日本のスズメバチは最大6センチだが、この世界では10倍。危険性は変わらないため駆除対象で、倒すごとに5万エリスの賞金が出る。それが駆除されずに生き残ったのが王様スズメバチ。狂暴性と食欲は上がっている為、家畜への被害が酷い。1匹で繁殖期のジャイアントトードの被害の軽く5倍は出る。
あれから2週間経ってしまった。結局、1度も返済されることはなかった。利息はポンポン上がっていく。が、あの2人がこの2週間なにもしなかった訳ではない。土木工事で得た収入は、最低限の分を除き全てを貯金し、装備を整える為の分を見事に貯めて見せた。因みにアクアは既に自分の杖を持っているため、買う必要は無かった。しかし、借金返済には使わず、カズマとの酒代に。一緒に返すとか言っていた。だが、その代償が意外と高かったのは言うまでもない。
「よし!まとまった金ができた!」
「返済する気にでもなったか?つっても、利息分しか返せないと思うけど」
「いや装備を整えるんだよ。クエストで稼いで返すっていったろ?それまで待てって」
「まぁ、それは良いが。所でアクアはどうした?」
「プリーストの魔法で怪我人を癒しながら酒代の付けの返済に奔走してる」
「俺以外の所でも借金してたのか……」
そんなアクアに呆れながら、冒険者の装備を取り扱っている店へと向かっていく。借金まみれの女神は置いていった。准の関知しない所での借金まで心配する必要はないし、何よりここは初心者冒険者の街。言い方は悪いが怪我人で溢れている。酒代の付けくらいならすぐに返せるだろう。
「いらっしゃい!何をお求めで?」
「初心者でも扱える武器を1つお願いします」
「なら、このショートソードなんてどうだ?初心者がよく使うからビギナーソードとも呼ばれるくらいだ」
「じゃあそれで!」
「はいよ!4000エリスね」
「え?!」
「どうした?」
「この前店の前に飾られてたの見たときは2500エリスだったのに!?」
「あぁ。最近職人たちが流行病で全員倒れちまってよ。今どの店も武器は値上がりしてるんだ。需要と供給が釣り合ってない状態だからな」
作られている数が少ないなら値上がりも仕方ないだろう。需要が高くても供給が間に合ってないならやることは1つ。値上がりさせて需要を落とすしかない。供給さえ確保されているなら、値下げも当然あり得る。
「准……その……」
「借金と利息追加な」
「はい……」
財布の中から不足分の1500エリスを取り出し、それをカズマに渡す。一応言っておくと、准の財布は潤っている。何せ、賞金首モンスターである王様スズメバチの討伐で50万エリスを取得し、今日までの2週間も割りと高めの賞金が懸けられているモンスターを討伐したり、ギルドの雑務を手伝ったり、賞金が発生する駆除対象を討伐したりで、既にえげつない貯金が出来上がっている。因みにレベルは40を超えた。
「4000エリス丁度ね。毎度あり!そっちの身長のデッカイ兄ちゃんはどうする?」
※准の身長は181センチ。
「じゃあ取り敢えず服を」
「そこの棚にあるから自由に見てくれ。試着もOKだぞ」
そう言われ、服でまとめられているコーナーへと向かった。武器ほどは必要とされてない為か、数は多くない。別に鎧みたいな重たい物はいらないため、プレート関連の物は全部無視して1着1着服を見ていく。
「派手なのが多いんだな。この世界って」
「あぁ。地味な物が欲しい俺からしたら最悪の品揃えだ」
「店主の前でそれを言うなよ!?」
確かに、派手な色や柄の物が多い。しかしこれにもちゃんとした意味がある。冒険者がほとんどの世界で、冒険者じゃなくても街を出て危険地帯を歩かなくてはならない事がある。
そんなとき、もし遭難したりモンスターに襲われて行動不能になったときに目立たない地味な物を着ていたとしよう。発見までに時間がかかり生存率は急激に下がる。広大なスキー場に帽子やフェイスマスク、ゴーグル含め全身真っ白なスキーウェアで行かないのと同じだ。故に派手なデザインの物が多いのだ。
「う~ん……あ、黒いのあった」
ハンガーをずらしながら見ていくと、自分好みの黒い服を見つけた。が……
「うわ~。こう言う世界じゃありがちだな」
下は普通に丈夫そうなズボンなのだが、上はロングコート。カズマの言う通り、RPG世界にはありがちの衣装だ。
「こう言うのもアレだが、中二感満載だな……」
「でもお前なら似合いそうだぞ?それにこの世界なら問題ないだろ」
「それもそうだな」
