだ到着していない亡者について聞いてきた。が、担当の御迎え三連星は、到着した時には既に魂が体から離れていて、黄泉へと来ていたのかと思ってたとの事だった。

 

「鬼灯様。どうでした?」

 

「御迎え課が到着する前に、魂は体から完全に離れていたようです……一度天界へ行く必要がありそうですね」

 

「天界……ですか?何故?」

 

「ここ数百年、様々な世界で世界が崩壊するレベルの異変が多発しているんです。本来なら管理している神が対応するんですが、基本的にはその世界の住民が自らの手で解決することが義務付けられています。最悪の場合を除いて、基本神は手を出しません。あまり干渉するのは良いことではないですからね」

 

「はぁ……それが何故亡者がいないことに?」

 

「昔から何度かあったんですよね~。天界のアホどもが勝手に亡者を転生させて異変を解決させる事が……」

 

 そう話す鬼灯の背後には、地獄名物とも言える漆黒の炎が燃え盛っていた。相当深い恨みがあるのだろう。

 

「漏れなくチートとも言える数々を持たせて転生させ、勝手に新たな命を与えたおかげで地獄はてんやわんや。お陰で法改正を余儀なくされました。法改正なんて鬼舞辻無惨が好き勝手やっていたとき以来です。まぁ勝手に転生されられるのは此方としてはかなりの迷惑ですので、書類を提出し我々で対象となる亡者を審査し問題なければ転生可能と言うことにしたのです」

 

「じゃあ、今回はそれを無視したバ──神がいたってことですか?」

 

「そうなりますね。実は数年前にも勝手に転生させられたときがあったんですよね」

 

「そのときはどうしたんですか?」

 

「転生させた神をシバきました」

 

 サラッと言った鬼灯に引いている唐瓜を無視して、鬼灯は天界に行く準備を始めた。

 

「では。私は天界に行ってきます。場合によっては長引くので、唐瓜さんと茄子さんで大王の補佐を頼みます。では」

 

 これだけ言って、本当に天界に行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?鬼灯様」

 

「お久し振りです。天使さん。アクアさんに用事があって来たのですが、本日はどこに?」

 

「あぁ。アクア様なら、最近転生させた方に特典として持っていかれました。現在下界にて魔王討伐に尽力しています」

 

「チッ。やっぱり勝手に転生させてたか……」

 

「え?勝手に?」

 

「書類の提出はありませんでした。で?アクアさんはどこに?」

 

 金棒を握る手に力が入っている。ギリギリと軋む音が聞こえてきた。顔には青筋が出てきており、口調こそは穏やかだが、纏っている空気が穏やかとは全くの対極の位置にあった。

 

「え、えっと……その、転生させた佐藤カズマさんの特典として、そのまま一緒に……」

 

「分かりました。では私をその世界に送ってください。直接話をしてきます。なるべく早くして貰えますか?」

 

「は、はい!」

 

 急いで魔方陣を展開。鬼灯をアクアと今日裁判を受ける予定だったカズマのいる世界へと飛んでいく。地獄側には、1時間以内に帰ってこなかったら長期の視察と言う名目でその世界にいくと伝えている。その場合は閻魔大王が代筆で視察の届け出を出す手筈になっていた。部下である唐瓜と茄子に補佐役を頼んでいるため、しばらくは問題ないだろう。最悪、向こうの現世と日本地獄を行き来すれば良いだけだ。

 

 目を開けると、なんか草原の真ん中に立っていた。しかも直後に剣の様な物が自分に向かって振り下ろされていた。それを金棒で受け止め、攻撃をしてきた相手を見据える。

 

「だ、誰だ貴様?!」

 

「な?!いきなり人が!?」

 

 どうやら、鬼灯に向けられた攻撃ではなかった様だ。戦いのど真ん中に送られたのだろう。金髪の女騎士と、首を小脇に抱えたアンデットが戦闘をしていた。

 

「え?誰?」

 

「きゅ、急に現れましたよあの人!?」

 

「あ゛……ほ、鬼灯……様」

 

「なんだ?アクアの知り合いか?」

 

 自分の名前を呼んだ声に反応して目を向けると、そこには鬼灯の目的である2人が立っていた。何と言う幸運。今すぐにでも話を。と思ったが、それよりまず速やかに片付ける事案があるため、一旦カズマたちから目を離した。

