古狩人、隻腕にて   作:CATARINA

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取り敢えずこっち書こう


中年狩人は逃れたい

全裸の馬鹿を担ぎ上げて脱衣所のアイルーに放り投げる。

着地と同時に「ぐえっ。」と釣りカエルが潰れるような声がしたが気のせいだろう。

女、それも裸のを担ぐ俺は傍から見りゃ完全に山賊の類いだな…

残念ながらコイツが真っ当な幼女だった時から知ってんだよこっちは。

それにもう見慣れた。5,6年振りだったとは言え全く唆らない辺りは安心したとも言える。

 

下半身だけインナーを履き、ボコボコーラを呷る。

流石にもう風呂上がりに酒はキツくてな………

二十歳の頃は良く冷えた達人ビールを空けてたんだがな。

 

浴場から出る時に服を着せた阿呆を受け取り、チップを弾む。

遠慮すんな、どうせ金は死蔵しちまうからよ。

………うーむ。少し重いな。俺が歳食ったからか?いや……

 

「53……いや、55キロって所か。ちょっと太った……痛てぇ。」

意識を失ってる筈にも関わらず偶然勢いに乗った脚が顔に飛ぶ。

うーむ。時々ムチムチと健康的な脚が当たってるのに全くムラつかないな。

コイツだからなら良いが気が付かない内に不能になってたら泣くぞ俺は。

 

一時借家として借りてる二等住宅(二等と言えどかなり風情があって良いので気に入ってる)

到着すると取るも取り敢えず担いでる重しをベッドに放り投げる。

………なんかどっと疲れた。俺も寝るか。

 

態々退かすのも面倒になった俺はそのままベッドに飛び込み、意識を切り離した。

 

 

 

 

 

 

 

雷雲巡る塔が頂。

何度も見た、あまりにも見慣れた光景。

だから、次に誰が訪れるかも分かっている。

 

殺気。咄嗟に腰から抜いたナイフで迎撃する。

ただの石ころ、それが音と同等の速度で迫ってくる。

辛うじて叩き割り、下手人を睨み付ける。

よくもやってくれるよ。

 

『クハハハ……何、その程度で死ぬような惰弱な男なら貴様を我が眷属として欲する訳も無かろうて。何、かように殺気を飛ばすでない狂犬め。久方振りに貴様を招こうと思ってだな。』

 

一応聞いとく、拒否権は?

 

『ふむ……我が飼い犬が世界を灼くのを良しとするならば、あるいは。』

 

クソッタレ。俺はお前のそういう所が大っ嫌いだ。

日にちは……『三日後の夕刻、厳守するが良い。』

場所は……『分からぬ筈も無かろうて。』

ギリギリ間に合っちまうか………ああもう。

行けば良いんだろ、行けばよ。

 

『クハハ。それ、のんびりしてて良いのか?貴様の貞操が危ういと見たぞ?』

 

何言って……

言いかけた所で目が覚める。

 

翠。そう、翠だった。

それはまるで澱んだ翡翠のような瞳で_____

 

「フンッ!!!!!!」

「ッフヘエァ!?」

 

生身の方の拳で殴り付ける。

びびった、マジでびびったわ。

 

この野郎俺の顔覗き込んでやがった。

怖いわ、寝起き至近距離に目は怖いから。

 

「マエガミエネェ…」

 

今ダウンしてるコイツは残念ながら俺の弟子の一人、

ユクモ村専属ハンター『モミジ』

20年前か。この近くで崩壊した村があった。

()()()()()()()これを重くみたギルドはすぐさまG級()()のハンターを手配し、一番近かった俺が一番に向かう事になった。

突風に破壊された残骸、豪雨に命を奪われ、青ざめた死体。

 

