この素晴らしい世界をキレッぽい友人と!   作:憲彦

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佐藤 准(サトウ ジュン)
カズマに殺されるまでは日本では普通の学生をやっていた。特に問題もなく過ごし、部活も野球部に所属しそれなりに楽しく過ごしていた。一部ステータスが高かったのは運動をしていたため。カズマの家が通学路にあるため、よくプリントやらを届けていた。そのお陰でカズマの友達と言う称号を与えられた。

貰った特典は光剣。通常は柄の状態で、魔力を一定量消費して刀身を出すことができる持ち運びが便利な剣。攻撃力はある方。ただし、ステータス上昇などの特別な効果はなし。


賞金首モンスター

 カズマとアクアの借金には今日から利息が発生する。2人の言い分としては、クエストに出ればすぐに返せるから、装備を揃えるために貯金を頑張る!だった。正直言うと、既にクエストを受けた准からしたら、無謀も良いところだと言うのが感想だ。

 

 初心者クエストなら確実にジャイアントトードのクエストを勧められる。が、それは報酬と内容が釣り合ってないと叫びたくなるくらいに苛酷だった。動きはトロいが伸びてくる舌は速い。准も危うく食べられるところだった。日本では運動部に入っていたお陰か、反射神経やらフットワークが軽かった准は脱出できたが、引きこもっていたカズマと、高ステータスを持っているが為に色々と舐め腐っている問題児アクアにそれができるとは思えない。多分1回は確実に食われるだろう。

 

「借金の総額が楽しみだ」

 

 因みに准は今日も実益を兼ねた散歩に出ている。あの廃城に行くためだ。メタル団子三兄弟を倒すことが癖になっている准は、これから日々のストレスをソイツらにぶつけることを決意し、今日も狩りに向かう。

 

「ん?……死体?」

 

 街と廃城の中間地点に、倒れている人を発見した。装備的に多分魔法使いだ。木の枝を拾って突っつくが、反応はない。

 

「返事はない。ただの屍の様だ……」

 

 そんなお決まりのネタを言いつつ、光剣で器用に穴を掘り始めた。

 

「あ、あの……何してるんですか」

 

「この世界の死体は喋るのか……キャベツが生きてるくらいだからそれもおかしくない……のか?まぁ、今は墓穴を掘ってる。安心しろ。ちゃんと成仏できるようにお経を詠んで墓石を立ててやる。名前を彫るから後で教えてくれ」

 

「えぇ~っと……誰のお墓を?」

 

「え?アンタのだけど……」

 

「私、生きてます。魔力が切れて動けなくなっているだけです」

 

「え!?」

 

 驚いたが、取り敢えず事情を聞くために穴を掘る手を止めた。そしていくつか質問をしていく。

 

「あぁ~……名前は?」

 

「ゆ、ゆんゆんと言います」

 

「……名前は?」

 

「ゆ、ゆんゆんです……そ、その、紅魔族なので、こんな名前なんです。あの、申し訳無いんですけど、仰向けにしてもらっても良いですか?呼吸が苦しくて……」

 

「あぁ済まん。よいしょっと。じゃあ質問だ。なんでここで倒れてた?」

 

「その、賞金首モンスターが突然現れまして……」

 

「それを倒して倒れたと?」

 

「すみません……倒せてません……倒れる直前に逃げていきました……」

 

「そうか。アクセルまで運ぶ。少しキツいかもしれんが我慢してくれ」

 

「え!?そ、そんな迷惑はかけられません!クエストの途中なんじゃないんですか?」

 

「今日はメタル団子三兄弟を狩るための散歩だ、気にするな。よっと」

 

 米俵を担ぐ要領で、ゆんゆんと名乗った少女を担ぎ上げてアクセルの方角へと戻っていく。

 

「あの、運んで貰っておいて申し訳無いんですけど、この運び方はちょっと……」

 

「両手が塞がったら万が一の時戦えないだろ。グチャグチャ言うな」

 

 そんなこんなで、少女を担ぎながらのどかな草原を歩く冒険者と言うシュールな絵面が続いていたが、突然神経を逆撫でするかの様な嫌な音が響いてきた。昨日廃城に行く途中に倒した虫型モンスターの羽音に似ている。

 

「あぁぁあアワアワアワ!」

 

「今度はなんだよ。この神経を逆撫でするかの様な音のお陰で、俺は今気分穏やかじゃないんだよ。次は小脇に荷物でも抱える様な感じで運ぶぞ」

 

「う、うううう後ろ後ろ後ろ!!!」

 

「んあ?ウォォォオ!!!」

 

 2人の後ろには、優に3メートルはあるオオスズメバチが飛んでいた。羽音の正体はこれである。

 

「なんだあれ!?」

 

「王様スズメバチです!さっき話した賞金首モンスターです!き、きっと私を追って……!!」

 

 王様スズメバチ。ただただ巨大なスズメバチ。狩られる事なく生存し続けた為こうなった。最近家畜や人間に被害が出た為に賞金首モンスターに登録される。本来は毒針で相手を仕留めてから補食するのだが、このサイズになると毒関係なく針に刺されれば致命傷になる。賞金は100万エリス。

 

「俺の知ってるスズメバチより何百倍もデカいんだけど!?」

 

 因みに、スズメバチの最大サイズは6センチである。普通のスズメバチを見ただけでも、気の弱い人は平常心を忘れて走り回ってしまう。准はどちらかと言えば胆が座っている方だが、スズメバチと言う人間の警戒心全てを一瞬でMAXに引き上げる生物、しかもそれが自分の倍以上に大きければ、冷静に行動できる筈がない。全力で走って逃げていく。

 