 

「貴方……もう既に亡くなっていますよね?」

 

「あ?俺はデュラハンだ!見れば分かるだろ!!貴様こそ何者だ?!突然現れて勝負の邪魔をしおって!」

 

「これは失礼しました。私は鬼人。日本地獄、閻魔大王が第一補佐官。鬼灯と言います。デュラハンと言うことは!魔王軍幹部の方ですか?」

 

「その通りだ。俺は魔王軍幹部、デュラハンのベルディア──」

 

 言いきる前に、金棒で全力で地面にめり込ませた。

 

「私の仕事を増やす元凶の1人に関わりのある者をこの手で始末できるとは……今日は実に良い日ですね」

 

「き、貴様!普通は最後まで聞くものだろ?!なに容赦なく攻撃して──」

 

「黙りなさい。貴方の上司である魔王さんは、今現在私の仕事を大量に増やしている人の1人です。お陰で地獄の業務は滞り気味。全獄卒総出で残業をして何とかと言う状況です。それもこれも、あなた方が好き勝手暴れるから……!と言うわけで、貴方には可及的速やかに地獄へと逝って貰います」

 

「ふざけるな!俺はまだあの世にはガハアッ!」

 

 またうるさくわめき始めた為、金棒をフルスイングして殴り飛ばす。そして頭と身体をもってアクアがいる場所へと向かっていく。

 

「アクアさん」

 

「は、はい!!」

 

「これ。とっととあの世に送ってください」

 

「はい!直ちに!!セイクリッド・ターンアンデット!!」

 

 こうして、鬼灯の介入により街には一切の被害を出さずにベルディアは片付けられた。どこの誰とも分からない鬼灯の存在が気になるが、冒険者たちはベルディア討伐のテンションでそんなことどうでも良くなっている。アクアと言う1人を除いて。

 

「さてアクアさん。本日私がここに来た理由、分かっていますよね?」

 

「はい……分かっています」

 

「そうですか。それは良かった。では早速話を始めましょう。先程ギルドの受付に頼み、部屋を一室貸して貰いました。アクアさんとカズマさんは来てください」

 

「分かりました……」

 

「それと。その他の仲間のお二人は、こちらで待って頂けませんか?少々込み入った話になるので、申し訳無いのですが部外者を入れるわけにはいかないので」

 

「部外者って……私たちは2人の仲間ですよ?!あなたこそ誰なんですか?!アクアは貴方を知っている様ですが、カズマは知らないみたいですし、貴方の方が部外者ですよね!?」

 

 部外者と言われた事で頭に来たのか、めぐみんが反発した。しかし、それでも話を聞かせるわけにはいかない。内容は当事者であるカズマ、そして天界の存在であり元凶と言えるアクア、地獄の官房長官みたいな自分の中で留めておきたいし、もっと言えばめぐみんとダクネスの2人の理解を越える内容であるため、説明と言う脱線をしないためにも呼びたくないのだ。

 

「申し訳ありませんがこればっかりは。大した時間は取りませんので、待っていて下さい」

 

 そう言って、カズマとアクアの2人を連れて借りた部屋へと入っていく。ギルド職員に、他の2人が近付かないように見ておいてくれと頼んでいるため、聞かれる心配はないだろう。

 

「さて。話を始めましょう。カズマさんとは初対面ですね。私は鬼灯。日本の地獄で閻魔大王の第一補佐官をしている獄卒です」

 

「あぁ初めまして。佐藤カズマです。その、地獄の方が何故俺とアクアを?」

 

「貴方に用事と言うより、ほとんどアクアにですね。アクアさん、私は以前、天界に対して日本人を転生させるなら事前に書類を提出しろと指示を出した筈ですよね?」

 

「は、はい……数百年前に、天界全体に通達されました……」

 

 質問されたアクアは脂汗をダラダラ流しながら、うつ向いて震えていた。その様子に、カズマも身構えてしまう。

 

「その通りです。他の神々は、しっかりと書類を提出し、我々の審査を待ち転生させていました。勿論、特例で審査を省きすぐさま転生を許可したこともありますが、それは余程の場合です。この世界はそれに該当しない。その辺は貴方も分かっていますよね?」

 

「はい……」

 

「では何故、数年前と同様に、書類を提出せずに勝手に転生させているんですか?」

 

「そ、それは、その……」

 

