古狩人、隻腕にて   作:CATARINA

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失踪前に忘れられないように


出航と再会と

久しく帰ったドンドルマの我が宅。

荒れてない辺り管理はしっかりされてるのか。

持ってく物は………回復薬(Gも)、解毒薬、秘薬、砥石、漁獲モリ、ウチケシの実……

 

面倒だ。

 

アイテムボックスを無理矢理ひっぺがし、担ぐ。

要らないモンは向こうで整理しよう。

だって出航まで後半刻しかないから仕方ないよな。

 

 

 


 

船に到着した。

知らないハンターばかりだァ………

皆若いな………歳食っても二十歳半ばって辺りか。

こう、なんというか、絶妙に、ぜつみょーに居心地が悪い。

 

そして俺は今…………猛烈に腰が痛い

ちくしょう、調子に乗るんじゃなかった。

お医者様ー!お客様の中にお医者様は居ませんかー!

 

『うるせぇぞオッサン!すっこんでろ!』

 

はぁ!?()()()()ダルルォ!?おじさんって言えやクソガキィ!!!

 

何処まで行っても狩人というのは荒っぽい職業だ。良くも悪くも。

だからこそ、売られた喧嘩は買わなくてはならない。

 

「酒樽を用意しろォ!」

 

古来より狩人の勝負と言えば決まっている。『腕相撲』だ__________

 

空の酒樽に肘を付き、相手の準備を待つ。

会場はやはりというか、若い狩人を応援する声が多い。

そりゃそうだ、若返ろうが三十半ばじゃ良くて引退間近のロートルだからな。

わざとらしくパフォーマンスをしてから肘を付く若人はニヤニヤと笑う。

 

「いい腕をしてるな、……槍使い(ランサー)か?」

「………へぇ、ただ歳食ったワケじゃ無いってか?」

 

どうだろうな。

 

 

 

『READY!?………3!2!1!スタートォ!』

 

喧騒をそのままに号令が飛び交い、瞬間二人の狩人の剛力が交錯する。

お互いに腕の筋肉を限界まで縮め込んでする力比べ。

 

ヴェントは素直に感心した。まだ十代を過ぎた様に見える若者がここまで鍛え上げた事に。

「よく鍛えこんだな、若いのに幾つか修羅場をくぐって来たと見える。」

「…………ッッッ!!!」

情勢は若狩人が優勢でもう間もなく中年男の腕が樽に叩き付けられる()()()()()()()()

少なくともこの場に居る多くの若い狩人達はそう信じて止まない。

 

しかし一方で若干年嵩の増した………二十過ぎの狩人達は知っている。

片や顔を真っ赤に染め、渾身の力を込める若者。

片やヘラヘラと相手に問いかける中年男。

狩人の腕相撲は大抵の場合、押してる方が負けるのだ。

 

「これでッ!終わ『そうだな、終わりにするか。』ァァ!?!?!?」

 

ダメ押しの一押しを入れようとした若い狩人が突然その場で一回転。

何の事は無い、力任せに腕ごとひっくり返されたのだ。

 

歓声は一瞬で止み、勝利した男はキョロキョロと周りを見回す。

「…………俺の勝ちで良かったかな?」

その言葉と共に男と負けはこそ正々堂々と戦った若人に歓声が湧き上がる。

会場のざわめきを背中に感じながら男はラウンジへと出て行った。

 

 

 

涼しー、年甲斐もなくはしゃぎ過ぎたかね。

そう思わないかねさっきから着いてきてる奴。チラチラチラチラと初恋の乙女かバカヤロー、んな熱視線じゃ誰でも気付くわ。大分上手く殺してるが足音も鳴りっぱなしだし……何より匂いが、な。

 

返答は無く、鋭利な刃が飛来するのみ。

投擲された投げナイフを腰に提げた剥ぎ取りナイフで叩き割って手の内でくるくると弄ぶ。

 

こえーこえー、難儀なモンだな女の性ってのは。

ウチのじゃじゃ馬娘もその当時は大変だったし……男親には分からん苦しみだからな。

悪い事言わない、無理しないで寝てなお嬢ちゃん。

大方何らかの因縁で俺を狙ってきたんだろうが……こちとら因縁は買いすぎてね。

命を狙われるようなのは心当たりしかない。

 

どれだ?

第二王子を狩りに連れ出した事か?

第三のクソガキを街に連れてった事?

第一王女様に手出した事?

違う………違うっぽいな。

アレはふざけた事に向こうも乗り気だったしな………!

 

小細工は通用しないと踏んだか暗殺者は武器を抜く。

 

カティ姉ちゃんに手出した事!違う!

ミルシィちゃんも違うんだろうな!

 

ヴェントは思考を巡らし、思い付くだけの余罪を吐き出していく。

ヴェント=カイニス46歳、女難が付き纏う人生であった。

 

武器も無い上に防具さえ着込んでいない現状、双剣を相手取るのは余りにリスクが高く。

その切っ先が頭髪を掠め、髪の焼ける独特の香りが一瞬だけ漂う。

サラマンダー、アグナコトルの双剣。

 

それを見た瞬間男の脳内に一つ思い出される節があった。

拾ったばかりの幼子をユクモ村長に押し付け、長期任務に就いた日々。

一月に一度程しかドンドルマに帰らず、一年間。時折娘を連れて更に一年。

二年程の長きを過ごした時間を思い出す。

 

…………火の国。

 

その言葉に動揺を隠せない暗殺者は背後で構える狙撃手に気付くことは無く、

モミジ=カイニスの放った一射は的確に意識を葬り去った。

 

 


 

よくやったモミジ。

ユクモ付きのお前がどうして此処に居るのか、コイツは誰なのか。

疑問は尽きねぇが助かった。

まさか火の国の関係者が態々乗り込んでくるとは思わなんだ。

 

取り敢えずコイツは縛って俺の船室にでも叩き込んどくか……

意識を失った暗殺者を担ぎ、自室のベットに放り投げておく。

お前は何故着いてきた………同室?なるほど、嵌めやがったな。

どうせ言い逃れはさせてくんないんだろうな。

オーケィ、どうせ船旅はクソ程長い。じっくり語ろうか。

 

お姫様と、ぶっ壊れた狩人の話だ。




過去話は除長になりがちだからコワイ
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