サイズもピッタリで、デザインはアレだが買わない理由はない。カゴに入れてついでに光剣の刀身が当たっても傷が付かないような革製の籠手、丈夫なブーツも購入することにした。
「後はこれをぶら下げられるベルトが欲しいんだがな~……作るか」
「作れるのか?」
「まぁどうにかなるだろ」
ベルトの金具と、厚めの革布もカゴに入れて会計を済ませた。全部で1万エリスと少しを取られたが、あの量を買ってこの額で済んだのはそれなりに特をしたと言えるだろう。
自分の着ていた制服から購入したものに着替え、店を後にした。制服は手入れはしていたが、冒険に出たりでボロボロになっていたので、クリーニングに渡してからギルドに向かった。
「あ、遅いわよ!待ちくたびれたじゃない!」
「悪い悪い。買い物に手間取ってよ」
「なに?また借金でもしたの?」
「まぁ……うん。したな……職人が流行病で倒れたとかで、値段が高騰してたから……」
空気を読めないアホの子アクアも、カズマを可哀想に思ったのか、今回はバカにせず項垂れるカズマの肩に手を置いて一言「ドンマイ」と声をかけた。
「で?付けは返せたのか?」
「ッ!そ、それなんだけど……3000エリス貸してください!」
付けの事を聞くと、全力で土下座をして准に頼み込んだ。怪我人が溢れているアクセルでも、流石に短時間で付けを全額返すことはできなかった様だ。
「なんでお前まで……」
「お願いします!今日返さないと私売られちゃうの!お願いよオオオオオ!!!」
「一体どんだけ付けたんだよ……この街に来てから1ヶ月も経ってないのに……」
借金の才能がある2人に呆れつつ、もうどうにでもなれと自棄になって酒場の店員に残りの3000エリスを支払った。そして2人を引き摺って、ジャイアントトードの討伐クエストを受注。そしてジャイアントトードの生息地に放り投げた。
「じゃ、あとは頑張れよ。俺は休んでるから」
「ちょっ!ちょっとォォォオ!!!」
珍しいことにジャイアントトードがすぐに出てきた。この前は探してやっとと言う感じだったのに、運のステータスが高いとこうなるのかと感心する。因みにカズマは泣きながらジャイアントトードから逃げ回っている。准は寝そべりながらそれを見ていた。
「アクア様ァァァァア!准様ァァァァア!助けてェェェエ!!!」
このカズマの態度に調子に乗ったアクアが、大声でゴチャゴチャ何かを言っていたが、それに気を取られたジャイアントトードがカズマを無視してアクアの方向へ。それに気付かなかったアクアはそのまま頭から丸のみにされた。
「あ……」
「あっ!……食われてんじゃねぇェェェエ!!!」
その後、必死になってビギナーソードを何度もカエルに突き刺し、1匹をようやく討伐。アクアを口から引きずり出した。
「プハッ!粘液まみれ」
丸呑みにされた経験のない准は笑っていたが、当のアクアは相当怖かったのか、泣き出してしまった。カズマはもう帰ろうと言ったのだが、アクアの高い女神としてのプライドとカエルごときにやられたと言う事実がそれを許さず、新しいカエルを見付けると全速力で走っていった。
「神の力、思いしれ!!私の前に立ち塞がったこと!そして神に牙を向いたこと!地獄で後悔しながら懺悔なさい!ゴッドブロォォォオ!!!」
掲げた拳に派手に魔力が集り発光。必殺の拳だの相手は死ぬだのと言いながらカエルにそれをぶつける。が、カエルの柔らかい体がその衝撃を完全に消し去り、一切ダメージが入ることはなかった。もはや新ジャンルの漫才に見える。
「……か、カエルってよく見ると可愛いと思うの。キャヒッ!」
「あ、アクアァァァァァア!!!」
この日はジャイアントトード2匹。1万エリスの収穫になった。が、一括返済しか認めていない為、この日の返済は不可能だった。
「カエルの体の構造を知ってれば簡単に倒せるのに」
「カエルの体の構造なんて見る機会無いだろ」
「理科室に解剖された標本が飾ってるだろうが。鶏やイカと一緒に」
「成る程……どの道、不登校だった俺には知ることはできないだろうが!!」
カズマの現在の借金
4000エリス
利息
3750エリス(明日から利息400エリス)
アクアの現在の借金
5500エリス
利息
3750エリス(明日から利息550エリス)
准が購入した服はワールドトリガーの太刀川隊の隊服と同じです。エンブレムが入ってないくらい。次回はその内!感想や評価、お気に入り登録よろしくお願いします!!挿絵描いてくれる方、募集しています!