 目が泳ぎまくる。この反応をする理由はだいたい決まっている。単純に忘れていた。もしくは面倒だったからと言うものだ。実際にやることは書類の提出だけとは言え、審査には1週間かかる。アクアの性格上、それを待つのは不可能だ。

 

「あの、話に付いていけないんですけど、一体どういう事なんですか?」

 

「本来、人は死後、一度地獄に来ます。そこで十王の裁判を受け、善良な人は天国に、罪は犯した物の、刑罰を与える程では無いものや御遺族がしっかりと供養なさった方は再び転生。そして罪を犯した者は、罪の内容にあわせて各々の地獄に落とします。地獄の獄卒は、主に罪人の亡者を反省させるために拷問をします。担当があるとは言え、我々獄卒はそれらを毎日こなしているので、1人来ないだけでもかなりの迷惑になるのです。が、近年ある問題が多発したお陰で、亡者が地獄に来ないと言うことが何度もあっとんですよね」

 

「ある問題?」

 

「様々な世界で、その世界が崩壊するレベルの事件が起きるようになったんです。理由は不明なんですけどね。そして神々は極力そこに介入はしません。原則、その世界に住む人々が解決させます。それでも無理な場合の神ですので。しかし、別世界の死者に特典を持たせて、神の使いとして事件を解決させれば良いんじゃないかと思った方がいまして。実行しちゃったんですよね。それを。結果、地獄は業務が馬鹿みたいに増えて、本来の仕事に支障が出るレベルの物となりました。そこで法改正を行い、転生させる代わりに、一度対象となる亡者に審査をして問題がなければ異世界に転生させると言うことになりました。貴方もそうなる筈だったんです」

 

「え?でも俺は特に何も……」

 

「そりゃそうですよ。そこの自称水の女神が、本来の手順無視して勝手に転生させたんですから。数年前にも似たような事をして、正式に地獄から抗議され是正勧告も出したんですけどね~」

 

 アクアを見ると、相変わらずガタガタ震えていた。それ程までに、正式な抗議(恐)と言うのがトラウマになったのだろう。

 

「あの~。で俺はどうすれば?」

 

「本来なら地獄に連れ帰って、裁判を受けて貰うのですが……この世界に来てからそこそこの時間が経ってますよね?」

 

「えぇ。まぁ」

 

「なら連れ帰るのは無理ですね。来て間もないと言うなら、この世界とカズマさんの繋りは固くないので、簡単にできたんですが、時間が経ってしまったのならそれもできません」

 

 それを聞いて、カズマは少し複雑な気持ちになった。無理矢理地獄に連れていかれない事を喜べば良いのか、それとも余計な仕事を増やしてしまった事を詫びれば良いのか、分からないからだ。アクアが元凶とは言え、この世界に来たのは紛れもない自分の意思によるもの。自分にも非があるのだ。

 

「さて。本題に入りましょう。今回、私は視察と言う名目で、この世界で自由に活動できます。ですので、魔王討伐までの間、皆さんと行動させて貰えませんか?」

 

「え?!良いんですか?!」

 

「はい。過去に鬼舞辻無惨とか言う頭の残念なヤツがいましてね。ソイツが現世で好き勝手やってくれたお陰で、視察中であれば獄卒が現世の出来事に介入することが許可されました。無駄に大きな被害を出さないための策です。本来この世界と日本は無関係ですので、日本人を勝手に転生させられても抗議しかできませんでした。が、今回は日本を管理する神の1人が特典として持っていかれたので、私が介入できる理由ができました。故に好きに動けるのです。現場を知らない頭の固い御上の連中も目を瞑ってくれるでしょう。それに、無闇矢鱈に動くよりかは、あなた方と一緒に行動した方が効率良さそうですので」

 

「分かりました。ではよろしくお願いします」

 

「はい。こちらこそ。全力であなた方をサポートさせて頂きます」

 

 そんなこんなで、カズマ一行こ鬼灯が行動を共にすることとなった。ベルディアを問答無用で叩き潰した様子を見ていたカズマからしたら、とても嬉しい事である。なお、アクアの胃に穴が開きそうになったのは、また別の話で、ウィズの店に大量の金魚草が並ぶ事になったのも今は関係ない。




と言うわけで、本編が書けなかったので読み切り版を乗せました。次回の更新はいつになることやら……気長にお待ちください!!
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