思えば、狩場以外で人の生き死にと深く関わったのは初めてだった。

体温を奪われた挙句、瓦礫に半ば潰され息絶えた母親。

しかし抱えた子供だけは救おうとしたその遺志は無駄では無かった。

結果としてコイツは俺に一番長く……俺が腕を失うまで俺に付き纏っていた。

そして弱冠十五歳にてユクモ村付きハンターとなった。

後は八年間コイツなりの戦場を渡り歩いたのだろう。

俺も会うのは久々だ。のんびりと語らいたい所だが………

 

「ってえ!?何処に行くんですか先生!?」

 

悪りぃな、旧い知り合いに会いに行くんでな。五日も有れば戻って来れる。

 

「あ、ちょっと!ギルドからの手紙を____」

分かった分かった、往路で読むから。じゃあな。

 

モミジから手紙をひったくりガーグァの荷車に乗るアイルーと交渉する。

 

この車はシュレイド方面か?

分かった、途中まで乗せてってくれ。勿論金は払う。

 

「せーんーせーぇー!!!」

 

悪いが割と遠いんでな……帰って来てから遊んでやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央シュレイドの境界。

本来ハンターすら立ち入らないそこで降りた。

こっからは歩きか。まぁ仕方ない。

 

歩きながら手紙の封を開け、読む。

行儀が悪い?悪いね、育ちの悪いもんで。

 

『拝啓ヴェント様_____ドンドルマから貴公が出奔して早八年。

コチラはやや暑くなって来ましたがご壮健にお過ごしでしょうか____』

 

………前置きが長ぇ!

いつも思うんだが役所仕事ってのはこう美辞麗句をもう少し分かり安くしてくれ。

もう半分は読んだがどう見ても本題に入ってないぞ。

つーかこれ受付嬢だな書いたの。字体と文面に見覚えあるぞ。

そうか…俺が四十半ばなんだからアイツも直に四………

 

刹那、猛烈な殺気をドンドルマから感じて考える事を辞めた。

うけつけじょうさんじゅうごさい。違いないね。

大量の前置きにうんざりしながら眺めると最後にこう書かれている。

『つきましては大僧正様より直属の依頼がございますので同梱されたもう一枚を………』

その文字を見て俺は一枚目の手紙を破り捨てた。

あのクソアマ………タダの前置きで終わってんじゃねぇか!

ヤツと結婚したらしい同期の気が知れない。素直に尊敬するわ。

 

二枚目……これか。

それはやけに畏まった文体で『ヴェント殿へ』と書かれた封筒。

封印も厳重だし、紙も高級な奴だ。

…………あれ前書きというかタダの暑中見舞いでは?こっちが本命だろ。

 

地味に封印を切るのに苦労しながら手紙を取り出す。

 

『指名依頼…ヴェント殿へ

此度は急な依頼である事を謝罪する。また、この依頼はかなり長期に渡ると見られるので

不都合ならば断って貰っても勿論構わない。あくまでも依頼としての形な上、ギルドとしても

貴公程のハンターが長らく不在となるのはリスクが高く議論が紛糾した。

しかしそのリスクを負ってでも今回の依頼には価値が有ると議論づけられた___』

 

前置きが長いがしっかりとした文体だったので嫌々読む。

長期の指名依頼?腕を無くしたばっかの頃に第3王女共に雇われた時以来かもしれんな。

期間にもよるんだが内容は……

 

その時だった。突如飛来した黒い影に俺は持ち上げられ、気が付けば空を飛んでいた。

「うぉおおおお!?!?」

 

速い、滅茶苦茶速い。ヘタレウスの比じゃねえぞこれは………ッ!!!

空を切りながらあっという間に前方に古城が見えてきた。

…………ちょっと待て、着地どうすんだ。

『Guuuuuugaaaa! 』

おい早まるな!早まるなよクソ犬!あっ、アッー!!!

 

俺の静止も虚しく古城の上空から地面に向かってダイブする事になった。

畜生。次戦ったら泣かしてやる。

そう決意した俺は着地の衝撃を肌で感じながら意識を手放したのだった。




連載W辛すぎて笑う
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