ジャイアントトード2匹を命懸けで倒した次の日。2人でクエストクリアは不可能と判断したのか、パーティーを募集することになった。因みに、准はこのクエストを手伝うつもりはない。そもそもこれは借金返済の為のクエスト。准が手伝う訳がない。
「パーティー集めでもなんでも、俺は別に文句は言わん。が、借金は必ず返せよ?」
「分かってるよ。んで?お前は今日どうするんだ?」
「経験値稼ぎ」
それを伝えるとギルドを出ていき、いつもの廃城へと足を進める。ギルドの受付嬢からはこれ以上は狩らない方が良いと言われたが、そんなことを守るつもりはない。ステータスが限界になるまでレベルを上げ続けるつもりだ。
「さてさてさて……今日も張り切ってメタルダンゴ狩りと行きますか」
既に40を超えたレベル。冒険者と言う最弱職に就いている以上、そろそろステータスの上昇は見込めない筈なのだが、准は敢えて冒険者になった所がある。本来ならソードマンやモンクと言った高ステータス職になれるのだ。身体能力も運動をやっていたお陰かそれなりに高い方。故に、今の所レベルが上がればステータスが止まらずに上昇してくれる。
「潜伏、千里眼、敵感知」
いつもの3つを発動させ、スムーズに廃城の中をグルグル回っていく。目的のメタルダンゴ三兄弟以外にも当然存在している。それも倒しつつ、メタルダンゴ達を探していった。
「お。見っけ」
完全に背後を取っている。潜伏で気配は消している為、准の存在に気付く気配はない。いつも通りに近付いて口を手で押さえ、光剣をグサりと刺す。1番上のだけだが、声も出さずに死んでいった。
「うん。まだまだ上がるな。スピードは遅くなったけど」
開始前は42だったが、今は44。最初と比べれば確かに上がりづらくなっている。が、効率が良いことに変わりはないし、今の所は確実に上がってくれている。メタルダンゴの上位種の事も気になるが、経験値至上主義状態の准の頭の中に、それらが危険と言う情報は消えている。
そしてその後も6体ほど倒し、レベルが50になった頃、かなり強い反応が敵感知に引っ掛かった。その方向を確認しようとしたが、それよりも早く何かが背中に体当たりしてきて吹っ飛ばされてしまった。
「いっつ……誰だ?」
自分を吹っ飛ばした相手を見るため、すぐに起き上がりその方向に目を向ける。するとそこには、巨大なメタルダンゴが立っていた。サングラスらしきものを付け、頬の部分には切り傷を縫った様な痕。口にはタバコを加えて頭にはフランスパンの様なリーゼントがあると言う訳の分からない風体である。
「なんのギャグ漫画?」
言いたくなる気持ちもわかる。正直言って関わりたくない。予想していたものと比べて全く見た目が違う。准の想像では、単純にデカイだけのメタルダンゴだと思っていたからだ。だが目の前にいるのはギャグ漫画のキャラクターにしてもお粗末過ぎる見た目をしている。
「メタルダンゴ三兄弟狩りまくったから、タイミング的にはメタルダンゴ後輩か?」
冷静に考えていると、サングラスの下で准を睨み付けていたメタルダンゴ後輩が、勢いを付けて体当たりをしてきた。それを避けると、ニヤリと笑いながら光剣を展開し対峙する。
「おもしれぇ……」
メタルダンゴ後輩の攻撃力やスピードを見るに、准のステータスを越えているのは確かだ。しかし、そんな状況にも関わらず臆すどころか楽しんでいる。この世界に来てから判明したのだが、准は結構な戦闘狂なのだ。と言うか根っからである。日本での生活や理性によって抑え込まれていたが、この世界に来てからと言うものの、戦闘の時にしか笑ったことがない。しかも自分より強い敵との戦闘限定と来た。そしてそんなヤツらとの戦闘の時は、大体ステータスを超えた動きをしてしまう。
「オラッ!」
力任せに光剣を振るい、命中率度外視で最大限のダメージを与えるための攻撃を繰り返す。好戦的と言う情報通り、逃げるようなマネはしない。体当たりを繰り返している感じだ。
「ゼェイ!」
もはや光剣を使っていない。突っ込んできたメタルダンゴ後輩に合わせて右ストレートを入れる。かなり強かったのか、お互いに吹っ飛び周りの柱やら壁やらを破壊している。准に関しては城の壁をぶち破って近くの湖の中に落ちた。
「イッテ……折れた?いや大丈夫か。ん?なんか遠くから爆発音が?」
右腕を伸ばしたり曲げたりしながら、感覚がしっかりあるかを確認。問題なく動くことを確認して、アクセルへと戻っていった。
「ッ!?ど、どうしたんですか!?そんなにボロボロになって!」
「メタルダンゴ後輩と戦ってきた。強かったぞ。倒せなかったけど」
帰ってきて早々にギルドの受付嬢から驚かれた。まぁ無理もない。吹っ飛ばされて血だらけになっていて、更にずぶ濡れ。服はかなり汚れている。こんな状態なら、普通驚かれない方がおかしい。
その後にサラっとメタルダンゴ後輩と戦った事を伝えた為、更に驚かれたのは言うまでもない。
「おぉお帰り。何処に行ってたんだ?」
「レベル上げだ。それより、借金は返せるようになったのか?」