「だ、ダメです!王様スズメバチは動いている物に反応するんです!こんなに激しく動いたら!」

 

「んなこと言ってる場合か!あ……」

 

 なにかを思い出したのか、急ブレーキをかけて停止。ゆんゆんを地面に下ろして、バックから魔力回復のポーションを投げ渡した。

 

「賞金首モンスターって……アレにいくら懸かってるんだ?」

 

「えっと、100万エリスです」

 

「よし。斬るか」

 

「えぇぇぇえええ!?」

 

「魔法使いだろ!?取り敢えず援護頼む!」

 

 光剣を展開して追ってくる王様スズメバチに向かって走っていく。まずはご自慢の毒針ではなく、巨大な顎をカチカチと鳴らしながら噛み付こうとしてきた。

 

「メタル団子三兄弟と比べたら、随分遅いぞ!」

 

 初級冒険者では普通に相手にできないスピードだが、先日のメタル団子三兄弟で慣れたのか、准には一切攻撃が当たらなかった。掠りもしない。ならば脚で動きを止めて噛み付こうしてきたのだが、脚を全部ぶった斬ってしまった。

 

「ゆんゆん!拘束魔法とか使えるか?!」

 

「や、やってみます!」

 

 王様スズメバチに両腕を伸ばして、魔力を集中させる。小型の魔法陣がいくつか作られ、その中心から光の塊が飛んでいき王様スズメバチに当たった。

 

「おぉ。スゲェ」

 

「あ、あの!長くは持たないので早くお願いします!」

 

「了解!オラァ!!」

 

 脚が全部斬られたとは言え、俊敏に動き回る王様スズメバチを1発で動きを止めたことに感心していたが、早くしてくれと言われたので王様スズメバチを全力で縦に真っ二つに斬った。

 

「……この紫色の液体……毒か?」

 

「あ、それ触らない方が良いですよ?王様スズメバチの毒はかなり強力で、気化した物を吸ったら呼吸困難になって、肌に触れたら肌が溶けちゃいます」

 

「なんつぅ猛毒だよ!?」

 

 毒の強さにドン引きしているが、ゆんゆんの言う通り毒が王様スズメバチから溢れて地面に落ちた分は、その箇所の草が一瞬で腐った。木に飛んでいったのもあったが、そっちは木を溶かしている。

 

「一応取っとくか」

 

 鞄の中から瓶を2つ取り出し、そこに王様スズメバチの毒を注いでいく。そして紐も取り出して斬った王様スズメバチを縛って1つにしていく。

 

「何をしているんですか?」

 

「ギルドに持っていく。素材にもなりそうだし、売れたら売るつもりだ」

 

「な、成る程……」

 

 ギッチリと縛り上げると、またゆんゆんを担ぎ上げ、そして王様スズメバチを引き摺りながらアクセルへと帰っていった。

 

 街に入ってからは当然の事ながら奇異の目で見られた。左肩に女の子を担ぎ、右手で引いている紐の先には賞金首モンスターの王様スズメバチ。そんな状態で道行く人が気にしない筈がない。

 

「賞金首モンスターの王様スズメバチらしい。確認頼む」

 

「え?は、はい!」

 

 ギルドに入ってすぐに、受付のお姉さんに冒険者カードと引っ張ってきた王様スズメバチを渡した。同族の別の存在ではないかを確かめて貰うためだ。

 

「確認が終わりました。賞金首モンスターの王様スズメバチで間違いありません。では、ギルドから賞金として100万エリスをジュンさんに贈呈します!」

 

「あ、半分に分けてくれ。この魔法使いがいたから倒せたし、最初に王様スズメバチと戦闘していたのは彼女だし」

 

「も、貰えません!倒したのはアナタなんですよ!?私ほとんど何もしてないのにお金なんて!」

 

「良いから貰っとけ。100万なんてあったらまた貸せとか言われる」

 

 そう言って、半ば強引に半分の50万エリスが入った袋をゆんゆんに渡した。帰っていくゆんゆんを見送り、ギルドに王様スズメバチを素材として買い取って貰うために准は残った。

 

「これ、素材として買い取って貰える?」

 

「はい。大丈夫ですよ。ですが査定に2、3日かかるので少々お待ちください。それとジュンさん、その~……言いにくいんですけど、メタル団子三兄弟はもう狩らない方が良いかと」

 

「え?何故?」

 

「その、メタル団子三兄弟は一定数狩られると、狩った相手に上位種であるメタル団子後輩が現れます。メタル団子三兄弟やメタル団子と違って、メタル団子後輩は非常に好戦的で強さもかなりの物です。経験値も多いですが、総合的に見てメタル団子三兄弟の5倍は強いです……」

 

「5倍か……て言うことは、経験値も?」

 

「えぇ、まぁそれくらいあります」

 

「よし。倒しに行こう!」

 

「いや、本当にお勧めしませんよ!それに、メタル団子後輩を倒しちゃったら、今度はメタル団子先輩が出てきます!それはメタル団子後輩の10倍の強さを持ち、一流冒険者をも倒してしまう強さを持っているんです!仮にそれを倒しても、今度はメタル団子系の最強種、メタル団子総長が現れます!まだ、誰一人として総長は倒せていません。それほど強力な存在なんです。命が惜しいなら、もうこれ以上はメタル団子三兄弟を倒さない方が良いです!」

 

 その必死の様子に、言ってることはマジなんだろうと思い、前向きに善処する方向で考えると言ってギルドから馬小屋へと帰っていった。やることが無いためでもう寝た。




カズマの現在の借金
2500エリス
利息
250エリス

アクアの現在の借金
2500エリス
利息
250エリス


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