「え!?……それは~…その……」
クエストはクリアしたようで、報酬は11万エリス。近くによく分からん新しい面子がいる。恐らくあの詐欺まがいの求人表に釣られてきた人だろう。つまり3人でクエストに行き、それを分配。1人当たり3万6千エリス程。今ならまだ一括で返せる。
「一括返済しか認めねぇからな。つかなんで返せねぇんだよ」
「クエストでクレーター作って、それの修繕費を成功報酬から天引きされて……食事とかを頼んだから、今残ってるのは1万エリスです……」
先にギルドで食事を取っていたカズマとアクアの2人。借金返済はまだ無理なようだ。今日も利息は増えるばかりである。
「なんで草原にできたクレーターごときに修繕費がかかるんだよ……」
「なんか、場所的に破壊されたら困る所だったらしい……領主が決めたんだと」
「はぁ……んで?このちっこいのはなんだ?迷子か?」
「おい。喧嘩を売っているのなら買いますよ。高値で」
「それは悪かった。んで?その眼帯はなんだ?怪我ならアクアに治して貰うと良いぞ。頭と言動はアレだが、回復魔法は本物だからな」
「それただのお洒落だってよ。色々と設定付けてたが、なんの意味もないらしい」
カズマの言葉に、一瞬だが指を突き刺してやろうかと言う感情に襲われた。が、まだ初対面。流石にそれはできなかった。
「んで誰なんだ?」
「フフン!我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法『爆裂魔法』を操りし者!」
「落ち着け落ち着け落ち着け!!!」
ちょっとふざけた名乗りに、今日のイライラが爆裂しかけた准が、光剣を展開して無言でそれを振りかざした。メタルダンゴ後輩との戦闘で少し発散できたが、カズマの借金返済不可能発言で一気にイライラが溜まったのだ。取り敢えず、めぐみんが斬り捨てられない様に、カズマが全力で准を羽交い締めにしている。
「おい。まさかとは思うがこれをパーティーに入れる気か?正気を疑うぞ」
「イライラしてるのは分かるけど言葉を選んでくれ。流石にその言い方は俺でも引く」
「つかめぐみん?なんだそ──あぁ、紅魔族か」
「ッ!?我が種族を知っているのですか!?」
「あぁ。1人知り合いがいる。この前メタルダンゴを縛きに行こうとした時に会った。なんやかんやあって王様スズメバチを討伐した日だな」
紅魔族の事を思い出すと途端に冷静になれた。実はあの後も交流はあり、何度かクエストに同行している。それくらいの仲にはなっていた。
「そう言えば、アクアはどうしたんだ?」
「まだ風呂屋。ジャイアントトードの粘液まみれになってたから仕方ないだろ」
「成る程。じゃあ俺は部屋に──」
「アァァァァァア!!!」
「んだようるせぇな!」
「部屋代忘れてた……」
「准サァァァァァアン!!!お金がじでぇぇぇえ!!」
「今度はなんだ……」
取り敢えず事情を聞いて、面倒になった准は2人に一律で10万エリスを貸した。因みに、カズマはアクアとの当面の部屋代。アクアは、体を洗っている最中に誤って湯船の中にシャンプーやら石鹸やらを落として、使用不能にしてしまった分の慰謝料だ。
「借金、一気に膨れ上がったな」
そんな2人を置いて、めぐみんと准は自分の部屋へと各々向かっていった。アクアは慰謝料を渡してくると、取っておいた馬小屋に。そしてカズマはこの世界の生活に項垂れていた。
「クエストクリアして11万エリス。問題なく分配できれば3万6000エリス。なのにクレーターの修繕費で手元に残ったのは2万エリスで、3人の食事代を出したら残りは1万エリス…割に合わねぇ……!!」
因みにだが、他のクエストは軒並み依頼主を殴り飛ばしたくなるような変なクエストだらけ。初心者向けの割りの良いクエストは全く無かった。
「もう日本に帰りたい……募集できた仲間はアレだし。一緒に来たのは1人で強くなっていくし……この世界で生きていくのは甘くない」
「募集の貼り紙を見させてもらった」
「んあっ!?」
「まだパーティーメンバーの募集はしているだろうか?」
「あぁ……えっと、募集はしてますよ!と言っても、あんまりお勧めはしないですけども!」
女騎士。しかもトビッキリの美人。恐らくカズマより年上だろう。そんな相手に緊張してか、若干上擦った声になっている。
「そうか。良かった。貴方のような者を、私は待ち望んでいたのだ……はぁ、私の名はダクネス。く、クルセイダーを生業としている者だ」
若干、熱っぽい吐息を吐いたことが気になる。しゃべり方も何かがおかしい。
「はぁ、はぁはぁ是非私を、是非この私を!ぱ、パパパパーティーに!」
あ、これダメなパターンだ。
カズマの現在の借金
10万4000エリス
利息
4150エリス(明日から利息10400エリス)
アクアの現在の借金
10万5500エリス
利息
4300エリス(明日から利息10550エリス)
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